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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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若干、時間が掛りましたがどうにか最終話まで仕上げる
事が出来ました。
 オリジナル色の濃い作品でありましたが、ここまでお付き合い下さった
皆様本当にありがとうございました。
 これで完結になります。お待たせしてすみませんでした~(ペコリ)

夜街遊戯(克克)                                    10 
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  温かいぬるま湯に浸っているような奇妙な感覚だった。
  フワフワと、水の中に浮かんでいるようなそんな心地よさを覚えながら
 佐伯克哉はまどろみに浸っていた。
  温かい布団の中は、あまりに心地よくて嫌なことの全てを奪い取って
くれるようだった。

(あったかくて本当に気持ち良い

 誰かが、傍らにいてくれているような気がして無意識の内にそちらに
手をそっと伸ばしていく。
 そうして自分の手を握ってくれる、誰かが確かに存在していた。

「ん

 指を絡めるように握りしめられていくと、それだけで何かが満たされるような
そんな気がする。
 無意識の内に縋るように力を込めて握り締めていくとその指先は
しっかりと応えてくれた。
 瞼をうっすらと開けると、窓から一条の光が差し込んでいるのが判った。
 夜明け間際、夜の帳が明けて陽光に世界が照らし出される寸前の
時間帯。
 最初は眩しくて、視界が満足に効かなかった。
 けれど目を細めながら目を開いていくと、其処にいたのは

「えっ?」

 目の前にいるのが誰か、理解した瞬間克哉の胸は大きく脈打っていく。
 思わず心臓が止まってしまうんじゃないかって思うぐらいに、驚いた。
 それでここが自分の部屋だという事実に、気づいていく。
 いつもはどれだけ激しく抱かれても目覚めれば確実に消えている筈の
もう一人の自分が、其処に確かに存在していた。

やっと目覚めたか。遅かったな

「な、んでお前が朝になっても、いるんだよ

 今まで、夜にもう一人の自分と顔を合わせても朝に彼の姿が
存在していたことは一度もなかった。
 けれど今回に限っては彼と出会った記憶もないのに、朝に
こうして目の前にいる。
 こんなケースは初めてだっただけに克哉は、困惑を隠せない。
 しかも丁寧に、パジャマに着替えさせられていて

「えっ?」

 抱かれた、痕跡が確かにあった。
 腰が重くて、相手のモノを受け入れたと思われる個所が疼痛を
訴えている。
 昨晩、何があったのか本気で思い出せなくてパニックになり掛ける。
 乱れた着衣に、情事の痕跡が色濃く残されているベッド。
 どう考えても、昨晩こいつに抱かれているのが明白なのに、克哉には
一切記憶がなかった。

(もしかして昨晩、コイツに思いっきり犯されたのか!?)

 この筋肉がミシミシ痛む感覚と良い、身体のだるさと良いそれ以外の
結論は導き出せなかった。
 なのに、一か月ぶりにこうして会ったのに久しぶりのセックスだったのに
まったく記憶がない事が悲しくて仕方なくて。

「お、おはよう『俺』あの、昨晩もしかして

「あぁ、意識ないのにお前はあんなにも貪欲に俺のを咥え込んで
離さなかったぞ」

「わぁ~! サラリととんでもない事を口に出すなぁぁぁ~!!」

 こんな爽やかな朝日が差し込む中で、思いっきり不健全な発言を噛ます
もう一人の自分の克哉は顔を真っ赤にしながら突っ込んでいく。
 だが相手は喉の奥で楽しそうに笑って、特に気にする様子はなかった。

(せせっかくの一か月ぶりのこいつとのセックスだったのに、何にも
思い出せない。というか昨日、何をやっていたのかすらも判らない
昨晩、一体何があったんだよ

 まるで削ぎ落とされてしまったかのように、昨日一日の記憶が
空白になってしまっていた。
 大量に強い酒を飲んでしまった翌朝などに、このように昨日の出来事が
曖昧になってしまうことは過去にも何度かあった。
 けれどそのような原因もないのに、つい昨晩の事がまったく思い出せなく
なるのは本当に不安で。
 捨てられた子犬のような、儚げな瞳を浮かべながら克哉はもう一人の
自分に問いかけていく。

「あ、あの昨晩、一体何があったんだよ

お前がフラフラと歩いて、変なのにチョッカイを掛けられていたから
仕方なく俺が出てやって撃退して、それで家まで帰してやっただけだ。
まあ家まで運んだ分の対価は、お前が寝ている間に支払ってもらった
けどな

