鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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『第二十七話 捕まる訳には…!』 「五十嵐太一」
太一と本多が、突然走り出した克哉を呆然と見送ったのと同時に、太一は
何者かにいきなり背後から羽交い絞めにされた。
「っ! 何だぁ!?」
突然の事に必死にもがく太一の耳元に低い男の声が届いていく。
それを聞いて、ビクっと背筋が凍る思いがした。
「やっと見つけましたぜ…若」
その一言を聞いた瞬間、祖父の手の人間に自分が見つかったのだと
いう事実を一瞬で理解していく。
そう…確かに五十嵐組の関係者にとっては、今…太一が居候している
本多の家はまったくノーマークで、その近所くらいなら幾ら歩き回っても
この二週間問題なかった。
太一がアパートを飛び出してから、克哉の入院期間を合わせてもすでに
一ヵ月半が経過している。
それで、一日だけ…克哉のお見舞いに行った時以外は見つかった試しが
なかっただけに…油断していたのだ。
克哉が勤めているキクチ・マーケティングがすでに張り込みの対象に
なっていた事など、少し考えれば判った事なのに…!
「ぐっ…離せっ! 離せよっ! 俺は帰る気なんてまったくないんだかんねっ!」
自分よりも遥かに体格が勝っている相手に対して、必死になって太一は
抵抗し続ける。
その様子を見て、傍に立っていた本多は怒りに燃えた眼差しを…背後の
男に向けていく。
「おいっ! 人のダチに何やっているんだよっ! 太一を拉致とかしようとしているなら
容赦しねぇぞ!」
人のダチに、という言葉に男は反応したのだろう。
一瞬、太一の友人に手を出すのかどうかという迷いが…腕の力を緩ませていく。
その隙を見逃す彼ではない!
全力の力を振り絞って身を捩り、その腕から抜け出していった。
「よっしゃあ!」
元気の良い掛け声を上げながら、やや腰を屈めた体制で本多の方へと駆けて
向かっていく。
「本多さん! 逃げようっ!」
「あ、あぁ! そうだな! 会社の前で…乱闘騒ぎなんざ、出来る訳がないからな!」
「そうっしょ? だから暴れるのはもう少し離れてからにしよう。本多さんを
懲戒免職にしちゃうのは俺の本意じゃないからねっ!」
そういって太一は本多の手を掴んで全力で走り始める。
元来、太一の逃げ足も結構なものだったが…流石、現在でも毎週のように
バレーボールの練習や試合などをこなし、運動を欠かす事のない本多の脚力も
大したものだ。
あっという間にキクチ・マーケティングの前にいた男たちを引き剥がし、二人は
雑踏の中へと逃げ込んでいく。
人ごみの中は、自分たちも速度が落ちてしまうが…葉を隠すなら森の中とまったく
同じ原理だ。
身を隠すなら、人が多い中だ。特にこの時間帯は…本多だけなら十分に目立たせなく
させる力はある。
(あ~あ、でも俺の方がな…)
久しぶりに眼鏡を掛けている方とは言え…克哉と会う、という理由のせいで、今の太一は
髪を下ろした状態で今時の若者らしいラフな格好で出て来てしまっている。
オシャレで人目を引く服装であったが、オフィス街ではどうしても浮いてしまい…同時に
スーツ姿の人間ばかりの中では嫌でも目立ってしまう事、請け合いだ。
「本多さん、大丈夫? 疲れてないっ!?」
「あぁ、これくらいの走り込みなら日常的にやっているから気にするな! いざと
なったら加勢するから…全力で、行って構わないぞっ!」
「さっすが体育会系! 頼りになるねっ!」
早くも息を切らせながら、太一は明るい笑顔で相槌を打っていく。
その間も二人は足を止める事は決してなかった。
手を繋ぎながら全力で走り…人ごみを必死の思いで駆け抜けていった。
目指す場所は、キクチ社内よりもやや離れた位置にある地下鉄の入り口だ。
最寄り駅から直接行ってしまうと…すぐに其処から沿線を調べられて、本多の
実家がある駅までは調べられてしまう恐れがあるからだ。
五十嵐組のこういう組織力の強さを、太一は子供の頃から嫌という程…
思い知らされている。
一度、発見されてしまったのなら…トコトン、慎重になった方が良い。
だから二駅先の地下鉄入り口までは、わざと人ごみを抜けて…太一は向かって
いくつもりであった。
(克哉さん…!)
