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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※ ようやく『バーニングクリスマス!』の再開です。
    非常に間が開いてしまってすみません。
    過去のログのリンクも話のトップに繋げる形で読み返しがしやすい
   ようにしておきます。
   
    バーニングクリスマス!                
 
    お待たせしてしまって本気で申し訳ないです。
    これから、一月末までには終わらせるぐらいの気持ちで頑張ります(ペコリ)

 ―本多にとっての救い主、それは…この喫茶店の主でもあるマスター
 その人だった。

 太一が作ったラーメンに、大量のニンニクを投下して嫌がらせをするという
暴挙に出たおかげで…本多の理性は限界寸前だった。
 そして終始、太一に振り回されてやられっ放しの状態だった。
 だがしかし…その横暴を、今回に限って…天はどうやら見逃さなかったらしい。
 この店のオーナーでもあるその人が、店の入り口から堂々と入って来た瞬間…
太一の顔は「げっ!」という感じで思いっきり引きつり始めていた。

「おう、ただいま…! って何だこりゃ! 店中がニンニク臭いじゃねえか! 
太一…てめえ! 以前にあれだけ俺が言っていたにも関わらず…店の厨房を
使ってニンニクたっぷりのラーメンを作ったな!」

「おや、いや…マスター! それは…」

「言い訳は良い! ったく…ここは俺の城だと以前から散々言っているだろうが!
こんなにニンニクの臭いが強かったら、客商売をしている身としちゃ致命傷だって
散々言っているにも関わらず…またやりやがって。そんなに、お仕置きして
欲しいのか…?」
 
 その瞬間、全員が…マスターの眼光が鋭く物騒に輝いているのに気づいて
背筋に汗が伝うのを感じていった。

―マスターの目がマジだ…!

 と、全員が心の中で叫んだ瞬間だった。

「い、いや…マスターからのお仕置きは受けたくないから! っていうか…本気で
謝りますから、それだけは勘弁して下さい! ニンニクの臭いは明日までには
全力で落としますから!」

「…ほほう? こんなに強く残ったら並大抵のことでは…店内から臭いは
消えねえぞ? それでもか…?」

「は、はい! だからそれだけは…!」

 太一がここまで狼狽しているのは正直、珍しかった。
 だが…普段は非常に彼に関しては甘い部分があっても自分の実父である
この男性が、こんな剣呑な眼差しを浮かべて「お仕置き」と口にしている時は
本気で怒っている時だけだというのは身に沁みて知っていた。
 現在の太一は辛うじて…この父が味方になってくれているから今、大学にも
通っているし好きで堪らない音楽活動も出来ている状況な訳である。
  この怒りを放置しておいたら…父の気持ちが大きく変わってしまった場合、
それらの全てを失い兼ねないぐらい…太一の立場というのは微妙なものなのだ。

(…親父を本気で怒らせたままにしておいたら、絶対にシャレにならない事に
なりかねないし…じっちゃんに対しての押さえが利かなくなる…!)
 
 因果応報とは、まさにこの事だ。本多を貶める為にやった行動が全て
自分に返って来てしまっている状態だった。
 目の前で起こっている展開に、克哉と本多は思いっきり置いてけぼりに
されている状況だった。
 だが…傍から見ている限り、太一が相当必死になってこのマスターの
機嫌を回復させようとしている事だけは伝わった。
 
「あ、その…太一。オレ達、そろそろ時間だから…お暇するね。ニンニクの
臭い消しの件…頑張ってね」

 太一とマスターの間に流れる、緊迫した空気を感じ取って…克哉はオズオズと
席から立ち上がりながらそう告げていった。
 こんな息が詰まりそうな場に、延々と残り続けるなど流石に御免だったからだ。

「えぇぇ~克哉さん! もう行っちゃうの? まだ今日は全然…克哉さんと
話し足りていないっていうのに…!」

「ゴメン、太一…また来るから…。今日の埋め合わせは、次に顔出した時にね…?」

 そうやって克哉が太一に向かって謝っている姿を見て、チリリと…本多の胸が
痛んでいった。
 マスターにやり込められて、必死になって頭を下げている姿を見て少しは
溜飲が下がったけれど…やっぱり惚れて仕方がない相手が、他の相手に気を遣って
いる姿を見るのは若干心が痛んでいった。

「…判ったよ。克哉さんもお仕事だもんね…俺だって、まだバイトあるし。
けど…絶対に約束だかんね、克哉さん…」

「ん、約束するよ…」

 …という感じで、完全に本多の存在はスルーされた状態で話は進められて
いってしまっていた。

(…この場における、俺の立場は一体何なんだ…)

 と、本気で拳を握り締めながら号泣したい衝動に駆られていったが…ここで
妙な発言をすると、絶対にややこしいことになりそうな気がしたので…本多は
沈黙を保っていた。
 …もう一つの理由として、今の本多は非常にニンニク臭かった。
 口を開けば、一層激しい臭気を撒き散らすことは必死だったのだ。
 惚れた相手が目の前にいるというのに、そういう臭いをプンプンとさせるのは
若干…恋する男として躊躇いがあったのだ。
 まさに不憫もここに極まれり…な状況に追いやられていた。