「えっ? 何、それ?」

 変なのに、と言われても克哉にはその記憶がまったくなかった。
 何かが抜けている。奪われて、痕跡すら残さずに消えうせてしまっている。

お前が、オレをここまで運んでくれたって事かな?」

「あぁ、そんなもんだ

 こちらがそう答えた瞬間、克哉は考え込むように俯いていった。
 どうやら釈然としないらしい。まあ無理もない。

あの男に頼んで、眼鏡は克哉から昨晩の記憶を奪い取って貰ったのだから

 きっと、昨日の出来事を覚えていたら克哉は気にする。
 そして確実にぎこちなくなってしまいそうだから、そう頼んだ。
 あの男は「それくらいならお安いご用ですよ」と言って、自分が澤村に
触れられた痕跡を消す為に激しく抱いた後、その処置を行って貰った。
 克哉は、覚えていない。
 家に帰ってから自分と対峙して、夢うつつを彷徨いながら…MrRの前で
激しく自分に貫かれ、翻弄されていたことを。
 本気で泣き叫びながら、ごめんなさいと繰り返していた、あの辛い記憶の
全てを本当に、綺麗さっぱり忘れている。
 本人は、気づいていない。目もとに痛々しいぐらいの涙の痕が刻み込まれて
いることを。
 覚えている限り、あんな風にこいつが苦しむぐらいなら、忘れてしまえ。
 そう願い実行に移した、それだけの話だった。

「ねえ昨晩、何があったんだ?」

そんな事を聞いて、何になるんだ?」

いや、その知らない間に、お前が現われていてこんな風に、抱かれて
しまっているなんて気になって、当然だろ

心配するな。お前はいつもと同じく、大層な淫乱っぷりを発揮していたぞ」

「~~~~! お前って、どうしてそんな物言いしか言えないんだよ!もう
本当に、バカバカ!」

 克哉は思いっきりもう一人の自分に目掛けてクッションを投げつけていく。
 しかし相手は難なくそれをかわしていってしまう。
 悔しくてベッドの周辺に置いてあった衣類だの、カバンや雑誌の類を
感情のままに投げつけていくが、それも直前でキャッチされるか華麗に身を
翻して回避されてしまうので、何の反撃にもなっていなかった。
 そうしている間に、もう一人の自分に間合いを一気に詰められていく。
 ベッドの上に乗り上げられて、攻撃している両手をしっかりと押さえつけられていき
ギシ、と大きな軋み音を立てながらシーツの上に縫い付けられていく。

「うわっわわわわっ!」

それぐらいにしておけ。下手な攻撃を幾らされたって、お前からの攻撃程度なら
何発やられても当たりはしないからな

「~~コントロール力も、なくて悪かったなむぐっ!」

 もう一人の自分の顔が寄せられた、と思った瞬間には唇はしっかりと
塞がれてしまっていた。
 こんなに朝日がキラキラと降り注いでいるような時間帯だというのに
肉欲を煽られるような濃厚な口づけを施されてしまい、克哉は反撃することすら
出来なくなってしまった。
 相手の舌先が、乱暴なまでにこちらの口内を犯しつくしていく。
 一か月ぶりの深い口づけの感触につい、うっとりしかけて瞳をトロンと
させてしまう。

「あっはっ

 ようやく唇が解放された頃には悩ましい声を漏らしてしまった。
 こんなキスは、反則以外の何物でもない。
 相手に色々と言いたい言葉があったのに、昨晩に何が起こったのかを
知りたくて仕方ないのに思考が蕩けてしまって、満足に頭が働かなかった。

「ずる、いよ

何で、そんな事を言うんだ?」

「昨日のこと、聞きたいのにどうして、教えてくれない上にこんな

無理に思い出さなくて良いこともある。どうせ過ぎ去れば一日一日の記憶なんて
曖昧なものになるし遠くなって詳細は思い出せなくなるのが普通だ。それなら
一日ぐらい、覚えていない日があったとしても支障はないだろうが

「それは、そうだけど。けど、気になって

「うるさい唇だな少し、黙れ

 そう不服そうに呟くと、もう一度唇を塞がれる。
 さっきはパニック仕掛けてて気づかなかったが、もう一人の自分の口から
煙草の香と味が微かに感じられた。
 そうして、ベッドの上で組み敷かれて身体を弄られる。
 この流れではまたセックスに持ち込まれることは間違いなかった。

