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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  全身を優しく隅々まで愛撫されて…こちらが火照って来た頃を見計らって…克哉の指先が
御堂の奥まった場所を解しに掛かる。
 その手つきは慎重で穏やかで…かつて見せた乱暴さは一欠けらも見出せない。
 ふと、昔の自分達のあり方が脳裏を過ぎって…一瞬だけ、身体が強張っていく。

「…御堂、辛いのか…?」

「いや…大丈夫だ。続けて、くれ…佐伯…」

 荒い吐息交じりに、そう告げて…相手の背中にすがり付いていく。
 伺うような目線、優しい瞳の色。
 そんなものは…以前の克哉にはまったく存在しなかったものだ。
 恋人関係になる以前の記憶が…ふと、再生されていく。

 ―どうして、私なんだ どうして…?

 あの頃は何度自問自答したか、判らない。
 どうして克哉は自分を陵辱して監禁をしたのか。
 何故毎晩のように抱き続けて…堕ちて来いなどという発言を繰り返すのか。
 今までの自分が築き上げたもの、培って来たもの、沢山の部下や…繋がりの深い
取引先。
 彼に出会うまで、自分が持っていたものや周りに存在していたものは多かった
筈だった。多忙過ぎてまともに睡眠時間が取れない程、充実していた日々。
 克哉は、MGNに入社してから作り上げた実績の全てを…自分から剥奪した
上で、こちらを監禁した。

―やめろぉ!! やめてくれぇ!! もう嫌だ…! これ以上は…いやだぁぁ!!

 あの時期の自分の叫びが、ふと蘇る。
 その瞬間…身体全体が強張る感覚がしたが、どうにか深呼吸をして…その
忌まわしい記憶を散らしていく。

(落ち着け…今の克哉は、あの頃の彼じゃない…! ちゃんと私に気持ちを伝えて…
慈しんでくれている、じゃないか…。落ち着く、んだ…!)

 それでも無意識の内に…身体が強張り、瞳にうっすらと涙が浮かんでくる。
 幸せだった筈なのに…今日は激しさがなく、どこまでも甘ったるい時間が流れて
いるせいだろうか。
 激しいセックスをしている時は…何も考える余地がなかった。
 だから、再会してから…抱かれている間にこんな考えが過ぎる事もなかった。

―助け、助けて…くれ、もう…許し…

 あまりに長い期間、監禁され続けて酷い行為をされた。
 何故、自分はこの男にこんな真似をされ続けなければならないのか…あの頃は
克哉の気持ちがまったく見えなくて、恐ろしかった。
 克哉は「あんたは俺の処に堕ちてくるしかないんだよ」と言っていた。
 だが…気持ちを伝える前の彼は、御堂にとっては…自分が努力して築き上げて
きた実績も名誉もプライドも全てを奪いつくして破壊した『悪魔』のような存在と
しか映っていなかった。
 悪魔に魂を売り渡すような真似をするくらいなら…心を壊した方がよっぽど
マシだと思った。
 だから…この言葉が口から漏れた時は…全てを閉ざして、せめて心だけでも
この男に渡しはしないと。
 最後の抵抗のつもりで…全てを閉ざす、筈だった。

『悪かった。…もうあんたを解放するよ』

 その一言と共に告げられた…初めての克哉からの好き、という言葉。
 あの頃の御堂は…克哉がどうして、こんな行為を自分にするのか、その動機は
何なのか…まったく、判らなかった。
 どうしてこんな仕打ちをされなければならないのか。
 ここまでの事をされるくらい、自分は彼に憎まれたり恨まれたりするような真似を
果たしてしたのだろうか?
 確かに最初から良く思っていなかった。嫌がらせめいた事をしていた事も認める。
 だがそれはここまでの報復をされる程の事だったのか?
 あの陵辱の日々の間、答えの決して出ない難問を突きつけられた感じがしていた。

『そうだな。…もっと早くあんたの事を好きだって、気付けば良かった…』

 それ御堂にとって…求めていた答えそのものだった。
 彼のその言葉を聞いた時、御堂は…正気に戻れたようなものだ。
 心を閉ざすことを願うくらいに難しすぎた謎。
 佐伯克哉がどうして自分にここまでの事をしたのか。その理由、解答。
 それは…「自分を好きだったから無理やりでも手に入れようとしていたから」だった。

 御堂は…今から自分を抱こうとしている男の頬をそっと撫ぜていく。
 くすぐったそうに…切なげに目を伏せる克哉は、今では悪魔ではなく…自分にとって
「最愛の男」に変化していた。

