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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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最初に二つの光が宿りました。
けれど結果的にその場所で輝き続ける事が出来るのは一つの星だけでした。
 
―こっちへ
 
そして一つの星は必死になって消え去る運命の片割れに手を伸ばして、自分の光に
取り込みました。
そうすればこの光を守れると思ったから。
それは遠い昔に実際にあったかも知れない夢。
 
―この夢が彼を、激しくつき動かした大きな理由の一つかも知れなかった。
 
その現場にもう一人の自分に踏み込まれた時、克哉の頭は真っ白になってしまった。
 
(…何で、『俺』がここに…?)
 
呆然となりながら克哉は自分とまったく同じ顔をした男を凝視していく。
さっきまでMr.Rによって乱されていた現場まで彼に聞かれていたと思うといたたまれず、
このまま死んでしまいたい心境に陥っていく。
 
(…どこまで、オレ達のやりとりをコイツに知られてしまったんだ…?)
 
その情報が現時点では判らないだけに克哉は混乱するしかなかった。
嗚呼、まともに考えられなくなっていく。
この場に満ちる空気の静寂さと重苦しさと裏腹に…克哉の心臓は壊れそうなぐらいに
バクバクと忙しい音を立てていた。

「何で…どうし、て…?」

 克哉は泣きそうな顔をして、呟いていく。
 ほっとしたような、みっともない姿を晒しているのを見られた羞恥と…今、自分が決断
した事を聞かれていたという衝撃で、頭の中がグチャグチャだった。
 眼鏡の顔は、平静だった。
 だが…その肩と手は大きく震えている。
 相手が何を言い出すのか、固唾を呑んで見守っていると…いきなり眼鏡はMr.Rに
向かって渾身の力を持って、拳を叩きつけていた。

 ドガッ!

 激しく肉と肉がぶつかり合う音が、周囲に響き渡っていく。

『おやおや…せっかくこうして、対面出来ましたのに…随分と今宵は、乱暴な挨拶を
かまされたものですね…』

「うるさい…! お前は、どこまで俺達を掻き回せば気が済む…! 今の話は一体何だ!
こいつの命と引き換えに御堂を助けるなんて…そんな芸当が…!」

『出来ますよ、私ならば。対価さえキチンと頂ければね。魔法と呼ばれるものは…
必ず対価や犠牲を伴わなければ起こせないものですが、『強い意志』という源
さえあれば、かなりの確率で一般的に『奇跡』と呼ばれる現象は起こせます。
 まあ…これは奇跡と呼ぶには、ささやかな事ですけどね…ただ、エネルギーを
在る方から、無い方に逃がすだけの話。それくらいでしたら…私ならば、
造作のない事です…』

「うるさい! そんな事をしたら…コイツはどうなるんだ…!」

『実体を保てなくなって、消えます。そして…もう二度と肉体を伴って貴方の前に
現れなくなるだけの話ですよ…?』

 サラリ、とMr.Rが口にすると同時に再び…眼鏡は男に向かって拳を向けて
殴りかかっていく。
 だが、一度は許しても…二度まで簡単に殴られる気は流石にないようだった。
 男は、彼の拳をスウっと身を躍らせて交わしていくと軽やかなステップを
踏んで容易に攻撃が及ばない範囲へと身を逃がしていく。
 
『…どうやら、今の貴方は…頭に血が昇られて、まともに会話が出来ないご様子ですね…。
その方に残された時間はそう長くはありません…。私などに無駄に費やされるよりも…
最後の一時を、有意義に使われた方が宜しいでしょう?
 ですから、これにて退散させて頂きますよ…今から30分後、貴方から対価を
頂かせて貰います。宜しいですね…佐伯克哉さん?』

 妖艶に微笑みながら男は、克哉の方を見つめてくる。
 一瞬だけ、自分が出した結論に怯みそうになったがそれを顔に出さないように気をつけて
小さく頷いていく。
 Mr.Rはそれを楽しげに哂いながら見届けると…あっという間にその身を闇に紛れさせていった。
 瞬く間に…存在していた気配の一切の痕跡を消し、二人だけが残されていく。

 訪れる沈黙が、痛いぐらいに…重かった。
 お互いに何も言えない。
 乱れた着衣に、Mr.Rに無駄に煽られて燻った身体。そして…欲望のタガを外しやすく
する効能を持ったフレグランスの微香が、僅かに室内に漂っていた。
 何から話せば良いのか、克哉には見当がつかなかった。
 だが…これはチャンスだと、同時に思った。
 自分に残された時間が後三十分だと言うのならば…逆に踏ん切りが突く。
 その時間が過ぎ去れば、自分はあの契約の通り…もう二度とこの世に身体を伴って存在
出来なくなるというのならばやれる事をやろう、と…暫く睨み合った末に、克哉は決意していった。

