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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
      


魔法の鍵 5
 
無数の鍵穴が存在する回廊で、お互いに何個かの扉を開いていって…最終的に
深海を思わせる部屋を二人は選んで、其処を使用することに決めていった。
 室内に足を踏み入れればまさに別世界に迷い込んだような錯覚さえ覚えていく。
 どうやら部屋の天井や壁は巨大な水槽の一部のようだった。
 藍色の水の中を無数の魚達が泳いでいる姿は幻想的でもあり、実際に
深い海の底を歩いているような気分になっていく。
 照明は淡く灯されていて…部屋の真ん中には巨大なウォーターベッドが置かれていた。
 これはMr.Rが作り出した空間だという認識があるから克哉も敢えて
突っ込まなかったが…現実でこんな部屋を作ろうとすれば一体どれくらいの
費用が掛かるのかまともに考えるだけバカらしくなりそうな造りだった。
 
「…何というか、凄いな…」
 
「嗚呼、そうだな。こんな部屋で一晩を過ごすなんて滅多に体験出来ることじゃない。
現実で再現しようとすれば莫大な金が掛かりそうだからな…」
 
 そう呆れたように呟きながら克哉は御堂の腕を引いて巨大なウォーターベッドの
方へと歩み寄り、その上に腰を降ろしていく。
 それは生まれて初めての感触だった。
 水に満たされているそのベッドの感触は人間の皮膚をごく自然に受け止めてくれる
ような柔らかさと暖かさがあった。
 ほんのりと冷たい感触は心地良く、夏場とかにこのベッドの上に横たわったら
安眠出来そうな感じだ。
 
「…ほう、普通のベッドとは随分感触が違うな…。もしかしてこれはウォーター
ベッドか。…実際に使ってみたのは今夜が初めてだが…意外に悪くないものだな。
スプリングが効いたベッドとはまた違った感覚で新鮮だ」
 
「あぁ、私も使うのは初めてだが…自然な感じで体が受け止められているような
感触で良いものだな。癖になってしまいそうだ…」
 
 そうして思いがけず御堂が無防備な顔を浮かべていきながらそう言って
いったので…克哉の心臓は小さく跳ねていった。
 Mr.Rの甘言になど乗っかってしまったせいでこんな奇妙な空間に
連れて来られてしまった訳だが…ジタバタした所ですぐに現実に戻れる訳ではない。
 溜息を吐きながらもようやく彼はその事実を受け入れ始めていった。
 
(もう一度こうなってしまったのならば仕方ない…。割り切って、状況を
楽しむことにするか…)
 
 そう思考を切り替えて、そのベッドの上に二人で一緒に横たわっていった。
 お互いに身を寄せ合いながら仰向けの体制になって天井を眺めていくと…
大きな何らかの魚の影がユラリ、と揺らめいてヒレを蠢かしてゆったりと泳ぎ続けていく。
 室内は静まり返っていて、お互いの息遣いくらいしか聞こえない程だ。
 
「…まるで、本当に深海に二人でいるみたいだな…克哉…」
 
「嗚呼、そうだな…こんな風にあんたと穏やかな時間を過ごすのは…もしかしたら
初めての事かも知れないな…」
 
 ウォーターベッドはその構造上、横たわっていると浮力が働いて水に
浮かんでいるのに近い感触が得られる。
 元々、寝たきりの患者の床ずれ対策の為に生み出されただけあって人体に
自然な形でフィットしていった。
 内臓のヒーターでほんのりとマットの中が暖められていると…本当に水に
包み込まれているような気分になっていく。
 再会してからアクワイヤ・アソシエーションを設立するまで毎日が戦争の
ような忙しさであったし。
 一緒に働くようになってからもかつて憧れた相手と肩を並べたいという想いが
強くなりすぎてなかなか寛ぐことが出来なかったかも知れない。
 横に寝そべっている相手の方を向き直りながらそう呟いていくと…御堂は
苦笑しながらその言葉に頷いていった。
 
「そう、だな…。君と再会して恋人同士になってから何度も抱き合ったけれど…
こんな風に心の底から寛いで接しているのは初めてかも知れないな…」
 
 海の底を思わせる部屋には、人の心を安らげる力があるのかも知れない。
 藍色の深い闇と静寂。
 それはあまりに日常からかけ離れているせいで…そして海は母親の羊水にも
繋がっているという。
 女性の胎内を海、と例えるケースも多い。もしかしたらこんな風に寛げているのは
その効能かも知れなかった。
 
「…あんた、そういう顔も出来たんだな…。今、凄く優しい顔をしている…」
 
「何を言う。私だって…優しい顔を浮かべる時だってある。そういう君こそ…
目がいつもよりも柔らかくて、まるで別人みたいだ…」
 
 お互いに相手の顔を覗き込んでいきながら、そっと頬に触れ合っていく。
 相手の指先は温かくて、撫ぜられると心地良かった。
 
「くすぐったいぞ…克哉」
 
「俺だってそうだ…。だが、こんな風にあんたと過ごすのは…悪くない」
 
「ああ、そうだな…。もしかしたら、ここが夢の中だと割り切っているから…
少しだけ素直になっているのかもな…」
 
 そうしてフっと目を細めて笑っていく御堂の表情が愛しくて、克哉はそっと
顔を寄せていくと唇にキスを落としていく。
 ほんのりと湿っていて柔らかいその感触に欲望を刺激されていく。
 
「…孝典…」
 
「克哉…」
 
 淡い光にお互いの姿が浮かび上がっていきながら…見つめ合っていく。
 横を向いて抱き合う格好から、克哉が相手の体を組み敷いていく
体制にごく自然に変わっていく。
 ここがあの得体の知れない男が用意した空間であっても、もうどうでも
良いと思い始めていく。
 今、目の前にいる御堂の顔は優しく…寛いでいて、滅多に見れないその表情を
目の当たりにして克哉の心の中には相手を愛しいという想いだけで満たされていく。
 それだけで充分だ、と思った。
 
「ここであんたに、触れて良いか…?」
 
「愚問、だな…。今夜は私の誕生日だ…それならば、君と共に過ごしたいと…
こうして触れ合いと望むのが自然だろう…? 今の私にとって、君だけが公私共に
パートナーであり…こうして抱き合いたいと望む存在なのだから…」
 
「…っ! 最大の、殺し文句だな…。本当に最高だよ…。あんたは…」
 
 喉の奥で笑いを噛み殺して、克哉は不適に微笑んでいく。
 そうして貪るように深く唇を奪っていきながら…克哉は本格的な愛撫を、
御堂の体に施し始めたのだった―
 


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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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