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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 壁に凭れて、力尽きている克哉の傍に…Mr.Rは跪き、介抱を始めていく。
 全身に散らされている情事の痕跡を、目を細めながら見つめていた。

『あぁ…こんなにあの方に愛された証を身体に残して…随分と艶やかで良いですよ。
佐伯克哉さん…』

 楽しげに笑いながら、手袋を纏った手で…暖かいタオルを持ち、それを
克哉の肌の上に滑らせて…清めていく。
  首筋から鎖骨のライン、胸元を丹念に時間を掛けて拭って…情事の
痕跡を消していく。
 しかし、眼鏡に刻まれた赤い痕だけはくっきりとその白い肌に赤い花びらが舞っている
かのように残されている。

「んんっ…」

 Mr.Rの手が滑っていく度に、克哉は身体を震わせていくが…意識が覚醒するまでには
至っていない。
 睫を震わせているだけで、目を開く様子のない彼に…黒衣の男は更に語り続けていく。

『あぁ…本当に、あの方の腕の中で快楽に身悶えている貴方は素敵でしたよ…。
このまま連れ去って…私の店に永遠に置いておきたいと願う程にね…ですが、今は
まだその時ではありませんからね…貴方をもう暫くは『日常』の中に置いておいて
差し上げますね…』

 そうして、胸の突起の周辺や…臍の周りなどにこびりついた精液を綺麗に
拭い去っていく。
 いつの間にか嵐は去り、月と太陽が…雲の向こうに微かに浮かび上がっていく。
 微かに照らし出される月光が…克哉の肌を眩く照らし出し、その美しさに…Mr.Rは
妖艶な笑みを刻んでいく。

『本当に貴方たち二人は…私の魂を魅了するほど、美しく…魅力的ですね…』

 心からの感嘆の声を漏らしながら、性器の周辺も残滓を拭い終えていくと…
今度は克哉の蕾の中に、指を鉤状に挿入していく。

「っ!!」

 さすがにこれは意識がなくても、衝撃が走ったのか…克哉の身体が大きく
跳ねていく。しかし…瞼は開かれない。
 まだその意識は夢と現の狭間を彷徨い、覚醒までには至らないようだった。
 そうして…丁寧に時間を掛けて、眼鏡が放った残滓を…綺麗に掻き出して、
清拭は完了した。

『ふふ…これでも目覚めないとは、余程お疲れだったんですね…ご苦労様です…』

 労いの言葉を掛けながら、ヒラリと…黒い布を掛けていって…克哉の身体が
冷えないようにしていく。

『さて…我が主が望んでいた物を、貴方が目を覚ます前に…調達してくると
しますか。あの方も…本当に人使いが荒いですね…ふふっ…。
またお逢いしましょうね…佐伯克哉さん…』

 流れるような口調でそう言いながら、嬉しそうに笑みながら…黒衣の男の姿は闇に消えていく。
 そのまま夜明けまで―克哉は目を覚ます事なく、壁に凭れ続けていたのだった…。

                               *

 目覚めれば、気づけば朝だった。
 嵐が明けた後の朝は爽快で、昨夜までの暗雲の影はどこにも見受けられない。

「…っ! 作業は…!」

 ふと、打ち込み作業の事を思い出してすぐに意識は覚醒し、飛び起きていく。
 克哉が目覚めた時には…シャツもスーツも元通りに纏っていて…いつものように柘榴の実を
食べた時のように、己の精で衣類が汚れている事もなかった。

(…昨晩の痕跡がまったくない? じゃあ…あれは全て夢だったのか…?)