「ねえ…『俺』…。聞いての通り、オレに残された時間は後…僅かしかない。だから…
どうしてもお前に言っておきたい言葉が幾つかあるんだ…。良かったら、聞いてくれないか…?」

「何だ…言ってみろ」

 眼鏡はかなり、怒っているようだった。
 だがそれを表に出さないように必死に押さえ込みながら、平静を取り繕っていく。
 あぁ…コイツはいつも、そうだ。
 感情を乱す事、容易に表に出すことをみっともないと考えて…滅多に感情をストレートに
表現しない。先程のように露にしながら、他人に殴りかかるなどこいつにしたら相当に
珍しい行動だった。
 そんな事をぼんやりと考えながら…言いたい言葉を必死に、頭の中で組み上げていく。
 反発を受ける事など、もとより覚悟の上だ。それを承知で…克哉は口に上らせていった。

「お前はもう少し…自分の感情を表に出したり、人にちゃんと伝えるようにした方が良いよ…。
ずっとお前を内側から見守り続けていたけれど…気持ちをキチンと伝えなかったり、
思っている事、感じている事をいつも押し殺してばかりいるせいで…肝心な所で人と
すれ違ったり、対立をする羽目になってしまっている気がするから…」

 それは、この二年間…眼鏡を内側から見守り続けていて、常々克哉が想い続けて
いた事だ。
 内側にいたからこそ、身近な人間に暖かい心を持っていたり労わりの気持ちを抱いている
事を克哉は知っていた。
 だが…コイツは、それを照れ臭がっているのか…滅多に口に出さない。胸に抱いて
外に出さないのだ。

 今、自分の会社内にいる人間に感謝していたり、御堂をどれだけ強く愛しているのかも
以前所属していた営業八課時代の仲間…本多や片桐に対しても、それなりに愛着を持って
接しているという事も克哉は全部知っている。
 だが表に出るのは、大抵皮肉交じりの言葉ばかりで…ついでに物言いも意地悪だ。
 そして…怒っていたり、悲しんでいたりそういう負の感情を滅多に人前に晒さない。
 一人で抱え込んで、誰の助けも得ようとしない。手を借りようとしない。
 それが…本来自然にあるべき、心の流れを大きく淀ませている原因になっている。
 そしてその淀みこそ…徐々に毒へ変わり、時に彼を凶暴にさせたり…嗜虐的にさせている
最大の原因である事を、やっと克哉は気づいたのだ。
 今の言葉を言っただけでも、ピクンと相手の顔が引きつっているのを感じていた。
 だが、言わなければ…怒られようとも激しい反発を受けようとも…時に相手にキチンと
告げなくてはいけない事があるのだから…!

「御堂さんにだって、あれだけ愛しているのなら…どうしてたまには、優しい言葉の一つも
掛けてやらないんだよっ! お前の場合…愛すれば愛しているだけ、相手を苛めたり
からかったりおちょくったり…追い詰めたり、掻き回したりして…誤解を招くような愛情表現しか
しないからあの人も混乱するし、不安にさせているんだってどうして気づかないだ…!
 あの人との関係がいつまでも安定しないのは、お前がキチンと想いを率直に伝えないからだ。
口に出さなきゃ…気持ちなんて絶対に通じないのに…! 愛しているなら、愛しているって
キチンと言えよ…! そうじゃなきゃ…本当に大切なものが壊れるぞ!」

 今、自分がやっている事は…馬鹿な真似に等しい。
 好きな相手の、大切な人間の為に自らの命すらも投げ打ち。
 そして…その相手と、好きな相手が幸せになれるように…怒りを買う事を覚悟の上で
こんな事を言っているのだから…。
 だが、もう克哉は迷わなかった。
 心を滅多に出さないコイツの本心を正確に知っているのは『コイツの内側』に位置して
感じ続けていた『自分だけ』なのだ…!
 それが本当に自分が成すべき事なのだ。
 一時しのぎに…相手に抱かれて、その憤りを発散させる事ではない。
 ケンカをしてても、真実を相手にぶつける…!
 そう決意して、克哉は…形振り構わずに、眼鏡の襟元を掴んで近づいていった。

「…お前の言いたい事は、それだけか…?」

「いや…まだまだ、言いたい事は山ほど…あるよ?」

 本気の憤りを宿しながら、眼鏡がこちらを睨みつけてくる。
 自分の叩きつけるような言葉に、彼は本気で怒っていた。
 だが克哉は怯まない。
 本気の光を瞳に宿しながら…グイ、と顔を近づいて…真っ向面から真剣な顔をして
向かい合っていった―
 
 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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