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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※バーニングは時間掛けて、全体を見通していかないと書けないので
非常に時間掛かります。ですので不定期連載扱いにしました。
 本日からは太一×克哉の悲恋、残雪を連載します。
 これは本編のEDの№29「望まれない結末」を前提に書いております。
 その為に「眼鏡×太一」的な要素を含んでいます。
 …そして、ぶっちゃけ言ってしまえば太克版の「雪幻」のような
お話です。今回以降は切なく痛い話になります。
 ラブラブでない眼鏡×太一が苦手な方はお読みにならないで下さい。
 それを承知の上で、お読みになるかを決めて下さい。では…


  ―昔のことを思い出すと、真っ先に浮かぶのは高校時代のあの出来事だった。
 
  それは太一が克哉と出会う、何年も前の話。
  今から七年以上前のことだった。

―生まれて初めて、人を刺した日の記憶

 あれは、親父を守る為には仕方なかったと思っている。
 けれど…まだ未成年だった自分には重過ぎた。
 自分の就職した会社へと走って向かっている最中、まるで走馬灯の
ように太一の脳裏に苦痛の記憶が蘇っていく。
 今思えば…自分が克哉に執着したのも、原点はここなのかも知れなかった。
 そうして…太一は、七年前の実家で起こった大事件をゆっくりと意識の上に
浮かべていった―

 それは五十嵐組の本邸、父に宛がわれた部屋でのことだった。
 その場に居合わせたのは、偶然だった。
 久しぶりに実家に顔を出した父親と、少し話したいなと思ってフラリと
立ち寄っている最中に、太一はとんでもない光景に出くわしてしまった。

―父親が二人の男に襲撃されて、片方の男を撃退している最中に…もう一方に
銃を向けられている現場だった。

 それを見た瞬間頭が真っ白になった。
 同時に、自分が助けなければ…親父が危ないと、心底思った。
 今までの人生に、ケンカや暴力沙汰の方はそれなりの経験を積んで来ている。
 だが、命のやりとりの現場に遭遇したのは…その時が初めてだった。
 太一は、知らぬ間に叫びながら…護身用にいつも肌身離さずに持ち歩いていた
ドスを懐から取り出していた。
 幼い頃から、この家に身を置くのなら絶対に身体から武器を離すな…と言われて
育ってきた。
 五十嵐の本邸は、大きなグループの総帥である母と…五十嵐組の頭目である
祖父がいるせいで、いつその恨みを持つ者が襲撃してもおかしくない環境だったから。
 だから物心をついた時には、幾つも護身術を学ばされた。ドスや、ナイフの類を持ち歩く
習慣も、小さい頃からのものだった。
 けれどその習慣を、その時ほど感謝したことはなかった。そしてその教えの意味を
この瞬間ほど、理解した瞬間は今までなかった。

『親父から、離れろぉ!!』

 父は、好きだった 
 だから考えるよりも早く…身体が動いていた。そして太一は…父の命を狙っていた男の
背面…右脇腹の部分に、ドスを突き刺していった。
 あの手ごたえは忘れない。そして…動脈に触れる部分を刺したおかげで…
見る見る内に、刺した部位から血が溢れて来て…自分の手が汚れていった。
 人を刺した時の、あの鈍くて重い感触、苦い感情。
 それが知らない誰かであっても…自分の中の良心が、酷く疼いた。

―その瞬間に、太一の中で…何か黒い自分が目覚めていった

 太一は、人を刺した瞬間…笑っていた。
 現場にいた誰もが、目の前の光景があまりに凄惨すぎて…太一のその表情の
変化に気づいたものはいなかった。
 けれど…生まれて初めて、血と殺戮を悦ぶ感情が己の中に存在しているのを
自覚してしまった。
 それが冷静な部分では怖くて仕方なくて…けど、そんな太一の内心の怯えと
裏腹に…自分の顔は、冷笑を浮かべてしまっていた。
 返り血を、血飛沫を浴びて…全身を汚した状態で、太一は冷たく言い放った。