 衣類が汚れてない事は有難いが、そのせいで克哉には昨晩の出来事が現実だったのか
それとも自分が見た夢に過ぎなかったのか…その境界線が曖昧に感じられた。
 立ち上がって、身繕いを整えていくと慌てて資料室を出て…八課のオフィスに走って
向かっていく。
 すでに片桐部長と本多の二人が、パソコンの前に座って…作業を続けている姿が
視界に飛び込んで来た。

「おはようございます! 二人とも…資料の方はどうなったんですか?」

 もう一人の自分の事を信じれば、必ず終わっている筈だ。
 それは判っているのだが…やはりどうなったのか確認したくて、ストレートに克哉は
二人に尋ねていった。
 しかし本多も片桐も不思議そうに顔を見合わせて、首をひねっているだけだった。

「…克哉、お前…覚えていないのか? ついさっきまで…お前、眼鏡を掛けたまま
全力で…作業をずっと続けていただろ? お前が頑張ってくれたから俺たちはこうして
見返しの段階まで入れたんだぞ?」

「えぇ…そうですよ。私が五時くらいに起きた時には、佐伯君一人で…残っていた分の
半分近くはやってくれていましたからね。おかげで…私も本多君も、余裕を持って
確認作業に入れましたし。本当に、佐伯君には感謝していたんですよ…?」

「えっ…あ、はい。その…そう言って貰えるのはうれしいんですが…ちょっと、疲れて
少しの間…意識を失っていたもので。それで…まだちょっと頭がぼうっとしていたんです。
…打ち込みが終わっていたのが、夢じゃなかったのなら…良いんです。
変な事言って、御免なさい。本多に…片桐さん」

 二人の言葉を聞いて、克哉はほっとしていく。
 …間違いなく、もう一人の自分は約束を果たして…膨大な打ち込み作業を寝ている間に
終わらせてくれていたのだ。
 …あれだけ好き放題ヤラれて、貪りつくされて。
 その事実だけだと恥ずかしいやら…少し悔しいような思いがするけれど、何だかんだ
言いながら…手助けをしてくれたのも事実で。

(…あれ? 何で俺…こんなに、嬉しいんだろ…?)

「…まあ、佐伯君も夜通しで作業してくれた訳ですし…睡眠不足でしょうからね。
少しぐらい記憶が前後してしまっても…多少は仕方ないと思いますよ。
さあ…MGNさんに提出出来る段階まで後、少しです。八課の他の人達が出社をしてくる
前までに…僕たちで終わらせてしまいましょう」

『『はい』』

 片桐の言葉に…本多と、克哉の声が重なる。
 こういう時…今までと違って、プロトファイバーの一件から真の意味で仲間と結びつく事が
出来たんだな、と実感が出来る。 
 打ち込み作業が終わらずに、二人の落胆の表情を見るくらいなら…昨晩、もう一人の自分に
好き勝手にされたとしても…この笑顔を見る事が出来て良かったと思えた。

(ありがとうな…<オレ>)

 心の中で、眼鏡を掛けた自分にそっとお礼を述べていきながら…ふと、入り口の扉の
方に視線を向けていく。

「えっ…?」

 そこに一瞬だけ…もう一人の自分が立って、強気な笑みを浮かべて…こちらを見つめていた。
 克哉からも彼を真っ直ぐ見つめていき、はっきりした口調で告げていく。

「本当に…ありがとう」

 そう短く告げると、眼鏡もまた…満足そうに、不敵に微笑み―そして幻のようにその姿が
掻き消えていく。

「あっ……」

 そして―朝のオフィスに…昨夜の名残である柘榴の甘酸っぱい香りが…仄かに漂い、
克哉の鼻腔を突いた。

 彼と会うといつも翻弄され、好き放題されるだけだった筈だった。
 しかし…対価を払わされる形とは言え、二度…こうして手を貸して助けてもらった
事で…克哉の中で以前ほど、もう一人の自分に対しての抵抗感はなくなっていた。

(また…いつか…会えるのかな…。その時はちゃんと―前回と、今日のお礼をしっかりと
言えると良いな…)

 そうして、克哉は空を見上げる。
 またいつか…彼と会える日を心のどこかで望んでいきながら―。

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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