鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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御堂と両思いになってから数ヶ月が過ぎたある週末の事。
MGN内での自分の仕事を終えると、克哉は大急ぎで御堂のマンションに向かい
キッチンに立っていた。
恋人である御堂の方は、まだ少し確認事項があるから…と言っていたので
一時間程度の猶予はあるだろう。
ご機嫌な様子で、Yシャツとスーツズボンの上にエプロンを纏った格好で
克哉はせっせと…御堂の為に夕食に手がけていく。
「え~と…これに削ったチュダーチーズをパラパラと散らして…と」
一生懸命な表情をしながら、レタスを細かくちぎってシーザードレッシングを
振りかけた上で赤くて硬いレッドチュダーチーズをナイフで削っていく。
御堂と付き合う前までは、自炊する時は和食が多かったが…最近では彼がワインと
チーズをこよなく愛している影響で、洋食を手がける事も多かった。
御堂が好むようなウォッシュタイプのチーズの匂いが強いものはまだ克哉には
合わない事が多かったが、一般的なチュダーやカマンベール辺りの物は出来るだけ
積極的に料理に取り入れたり…挑戦するように心がけていた。
シーザーサラダの上に仕上げのクルトンと半熟タマゴ、両脇の方にトマトを飾りつけて
いくと…それなりに見栄えが良くなった。
「えっと…後はガーリックトーストを作ってと…カマンベールのチーズフォンデュは
御堂さんが帰って来てからで良いか…」
今、克哉が用意している夕食は…フランスパンにニンニク入りのオイルとバターを
塗って焼いたガーリックトーストに、茹でたブロッコリーとアスパラをつけて食べる
カマンベールのチーズフォンデュ。
みじん切りにした玉ねぎをたっぷりと入れたコンソメスープに、そしてこのサラダだ。
自分達の場合、食べ終われば…まあ、大抵はベッドインという流れになるので
ステーキなどのメインとなる料理は敢えて用意していない。
適度に野菜が取れて、腹八分になる程度の量があれば充分だ。
フランスパンを適当な薄さに切って、ガーリックオイルとバターを塗ってオーブンに
放り込んでいく。
ちらりと時計を見れば…午後19時半を指していた。
20時になれば…御堂がきっと帰ってくる筈だ。
「それくらいまでには絶対に帰る…」と少しだけ顔を赤く染めて言っていた御堂の顔を
思い出してつい克哉は楽しげな笑みを浮かべていく。
あんな始まり方をした自分達も、付き合い始めて一緒の職場で働くようになって
3ヶ月も経過すればある程度は安定し始めていた。
克哉はその間に、御堂が好きなチーズの勉強もちょっとだけ始めて…こうしてチーズを
自分で買って調理に使うようにまでなって来ていた。
「…と、ここが正念場だな。丁寧にやらないと失敗する…」
フランス産のカマンベールチーズを包装から取り出していくと…まな板の上に
置いていき包丁で丁寧に上のフワフワして白カビで覆われている部分を薄く剥ぎ取っていく。
上蓋に当たる部分を取り去って、下ごしらえを済ませる。
フランスパンを焼き終えた頃に放り込めば、丁度御堂の帰宅時間になるだろう…。
そう踏んでいたのだが…。
玄関の方で…扉の開閉する音が聞こえて、足音がゆっくりと近づいて来ていた。
ドキッ、と小さく胸が跳ねていく。
ドク、ドク、ドク、ドク…。
相手の足音と同じリズムで、自分の胸が跳ねていく。
予想よりも相手が早く帰ってきたので、まだ心の準備が出来ていない。
克哉は軽く頬を染めて、手を止めていく。
そして…ふわりと、抱きしめられていた。
「ただいま…佐伯…夕食の準備、ありがとう…」
自分の肩に、相手の吐息と体温を感じる。
それがくすぐったくて…つい克哉は瞳を細めた。
「…どう致しまして、おかえりなさい…御堂さん…」
嬉しそうに微笑みながら、克哉は御堂を出迎えていく。
その嬉しさを胸に刻み込んでいきながら…克哉は御堂が頬に落としていく