「ま、待ってくれよ! お願い、だから・・・」
 
俺にこうされるのは、嫌か?」

「いや、じゃないけどけど、ちょっとだけ待ってくれよ! 何が何だか本当に
判らなくてこっちは混乱しているんだから。ちょっとで良いから考える
時間を、オレにくれよお願い、だから

 克哉は真剣な表情で、もう一人の自分に訴えかけていく。
 真摯な色合いをその瞳が湛えていることに気づいてもう一人の自分は
少しだけ思案した後、小さく頷いた。

判った。じゃあ煙草二本分だけ、待っていてやる

ありがとう」

 そういえば、以前もこんな条件を出された上で時間を与えられた事があった。
 確か一か月ぐらい前だな、と思い出した瞬間頭の中に電流が走り抜けて
いくようだった。

「っ!」

 何か、記憶の断片が自分の頭の中に浮かんでいく。
 とても大切なことを忘れている気がして、落ち着かない気持ちになっていく。

(やっぱり昨晩、何かあったんだ。一つだけ、どうしても忘れちゃいけない
大切なことが、あった気がする

 それはあまりに曖昧で儚い記憶の断片。
 眼鏡が罪悪に駆られないように「忘れろ」と願った出来事の中には一つだけ
克哉にとっては大切な真実が含まれていた。
 せめてそれ一つだけでも、掬い取ろうと自分の中からサルベージしようと
必死になって記憶の糸を辿り続ける。

(昨日、何があったんだよ! 何かが凄い引っかかる!)

 それは眼鏡が、克哉が罪悪に駆られてそしてこの一か月の葛藤を
引きずらせない為に忘れさせた苦痛の伴う記憶。
 そう克哉はこの一か月、本気で苦しみもがいていたその痛みも…R
掛けた暗示で忘れさせられていた。
 けれど克哉はそれを思い出したかった。
 何か重要な事実が、其処に含まれている筈だから。だから・・・苦しむのを
覚悟の上で、記憶の扉を必死になって開こうと試みていった。

それ以上、深く潜れば思い出してしまいますよ。それでも宜しいんですか

 自分の内側に意識を集中させている最中、ふいにRの声が聞こえた。

「えっ?」

 あまりにはっきりと聞こえたものだから、部屋中に視線を巡らせていく。
 だが幾ら目を凝らしても相手の姿は見えない。室内にいるのはやはり
自分と、眼鏡だけだった。
 自分たち以外しかいない、と確認を取ってから再び思い出す事に意識を
向けていく。そうするともう一回聞こえてしまった。

せっかく、記憶に蓋をして貴方が苦しまないようにして差し上げたのに
御自分でそれを全て、無駄になさるんですか

 呆れたような声が、今度もはっきりと聞こえた。
 そんな相手に向かって、頭の中で考えながら返事をしていく。

えぇ、苦しくても何でもオレは、昨日のことを思い出したいんです
決して忘れてはいけないことが、その中に含まれていた筈ですから

 しっかりとした意思を込めて、そう心の中で答えていくと相手は呆れた
ような表情を浮かべていった。
 だが克哉のその意志は揺らぐことはなかった。
 もう一人の自分が、一本目の煙草を吸い終わるのが目の端に映っていく。
 残された時間は後僅かしか存在していない。
 だから、もう一度はっきりと思っていく。

オレは、昨日の出来事を知りたいんです

 そう告げた途端、頭の中で扉が開いていくようなそんな奇妙な
感覚を覚えた。
 次の瞬間、怒涛のようにこの一か月悩み苦しんだ記憶が、そして
昨晩弱っていたが故に、誰かに身体を触れさせてしまっていたことが
そして、もう一人の自分に泣いて謝りながら抱かれている、昨晩の記憶が
蘇っていく。

それは克哉にとって、苦痛が伴う記憶

 掻き毟りたくなるような突き刺す痛みが急速に広がっていく。
 だが彼はそれでも、自分の弱さと苦痛を見据えてその中で自分が
見出した真実を掴んでいく。

これ、だ

 そして、痛みを承知の上でも思い出したかった真実を、ようやく見つけた。
 それを思い出した瞬間克哉の瞳からは、涙がゆっくりと溢れ始めていった

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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