「…佐伯さんもすみませんね。…こいつがニンニクなんて使って調理なんて
してしまったものだから…臭ったでしょう?」

「いえ、その件はあまり気にしていませんから大丈夫です…。それじゃあ、太一…
失礼するね」

「バイバ~イ、克哉さん。また来てね~」

「俺もそろそろ失礼させて貰うぜ。…ラーメンは旨かったけど、これだけ
ニンニクを入れられるのはもう勘弁させて貰うぜ。御代は幾らだ」

 本多が心底、不機嫌そうな表情を浮かべながら…上着のポケットから自分の財布を
取り出していくと、マスターはそれを静かに制していった。

「あぁ、こいつの給料から適当に差っ引いておきますから二人とも払わなくて
結構ですよ。今回、お二人に大しての迷惑量という事で…」

「…って親父! つか…マスター! ただでさえここの給料、信じられないぐらいに
薄給だって言うのに…また引かれちまったら俺、貧乏まっしぐらじゃんか!」

「うるせぇ! お客さんに迷惑を掛けたら減給だっていうのは今まで口が
すっぱくなる程言って来ているじゃねえか! 文句言えた義理か!」

「あたっ!」

 その瞬間、マスターの拳が思いっきり太一に向かって炸裂していった。
 ここら辺はある意味、ロイド名物というか風物詩に近いものがあるので
克哉もまったく動じた雰囲気はなかった。
 むしろ微笑ましい表情を浮かべながら、二人の様子を見守っている。

「…ん、それじゃ本多…行こっか。幾ら営業がどれくらい働くか自由裁量に
任されている部分が大きいって言っても、これ以上はちょっと問題が
出そうだしね…」

「あぁ、そうだな…」

 そう言って、克哉の言葉に頷きながら…本多は彼の後に続いて
喫茶店ロイドを後にしていく。
 カウンター席の周辺では、マスターと太一はまだまだ言葉での応酬を
続けていたが…敢えて気にしない事にした。
 
 バッタン!

 と喫茶店の扉を閉めていくと…急に現実に戻ってきたような気持ちになった。
 店の外に出た瞬間、克哉は自分のカバンから透明な黄色いカプセルが
何個も詰められているブレスケア商品を、そっと本多に手渡していった。

「はい、本多…これ。カプセルタイプのブレスケア商品だけど…これを幾つか
飲んでおけば少しはマシだと思うよ」

「あぁ…サンキュ! 克哉…すげぇ助かるよ」

「ん、でも…やっぱり気休めに過ぎないから…近くのコンビニとかで歯磨き
セットとかそういうのを買って歯磨きもしておいた方が良いと思う。やっぱり…
これから取引先に向かうならね…」

「あぁ、そうだな。けどこれだけでも有難いぜ。…ありがとうな、克哉」

「ん、どう致しまして…」

 そうして二人は駅の方までゆっくりと進み始めていく。
 駅までは目的地が共通している筈だからだ。
 しかし…その後、両者とも言葉もなく足を動かし続けていた。

(…無理やり、ついてくるべきじゃなかったのかもな…)

 と、相手が無言のまま先を進んでいる姿を見て…本多は思い知った。
 全ての動機は、「克哉と少しでも長くいたいから」というものであったけれど…
その結果、自分は克哉と太一が…友人同士として語らう時間の邪魔をして
しまっただけのような…そんな苦い気持ちを覚えていった。

(克哉は優しいから…俺に対して、グチャグチャと何も言わないで…
黙って許してくれるんだろうけどな…)

 けれど、今…克哉の方から、太一のことを咎める言葉は何一つ
出て来ない。それは本多に関しても同様だった。
 そして…言わない克哉を前にしているからこそ、静かに本多は…自分が
先約があったにも関わらずに、ついて来てしまった事を反省していく。
 その沈黙こそが…何かの答えのように、感じられてしまった。
 無言のまま…駅までの道を二人で進んでいった。

「…俺はここから、この近くの取引先まで直で向かうことにするな。
克哉も仕事…頑張れな」

「ん…ありがとう。じゃあここで…」

 と言って、フっと克哉が遠くを眺めていく。
 その表情を見て…一瞬、本多はぎょっとなってしまった。

(克哉…?)

 本多は、長年の友人のその顔を見て…驚きを隠せなかった。
 その瞬間の克哉の表情は、まるで別人のように冷たく…同時にひどく
艶やかなものだったからだ。
 本当にそれは克哉の表情だったのか…と疑いたくなるぐらいに
印象の異なる顔を見て、本多の胸の中に落ち着かない気持ちが
強く宿っていった。
 長年一緒に過ごして来た相手の、見知らぬ一面を再び垣間見て…
男の心は落ち着かなくなっていく。

「じゃあ、ね…本多…」

 そう告げて、踵を返した克哉の背中に…何か嫌な予感を覚えた。

(なあ…克哉。お前はどうして…最近、そんな顔を時々…浮かべているんだ?
ひどく色っぽいような…荒んでいるような、そんな相反した表情を…)

 克哉の背中から、奇妙な色香が立ち昇っている。
 それを見送った時、本多の胸の中に…言いようの知れない不安が一層強く
その胸に宿っていったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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