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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※  この話はN克哉が事故で昏睡して記憶を失っている間、夢の世界で眼鏡と
十日間を過ごすという話です。それを了承の上でお読みください(終盤にやっと入りました…)


 もうじき、夕暮れの時間帯が訪れようとしていた。
 重い雲の隙間から微かに漏れるオレンジと赤、紫のグラデーションが掛かった
淡い光が白い雪を柔らかく染め上げていた。
 こんな時間帯まで、自分がこうしてここにいる事を訝しげに思いながら
眼鏡はふと、大きな壁時計に視線を向けていく。
 時刻は夕方四時を間もなく迎えようとしていた。

(…どうして、この世界はまだ続いている? あいつが…元の世界に戻ったのなら
終わっても良さそうなものだが…)

 そうなれば、自分はまたあの藍色の闇の中でまどろむ日々に戻るのだろう。
 …覚悟の上で、送り出した筈なのに…未だに、雪の世界は続き…一向に
闇が滲んでくる気配がない。
 自分が眠る事を選択したのは、大事な存在が出来た佐伯克哉に…勝てなく
なったからだ。その相手との絆が深まれば深まるだけ、あいつは銀縁眼鏡を必要と
しなくなり…そして、眼鏡が出る事は出来なくなった。

 幸せそうに笑って、恋人の傍らにいるあいつを見ているのがいつしか…辛くなった。
 こんな嫌な思いをしてまで…どうして、あいつの目を通して世界を覗き見なければ
ならないのか。
 その想いが講じて…眼鏡は再び、心の深い処で眠り続けるようになっていた。

(どうして…俺はこんなに苛立っている。元通りに戻るだけだと判っているのに…!)

 言いようの無い憤りが、眼鏡の中に生まれて渦巻いていく。
 胸の中がムカムカする。あいつが…恋人の腕の中に戻れば良いと、そうやって送り出して
やった筈なのに…長い時間が過ぎたせいでそれは苛立ちや怒りへと変化していく。

「ち…くしょう! どうして…っ!」

 バンッ! と木の壁に拳を打ちつけていく。
 その顔は悲痛に歪んでいる。
 どうして…ここ数日の、笑顔を浮かべているあいつの顔がこんなに浮かんで、
消えてくれないのか。
 何故、こんなに…戻って来い! と望む気持ちが止まらないのか…自分自身でも戸惑う
しかなかった。

 瞬く間に、夕暮れの光は消えていき…白い世界が宵闇のベールへと包まれていく。
 もうじき、夜が来る。
 冷え込みが一層きつくなると予想して…暖炉の薪を追加しておこうと思った矢先に…玄関の
扉がドンドン! と強く叩かれる音が耳に届いた。

「なっ…?」

 何が起こったか、最初は理解出来なかった。
 この世界に足を踏み入れられるのは自分達以外にはMr.Rくらいしか存在しない筈だ。
 ようするに二者選択だ。二分の一の確率で、あの謎の男か…もう一人の自分かしか
ドアを叩く人物は在りえない事になる。
 唇と肩が、大きく震えていく。どうすれば良いのか不覚にも少し迷った。
 しかし…体制を立て直すと一目散に玄関の方へと駆けていった。
 勢い良く玄関の、大きな木の扉を開けていくと…其処には、克哉が立っていた。

「ど、うして…お前っ!」

 もう帰ったと、信じて疑わなかった。
 あの光に飛び込めば、こいつは恋人のいる世界へと帰れた筈なのに…何故、こんなに
遅くまでこの世界に留まっていたのか、理由が判らなかった。

「…貴方に、もう一度…どうしても、会いたかったから。ありがとうと…ロクに、
言えないままで…別れたくなんて、なかった…んです…」

 克哉は自らの身体を必死に抱きしめながら、蚊のなくような小さな声で呟いていく。
 その顔は蒼白で、今にも倒れそうな程だった。

「…帰り道の途中、少し吹雪いてしまって…こんなに帰って来るのが、遅くなって
しまったけれど…帰って、来れて…良かった…」

「お前っ!」

 途端に、克哉は崩れ落ちそうになっていく。
 とっさにその身体を抱きしめて支えていった。
 …長時間、外にいたせいでその身体は芯まで冷え切っていて…冷たかった。
 それに気づいて、眼鏡は大急ぎでその身体をリビングまで運んでいった。
 暖炉が燃えている部屋のソファの上に座らせていくと、手早く熱いお湯を入れたバケツ
二つと毛布を運んで持ってきた。
 毛布を克哉の身体の上に掛けていくと、素早く相手の厚手のズボンの裾を捲り上げて
靴下も脱がせて、足先40度前後のお湯につけていく。

「熱っ!」

「我慢しろ! お前は足先まで冷え切っているんだからな…っ!」

 そうして、片方のバケツは相手の隣に置いて…指先をお湯に暫くつけ始めていく。
 幸い、ずっと歩いて身体を動かし続けていたおかげで凍傷までには至っていなかったが…
克哉の身体は全身、どこもかしこも冷え切っていた。
 5分もお湯につければ、手の先に赤みが戻り始める。
 バケツの中のお湯が温くなってくると…手を取り出させて、タオルでそれを軽く拭い…
直接、こちらの掌でマッサージをしていってやる。
 何度も指先から腕に掛けて擦り上げていってやると…再び克哉の手は血が通って
ようやくいつもの暖かさを取り戻していった。

