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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―青い鳥の話を知っていますか?
 二人の兄妹が幸せを求めてあちこちを旅をしていたら、探していたものは
自分の家にあったというお話です。
 人というのはすでに欲しいものを手に入れていても、解釈や物の見方によって
幾らでも不幸や盲目になれるものなのですよね。
 本当に欲しいものはすでに貴方達は手に収めている事実に…
 いつ、気づかれるのでしょうかね…?


 屋上から死ぬ思いで眼鏡の部屋に侵入した克哉は、ベランダに着地した際に…
腰が砕けそうになっていた。
 心臓がバクバクと鳴り、どっと冷たい汗が背筋から競り上がって来る。
 同時に…そのまま全身に力が入らなくなって、コンクリートの地面の上にへたり
込んでいった。

「はあ…は、はっ…はぁ…」

 呼吸が全然、一定になってくれない。
 激しい動悸と眩暈の発作に襲われて1~2分、そのままの体制になっていた。

(こ、怖かった…もし着地に失敗していたら、本気でどうしようかと…)

 そう感じながらも、どうにか目標の地点にたどり着けた事に心から感謝しながら…
克哉は室内の探索を始めていった。
 窓ガラスを開けて、室内に入り込んでいくと…ブワっと何か濃密な香りが襲い掛かった。

「うわっ…これ、は…?」

 一日だけこの部屋で一緒に暮らしていた時はあまり意識していなかったが…この部屋の
中には甘酸っぱい何かの果実のような、蟲惑的が匂いが充満していた。
 外界から、その空間に入った事によって強く意識をさせられていく。

(二日前に初めてこの部屋に来た時には…オレも少しだけつけていたからな…)

 あの時はMr.Rの言葉に素直に従い、逆らう事もせずに素直につけたが…今思うと
軽率な行動だった。
 昨日の眼鏡の、強い拒絶の態度を思い出してズキン…と胸が痛む想いがした。

「…早く、探さないと…!」

 キッと強い眼差しを浮かべながら室内に目を凝らすと…とんでもない物に遭遇した。
 リビングのソファの上に、もう一人の自分が…乱れた服装のまま、横たわっていた。
 胸元は大きく肌蹴ていて、Yシャツとスーツズボンだけを纏っているだけだった。
 相手の顔は真っ赤に染まり、苦しげに胸を上下させている。
 傍から見ても一目で、高熱か何かを出しているのだと判る状態だった。

「だ、大丈夫か…? 『俺』…!」

 慌てて駆け寄りそうになるが、ふっと…冷静な考えが頭を過ぎっていく。
 今の彼は締め切った室内に長い時間にいて…例の欲望を解き放つ効能を持つ
フレグランスに晒され続けていた。
 この状況で…彼の元に駆け寄れば、問答無用で押し倒される可能性が高い。
 昨日の一件がなければ、喜んで身を差し出した事だろう。
 だが…今はダメだ。

 あれだけ御堂に対して拘って態度を示していた彼の、そんな隙を突いて抱かれようと
するのは卑怯以外の何物でもない。
 だから、どうにか傍に行きたい衝動を堪えて…室内探索を始めていった。
 リビングに置いてある調度品から、棚…大きなTVの上から、豪奢なソファの裏まで
くまなく探していったが…まったくそれらしい瓶が見つかる気配はない。
 
(この部屋にはないのか…?)

 少しずつ、もう一人の自分を早く楽にしてやりたいという気持ちから…焦りが生まれてくる。
 だが、どうにか深呼吸をして心を宥めていきながら…探索を続ける。
 一人で暮らすには十分過ぎる程に広い部屋の数々。
 キッチンも…風呂場も、彼の書斎に当たる部屋も、全てを見ていったが…どこにもない。
 Mr.Rは果たしてどこに例のフレグランスを設置したのだろうか…?
 どこにもそれらしい小瓶が見えなかった。

(どこにあるんだ…?)

 寝室に入り込むと、大きなキングサイズのベッドが視界に飛び込んできた。
 一昨日の晩に、初めて部屋に泊まった時に自分自身がベッドメイキングをして…横たわった
場所を見ると、また胸がチリチリと痛んでいく。

(何で、さっきからこんなに胸が痛み続けるんだろう…? あいつが、御堂さんを愛していると
いうのを…一番身近で見守り続けていたのは、オレだっていうのに…)

 どこか切ない表情を浮かべながら、部屋の中を再び探り続ける。
 眼鏡の部屋は、どの部屋も最低限の家具とか置かれておらず…シンプルで機能的な
内装になっていた。
 ゴチャゴチャとしていないから…探すのはそんなに難しくない筈なのに、それらしい物は
まったく姿を見せない。

 フレグランスというからには、きっと瓶に入っている筈なのだが…克哉自身はその形状が
どういった物なのか一度も見ていない。
 大きさもどれくらいなのかを知らない。

 少しずつ焦りで焦れていく。
 その心を鎮めたくて天井を仰いだその時、天井の照明…白い半透明のカバー内に何か小さな
小瓶らしき物が入っていた事に気づいていく。

「なっ…?」

 それに気づくと同時に、近くにあった椅子を持って来て…すぐにその照明のカバーを
外していくと…そこには克哉の指一本ぐらいの大きさの赤い液体で満たされた小瓶が、
蛍光灯と蛍光灯の隙間に、透明テープで貼り付けられていた。

(これだ…!)

