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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO2…「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【過去ログ】

  咎人の夢    

―御堂孝典は32年間の今までの人生の中で、出社するのにここまで緊張した
事は一度だってなかった

 今朝見た夢の光景が、果たして現実だったのかそうでないのか。
 その疑問が出勤している間も、頭から離れてくれなかった。
 真偽を確かめる為に早めに出勤したは良いが…自分の私室に入っても
いつもと違って全然気持ちが落ち着かなかった。
 本来の出勤時間よりも随分と早く着いてしまったので社内は全体的に随分と
静かな感じであった。
 こうして…人気のないオフィスで一人で仕事をしていると、リズムを
崩す前のことがゆっくりと思い出して…佐伯克哉という男と出会ってからの
自分の不調っぷりが嘘のように感じられた。

 胸の中に漠然とした不安感はあるが…若くして部長職に就いた御堂は
元来、精神的には相当にタフな人間だ。
 このぐらいの事で自分のペースを乱したり、仕事が出来ないなどと…
甘ったれた事をいうつもりはなかった。

(…私はどうして、あの男に出会ってから…あんなにも自分のペースを
崩してしまっていたのだろうか…?)

 その事実が、釈然としなくなるぐらい…今の御堂は普通に仕事を進めていた。
 其処からは不調となる原因がまったく感じ取れない。
 色んな事に違和感を覚えてはいたが…とりあえず頭と手は動かし続けた。
 自分の私室に来て、何もしないで悩んでいるぐらいなら…最近山積みと
なっていた未処理の業務を少しでも片付けた方が建設的だった。
 冷静になって改めて見てみると、膨大な量の…自分が貯め込んでいた
仕事の量に眩暈すらしてくる。
 だが…近日中に片付ければどうにかなるものもいくつかあったので…
まず期限が差し迫っているものから片付け始めていった。
 どれもかなりギリギリだ。
 モノによっては今朝、他の人間が出勤してきたら早急に動かなければ
間に合わないものすらあった。
 自分自身でも、これだけの業務を溜め込んでしまっていたことに半ば
呆れたくなった。

―また小さく、違和感を覚えていく

 これだけの仕事を、手につかなくなるぐらいの何かが…あの男と
自分の間にあったというのだろうか?
 しかし…やはり、思い出せない。

―忘れて、下さい…

 祈るような誰かの声。思い出そうとする度に、その一言だけが
鮮明に蘇って、それ以上の記憶を思い出すことが不可能となっていた。

(…今朝から聞こえる、この声は…一体誰のもの、なんだ…?)

 やはりその声の主の存在が御堂にとっては思い出せなかった。
 また少し考えて、思い出すように努めていくが…やはり声だけでは
はっきりと思い出せなかった。

「…私らしくないな。どうして…こんな声の事がこんなに…気になるんだろうか…?」

 自嘲っぽく笑いながら…ふと手が止まりがちになっていたが…気を取り直して
作業に集中していく。
 パソコンでメールの処理している間に、ふと…アドレス帳のページを
クリックしていくと…連絡先に「佐伯克哉」と書かれてるのに気づいた。
 もし、即急に…あれが事実だったのかどうかを確認するならば、ここに
記載されている携帯番号に連絡すれば…今すぐにでも判ることがあった。

―彼が普通に電話を取れば、あれは自分に悪夢に過ぎなかったという
結論となり、証明にもなる

 腹部を深々とナイフで刺されながら、普通に出勤出来る人間など
存在する筈がないのだ。
 怪我の程度によっては刃傷沙汰が起こっても、何食わぬ顔で出勤が
出来るかも知れない。
 だが…あれは、絶対に取りつくろうことが出来ないレベルでの怪我だ。
 逆に、いつまで経っても誰も出なければ…あの夢は事実であった可能性が
極めて高かった。
 それに…今朝、この部屋に向かう途中で一つ…気になる噂をすでに
耳にしていた。