「…あったかい。ありがとう…兄さん…」

「…どうして、戻ってきた?」

 克哉が礼を告げると同時に、眼鏡は不機嫌そうな顔を浮かべて問いかけていく。
 
「…さっき、言った筈です。オレは…どうしても、貴方にもう一度会いたかったから。
…あんな風に背を向けて、顔も見てくれない状況で…貴方と別れてしまうのは嫌だと
思ったから。それ以外の理由はないです…」

「だから、どうして…そんな事をしようと思ったのか、それを聞いている。この数日…
お前にチョッカイ出し巻くって、何度も襲おうとしていた事ぐらい…判っているだろうが。
そんな奴の処にどうして…戻ってきたんだ?」

「けれど、貴方は本気でオレを襲おうとはしてなかった。必ず…オレが逃げる隙を
与えてくれていた…違いますか?」

 真っ直ぐに眼鏡を見据えながら、問い返していく。

「…貴方は態度では、オレにエッチな事を散々するし…際どい事は言うし、少し
困ったけれど…本当に、オレが嫌だということは無理強いしなかった。
…それくらいは、気づいていましたから…」

 そう、冗談めいた口調で自分の胸元や股間を弄くる…という真似は数え切れない
くらいされてきたが、無理やり抱くような真似は一度もされなかった。
 ちゃんと克哉が反撃すれば逃げられたし、ある程度言い返せばそこで引き下がって
くれていた。二人きりしかいないのだから…その気になれば幾らでも抱けたのにも
関わらずだ。
 その言葉を聞いて、眼鏡は何も答えられない。
 …事実を言い当てられていたからだ。

「…オレだって、自分がどうしてこんな気持ちになったのか…不思議で
しょうがないんです。あの白い光に飛び込むべきだって…頭では判っていたのに
その間際で…何度も貴方の顔が浮かんで、出来なかった。
あんな形で、二度と会えないなんて嫌だったんです…。だから、戻ってきたんです…
貴方に、逢いたかったから…」

 いつの間にか、克哉の瞳からは…涙がうっすらと滲み始めていた。
 この人にもう一度会えて、安堵している自分がいた。
 どうしようもない切ない胸の痛みと、幸福感。
 必死な顔をしながら…自分の身体を温めてくれた事が…本当に嬉しくて、仕方なくて。
 目の前に…こうしていられるだけで、泣きそうになった。

「…何故、お前は俺の前でそう…何度も、泣くんだ…」

 こんな無防備な姿を、どうして自分の前で何度も晒すのか。
 その度に眼鏡の心の奥で…モヤモヤした感情が広がっていく。
 気づけばバケツをどけて、克哉の身体の隣に腰掛けていた。
 肌と肌が触れ合うと…もっと近づきたいという衝動が、胸の奥から湧き上がった。

「…どうして、俺をこんなに…お前は、苛立たせる…馬鹿、が…!」

 憎々しげに呟きながら、その身体を容赦ない力で抱きしめていく。
 その腕の力は痛いぐらいで…一瞬、克哉の顔が苦痛で歪んだが…間もなくして
彼の方からも必死になってその身体に抱きついていった。
 お互いの心臓の音が荒くなっているのが、聞こえる。
 
「…にい、さん…っ!」

 首筋に問答無用で噛み付かれた。
 その痛みに克哉はビクっと震えていくが…それでも、決して腕の力を緩めない。
 離れたくない! その気持ちの方が痛みよりも今は遥かに勝っていたからだ。

「あっ…ぅ…!」

 ソファの上に組み敷かれて、噛み付くように口付けられる。
 荒々しいキスに何度も克哉の身体は跳ねていった。
 眼鏡の舌が容赦なく口腔を犯し…克哉の舌を絡め取って、吸い上げていく。
 その感覚だけで、すでに正気を失ってしまいそうだった。

「…今はお前を逃してやる気はない。俺をこんなに苛立たせた責任は…お前に
ちゃんと取ってもらうぞ…」

 そうして、唇を離して…克哉のセーターとインナーをゆっくりと捲り上げて、
硬く張り詰めた胸の突起を乱暴に捏ねくり回していく。
 たったそれだけの刺激で、ビクンと身体は震えていく。

「あっ…はっ…。…貴方の、好きに…して、下さい…。オレも…今は、貴方から…
離れたく、ないですから…っ!」

 そうして、了承の意を伝える為に…克哉の方からも噛み付くように口付ける。
 今までのチョッカイとは違う。
 本気でお互いにこうしたいと望み…行為に及んでいく。
 何度も何度も、深く唇を貪りあい…その快感に酔いしれていく。
 そして唇がそっと離れていくと…低く掠れた甘い声で、眼鏡は囁いた。

『お前を…抱くぞ…』

 その囁きだけで、克哉の背中に甘い痺れが走っていく。
 顔を真っ赤に染めながら…ぎゅっと相手に抱きついて、克哉は構わないと
いう気持ちを相手に確かに、伝えていった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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