 克哉は確信していくと、それを手に取って…大急ぎで洗面所に向かっていった。
 その流しで赤い液体を一気に流し捨てていくと…その小瓶を床に叩きつけて破壊していく。
 そしてそのガラスの後始末をしてから…やっともう一人の自分の元へと向かっていった。

 リビングの窓を全開にして、換気扇を回していく。
 一刻も早く駆けつけたい気持ちを抑えていきながら…部屋全体の空気が入れ替わるのを
待ち続けた。
 そして濃密な空気から、冷たく澄んだ大気に切り替わった頃を見計らって…克哉は
眼鏡の元へとようやく駆け寄っていった。

「大丈夫か…?」

 必死の顔を浮かべながら、もう一人の自分の傍らに立っていった。
 相手の肩を掴んで揺さぶり上げていくが、眼鏡は重い瞼を開く気配はなかった。
 だが…克哉はなおも、相手に呼びかけ続けていった。

「おい…起きろよっ! 『俺』…! いつまで、意識を失ったままなんだよ…!」

 懸命な様子で相手の身体を揺さぶり続けると、ようやく変化が現れた。
 あれだけしっかりと閉じられていた瞼がうっすらと開き始めて、淡い色彩の双眸がゆっくりと
其処から覗き始めていく。
 その澄んだ眼差しを目の当たりにした瞬間…つい、目を奪われていった。

「…あっ…」

 小さく声を漏らして、見惚れていくのと同時に…相手に強く引き寄せられて、心臓が
止まるかと思った。
 強い腕に閉じ込められていく。
 相手の心臓の鼓動を間近に感じて、バクバクバクと…忙しなく胸が高鳴り続けていた。
 そして重ねられる唇。
 初めて触れたその唇は、うっとりと陶酔したくなる程甘く…克哉の意識を瞬く間に
浚っていってしまった。

「ん、はっ…」

 深く唇を吸われ続けて、つい甘い声音が零れていった。
 そうしている間に相手の舌先が入り込んで、たっぷりと淫らに…その口内を丹念に
舐め上げられていった。
 自分の頬の内側から、上下の歯列。上顎の部分から舌の付け根まで…容赦なく
熱い舌先を押し当てられ、擦り上げられていった。

「あっ…んんっ…」

 初めて交わされる情熱的な口付けに…克哉は、あっという間に夢中になっていく。
 今までの人生で、何人かの女性とも付き合って来た。
 しかしどの相手とも…こんなに熱烈な口付けを交わした経験がない。
 全てを奪われそうになるくらいに執拗で熱いキス。
 それに全ての意識を奪われながら、全身から力が抜けていってしまいそうな甘い
感覚に堪えていく。
 息が苦しくて、そのまま窒息してしまいそうだ。
 だが…眼鏡の方は、相変わらず容赦をする気配を見せない。
 そうしている間に、こちらの股間が妖しく疼いていくのに気づかされて余計に
顔を真っ赤にして…我が身を持て余していった。

(もう、ダメだ…これ以上…されたら…)

 お前を欲しいという、この誘惑に勝てなくなってしまうかも知れない。
 そんな恐怖感を覚えながらようやく唇が解放されていくと…。

「み、どう…」

 と…小さく相手が呟く、甘く優しい声音が耳に届いた。

「えっ…?」

 瞬間、胸が焼け焦げそうになるくらいに苦しくなった。
 同時に…無自覚の内に涙が溢れ始めていく。
 それは瞬く間に克哉の両頬を濡らして、床にポタリ…と零れていった。

「あ、れ…? 何で…」

 自分の意思と関係なく、涙が止まってくれない。
 その事実に呆然としながらも…無意識の内に口元を押さえてしまっていた。
 判っていた筈なのに、自分に今のキスが施されたのではないのだと…少し冷静に
なれば自覚出来た筈なのに…そんな考えと裏腹に、目から雫が流れ続ける。
 少しすると自嘲的な笑みが浮かび始めていった。
 力ない笑い声が、克哉の口から漏れていく。
 
 最初から判っていた事なのに…その事実を突きつけられたら、こんなに涙が溢れて
くるなんて予想もしていなかった。
 そうしている間に…きつく、きつく抱き締められていく。
 そして…もう一度、告げられた。

―御堂

 今度は、少しだけさっきよりもしっかりとした声音で。
 現実を突きつけられていく。
 胸が軋んで、悲鳴を上げそうだった。 
 それで初めて…自分はこんなにも、コイツの事が好きだったのだと自覚した。
 強く抱き締められる。
 だが呟かれるのは、『御堂』という単語だけで、自分の事など決して呼びはしない。

(良いよ…今だけでも、代わりになってやるよ…)

 夢の中では、そうやって自分は抱かれ続けたのだから。
 身代わりくらい、お前の為ならば幾らでもやってやる。
 そう決意して…克哉は、もう一人の自分の傍に居続けた。
 彼が目覚めるまで、傍にいよう、と。

 決して、自分自身を必要とされなくても…。
 それでも、克哉は何かをしてやりたかったから。
 だから自分の想いを全て、グっと呑み込んで…彼はその暖かく残酷な
腕の中へと収まり続けたのだった―

 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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