『親父からさっさと離れろよ…あんたも、こうなりたくはないだろ…?』

 その瞬間の太一の様子を見た父親からは、「あの時のお前は別人みたいだった。
怖すぎてちびっちまうかと思ったぞ…」と称していたけど、内心で自分も
そう感じていた。
 自分がこんなに冷たい顔と声音が出来るなんて、今まで知らなかった。
 氷のように冷たい眼差し。そして…本気の殺意を向けながら、太一は
冷然と…微笑んでいた。
 その凄味は…とても十代の少年のものとは思えなかった。
 自分の肉親を守る為なら、全力を持って戦う…その時の太一には
その気概があった。
 そして父親もまた、裏の世界では凄腕の殺し屋として名を馳せている男だ。
 二対一の状態で、不意打ちを突ければ男たちにも勝算があっても…
今は逆の立場となってしまっている。
 男は、舌打ちをしながらその場から隙を突いて逃げ出していった。

―現場に残されたのは自分達親子と、たった今…この手で刺した男だけだった

 危機を脱したと自覚した瞬間、太一は…ドっと疲れを感じて呼吸を乱していった。
 その時点になってやっと正気が戻って、今…自分がした行為の恐ろしさを自覚
していった。

『良く、やった…お前のおかげで、命拾いしたぜ…ありがとうな…』

 そういって父親は労いの言葉を掛けてくれた。
 だが、太一は…平然と人を刺して殺そうとした自分が…怖かった。

『親父、無事で…良かった…』

 太一はその時、泣いていた。
 父親を助けられた安堵と、緊張が解けたせいで…その場に膝を突いてしまった。
 それだけなら、感動のシーンだっただろう。

 だが、太一は…この時に初めて、自分が育っていた環境の恐ろしさというものを
五十嵐組のトップになるという事がどういう事なのかを思い知った。
 この時点では、太一の中では…祖父の跡取りとなることと、音楽の道に進みたい
という夢は半々ぐらいだった。
 けれど…五十嵐組を継ぎたくない。そういう想いが生まれたのは…自分の
中にドロドロと黒い、狂気めいたものがあると初めて自覚したこの日からだった。
 泣きながら、歯の音が合わなくなっていた。
 生まれて初めて、人を刺して返り血を浴びた…その強烈な体験は、まだ
未成年の子供だった太一には強烈な体験過ぎたのだ。
 そんな自分を、父親は抱きしめてくれた。
 子供の頃以来の、父親からの抱擁だった。それが辛うじて…『白』い世界に
自分を繋ぎとめてくれた。

―親父、俺…怖いよ。生まれて初めて…人、を…

 泣きながらそう訴えると、父親は黙って太一を抱きしめ続けた。
 任侠の世界に身を置けば、裏の世界に生きるという事はこんな事が起きる
危険も承認しなければならない。
 それを思い知った瞬間、怖かった。
 
―自分の中に、血を見て興奮して喜んでいる自分がいる。どうしようもなく
黒くて…それを愉快に思う部分がある

 それは今までの人生で、気づくことはなかった己の闇。
 …自分は、堅気の世界に身を置きたかった。日の当たる場所で行きたいと
この瞬間に痛烈に思った。

 その事件の記憶が少し遠くなって、高校卒業後の進路を決めなくては
ならない時期に差し掛かった頃には、太一は己の進みたい道筋を
見出していた。
 その当時の太一は、己が『白』の世界で生きる為には…何を犠牲にしても
構わないと思った。
 上京して、都内の大学に通う際に祖父が出した交換条件。
 それは犠牲になる人間たちのことを思えば、本当なら許されるものでは
なかったけれど…音楽をやりたいという気持を持って、まっとうな世界に居続けたい
太一は、その条件を飲み込むしか…当時は道を見出せなかった。

―今、思えば自分があの人に執着したのは…『白』い自分のままで
いたいという…その想いから発したものかも、知れなかった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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