―この近隣の公園で、警察が出動して集まって来ているという内容だった

 どのような事件が起こったのか…小耳に挟んだ程度なので、現時点では
不明だが…その小さな噂が、御堂の決心を鈍らせてしまっている。
 MGN本社からそう遠くない位置にある公園は、結構な敷地面積を誇っていて
片隅の方ではホームレスが夜、毎日ではないが寝る場所を求めて訪れたり
酔っ払いなどが潰れて、警察の厄介になるような出来事がたまにであるが…
起こったりしている場所でもあった。
 以前にも酔っ払いとホームレスが大きな衝突をした際に、警察の人間が
何人か出動してきた事があったが…今朝はどれぐらいの人数が訪れているのか
現時点では御堂は情報を持っていなかった。

(もし…あれが現実だった場合、佐伯の死体が見つかって…それで
警察が来ている可能性も存在するな…)
 
 そう思うと、やはり…自分から連絡する踏ん切りまでつかなかった。
 こうやって自分の私室で部屋をしていると、やはりあの出来事は悪夢で
あって欲しかった…という想いの方が大きくなっていく。
 もし、どんな事情があるとは言え罪を犯してしまったというのならば…
こんな風に逃げるようなことばかり考えているのは褒められた行動では
ないのかも知れない。
 けれど…彼を殺すに至った動機すら、今の御堂は思い出せない。
 それで佐伯克哉を手に掛けたといっても…自分自身ですら
納得行かないし、釈然としなかった。
 頭の中に、そんな考えがグルグルしつつも…御堂は始業時間前に
精力的にこなしていった。
 一通り片付けた頃には、部屋の外…廊下の方から、人が行き交い
始めている気配のようなものを感じていった。

「そろそろ…始業時間か…」

 そう呟いた瞬間、御堂のPCの方に一通のメールが届いた。
 その送信者名を見た瞬間…心臓が止まるかと思った。

―佐伯克哉

 確かにそう表示されていたのだ。

「佐伯から、メールが…?」

 御堂は、メールが来ただけでも驚きを隠せなかった。
 しかし気を取り直して…慌ててそのメールを開いていく。
 其処にはそっけなく、一文だけの短いメッセージだけが
記されていた。
 
―午後から打ち合わせの為、そちらに伺います。こちらの希望としては
14時ぐらいが好ましいのですが、御堂部長の方の都合の方は宜しいでしょうか?

 たったそれだけの内容。
 あの男らしい、簡潔で…必要なことだけしか記されていないメールだった。
 だが…その短い一文を見ただけで、張り詰めたものが緩んでいくのを
感じていった。

(あれは…やっぱり、夢だったのか…?)

 もしあの夢が事実なら、こんなメールなど決して届く筈がないのだ。
 送信時刻をチャックしてみたが…どうやら彼も早朝出社をしているらしい。
 ほぼリアルタイムで、キクチ本社のPCから送信されたもののようだった。
 このメルアドは…彼の会社内でのメルアドであったと記憶しているから…
ほぼ間違いがないだろう。

(…それに、第三者が彼のPCを使って…こんなメールを送るメリットが
果たしてどこにあるんだ…?)

 だからこのメールを送ったのは佐伯克哉当人にまず間違いないだろうと
思えたが、まだ彼本人を実際に見ていないから…確証は持てないでいる。
 しかし…それだけでも、出社前に比べて御堂の気持ちは随分と
楽になっていった。

(そうだ…あれは、夢だったんだ…。そうでなければ…どうして…)

 御堂はこの日ばかりは、一刻も早く…いけすかない相手であるが
佐伯克哉がこちらを訪ねてくるのを心待ちにしていた。

―彼が自分の前に立てば、全ての懸念は夢に過ぎなかったと
証明されるからだ…

 今まで御堂は、佐伯克哉がMGNに訪れるのを快く思った
事は一度もなかった。
 だが…この日だけは、あの凄惨な悪夢の記憶を打ち消したいと思う
気持ちが…初めて、彼の来訪を心待ちにさせる結果を招いて
いたのであった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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