 自分の狭くてきつい隘路を、克哉の指が丹念に解していく。
 その度にビクビクビクと全身が震えて、堪らなくなっていった。
 荒い呼吸が漏れる、身体の奥が疼いて…熱くなって、想いが溢れそうになった。

「御堂…怖い、のか…?」

「…大丈夫、だ。…今日は、君らしくないぞ…? いつもなら…もっと強引に最後まで
私を、抱く癖に…」

「…すまない。けど…今日は、幸せすぎて…逆に俺も…慎重に、なっているのかもな…」

 ベッドの上で御堂は足を開き、自分の上に覆い被さっている男の顔を真っ直ぐに
見据えて…涙を浮かべていく。
 そんな不安そうな顔をしている御堂の涙を、克哉はそっと…唇で拭っていく。
 幸せだから、怖い…お互いが同じように思っているのが、少し滑稽だった。

「…今の、君は怖くなんかない…だから、もっと…私を、好きだと…言って欲しい…」

 今、過ぎった過去の闇を全て追い払いたいから。
 この胸の不安を追い出して…優しくなった彼の方を自分の胸の中にしっかりと
刻み込んでおきたいから。
 あの頃のように奪いつくしたり、壊したりしないで…自分に与える言葉を、もっと
こちらに投げかけて…確かめさせて欲しい。
 瞳でそう訴えていくと…克哉はふっと、笑っていった。

「…あぁ、それであんたの不安が無くなるのなら…幾らでも、言ってやるよ…」

 それは、恋人らしい睦言の交し合い。
 その瞬間…御堂の中に克哉の昂ぶりが入り込んできた。

「ひゃあっ…!!」

 いきなりの挿入に、一瞬全身が強張りかけたが…次に与えられる暖かい言葉に
すぐに力を抜いていく。

「あんたを…本当に、好きだ…」

「あっ…あぁっ!!」

 その瞬間に、身体中が灼けるように熱くなって…克哉を受け入れている箇所から
蕩けていくような感覚が走っていった。

「克哉、もっと…」

 自分から、こんな甘ったるい声が漏れて…相手に強請る日が来るとは、エリート
コースを突き進んでいた頃は想像もしていなかった。

「あぁ…今夜は、幾らでもやる…御堂、好きだ…」

 好きだ、好きだ…好きだ…っ!

 言葉に出した数は結局、そんなに多くなかった。
 だが…今夜の克哉と抱き合って触れ合っている場所から…その気持ちが滲み
出て、嫌でも伝わってくる。
 繋がっている箇所からは…お互いの体液で、グショグショに濡れあい…深く
絡み合っている。
 自分のペニスからも大量の先走りが溢れて、堪らなく彼が欲しくなっているのだと
いうのを全身で訴えかけていた。
 自分の内部が小刻みに収縮して、彼を搾りつくさんばかりにキツくキツく締め付けて
離そうとしなかった。

「はっ…いいっ!! もう…克哉、ダメだ…っ! ダメっ…いっ、あッっ…!」

「あぁ…俺も、凄い…気持ち、良い…! あんた、本当に…悦すぎる、から…!」

「バ、バカぁ! そん、な…事は、言う…ひぃ…あぁ!!」
 
 快楽の涙を流していきながら…御堂はぎゅうっと強い力で…愛しい男を
必死に抱きしめていく。
 満たされる熱い気持ちに、幸せすぎて…それだけでイケそうなくらいだ。

「克哉っ…!」

「クッ…! た、かのり…!」

 涙を流しながら、相手の名を呼んで先に御堂が達していく。
 それと同時に…熱い精が最奥に注ぎ込まれる感覚が走り抜けていった。 

(…苦しい、けど…凄い…今、満たされているな…)

 荒い吐息交じり呼吸を整えて、ふと考えがよぎっていく。

 この幸福を得る為に必要なものは極めて単純だった。
 …たった一言、お互いに好きだと伝え合っていれば…あんな陵辱の日々も
空白の一年も辿る必要はなかった。

 『好き+好き=幸福』

 こんな単純な答えで良かったのだと思うと…回り道をしまくった自分達が
ひどくバカらしく思えてしまった。
 もっと早くにこの幸せを得て…一緒にいられる時間を自分達は得られたのかも
知れなかった。
 そう思うと…ちょっとだけもっと早くにそう言ってくれなかったこの男が小憎らしく
感じられてしまい…。

「御堂、大丈夫か…?」

 優しく、克哉が問いかけてきてくれたのに…御堂は、瞳を軽く笑ませながら…
つい小突くような真似をして、返答してしまった。

「…聞くな、バカ…」

 照れくさくそう言い返しながら…御堂はそのまま…快楽の余韻に浸り。
 ごく短い時間だが、スウッと意識を手放していった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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