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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―こいつを見ていると、酷くイライラした。

 眼鏡の方には、この四日間の克哉の思考回路は理解不能だった。
 どうして自分の前に現れたのかも疑問だった。
 だが…一度追い出して、高熱を出した時に献身的に看病をされた時点で
何となくだが、こちらに対しての強い好意みたいなのは感じ取っていた。
 想いを告げられれば、難なく追い出せたし拒絶も出来た。
 だが…口にされない状況では、看病された後では断り切れない感じで
あったし、嫌な予感がヒシヒシと感じていたのでつい引き止めてしまった。

 だが、さっき…コイツの悲鳴が聞こえた気がして、同じフロアにあった
耳鼻科の診療室の前に立ったらあの会話が聞こえて来て…眼鏡の方は
どうすれば良いのか判らなくなってしまった。
 自分に好意を抱いていて、自分を欲しいとかそう言い出される方がまだ
判りやすいし対処のしようがある。
 だが、御堂を助ける為に自分の命まで投げ出そうとする行動は本当に
眼鏡の理解の範疇を越えていた。

 こちらを想っているは判る。だが…いつからそんな気持ちをこちらに抱いて
いたのか…眼鏡の方には、心当たりはまったくない。
 だから、コイツに残されている時間が後僅かであるというのならば…聞いて
おかなければならない、と思った。
 そうしなければ…自分は一生、この目覚めの悪い想いを引きずる事に
なりそうだったからだ―
 暫くの睨み合いの後…気持ちを鎮めようと大きく深呼吸をしていく。
 そうしてから、苛立ち混じりに相手の襟首を力任せに掴んで引き寄せながら…
彼は口を開いていった。

「…お前は結局、何がしたいんだ? お前は…俺を好きなんじゃないのか?
この四日間の態度を見てもそうとしか思えないのに…何故、平気で自分の命を
投げ出してまで…御堂を助けようとする?
 しかもご丁寧に俺に説教までして…俺と御堂を続けようとする? 想っているのならば
普通は相手を欲しいと思わないのか…? 俺には、お前の考えが理解出来ない!」

「あぁ、普通ならばそう思うよっ! オレだって本来ならば…そこまでお人好しじゃない。
ここまで好きになったのならば…お前に抱かれたいとか、お前の存在ごと欲しいとか…
そう願った事は何度もある! 御堂さんを愛するように…オレ自身を愛して貰いたい!
そういう欲はずっとこの四日間渦巻き続けていたよっ!」

 そう、相手に愛して貰いたい…そういう欲を克哉は一切抱かなかった訳じゃない。
 ずっと自分の胸の奥では燻り続けていたのだ。
 だがそれを彼は懸命に押し殺し続けていたに過ぎない。

「だったら何故、そんな真似をする…! 欲しいなら欲しいと素直に言われればこっちだって
拒絶するなり、お前を跳ね除けるなり対処の仕様があるのに、何故…一言も言わないで
自分の身すら投げ打って…俺と御堂を助けようとするんだっ!」

「…オレは、お前の内側に閉じ込められていた時…結果的に一番近い処で、御堂さんを
想って変化していくお前を間近で見続けていたからだよ! …最初に、オレを好きなように
犯した挙句に…オレがあの不思議な眼鏡に縋ったせいだろうな。
気づいたら自分の人生すらもお前に乗っ取られて…自分は其処にいるのに、二度と自分の
意思で身体を動かせない。見ているだけの状態に陥った時には…最初はお前の事を
心底恨んだよ…!」

「あぁ、そうだ。お前の立場からしたら…それが当然の感情だ。俺にとってはお前は所詮…
俺が眠っている間にこの身体を代わりに使っていただけの存在に過ぎない。俺が目覚めれば
お前が眠るのが道理だ。だが…逆の立場ならば、俺はお前を絶対に恨むだろう。
それなのにどうして…俺に好意など抱いたんだ? ただ代わっていく俺を一番近い処で
見ていたからと言って…そんなに恨んでいた相手を、愛するうようになるものか…?」

 コイツの状況を自分なりに想像して、シュミレーションをしても…この想いを抱くに
至った動機が何なのか、眼鏡の方にはこうして話していても容易に共感出来ないし判らない。
 だが相手は目を一切、逸らさない。
 射抜くような強い眼差しでこちらを見据えて、言葉をぶつけてきた。
 本当ならば、言うべきでなかったのかも知れない。
 だが…相手の目を見て、こちらがそう想うようになった動機を真剣に聞きたがっているのは
すぐに判った。
 残された時間はもう15分を切っている。
 その残された刻の少なさが…彼を、吹っ切れさせてしまった。

「…自分でも馬鹿だと思う。けれど…御堂さんと再会するまで、お前がどれだけ…あの人を
想って密かに後悔していたかを見ている内に、いつの間にか放っておけなくなったんだ…。
だから、オレは…本物の御堂さんにお前が再会するまでの間…夢の中で、御堂さんという
形で現れてお前に抱かれ続けていた。そうしたら…情が移ったんだよ。
 あの人をどれだけ求めているのか…愛しているのか、それを受け止めながら…オレは
お前に何ヶ月も夢の中で御堂さんの身代わりになり続けた。
そうしたら…いつの間にか、お前を想うようになってしまったんだ…それがお前を
想うようになった、理由だ!」

「な、んだと…?」

 予想もしていなかった事実に…眼鏡が瞠目していく。
 打って変わって…相手の剣幕が、落ち着いて…顔に動揺が浮かんでいった。
 胸倉を掴んでいた手の力がふいに緩んだ。
 相手の呆然とした表情に…克哉は、遠い眼差しになっていった。

「…理解、した? それが…お前に心当たりがなくても…いつの間にかオレがお前を
想うようになった理由だよ。本物の御堂さんと再会してからは、オレの出番なんて…
まったく無くなってしまったけどね。けど…オレはそのおかげで、どれだけあの人を
愛しているのか…必要としていたのか、誰よりも知っているんだよ…」

 身代わりになり続けて、再会するまでは…毎晩のように抱かれていた。
 眼鏡がその夢を見る頻度は、あまりに高くて…望まれる度に、望むだけ自分は彼に
『御堂』を与え続けた。
 自分自身が決して愛される訳ではないと承知の上でも…ほんの僅かでもこいつの
飢えがその夢で潤せるならば、それで良いと…自分はいつしか想うようになった。
 克哉の言葉に、眼鏡は何も言い返せない。
 突きつけられた事実の重さに…口元を覆って肩を大きく震わせていた。
 克哉は、そんな彼を優しく見つめながら諭すような口調で…次の言葉を紡いでいった。

「それにね…オレがどうして、何も望んでいないのか判る…? オレが何かを欲すると
言う事は…何が引き換えになるか、お前は気づいているのかな…」

「…引き換えになるもの…だと?」

「…やっぱり、判っていないんだな…。オレとお前は、基本的に身体は一つだ。
今はMr.Rの力を借りてこの世界に存在出来ているけれど…オレが生きたいと
何かを望むこと、成し遂げたい事は…『お前から身体を奪う』事でしか成り立たない。
 一番欲しい存在がお前なのは確かだ…! けれど、オレという存在はお前から人生を
奪わなければ、生きる事が出来ない! それなら…オレは諦める以外の何が出来るって
言うんだ! それなら…オレには御堂さんとお前の幸せを望む事くらいしかやれる事
なんて…ないじゃないか!」

 血を吐くような叫びを、彼は訴えかけていく。
 そう…それが全ての動機。
 馬鹿な真似だと、愚かな行為だと言われても仕方がない。

 ―自分に一つの身体があるのならば、だ。

 だが…自分達は魂が二つあっても、身体は一つしか存在しない。
 想っても、叶うことはない。
 何故なら…あの男の力を借りなければ、本来ならば自分は存在しないのだ。
 愛する人を得て…鮮烈に輝く一等星のような彼の器を奪うことでしか自分は
生きれないと言うのならば。
 そうする事で…彼の器を奪ってしまう事に、愛する存在と引き裂いてしまう悲劇しか
生まないというのならば…自分は彼の輝きによって、霞んで儚くしか存在出来ない
星屑に過ぎなくても構わない。
 それが…二年間、閉じ込められた末に出した克哉の結論だったのだ…!

「それが…全てだよ。オレがこんな真似をしたのも…御堂さんの代わりに死ぬ事になっても
お前の幸せを願うのは…だから、だよ。あ…でも、もう一つだけ…理由がある、かな…?」

 ふと大切なものを思い出したかのように、フワリと克哉は笑っていく。
 その瞬間…彼の身体がゆっくりと透き通り始めていく。
 その異様な光景に眼鏡はぎょっとなっていく。

「お前、身体が…!」

「あぁ…もうオレに残された時間は、あまりないんだな…。それなら、ちゃんと聞いてよ。
…ちゃんと、これも…オレはお前に…伝えておきたいから…」

「…判った。聞いてやる。だから…早く言え。時間が、ないんだろう…!」

 落ち着いた表情の克哉と対照的に、眼鏡の方は…動揺を隠せないようだった。
 そんな半身を、克哉は優しく微笑みながら見つめていく。
 そうして、克哉の指先までも透き通って光を通し始めていく。
 …そしてゆっくりと、淡い光が…彼の身体から溢れ始めていった。
 この時点で、克哉に残された時間は、すでに…後十分も残されていなかった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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