それでもふとした瞬間に思い描くのは、あの人の事。
どうして、自分たちの元から駆け出していったのか。
追いかけられなかった事実に歯噛みしたくなりながらも…太一は風を
切るように速く、速く人波の中をすり抜けていった。
こんな状況では、すでに克哉の足取りを掴む事など…到底無理だ。
「あの手を…使う、しか…ないかな…」
「ん? 何だ?」
「ううん、大した事じゃないよ…! さっ、もうちょい頑張って本多さんっ!」
そうしてぎゅっと手を握り締めて、更に加速していく。
克哉の友人であるこの人に、必要以上に迷惑を掛けたくない。
だから決して捕まる事など出来ないのだ。
そう決意して、心臓がはち切れそうになりながらも…太一は足を動かし続けていた。
(克哉さんが…携帯を、持ってくれていれば…)
病院にいた頃、克哉の意識がなかった事もあって…一時的に片桐が預かって
克哉の携帯は、社内の彼のディスクの中に収められていた事は…この二週間の内に
本多から聞かされていた。
だから…あの時は、使っても意味がなかった。
だが…今は克哉も目覚めて、仕事にも復帰している。
なら…あの手が使える筈だ。
(それにはまず、無事に…本多さんの家に辿り着かないとね…!)
キッっと口元を引き締めながら、太一は決意していく。
後で絶対に克哉を見つけ出すと決心しながら…遮二無二、死ぬような苦しい
思いをしながら…彼は、夕暮れの街並みを走り抜けたのだった―
太一と本多が、突然走り出した克哉を呆然と見送ったのと同時に、太一は
何者かにいきなり背後から羽交い絞めにされた。
「っ! 何だぁ!?」
突然の事に必死にもがく太一の耳元に低い男の声が届いていく。
それを聞いて、ビクっと背筋が凍る思いがした。
「やっと見つけましたぜ…若」
その一言を聞いた瞬間、祖父の手の人間に自分が見つかったのだと
いう事実を一瞬で理解していく。
そう…確かに五十嵐組の関係者にとっては、今…太一が居候している
本多の家はまったくノーマークで、その近所くらいなら幾ら歩き回っても
この二週間問題なかった。
太一がアパートを飛び出してから、克哉の入院期間を合わせてもすでに
一ヵ月半が経過している。
それで、一日だけ…克哉のお見舞いに行った時以外は見つかった試しが
なかっただけに…油断していたのだ。
克哉が勤めているキクチ・マーケティングがすでに張り込みの対象に
なっていた事など、少し考えれば判った事なのに…!
「ぐっ…離せっ! 離せよっ! 俺は帰る気なんてまったくないんだかんねっ!」
自分よりも遥かに体格が勝っている相手に対して、必死になって太一は
抵抗し続ける。
その様子を見て、傍に立っていた本多は怒りに燃えた眼差しを…背後の
男に向けていく。
「おいっ! 人のダチに何やっているんだよっ! 太一を拉致とかしようとしているなら
容赦しねぇぞ!」
人のダチに、という言葉に男は反応したのだろう。
一瞬、太一の友人に手を出すのかどうかという迷いが…腕の力を緩ませていく。
その隙を見逃す彼ではない!