優しいキスをそっと享受していった―。
MGN内での自分の仕事を終えると、克哉は大急ぎで御堂のマンションに向かい
キッチンに立っていた。
恋人である御堂の方は、まだ少し確認事項があるから…と言っていたので
一時間程度の猶予はあるだろう。
ご機嫌な様子で、Yシャツとスーツズボンの上にエプロンを纏った格好で
克哉はせっせと…御堂の為に夕食に手がけていく。
「え~と…これに削ったチュダーチーズをパラパラと散らして…と」
一生懸命な表情をしながら、レタスを細かくちぎってシーザードレッシングを
振りかけた上で赤くて硬いレッドチュダーチーズをナイフで削っていく。
御堂と付き合う前までは、自炊する時は和食が多かったが…最近では彼がワインと
チーズをこよなく愛している影響で、洋食を手がける事も多かった。
御堂が好むようなウォッシュタイプのチーズの匂いが強いものはまだ克哉には
合わない事が多かったが、一般的なチュダーやカマンベール辺りの物は出来るだけ
積極的に料理に取り入れたり…挑戦するように心がけていた。
シーザーサラダの上に仕上げのクルトンと半熟タマゴ、両脇の方にトマトを飾りつけて
いくと…それなりに見栄えが良くなった。
「えっと…後はガーリックトーストを作ってと…カマンベールのチーズフォンデュは
御堂さんが帰って来てからで良いか…」
今、克哉が用意している夕食は…フランスパンにニンニク入りのオイルとバターを
塗って焼いたガーリックトーストに、茹でたブロッコリーとアスパラをつけて食べる
カマンベールのチーズフォンデュ。
みじん切りにした玉ねぎをたっぷりと入れたコンソメスープに、そしてこのサラダだ。
自分達の場合、食べ終われば…まあ、大抵はベッドインという流れになるので
ステーキなどのメインとなる料理は敢えて用意していない。
適度に野菜が取れて、腹八分になる程度の量があれば充分だ。
フランスパンを適当な薄さに切って、ガーリックオイルとバターを塗ってオーブンに
放り込んでいく。
ちらりと時計を見れば…午後19時半を指していた。
20時になれば…御堂がきっと帰ってくる筈だ。
「それくらいまでには絶対に帰る…」と少しだけ顔を赤く染めて言っていた御堂の顔を
思い出してつい克哉は楽しげな笑みを浮かべていく。
あんな始まり方をした自分達も、付き合い始めて一緒の職場で働くようになって
3ヶ月も経過すればある程度は安定し始めていた。
克哉はその間に、御堂が好きなチーズの勉強もちょっとだけ始めて…こうしてチーズを
自分で買って調理に使うようにまでなって来ていた。
「…と、ここが正念場だな。丁寧にやらないと失敗する…」
フランス産のカマンベールチーズを包装から取り出していくと…まな板の上に
置いていき包丁で丁寧に上のフワフワして白カビで覆われている部分を薄く剥ぎ取っていく。
上蓋に当たる部分を取り去って、下ごしらえを済ませる。
フランスパンを焼き終えた頃に放り込めば、丁度御堂の帰宅時間になるだろう…。
そう踏んでいたのだが…。
玄関の方で…扉の開閉する音が聞こえて、足音がゆっくりと近づいて来ていた。
ドキッ、と小さく胸が跳ねていく。
ドク、ドク、ドク、ドク…。
相手の足音と同じリズムで、自分の胸が跳ねていく。
予想よりも相手が早く帰ってきたので、まだ心の準備が出来ていない。
克哉は軽く頬を染めて、手を止めていく。
そして…ふわりと、抱きしめられていた。
「ただいま…佐伯…夕食の準備、ありがとう…」
自分の肩に、相手の吐息と体温を感じる。
それがくすぐったくて…つい克哉は瞳を細めた。
「…どう致しまして、おかえりなさい…御堂さん…」
嬉しそうに微笑みながら、克哉は御堂を出迎えていく。
その嬉しさを胸に刻み込んでいきながら…克哉は御堂が頬に落としていく
優しいキスをそっと享受していった―。
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最初その言葉を聞いた時、克哉は信じられなかった。
