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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※お待たせしました。
 6月25日から新連載です。
 今回のCPは御堂×克哉となります。
 テーマは酒、(「BAR」&カクテル)です。
 鬼畜眼鏡Rで、太一×克哉ルートで克哉が軌道が乗るまでアメリカで
BARで働いていたという設定を見て、御堂×克哉でもカクテルやバーを
絡めた話が見たいな~という動機で生まれた話です。
  その点をご了承で、お付き合いして頂ければ幸いです。

 秘められた想い             

後、今回の連載の作中に使用されているミュージックのリンク。
どんな曲なのか知りたい方はどうぞ~。

 『A列車で行こう』
 『いつか王子様が』
 JAZZソング集 1. Fly Me To The Moon/フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
          2. The Girl From Ipanema/イパネマの娘
          3. Over The Rainbow/虹の彼方に
          4. Night And Day/夜も昼も
          5. When You Wish Upon A Star/星に願いを

 ―最後に聞こえた「星に願いを」は、この場でそのメロディに耳を
傾けている人間全てを眠りに誘っていきそうなぐらいに優しく
穏やかなメロディにアレンジされていた

 しっとりとしていて…まるで母親が子供を寝かしつける時に
歌う子守唄のような優しさを感じて…克哉は机に突っ伏したまま…
ようやく音楽を聴く方に集中していく。
 たった今、克哉が放った精は殆どが御堂の掌に収められたおかげで
下着やズボンの類は汚さずに済んでいた。
 濡れていない方の手で、御堂はさりげなくこちらの衣服を整えてくれた。
 だからもう懸念することは何もないのだが…それでも、まだ死ぬほど
恥ずかしいという気持ちが抜けない。

(こ、こんな場所で…あんな風にされるなんて、想像しても
いなかった…孝典さんって、本当に…酷い…)

 この人が意地悪というか、嗜虐心が強い性質である事はすでに
恋人関係になって身を持って知っている訳だが…まさか、こんな場所でまで
こちらに仕掛けて来るなんて予想もしていなかった。
 隣の席に座っていた客にも何か悟られてしまったかもだし…頭の中は
グチャグチャでまともに考えられない。
 乱れた呼吸の方はどうにか机に顔を伏せている間に整ったが、まだ
鼓動の方は収まっていない。
 今だに荒々しく脈動を繰り返して、ドクドクと言っていた。
 静かに流れる「星に願い」のメロディ。
 それがこちらの昂ぶった精神を多少は宥めてくれている。
 だが、平素の状態でならそのまま眠りに誘われてしまいそうな旋律も
あんな事をされた直後では無理だ。
 気持ちは未だに乱れ続けて、御堂の方をまともに見れない。

(…どうしよう、まだ孝典さんの顔を見るのが恥ずかしい…)

 そう思って、顔を逸らして周囲を眺めていくと…ぎょっとなった。

「へっ…?」

 先程、もしかして感づかれてしまったのでは…と懸念した
隣の席の若い男性が思いっきり船を漕いでいたのだ。
 ぎょっとなって周囲を眺めていくと…あまりに優しく、ゆったりとした
旋律の為か…他の客の目もトロン、となり始めている。
 そして一番驚いたのが…。

(孝典さんまで、船を漕いでいる…!?)

 これには克哉も相当に驚いていく。
 …この人がこんな人目につく場所で、うっかり居眠りをするなんて
初めて遭遇したので、思わず我が目を疑ってしまった。
 …まあ、日頃睡眠を削って激務をこなしている身だ。
 こんな優しいメロディをずっと聞いていたら…思わず気が緩んでしまうのも
仕方ないかも知れない。
 信じられないものを見た、とばかりに克哉が数十秒程…凝視していくと
その視線に気づいたのか慌てて御堂が瞼を開いていく。

「はっ…?」

「…お疲れなんですね、孝典さん…」

 短い間だけ自分の前に晒された…愛しい人の無防備な寝顔は
克哉に少しだけ気持ちの余裕を取り戻させてくれた。

「…む、気づかぬ間に眠ってしまったか…」

 そういって御堂は罰の悪そうに苦笑していく。
 そして照れ隠しに、小さくコホン…と咳ばらいをしていくと…御堂は
その場から立ち上がっていった。

「…顔と手を洗って、目を覚ましてくる。君は少し待っていてくれ…」

「はい…ごゆっくり。けど、もうじきコンサートは終わってしまいそうですよ…?」

「…それまでには戻ってくる」

 そうぶっきらぼうに言い捨てて、御堂は静かに立ち上がり…店の入り口の
方にあるトイレの方まで歩いて向かっていく。
 克哉はその様子をクスクスと笑いながら見送っていくと…ふいに…
ピアニストは鍵盤の高い処から低い方へ指を華麗に滑らせて…
フィニッシュを決めていく。
 演奏が止むと同時に、溢れんばかりの拍手が湧き上がる。
 その頃には若いピアニストの全身は汗だくになっていて…まるで
長時間全力疾走を終えた後のような状態になっていた。
 隣に座っていた若い男性が、演奏が終わると同時に舞台の方へと
向かっていって親しげに語り掛けていく。
 多くの聴衆が、演奏をしていた三人…特に一番華がある若いピアニストの
方へと群がっているのを見て、克哉は少し心配になっていく。

(御堂さん、今夜はあの人に話を持ちかけたりするのかな…?)

