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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【咎人の夢 過去ログ】          


 意識を失っている間…御堂はずっと奇妙な浮遊感を感じ続けていた。
 グラグラと大きく揺らされたり、急に高く浮き上がったり…まるで無重力の
世界にいるような、そんな感覚を覚えていく。
 意識は辛うじて覚醒しているのに…身体が自分の思う通りに動かせない、
そんなじれったい状態がどれぐらい続いているのか…判らなかった。

―ここならば、貴方は平穏を得られるでしょう。…数日はそれでもざわめきが
生まれるでしょうが…それを過ぎれば、きっと貴方は元通りの日常に
近いものを送ることが出来るでしょう…。健闘を祈ります…

 最後に、はっきりと先程の謎の男の声が頭の中に聞こえて…
御堂は、十数分か深い眠りに落ちていき…。

 ―その後に御堂がはっきりと意識を覚醒させたら、気づいたら自分の
執務室のイスの上に座っている格好になっていた

「…ここ、は…?」

 頭がはっきりせず…ガンガンする。
 …いつ、自分はこの部屋に移動していたのか御堂にはまったく思い出せない。
 大手企業の部長、というポストに相応しい広くて立派な執務室のディスクに座ったまま
いつの間にか自分はうたた寝でもしていたのだろうか。

「夢、だったのか…?」

 御堂の脳裏に、目覚める直前の異様過ぎる光景が蘇る。
 あまりにおぞましく、恐ろしい内容だった気がした。しかも…自分が殺人者に
なった事に怯えて、あんな風に動揺して弱気になるなど…有り得ない筈だった。
 殺人など、あまりに愚かで…得るものが何もない行為だ。
 誰だって怒りや憎悪が高じれば、目の前の相手を殺したいと思う気持ちを抱く
事ぐらいあるだろう。
 しかしそれを実行に移せば、その人間が持っていた地位も信頼も功績も全てが
塵芥と化してしまう。それだけ…世間というのは、殺人という罪を犯してしまった
人間には厳しいものだ。
 どれぐらいの時間、眠っていたのか判らない。
 けれどその短い時間の間に…二つの悪夢を自分は見ていた気がする。

 一つ目の夢は…自分が手を汚して、佐伯克哉を殺す夢。
 二つ目はどうやら…その罪を覚えて、遠まわしに周囲の人間に疑われて
必死になって表面上を取り繕っている何とも情けないものだった。

(…久しぶりに夢を見たと思ったら、あんなロクでもない内容とはな…。どうせ見るなら
少しぐらい愉快だったり、実になりそうなものを見れば良いものを…)

 夢の中の自分は、罪を犯して悩み続けていた。
 そして捉え処のない状況に必要以上に過敏になっていて、愚かしい事ばかりを
繰り返していたように思う。
 あんな自分が…自分だとは思いたくなかった。何となく苛立っていくと、ふと…
学生時代の国語の授業内に出てきたある詩の事を思い出した。

(そういえば昔…こんな詩があったな。胡蝶の夢という奴だ…受験勉強の
最中に記憶したものだが、確かこんな内容だったな…)

 御堂が思い出した内容は、以下のようなものだった。
 「荘周が夢を見て蝶になり、一羽の蝶として大いに楽しんだ所で夢が覚めた。
果たして荘周が夢を見て蝶になったのか、または蝶が夢を見て荘周になっているのか…。
 どちらの姿が真実で、どちらの姿が虚像なのか。片方の姿は…もう片方が見ている
夢幻に過ぎないのか」

 …大体要約すれば、こんな内容の詩だった。
 あの殺人を犯した自分からすれば、今の御堂は夢に過ぎず。
 今の御堂からしたら、あの怯えている自分もまた夢に過ぎない。
 こうしている自分たちのどちらが…本当であり、嘘であるかは…そんなものは
夢を見ている最中には、決して判らないことであった。

(馬鹿馬鹿しい…私は、佐伯克哉を疎ましいとか目ざわりだとは感じているが…
彼の為に今まで築き上げた全てを引き換えにしてまで…殺したいと思う程ではない。
何故…あのような夢を見たんだ…?)

 そう思いながら、御堂は本日のスケジュール表を開いて確認していく。

 【本日の午後二時、佐伯克哉訪問予定】

 本日の午後二時の欄に、その予定が記されていた。
 その報告を受けた後は、製品開発室で新商品の開発状況がどこまで
進められているのか、中間報告を確認しに行く予定だった。
 時計の針は午後一時五十分を指している。
 後、十分程で約束の時間だ…と思った瞬間、私室の扉が勢いよく開け放たれていった。

「御堂部長! 佐伯さんがいらっしゃいました!」

 すぐに部屋の中に飛び込んで来たのは…自分の部下であり、可愛がっている
存在でもある藤田だ。
 明るくて人の良い性格で好感が持てる人物なのだが…そのおかげで
人の裏を読んだり、色々と裏から手を回したりするような事は不得意な人種だ。
 その代わり、その人の良さが…その欠点を補って余りあるくらいだし…仕事も
出来る方なので、今…若手の部下の中では御堂がもっとも目に掛けている
存在でもあった。
 さっき見た夢の中では、悲痛そうな顔をして何かを訴えていたような…
そんな記憶があった。
 そして夢の中の自分は、藤田の前を居心地悪そうに後にしていったが…到底、
今の自分たちにはそのような気まずさは存在しなかった。

「そうか…。若干、予定時間よりも早いが…この部屋に通してくれ。前倒しで
スケジュールを消化する事にする」

「はい、判りました。それでは佐伯さんを呼んで来ますね!」

 明るく、元気そうにそう返事して…藤田は脱兎の勢いで部屋の外へと
姿を消していった。
 いつも通りの日常。特に変わったことなど何もない。
 そう感じて、御堂は佐伯克哉が来るのを待ち構えていった。
 
―その瞬間、何故か…自分の脳裏に鮮明に、あの謎めいた黒衣の男が
言った数々の言葉が思い出されていく

 御堂はそれを認めたくなくて、必死になって頭を振り続けた。
 夢ごときで惑わされるなど、とても自分らしくない…そう思った。

―貴方の罪は誰にも裁かれず…

「…私は、罪など犯していない。今…佐伯克哉が約束の時間通りに
目の前に現れようとしているのが…何よりの証、だ…」

 何度も、黒い染みのように湧き上がってくる不安を振り切るように…
自分に言い聞かせるように呟いていく。
 その瞬間、扉が開け放たれて一人の男が藤田に連れられている状態で
部屋の中に入って来た。

「御堂部長、プロトファイバーの営業に関して…何点か確認したい事が
ありますので伺わせて頂きました。貴重な時間を割いて下さってどうも
ありがとうございます」

 そして、今まで向けられた中で一番丁寧な口調で…眼鏡を掛けた
傲慢な男が頭を下げていく。

「…?」

 何故だか、その瞬間…奇妙な違和感を覚えた。
 しかしそれを上手く説明することなど出来ない。
 御堂が言葉を失って考え込んでいくと…藤田と佐伯は、怪訝そうな
表情を浮かべていく。

「御堂部長…?」

 藤田が少し驚いた口調で呼びかけていくと、すぐに気を取り直していく。

「嗚呼、すまない。少し考え事をしてしまった…。佐伯君、君からの話を
これから伺わせて貰おう…」

 そうして、思考を切り替えて…仕事の方に意識を集中していく。
 その間、御堂は…必死になって、先程見た…あの奇妙な白昼夢の事を
頭の中から追い払っていったのであった。
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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