忍者ブログ
鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
[1085]  [1084]  [1083]  [1082]  [1081]  [1080]  [1079]  [1078]  [1077]  [1076]  [1074
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 ※最近、SSばかりで連載止まってすみません。
 介護の道に行く、と決心した辺りから…十代の時の暗かった
時代の自分を思い出して、ウダウダしていたので(苦笑)

 まあ、情けなくて今よりもずっと弱かった頃の自分を思い出して
ヘコんでいたっていうのか一番ぴったりかも(汗)
その暗かった時代を振り返って気づいたことを話に組みこんで
語ってみたいとふと思い…本日はこんな話を投下させて頂きます。
 心を閉ざしていた頃の自分を、今の克哉が振り返るお話。
 少し澤村が絡みます。(けどCPものじゃないです)

 人間って、最初から強い人間じゃないし。
 私だけではなく…長く生きれば、生きた分だけ…誰しも心の傷とか、トラウマに
なるような事を経験するものでしょう。
 かつては思い出すだけで辛くて死にたくなるぐらいに辛かった記憶が
長い年月を持って、少しずつ癒えて…懐かしさを持って振り返れる
日が訪れる。
 そんな心を、表現したいと思って書いた話です。
 …前の連載終わる前に、次の連載書くなよって突っ込まれそうですが、ここ暫く
自分の心の中にあるのはこの話だったので。
 …何か前の終わらせてからじゃないと、と思っていたらここ暫く話を書くリズムを
完全に崩してしまったんで、胸の中にあるものを正直に書きますわ(トホホ)

 興味のある方だけ、お付き合い下さいませ(ペコリ)

 ―桜を見る度に、昔から怖かった

 閉ざしていた記憶の扉が、桜の花を見る度に微かに開いてしまう
ような気がして…春の息吹きを感じる頃は、いつだって憂鬱だった。
 けれど今の自分は違う。
 大好きな人がいてくれる。
 だから…今までとは、違った心境で…満開の桜と対峙出来ていた。

 風が吹く度に…ヒラヒラと花びらが辺りに舞い散っていく。
 夜の闇の中で桜の花が舞う光景は幻想的で、妖しい雰囲気が
漂っている。
 
「克哉…まだ、怖いか…?」

 愛しい人が、心配そうに語りかけてくる。

「いいえ、大丈夫です…」

 本当はその時、克哉の顔色は悪かったけれど…それでも、恋人を心配
掛けまいと…彼は、微笑んだ。

「そうか、なら…私は黙っていよう…」

「ありがとうございます。孝典、さん…」

 そうして二人は…ただ黙って、桜を眺めていく。
 一年前、この人を待っている間にMr.Rと再会した公園の敷地で。
 やや人通りから外れた場所で、大の男が二人…真剣な表情を浮かべながら
手を繋いで佇んでいる。
 恐らく、誰かに目撃されたら怪訝そうな顔をまずされるだろう。
 しかし…これは、克哉にとって必要な過程だった。

(…オレは、思い出したいんだ…。どうして、桜が怖いのか…そのキッカケを…)

 御堂と晴れて恋人同士になってから三度目の春が訪れようとしていた。
 二度目の春の時に、自分たちにとって試練のような出来事が幾つも
降りかかってきた。
 そのおかげで雨降って地固まるではないが…それ以前よりもずっと
自分たちの関係は強固のものになった。
 だから三度目の春が訪れた時、克哉は正直に…桜が怖い、という
本心を語った。

―桜を見ていると、辛い何かが思い出されてしまう気がして…怖くなるんです

 一年前は隠して、桜が満開の公園で待ち合わせをしていた。
 その事実を知って、御堂は罪悪感を覚えたらしい。知らなかったとは言え
負担を強いてすまなかったと…素直に、その件は謝ってくれた。
 だが肝心の桜が怖くなった原因についてははっきりしないと答えたら…なら
其れを突きとめる為に、一緒に行こうと…御堂が切り出したのだ。
 最初、それを聞いた時…克哉は驚いた。
 だが御堂は、訳もわからずに桜が怖くなってしまうよりも…その原因を
突きとめた方が良いと…そういって、提案してくれたのだ。

(孝典さんの手…暖かい…)

 桜を見ていると、言いようのない不安や焦燥を感じてしまうけれど…愛しい人の
温もりを感じているおかげで、克哉の心は比較的リラックスしていた。

 ドクン、ドクンとお互いに脈動が荒くなっているのが判る。
 緊張しているからだ。
 
(…桜の、記憶…その向こうに、あるもの…)

 ずっと、避けていた…直視しないようにしていたものを意識的に思い出す。
 其れはとても勇気がいり、同時にエネルギーを消費することだった。
 だが、御堂は言った。
 過去を真っ直ぐ見据えて、乗り越えていくのは…自分の根っこを見出す意味でも
必要なことだと。
 そして、彼は少しでも克哉を知りたいと。
 桜が怖くなるぐらいに…克哉が過去に負った、その痛みを…傷を理解したいと
言ってくれたから。
 だから彼は…忘れていたものを思い出す勇気を得たのだ。

 以前の御堂だったら、過去を振り返っても仕方ないと言って決して言わなかったで
あろう言葉だった。
 だが…本城の一件以後、克哉は…大学時代の御堂やその友人たちとの話に
積極的に付き合った。
 克哉が事故に遭った直後…御堂は、本城に関しての感情をどうするべきか
内心では凄く迷っていたから。
 克哉をあんな目に遭わせた本城を許せないという気持ちと。
 それでも、かつての友人であり立ち直らせようと必死になっている四柳に対して
自分はどのように感情を処理すれば良いのか、御堂はあの時期…決めかねていた。

 彼は、本城を心理的な上ではとっくの昔に切り捨てていた。
 だが、克哉はそれでも自分に傷を負わせた本城を恨みはせず。
 御堂の大学時代の友人たちも、自分に出来る助力はしていく方針を見せていた。
 彼自身は決して、御堂に二度と関わる気はなかったし付き合うつもりもなかった。
 だが、自分の大切な恋人が友人たちが本城に関わること、同情的な感情を
見せていることに対して葛藤していた。
 だから…克哉は、そんな御堂の心を迷いを晴らす為に彼の心中を
聞き出す事に専念したのだ。
 …そのような出来事を経たからこそ、今度は自分が…克哉の心の迷いを晴らす
番だと悟って、付き合ってくれているのだろう。

―何故、怖いのか…思い出すことが出来れば、整理をつける糸口にはなるだろう…

 人は忘れる生き物だ。
 沢山の事を学び、経験している内に古くなった出来事や記憶は意識の底に
沈んで、いつの間にか容易に思い出せなくなっていく。
 その沈めた記憶を…思い出してみると良い、と御堂は言った。
 君とこの美しい光景を、演技ではなく…心から共有したいと御堂は言ってくれた。
 克哉と知り合ったから、日常の何気ない一瞬が…そして、こうした自然の恵みを
有難いとか、美しいとか感じられるようになったのだから…と御堂は優しく
笑いながら告げてくれた。
 
―君が傍にいるから、花を美しいと思う自分に気づけた。だから…その美しさを
君と心から、共有したい…

 其れが…この茶番じみたことに、御堂が付き合ってくれた動機だった。
 桜を見ているだけで心がザワザワして、背骨から悪寒めいたものが
這い上がって落ち着かなくなる。
 動悸と息切れ、不整脈に冷や汗と…精神的に動揺している時に出る表情が
たくさん表に現れていた。
 ジワジワジワと…思い出したくない過去の扉が開かれていく。

「うっ…ぁ…!」

 言葉に出来ない不安が、競り上がってくる。
 無意識のうちに、御堂の手を強く握り締めていた。
 
「克哉…平気か…?」

 克哉の尋常ではない反応に、心配そうに問いかけてくる。

「…はい、まだ…大丈夫です…」

「そうか。…君に思い出すように薦めたのは私だが…あまり無理はするな。
辛かったら、途中で止めて構わないからな…」

「はい、ありがとうございます…」

 克哉は顔を蒼白にしながら、それでも笑っていった。
 正直言うと、怖くて逃げ出したい気持ちが溢れてしまいそうだ。
 だが…自分にとって何が怖いのか、その正体を見極めないことには
いつまでたっても心から桜を美しいと思える心境にはなれないだろう。
 自分の恐怖の原因を、知りたかった。
 思い出したいと、心から願った。
 それに…小学校時代の出来事を、一切思い出すことが出来ない。
 以前はあまり気にしていなかったが…御堂と共に暮らすようになって
お互いの昔話をした時、克哉は愕然としたのだ。

―自分には、小学校時代の記憶というものがカケラも存在していなかった事実に…

 その時は適当に自分の過去をでっちあげて御堂には悟られない
ようにしていたが…その時点で、自分自身でも違和感を覚えていた。

(これは…千載一遇のチャンスなんだ…。オレが昔のことを思い出す為の…)

 そう言い聞かせて、克哉は…桜を眺めていく。
 美しいが、同時に背筋が凍りそうになるぐらいに恐かった。
 其れは、思い出すなと本能が訴え掛けているせいかも知れなかった。
 だが、克哉は怯みそうになる心を叱咤して…真っ直ぐに淡い色合いの花を
見つめ続けていく。

―克哉君

 その時、一人の少年の声が聞こえた
 幻聴と、とっさに判らないぐらいに鮮明にその声は脳裏に響き渡った
 ふと、目の前を見ると…小学校高学年ぐらいの年齢の、見覚えがある容姿をした
少年の幻が克哉の前に立っていた。

「…っ!」

 だが、それが見えた瞬間…克哉は言葉を失った。
 相手が、泣いていたからだ。

―克哉、君…

 呼ばれる度に、閉ざしていて記憶の扉が開かれる。

「君、は…」

 そう呟いた瞬間、堰を切ったように様々な想いと記憶が…奔流となって
克哉に迫って来ていた。
 克哉は、その時…紛れもなく過去に心を囚われてしまっていた。
 意識が、現在ではなく…過ぎ去りし過去へと飛ばされていく。

―僕の事を、どうか思い出してよ…

 懇願するように、少年が訴え掛けていく。
 その瞬間、克哉の意識は…遠い過去へと、確かに羽ばたき始めていったのだった―
 


 
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
この記事のURL:
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[03/16 ほのぼな]
[02/25 みかん]
[11/11 らんか]
[08/09 mgn]
[08/09 mgn]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

 当ブログサイトへのリンク方法


URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/

リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
忍者ブログ * [PR]