しかし御堂から初めて強い力で抱き付かれて…少し時間が経ってやっと…
その言葉がじんわりと胸の中に沁みていく。
自分が御堂を欲しかったから、あれだけ酷い行為を繰り返していたのだと
気づいた時にはもうすでに遅くて…。
人形のようになっていた彼を前にして、もう二度と彼に自分の想いは届く事も
ないのだと…何度絶望に陥ったのかも判らない。
だから、本当にこれは夢ではないのか…と思った。
しかし腕の中にいる、相手の暖かさだけは…本物、だった。
「み、どう…」
気を抜くと、涙が零れそうだった。
しかし…その顔を相手に見られたくなくて、彼の肩に顔を埋めてしっかりと
抱きしめ返していく。
相手の息遣いが、体温が、鼓動が全て愛おしい。
二人は雪の降り注いでいるベランダで…しっかりと抱き合い、お互いを
確かめ続けていた。
「…佐伯…」
御堂が瞳を細めて、静かに顔を寄せて来る。
吸い寄せられるように…唇を重ね、その背中を掻き抱く。
パジャマ姿の相手が冷えないように、強い力で引き寄せて…熱い舌先を
お互いに絡ませ合う。
クチュ、ピチャ…という水音がお互いの脳裏に響き合い。
ドックンドックンという心音がうるさいくらいだった。
ようやく唇を離すと…御堂は間近で愛しい男の顔を見つめていく。
その顔は甚く、満足そうであった。
「…君にそんな顔をさせているのが自分だと思うと、気持ちが良いものだな…」
「そんな顔って、どんな感じなんだ…? 自分では鏡が無ければ、
判らないからな…」
「少し拗ねたような…私の言葉に困惑しているような、そんな顔だ。
以前は…君の意地悪そうか、傲慢に微笑んでいる顔しか見たことが
なかったからな…」
「…悪かったな」
憮然と言い返す様がまたおかしくて、ククっと笑いを噛み殺していく。
けれど…以前の作り物のように一切、表情を変えなかった頃に比べれば
からかわれているって判っていても、御堂が笑ってくれる方が何万倍もマシだ。
「…で、君からは返さないのか?」
不満そうに御堂が尋ねると、とっさに何の事を言っているのか察する事が
出来なかった。
「…何をだ?」
「改めて、君の気持ちを…口にしてくれないのか?」
「…俺は、何度もあんたに対して言っているだろ…?」
「私は、今…聞きたい。今なら…君の言葉を信じて、受け入れられるからな…」
今思い返せば…正気に戻った日に泣きそうな顔を浮かべながら
克哉はこちらに想いを伝えてくれていた。
あの時は信じられなくて、そんな言葉を聞いても困惑と混乱しか生まれなかった。
けど…彼に対してのわだかまりを無くした、今なら信じられる。
だから…心の底から、もう一度…聞きたかった。
「そんなにお望みなら、幾らでも聞かせてやる…覚悟、しておけ…」
「…んっ…」
克哉の唇が、耳元に触れて…彼の微かな息遣いと共に…腰に響く
低く掠れた声が鼓膜に直撃してくる。
「…御堂、孝典…俺はあんたを…心から、愛している―」
そうして、強く強く…愛しい人の身体をしっかりと克哉は抱きしめていく。
御堂も同じくらいの強さで抱きしめ返していた。
お互いの心は、幸福感でいっぱいだった。
『良かったね…』
ふいに、脳裏に…もう一人の自分の祝福する声が響き渡った。
一瞬…どうしようかと思ったが、そのまま…無理に抑え込まずに好きなように
させておいた。
かつては、もう一人の自分の甘さや弱さが許せなかった。
こんな奴と同じ身体を共有しているのも歯痒くて、正直良い印象を持っていなかった。
だから…今までは封じ込めて、表に一切出さないようにしていたのだが…。
(…だが、こいつが御堂の心を解してくれなかったら…俺と御堂は上手くいかなかった
可能性もあるからな…)
悔しいが、こいつが甘ったれた事を言ってくれたおかげで…昨日までと違って
御堂の態度は別人のようだった。
以前はそんな甘えなど邪魔なだけだと考えていたが、御堂の幸せそうな顔を見ていると
そこまで…もう一人の自分を否定する気持ちがなくなっていた。
だから、初めて…甘すぎる性格をした自分を、受け入れ始めていた。
(…まあ、良い。とりあえず、好きにしていろ。お前の功績は確かにあるからな…)
それからゆっくりと…もう一人の自分の心が、緩やかに溶け込み始める。
御堂の心が閉ざされた日から、自分の胸の中には黒に近い濁った灰色の気持ちが
広がり、占めていた。
しかし今はゆっくりと変化し始めていく。
黒と白が混ざり合い、光に照らされて…銀色へと、変化していく。
自分の中に優しさとか慈愛とか、そんな感情が染み渡っていくのが…不思議と
悪い気持ちではない。
気づけば…克哉の方にも、穏やかな表情が浮かび始めていた。
「…君の今の顔、好きだ。とても…優しい、からな…」
「そうか。あんたの顔は…どんな顔でも、そそるぜ…例えば俺に必死に縋り付いて
くる時…とかな・・・?」
耳朶を甘く食まれながら…そんな際どい事を言われれば、御堂の顔は
真っ赤に染まるしかない。
「佐伯っ! 君はどうして…こんな時も…!」
「こんな時だから、言うんだ。あんたの可愛い顔を沢山拝めるからな…?」
「…まったく、本当に君という男は…」
気づけば、いつものように強気な笑みを浮かべられていたが…先程の
穏やかな顔も、この顔も…今ではすっかり愛しいと感じられるようになったのだから
仕方が無い。
もう一度…克哉の顔がゆっくりと寄せられてくる。
御堂はそれを…静かに瞳を伏せて、受け入れていった―。
それと同時に…一瞬だけ街並みに強い陽光が差し込み、白い雪が積もった世界を
眩いばかりの白銀に染まった―
それは…二人を祝福しているかのように…神々しく美しい光景だった。
白い雪がヒラリヒラリと舞い落ちる。
それはまるで雪の精が輪舞を踊っているかのような
幻想的な光景だった。
この白銀の輪舞が終わり…街を覆っている白い雪が溶け終わる頃には
恐らく二人の間に…確かなものが生まれているだろう。
絆と呼ばれる、互いを想い合う気持ちが―
しかし御堂から初めて強い力で抱き付かれて…少し時間が経ってやっと…
その言葉がじんわりと胸の中に沁みていく。
自分が御堂を欲しかったから、あれだけ酷い行為を繰り返していたのだと
気づいた時にはもうすでに遅くて…。
人形のようになっていた彼を前にして、もう二度と彼に自分の想いは届く事も
ないのだと…何度絶望に陥ったのかも判らない。
だから、本当にこれは夢ではないのか…と思った。
しかし腕の中にいる、相手の暖かさだけは…本物、だった。
「み、どう…」
気を抜くと、涙が零れそうだった。
しかし…その顔を相手に見られたくなくて、彼の肩に顔を埋めてしっかりと
抱きしめ返していく。
相手の息遣いが、体温が、鼓動が全て愛おしい。
二人は雪の降り注いでいるベランダで…しっかりと抱き合い、お互いを
確かめ続けていた。
「…佐伯…」
御堂が瞳を細めて、静かに顔を寄せて来る。
吸い寄せられるように…唇を重ね、その背中を掻き抱く。
パジャマ姿の相手が冷えないように、強い力で引き寄せて…熱い舌先を
お互いに絡ませ合う。
クチュ、ピチャ…という水音がお互いの脳裏に響き合い。
ドックンドックンという心音がうるさいくらいだった。
ようやく唇を離すと…御堂は間近で愛しい男の顔を見つめていく。
その顔は甚く、満足そうであった。
「…君にそんな顔をさせているのが自分だと思うと、気持ちが良いものだな…」
「そんな顔って、どんな感じなんだ…? 自分では鏡が無ければ、
判らないからな…」
「少し拗ねたような…私の言葉に困惑しているような、そんな顔だ。
以前は…君の意地悪そうか、傲慢に微笑んでいる顔しか見たことが
なかったからな…」
「…悪かったな」
憮然と言い返す様がまたおかしくて、ククっと笑いを噛み殺していく。
けれど…以前の作り物のように一切、表情を変えなかった頃に比べれば
からかわれているって判っていても、御堂が笑ってくれる方が何万倍もマシだ。
「…で、君からは返さないのか?」
不満そうに御堂が尋ねると、とっさに何の事を言っているのか察する事が
出来なかった。
「…何をだ?」
「改めて、君の気持ちを…口にしてくれないのか?」
「…俺は、何度もあんたに対して言っているだろ…?」
「私は、今…聞きたい。今なら…君の言葉を信じて、受け入れられるからな…」
今思い返せば…正気に戻った日に泣きそうな顔を浮かべながら
克哉はこちらに想いを伝えてくれていた。
あの時は信じられなくて、そんな言葉を聞いても困惑と混乱しか生まれなかった。
けど…彼に対してのわだかまりを無くした、今なら信じられる。
だから…心の底から、もう一度…聞きたかった。
「そんなにお望みなら、幾らでも聞かせてやる…覚悟、しておけ…」
「…んっ…」
克哉の唇が、耳元に触れて…彼の微かな息遣いと共に…腰に響く
低く掠れた声が鼓膜に直撃してくる。
「…御堂、孝典…俺はあんたを…心から、愛している―」
そうして、強く強く…愛しい人の身体をしっかりと克哉は抱きしめていく。
御堂も同じくらいの強さで抱きしめ返していた。
お互いの心は、幸福感でいっぱいだった。
『良かったね…』
ふいに、脳裏に…もう一人の自分の祝福する声が響き渡った。
一瞬…どうしようかと思ったが、そのまま…無理に抑え込まずに好きなように
させておいた。
かつては、もう一人の自分の甘さや弱さが許せなかった。
こんな奴と同じ身体を共有しているのも歯痒くて、正直良い印象を持っていなかった。
だから…今までは封じ込めて、表に一切出さないようにしていたのだが…。
(…だが、こいつが御堂の心を解してくれなかったら…俺と御堂は上手くいかなかった
可能性もあるからな…)
悔しいが、こいつが甘ったれた事を言ってくれたおかげで…昨日までと違って
御堂の態度は別人のようだった。
以前はそんな甘えなど邪魔なだけだと考えていたが、御堂の幸せそうな顔を見ていると
そこまで…もう一人の自分を否定する気持ちがなくなっていた。
だから、初めて…甘すぎる性格をした自分を、受け入れ始めていた。
(…まあ、良い。とりあえず、好きにしていろ。お前の功績は確かにあるからな…)
それからゆっくりと…もう一人の自分の心が、緩やかに溶け込み始める。
御堂の心が閉ざされた日から、自分の胸の中には黒に近い濁った灰色の気持ちが
広がり、占めていた。
しかし今はゆっくりと変化し始めていく。
黒と白が混ざり合い、光に照らされて…銀色へと、変化していく。
自分の中に優しさとか慈愛とか、そんな感情が染み渡っていくのが…不思議と
悪い気持ちではない。
気づけば…克哉の方にも、穏やかな表情が浮かび始めていた。
「…君の今の顔、好きだ。とても…優しい、からな…」
「そうか。あんたの顔は…どんな顔でも、そそるぜ…例えば俺に必死に縋り付いて
くる時…とかな・・・?」
耳朶を甘く食まれながら…そんな際どい事を言われれば、御堂の顔は
真っ赤に染まるしかない。
「佐伯っ! 君はどうして…こんな時も…!」
「こんな時だから、言うんだ。あんたの可愛い顔を沢山拝めるからな…?」
「…まったく、本当に君という男は…」
気づけば、いつものように強気な笑みを浮かべられていたが…先程の
穏やかな顔も、この顔も…今ではすっかり愛しいと感じられるようになったのだから
仕方が無い。
もう一度…克哉の顔がゆっくりと寄せられてくる。
御堂はそれを…静かに瞳を伏せて、受け入れていった―。
それと同時に…一瞬だけ街並みに強い陽光が差し込み、白い雪が積もった世界を
眩いばかりの白銀に染まった―
それは…二人を祝福しているかのように…神々しく美しい光景だった。
白い雪がヒラリヒラリと舞い落ちる。
それはまるで雪の精が輪舞を踊っているかのような
幻想的な光景だった。
この白銀の輪舞が終わり…街を覆っている白い雪が溶け終わる頃には
恐らく二人の間に…確かなものが生まれているだろう。
絆と呼ばれる、互いを想い合う気持ちが―
ベランダに一歩、踏み出すと…コンクリートは氷のように冷たかった。
本当は何か履物を履いた方が良いのは判っていたが、そのまま裸足で
手すりの方まで向かっていく。
鈍色のからは微かに日が照っていて…空を覆う雲は灰色と白の
グラデーションを作り上げている。
其処に雪の純白が酷く映えて…灰色の町並みを、白にゆっくりと
染め上げていく。
その様子を…無言で、御堂は眺めていた。
「綺麗…なもの、だな…」
雪ぐらいで、こんな感傷に浸れるとは思ってなかった。
エリート街道を突き進んでいた頃は…雪が降ったぐらいで風景に
見惚れるような暇などカケラもなかった。
ただぼんやりと景色を眺めて、物思いに浸る時間など無駄以外の
何物でもない。
佐伯克哉、という人間に出会うまでの自分はそう考える人間の筈―だった。
白い息を吐きながら
ヒラヒラと粉雪が大気を舞う様子を眺める
緩やかに降り注ぐそれはとても幻想的で
見慣れた景色を非日常へと変えてく―
その中で想うのはただ一人の…面影だった。
「…まったく…君はどこまで、私という人間を変えれば気が済むんだろうな…」
憎まれ口を叩きながらも、その顔に笑みが浮かんでいた。
そのまま…シンシンと降り注ぐ様子をそっと眺めていると…身体が冷たいな、と
やっと感じ始めた。
パジャマしか着てない上に裸足でいれば…当然なのだが、そろそろ部屋に
戻ろうかと思い始めた矢先に、急に暖かな腕に包まれていく。
「…佐伯、か…?」
「あぁ…そうだ」
「…どこに、行っていたんだ…? 朝起きたら…お前の姿がなかったから…
探した、んだぞ…?」
「…すまなかったな。…そろそろ冷蔵庫の中身が乏しかったら、あんたが
寝ている内に買い出しに行ってた。…一人にさせて悪かったな…」
「あっ…」
コメカミの辺りに小さくキスを落とされて、つい甘い声を漏らしていく。
そのまま克哉の唇が首筋を伝い…軽く其処に痕を刻み込んでいた。
どうしよう、と思った。
昨日まではそうされると…感じるよりも先に、戸惑いの感情が先立っていた。
しかし…今は違う。純粋に…感じて、いた…。
「…それより、も…御堂。こんな処にいたら、風邪…引くぞ…?」
相手の吐息が、声が…自分の耳元に掛かっていく。
それだけでゾクゾクと背中が震えて…甘い痺れが走っていった。
暫く、二人はその後は…無言のままだった。
ただ…克哉が自分を強く抱きしめてくれている…その腕の強さに
彼の気持ちがこもっている気がして…嬉しかった。
トクン、トクン、トクン…トクン…。
息遣いと共に、相手の鼓動が背中の方に感じられる。
少し早めながらも…こんなに穏やかな音をしていたのだと…初めて気づく。
お互いの白い息が、微風によって宙にフワフワと浮かんでいた…。
「…引かないさ。お前が…こうして、抱きしめてくれているのなら…な…?」
「…っ!」
御堂から、そんな返答が戻ってくるとは予想もしてなかったのだろう。
克哉が言葉に詰まり、答えに窮していく。
ふと、今の彼の表情をこの目で見たい衝動に駆られていく。
…困惑している彼の腕からするりと抜け出すと…御堂はそのまま
少し腰を落としてベランダの手すりに…両腕で身体を支えるようにして
寄りかかっていた。
「御堂…何がおかしいんだ…?」
「ん? いや…君の驚いている顔など…こうやってゆっくりと見たのは
初めて…だからな。意外に愉快なものだと思ってな…?」
そうして、初めて穏やかな眼差しで佐伯克哉という男を見つめた。
こういう格好になると…彼よりも目線が低くなる形になった。
自分の方が確か少しだけ高いせいで…こんな高さで克哉の顔を
見るのは久しぶりだった。
「そう、か…」
克哉がふてくされた表情で、眼鏡を押し上げる仕草をする。
自分の真意を図りかねている。
そんな戸惑いの表情を浮かべている彼が…何か愛しく感じられた。
「佐伯…私は、君がそんな顔が出来る人間だとは…以前、監禁されていた
時は考えもしてなかった…」
監禁、という言葉に…克哉の顔に緊張が走っていく。
憎まれごとでも言われるとでも思ったのだろう…固唾を呑んで御堂の次の言葉を
待っていた。
「…あの時は、君が憎くて…仕方なかった。君の元に堕ちてやるものか!
私は君が…酷い事をすれば、するだけ…意地になった。
けれど…あぁ、北風と太陽の寓話というものがあったな。私達の関係は
それに凄く良く似ている…そう、思わないか? 佐伯…?」
そう、今思えば…自分達の関係はそのままあの有名な寓話に
当てはまっていた。
佐伯克哉という人間が御堂孝典という人間を手に入れようとやっきになって
酷い行為を続けている時は、決して自分は彼に心を預けようとしなかった。
しかし彼が…慈悲の心を見せて、この身と心を暖めてくれた時―自分は
心から、彼に惹かれた。
「御堂…それ、は…」
克哉とて、その有名な話ぐらいは知っている。
同時に…言葉の意味を察して、まさか…と思っているようだった。
驚愕に目を見開き、その唇を細かく震わせている。
…この傲慢な男に、こんな顔をさせているのが自分だと思うと…御堂は
愉快で仕方なかった。
「佐伯…」
初めて、心の底から彼を愛しいと思って笑顔を浮かべる。
今なら…彼の伝えてくれた言葉の数々を受け入れて、信じられる。
だから御堂は、本当に嬉しそうに笑っていた。
そのまま…彼の腕の中に勢い良く飛び込んで、その首に強く強く
こちらから抱きついた―。
『私も君が好きだ―』
そうして―ずっと克哉が待ち望んでいた言葉が
初めて、御堂の口から紡がれた―。
本当は何か履物を履いた方が良いのは判っていたが、そのまま裸足で
手すりの方まで向かっていく。
鈍色のからは微かに日が照っていて…空を覆う雲は灰色と白の
グラデーションを作り上げている。
其処に雪の純白が酷く映えて…灰色の町並みを、白にゆっくりと
染め上げていく。
その様子を…無言で、御堂は眺めていた。
「綺麗…なもの、だな…」
雪ぐらいで、こんな感傷に浸れるとは思ってなかった。
エリート街道を突き進んでいた頃は…雪が降ったぐらいで風景に
見惚れるような暇などカケラもなかった。
ただぼんやりと景色を眺めて、物思いに浸る時間など無駄以外の
何物でもない。
佐伯克哉、という人間に出会うまでの自分はそう考える人間の筈―だった。
白い息を吐きながら
ヒラヒラと粉雪が大気を舞う様子を眺める
緩やかに降り注ぐそれはとても幻想的で
見慣れた景色を非日常へと変えてく―
その中で想うのはただ一人の…面影だった。
「…まったく…君はどこまで、私という人間を変えれば気が済むんだろうな…」
憎まれ口を叩きながらも、その顔に笑みが浮かんでいた。
そのまま…シンシンと降り注ぐ様子をそっと眺めていると…身体が冷たいな、と
やっと感じ始めた。
パジャマしか着てない上に裸足でいれば…当然なのだが、そろそろ部屋に
戻ろうかと思い始めた矢先に、急に暖かな腕に包まれていく。
「…佐伯、か…?」
「あぁ…そうだ」
「…どこに、行っていたんだ…? 朝起きたら…お前の姿がなかったから…
探した、んだぞ…?」
「…すまなかったな。…そろそろ冷蔵庫の中身が乏しかったら、あんたが
寝ている内に買い出しに行ってた。…一人にさせて悪かったな…」
「あっ…」
コメカミの辺りに小さくキスを落とされて、つい甘い声を漏らしていく。
そのまま克哉の唇が首筋を伝い…軽く其処に痕を刻み込んでいた。
どうしよう、と思った。
昨日まではそうされると…感じるよりも先に、戸惑いの感情が先立っていた。
しかし…今は違う。純粋に…感じて、いた…。
「…それより、も…御堂。こんな処にいたら、風邪…引くