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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  ―それは挙式してから一ヶ月半が経過した頃の話だった。

  本日も克哉は、もうじき帰って来る眼鏡の為に…夕食を作ろうと
台所に立っていた。
 白いYシャツに青いジーンズに緑のエプロンを纏っているだけの
姿だったが、今では立派に新妻らしい雰囲気を醸すようになってきた。
 出来るだけ暖かい状態で食べて貰おうと午後七時前後に合わせて
完成するようにしていたのだが、その日は…午後六時を少し過ぎた
ぐらいの時間で玄関のドアが開いたので少し驚いてしまった。

「今、帰ったぞ」

「あ、うん。おかえり…。けど今日はいつもよりも帰って来る時間が
随分と早いね…」

「…本日、やるべき事がまだあったならいつもの時間まで残って
仕事をしていたが…今日は日中にあらかた片づけてしまったからな。
時間の無駄だから帰って来た」

「あ、そうなんだ。…確かにやる事がないなら、残業しても仕方ないしね…」

 強引な挙式後から、もう一人の自分が克哉の代わりにキクチ・マーケーティングに
勤務することになったのだが…話を聞く限りではバリバリと働いて今では営業
第八課は社内でも花形の部署になっているらしかった。
 そこら辺は流石、有能なもう一人の自分というか…克哉としてはそういう話を聞くと
誇らしい気分になるのだが、気恥ずかしくて面向かって褒めた事はなかった。
 大抵彼は定時より30分から一時間前後残って、翌日の準備を完璧に
こなしてから退社する。
 だから規則正しく、19時ぴったりには帰って来ていたのだが…。

(まあ、確かにそういう日もあるよな…)

 そう納得していきながら、再びキッチンに意識を戻して夕食作成作業に
戻ろうとしていった。
 今夜のメインであるシチューの作成にそろそろ掛からないと、19時まで
には間に合わない。
 すでに材料の下ごしらえは出来ている。
 鶏肉とニンジン、タマネギ、ジャガイモなどの野菜は一口大に切って炒めた
後にコンソメを入れて煮込んである。
 それにこれからホワイトソースを自家製で作って、合わせれば美味しい
シチューが完成する筈…だった。

「あ、もうちょっと待ってて…今から急いで夕食の準備をするから」

「別に急がなくて良いぞ。いつもの時間帯でな」

「ありがとう。…その言葉に甘えさせて貰うね」

 ニッコリと笑いながら、克哉は小鍋にバターを落として…熱しに
掛かっていく。
 そしてバターが溶けていくと同時に振るいに掛けながら小麦粉を
入れて、牛乳を少しずつ入れて延ばしていく。
 これを7~8回繰り返して、塩、胡椒などを入れて味を整えて下準備した
材料に混ぜ合わせて10~20分ほど煮れば完成する筈、だった。

「よし…ここがシチューの要だな」

 ホワイトルーは焦げやすく、注意しないとすぐに焦げた色がルーに
ついてしまう。
 だから出来る限り丁寧に手早くやらないといけなかった。
 ルー作りに意識を集中し、その動作を3~4回行った時点で…すぐ
傍らで克哉の動作を見守っていた眼鏡がいきなり、背後に立って…
背後から抱き締めて来た。

「うわっ…! 俺っ…?」

「…今日、早く帰って来たのは気まぐれだったが悪くなかったな。
必死になって俺の為に夕食を作っている姿は…なかなか色っぽくて
そそるぞ?」

「な、何言っているんだよ! そそるとかそそらないとか…そういう
問題じゃないだろっ! 今、ルー作りしているんだからこんな時に
チョッカイ掛けてくるなよ!」

 必死になって克哉が訴えていくが、眼鏡の方はどこ吹く風と言った
風であった。
 そうしている間に…男の手は克哉の前面部に伸びて来て、胸と
腹部の辺りを彷徨い始めていく。