 彼はあくまで、これから御堂が手がけることになるビオレードの
CMソングを作るアーティストの候補の一人だ。
 今夜は彼の実力を測る為に下見の目的でやってきた訳だが…
一体御堂は今夜、この後どう動くつもりなのか…克哉には読めなかった。
 あまり詳細は克哉に語ってくれてはいないが御堂が候補に入れている
アーティストの数は十人近くは現時点でいた筈だ。

(…それとも今夜みたいな視察を、これから何度もするつもりなのかな…。
お忍びみたいな形で…)

 そう思うと、カッっと頬が熱くなる想いがした。
 …まさか、コンサートの最中にあんな真似を…まさか達せられる
処まで追い上げられるなんて予想もしていなかっただけに未だに
恥ずかしくて仕方なかった。
 自分の方からピアニストに声を掛けて引き留めた方がいいのか、
もしくは…このまま今夜は聴衆に徹して大人しくしていた方が最良なのか
判断が付きかねていった。
 御堂が戻って来るまで、葛藤しながら…舞台の周辺を観察していくと
ピアニストは何か楽しそうに笑っていきながら、隣の席の男性と肩を
組んで…手をバイバイ、とするように振っている。

「…もしかして、どっか移動しようとしているのか…?」

「お、お客様…どうなされましたか?」

 そう思ってガタっと音を立てて席を立ち上がろうとした瞬間…
いつの間にか近くに立っていたボーイが心配そうに声を掛けていく。

「あっ…はい。な、何でもありません…」

「お客様、今夜のコンサートも無事終わりましたし…そろそろ当店は
カクテルの方はラスト・オーダーの時間です。何かご注文等は
ありますか?」

「えっ? カクテルはラスト・オーダーって…どういう意味ですか?」

「…普段なら当店は午後二時ぐらいまで営業しているんですが、
カクテルを作れる係の者に急用が出来たらしくて…本日は二十四時まで
しかおりません。ですから…本日は今がカクテルに関しては
ラスト・オーダーとなってしまいます。ご了承下さいませ…」

「そ、そうなんですか…どうしよう…」

 だが、御堂はあれから五分程度が経過したが…まだ戻ってくる
気配はない。
 もしかしたらトイレに行く間…海外の支社の人間と電話かメールで
打ち合わせでもしているかも知れなかった。
 ビオレードの企画が動き始めてから、時差のある向こうの支社と連絡をする為に
夜半に連絡を取る姿は決して珍しいものではなかった。

(俺はウィスキーで良いとして…孝典さんは何を注文しようか…?)

 御堂はワインを愛飲している。
 オーソドックスに言えば、赤ワインのそれなりに良い銘柄の品を頼むのが
セオリーなのは判っていた。
 けれど…今夜、このバーに来て…御堂は初めてカクテルに深い関心を
寄せてくれた。
 実際に作るのが趣味である克哉は、意外に深くカクテルの知識を
持っている。
 …赤ワインや白ワインを、馴染みのワインバーで飲むのに不満を覚えている
訳ではない。
 だが、愛しているあの人に…少しだけでも、自分が興味持っているものを知って
貰いたいと…そんな欲求が静かに湧き上がってくる。
 克哉があれこれと考えていると、30代初めぐらいの年頃のボーイは柔らかく
微笑みながら、こう告げてくれた。

「…まだお考えのようですから、一回りして参ります。その頃までに…
ラスト・オーダーの品を考えておいて下さいませ」

「あ、はい…わざわざありがとうございます」

 相手からのさりげない気遣いを感じて、克哉は礼を告げていきながら…
必死に思考を張り巡らせていく。

(カクテルって…使ってある酒とか、名前とかに色んな意味とか語源があって…
意外に奥深いんだよな。それに…オレばかり、孝典さんに翻弄されて良いように
されるのも何か悔しいし…。せめて、御堂さんがアッというようなそんなインパクトが
ありそうなものが…何かあったかな…?)

 そう、例えば…カクテルを使って…今の自分の気持ちを伝えるというのも
悪くないかも知れない。
 もしくは、秘められた意味がある品を注文して…さりげなく普段伝えられないでいる
自分の想いを示すのはどうだろうか?
 御堂が目の前にいない分、克哉の思考は大胆になり始めている。
 そう、自分ばかりが御堂に一方的に翻弄されてしまうなんて…フェアではない。
 …其処まで考え始めていくと、目の端で…ピアニストと若い男が店の外に向かって
行く姿もいつの間にか気にならなくなっていた。
 御堂の意識を逸らす者は、他はいらない。
 …あの人の心をくすぐれるような、刺激出来るような品は何か…ただそれだけを
必死に考え始めていった。

(そうだ、これが良い…!)

 そして記憶を探っている内に、一つのカクテルを思い浮かんでいく。
 その奥に隠された意味、それは恐らく…自分が伝えられないでいる想いを
彼に示すのに相応しいと…確信していった。
 その直後にさっきのボーイが声を掛けてくる。

「そろそろ…お決まりになりましたか?」

「えぇ…決まりました」

 そうして、克哉は愉快そうに微笑みながら…一つのカクテルの名前を
口にしていった。

―そして御堂が、海外支社とのやりとりを終えてテーブルに戻って来た頃には…
彼らのテーブルの上には、澄んだ青紫色の液体の入ったカクテルグラスが
二つ…静かに置かれて、その傍で…克哉が優艶に微笑んで待っていたのだった―

 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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