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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
    


 無数に鍵穴が並ぶ奇妙な回廊にて、二人はまずは鍵を使って扉を開けて
いこうという結論に落ち着き…部屋を探り始めていった。
 まず、克哉の方の最初の扉を開いていくと…其処は宇宙空間だった。
 漆黒の空間にキラキラと星が瞬くのは見方を変えれば素晴らしいプラネタリウムと
取ることが出来るが…色んなものがフヨフヨ浮かんで漂っているのだけは
どうも頂けない。
 
「…よし、見なかった事にしよう」
 
 どうも部屋の中は無重力まで再現されているらしく家具の類がプカプカと
浮かんでいる。 
 花瓶がひっくり返っていて中にあった花が宙に散乱し、水が球状になって漂って
いる処からしてもほぼ確実だった。
 
(…趣向としては面白いかも知れない。だが…無重力の部屋で過ごしても絶対に
寛ぐことは出来ないと断言しよう…)
 
 無重力というのは特殊で効果な機材を用いて、やっと地球上で再現することが
出来るものなのに…平然とそれをやってしまうMr.Rという存在はやはり人外の
存在であるという結論に落ち着くが、どうせ部屋を選ぶなら普通に重力のある場所が良い。
 克哉はそう思い、さっさとこの部屋は対象から外していった。
 二つ目の部屋は御堂の鍵を使って、彼が選択した方を克哉も立会い
ながら覗いていく。
 其処には、天空の城の庭園が広がっていて…二人とも開いた口が
塞がらなくなりかけた。
 何て言えば良いのだろうか。
 不朽の名作に数えられる不思議な少女が天から落ちてくるあの話の世界観を
再現したような感じだった。
 しかし部屋の中に何故、広大な庭園が広がっているのか。
 そして遠くの置物には何故、映画の中に出てくる巨人兵まで存在しているのか…
これもまた突っ込みどころ満載で、とても寛げそうになかった。
 
「…佐伯、どう考えてもこの部屋は…廊下の扉と扉の感覚と無視した広さになって
いる気がするのだが…」
 
「御堂、これは最初から夢と言っているだろう。不条理なことは全てそれで片付けるんだ…」
 
 軽い眩暈と頭痛を覚えていきながら、克哉は恋人に何度もそう言い聞かせて…
この異常な状況をそれで割り切るように薦めていく。
「…うむ、確かに夢以外では説明は付かないな…。しかしどうして天空の城ラ〇ュタを
思わせる部屋などが用意されているんだ…?」
 
「その辺は俺も非常に聞きたい…。あいつの趣味というのはどうなっているんだ…」
 
 こんな異常な部屋ばかり続いていたら、とても眠れそうにない。
 克哉はこの時点ですでにMr.Rの提案になど興味を持って乗っかるべきではなかったと
後悔し始めていく。
 しかし…中にはまともな部屋の一つや二つぐらいはあるかも知れない。
 そう気を取り直して、克哉は次なる部屋を開けていくと…。
 
―目の前には樹海と、濃い霧が広がっている部屋に辿り着いて…克哉は本気でその場に
崩れ落ちそうになった
 
「…一体、どうやったらここまでリアルな樹海を部屋の中で再現出来るんだ…?」
 
「ふっ…ふふふっ…」
 
「佐伯、その笑い方は怖いから頼むから止めてくれ! 傍から見ているだけで
何となく寒気がしてくるんだが…」
 
「…はっ、悪いな。何かすでにまともに考える事すら馬鹿馬鹿しくなってきてな…。
此処にはこんな異常な部屋ばかりしかないのか…と思うと、笑いがこみ上げてくる」
 
「…佐伯、此処にはこれだけ沢山の部屋が存在しているんだ。中には…まともな
部屋の一つや二つぐらいは存在しているかも知れない。まだ…鍵の使用限度は
残っているんだ。その範囲内で一つでも普通の部屋を引き当てれば…恐らく
私達の勝ちだ。良し、次の部屋に行くぞ…」
 
 御堂とて、この状況に精神的にはかなり疲れていたが…だからと言って、
この夢がいつ覚めるか判らない以上、まずは落ち着く場所が欲しかった。
 そうして次の扉を開いていくと…今度は穏やかな森の中に、木漏れ日が
差し込んでいて…森林浴をするには大変良さそうだが、またしてもどうやって
こんな物を部屋の中に再現したんだと突っ込みたくなるような光景が
広がっていて…御堂も少し、めげそうになってしまった。
 
「…佐伯、悪い。私も今…少し精神的にめげそうになった…」
 
「…俺もだ。だが…後、俺は三つ、あんたは二つは鍵を開けられる筈だ。
その範囲内で一つで良い…どうにかまともな部屋を探していこう…」
 
 それでも暫くして立ち直っていくと、再びどの鍵穴に鍵を差し込むか
二人は真剣に選び始めていく。
 そして克哉側の三つ目になって、どうにかまともな部屋が出た。
 豪華客船を思わせる部屋と、薔薇が敷き詰められている部屋に遭遇した時…
二人は心から安堵した表情を浮かべていった。
 しかし豪華客船のスィートルームを再現している部屋の中には丁寧に
波の音まで聞こえて、室内が緩やかにゆれ続けているし、薔薇の部屋に
感じては花の芳しい匂いが充満していて噎せ返るようで…どちらも、
寛ぐことは出来そうにないと結論付けて、残念ながらこの部屋も選ばなかった。
 しかし光明のようなものは見えたのも確かであった。
 
「…いまの二つは揺れと、濃厚な匂いさえなければ今までのに比べて随分と
マシだったな。だが…もう一つぐらいは試しておこう。…割り切れば予想も
していない部屋ばかり出てくるというのも、アトラクションの一つと思えば
楽しめるかも知れないな…」
 
「まあな、そうかも知れないな。…どんなものが出てくるか判らない
魔法の鍵か…。言いえて妙だな…」
 
 そういえばあの男も、自分にここを薦める時にそういっていた事を
思い出した。
 日常では体験出来ないことがここでは出来る…みたいなことをそういえば
口にしていた気がする。
 ようやくまともそうな部屋に当たったせいか…御堂の方にも余裕が感じられた。
 その顔を見て、克哉もまた…この状況を少しは楽しむか、という気持ちになっていった。
 そして克哉の四つ目、御堂にとっては最後になる部屋をそれぞれ選んだ時…
これはどちらも今までのものに比べれば大当たりの部屋に行き当たっていく。
 克哉側は全てが白の色調で統一された…貴族の寝室を思わせる部屋。
 そして御堂の方は…深海を思わせる色合いで統一された、中心に巨大な
ウォーターベットが設置されている部屋を引き当てていく。
 これならどちらを選んでも、リラックスして過ごすことが可能そうだった。
 
「…俺の方は後一つ開けられますが…今回のはどちらを選んでも良さそうな
感じだな。孝典はどちらの部屋が良い…?」
 
「ふむ、どちらも今回に限っては良さそうな感じだが…どうせなら、ウォーター
ベッドを体験してみるのも悪くないかも知れないな。寝たことがないから…興味はある」
 
「へえ、寝たことがないから興味はあるって言い回しは…何か妙に卑猥だな。
だが…あんたがそう言うならこの部屋にしよう…」
 
「あ…」
 
 そうして克哉は御堂の手を引いて、深海を思わせる部屋を選んでいき…
静かにその室内へと足を踏み入れていったのだった―
 
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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