「うわっ…! ちょっと待ってってば! 今、オレ…火を使っている
んだから、危ないってば…!」

 克哉は相手をとっさに振り払おうとしたが、小鍋に火を使っている
状態で迂闊に動いたら、相手も傷つけてしまうかも知れない。
 そう思って、抵抗を出来なかった。

「…意識を集中すれば、それぐらいはどうにかなるだろう…? お前の
俺への愛情が確認出来る瞬間だな…今は…?」

 クク、と喉の奥で笑いながら…いきなり胸の突起を両手で摘まれて、
ビクリ…と身体が震えていった。

「わっ…! やだっ…! 本気でこんな時にオレに触るな~! バカ~!」

 こんな状況でルー作りになんて集中出来る訳がない!
 そう思って必死になって叫んでいくが、そんな姿も眼鏡の嗜虐心を
刺激していくだけだった。 
 そうしている間に眼鏡の手は執拗さを増して、更に大胆になっていく。
片手を克哉の下肢に延ばして、直接握り込んで来る。

「ひゃっ…!」

 もうそんな事をされたら、ルー作りに集中出来る訳がない。
 相手の方を振り返ろうとした瞬間、背後から唇を塞がれていった。

「んっ…うっ…!」

 強引な舌先が克哉の口腔を強引に犯し、グチャグチャと淫靡な水音を
脳裏に響かせていく。
 そうしている間に…ルーから、焦げた匂いが…。

「…焦げたな」

 唇を解放された瞬間、眼鏡がボソリと呟いていくと…克哉はつい眼鏡を
思いっきり突き飛ばしながら叫んでいった。

「あぁぁぁっ~! 人がせっかく作っていたのにぃ~!」

「修行が足らないな。これしきのことで集中出来なくなるとは…」

 そう眼鏡がのたまった瞬間、克哉の右ストレートが炸裂していった。

 ドカッ!

 その瞬間、眼鏡のみぞおちに思いっきり克哉の拳がめり込んでいった。
 珍しく、克哉の攻撃がクリーンヒットした状態だった。

「ぐはっ!」

「…本気で、お前は~! 一体何考えているんだよ! 材料が無駄に
なったじゃないか!」

「…お前がそんなに魅力的だから悪い。台所でエプロンしていて動き回って
いる姿を見たら、何もしないでいられる訳がないだろう?」

「どうせ夜にオレに絶対にチョッカイ掛けてくるんだから、その間ぐらい
大人しくしておけよ! もう…本当に、バカッ!」

 そう言いながらうっすらと涙を浮かべている姿はかなりの色気が
漂っているのだが…そんな事をまともに口にしたら、もう一撃ぐらい
確実に喰らいそうな気配であった。

(そういう姿も非常にそそるんだがな…)

 本音言うとこのままキッチンで押し倒して犯してやろうと思ったが…
そうすれば今夜はまともな夕食を喰いっぱぐれる恐れがある。
 何だかんだ言いつつ、帰宅後に暖かい克哉の手料理を食べるのは
眼鏡のささやかな幸せな瞬間でもある訳で。
 その瞬間、克哉はこちらに対して最大の殺し文句を言ってきた。

「…あんまり邪魔されると、その…お前にあったかくて、美味しい内に…
ご飯、食べて貰えなくなるから…」

 頬を赤く染めながら、そんな言葉を弱々しく呟かれたら…これ以上
邪魔をするのが忍びなくなってしまう。
 今度は、眼鏡が降参をする番だった。

「…仕方ないな。俺も…お前の料理を暖かいうちに食べたい。だから…
これ以上のチョッカイは、止めておいてやる…」

「…そうしてくれると、助かる。…その間、シャワーでも浴びていて。
その間に、用意しておくから…」

 そう言いながら、克哉が再びホワイトルー作りに取り掛かろうとした瞬間、
背後から、頬に小さくキスを落とされて囁かれていった。

―あぁ、お前の今夜の料理…とても楽しみにしているぞ。俺の可愛い…
奥さんのな…?

 そう告げられて、耳朶にもキスを落とされた瞬間…克哉の顔が火が
灯ったように真っ赤に染め上げられていく。

「ば、バカ…! お前って本当に、信じられないっ!」

 克哉が反撃をしようとした時にはヒラリと眼鏡の姿は離れて、
バスルームの方へと向かってしまっていた。
 その背中を見送りながら、克哉は小さくぼやいていく。

「…もう、本当にあいつは…どこまで、オレを驚かせて…振り回して
いけば気が済むんだろう…」

 困ったように微笑みながらも、克哉は目の前の事に改めて取り掛かり
始めていく。
 
―今夜、あいつに美味しいシチューを食べて喜んで貰いたいから

 そう気持ちを込めながら、再び夕食作りに取り掛かっていく。
 その克哉の姿は…少し楽しげで、嬉しそうでもあった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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