全力の力を振り絞って身を捩り、その腕から抜け出していった。
「よっしゃあ!」
元気の良い掛け声を上げながら、やや腰を屈めた体制で本多の方へと駆けて
向かっていく。
「本多さん! 逃げようっ!」
「あ、あぁ! そうだな! 会社の前で…乱闘騒ぎなんざ、出来る訳がないからな!」
「そうっしょ? だから暴れるのはもう少し離れてからにしよう。本多さんを
懲戒免職にしちゃうのは俺の本意じゃないからねっ!」
そういって太一は本多の手を掴んで全力で走り始める。
元来、太一の逃げ足も結構なものだったが…流石、現在でも毎週のように
バレーボールの練習や試合などをこなし、運動を欠かす事のない本多の脚力も
大したものだ。
あっという間にキクチ・マーケティングの前にいた男たちを引き剥がし、二人は
雑踏の中へと逃げ込んでいく。
人ごみの中は、自分たちも速度が落ちてしまうが…葉を隠すなら森の中とまったく
同じ原理だ。
身を隠すなら、人が多い中だ。特にこの時間帯は…本多だけなら十分に目立たせなく
させる力はある。
(あ~あ、でも俺の方がな…)
久しぶりに眼鏡を掛けている方とは言え…克哉と会う、という理由のせいで、今の太一は
髪を下ろした状態で今時の若者らしいラフな格好で出て来てしまっている。
オシャレで人目を引く服装であったが、オフィス街ではどうしても浮いてしまい…同時に
スーツ姿の人間ばかりの中では嫌でも目立ってしまう事、請け合いだ。
「本多さん、大丈夫? 疲れてないっ!?」
「あぁ、これくらいの走り込みなら日常的にやっているから気にするな! いざと
なったら加勢するから…全力で、行って構わないぞっ!」
「さっすが体育会系! 頼りになるねっ!」
早くも息を切らせながら、太一は明るい笑顔で相槌を打っていく。
その間も二人は足を止める事は決してなかった。
手を繋ぎながら全力で走り…人ごみを必死の思いで駆け抜けていった。
目指す場所は、キクチ社内よりもやや離れた位置にある地下鉄の入り口だ。
最寄り駅から直接行ってしまうと…すぐに其処から沿線を調べられて、本多の
実家がある駅までは調べられてしまう恐れがあるからだ。
五十嵐組のこういう組織力の強さを、太一は子供の頃から嫌という程…
思い知らされている。
一度、発見されてしまったのなら…トコトン、慎重になった方が良い。
だから二駅先の地下鉄入り口までは、わざと人ごみを抜けて…太一は向かって
いくつもりであった。
(克哉さん…!)
それでもふとした瞬間に思い描くのは、あの人の事。
どうして、自分たちの元から駆け出していったのか。
追いかけられなかった事実に歯噛みしたくなりながらも…太一は風を
切るように速く、速く人波の中をすり抜けていった。
こんな状況では、すでに克哉の足取りを掴む事など…到底無理だ。
「あの手を…使う、しか…ないかな…」
「ん? 何だ?」
「ううん、大した事じゃないよ…! さっ、もうちょい頑張って本多さんっ!」
そうしてぎゅっと手を握り締めて、更に加速していく。
克哉の友人であるこの人に、必要以上に迷惑を掛けたくない。
だから決して捕まる事など出来ないのだ。
そう決意して、心臓がはち切れそうになりながらも…太一は足を動かし続けていた。
(克哉さんが…携帯を、持ってくれていれば…)
病院にいた頃、克哉の意識がなかった事もあって…一時的に片桐が預かって
克哉の携帯は、社内の彼のディスクの中に収められていた事は…この二週間の内に
本多から聞かされていた。
だから…あの時は、使っても意味がなかった。
だが…今は克哉も目覚めて、仕事にも復帰している。
なら…あの手が使える筈だ。
(それにはまず、無事に…本多さんの家に辿り着かないとね…!)
キッっと口元を引き締めながら、太一は決意していく。
後で絶対に克哉を見つけ出すと決心しながら…遮二無二、死ぬような苦しい
思いをしながら…彼は、夕暮れの街並みを走り抜けたのだった―
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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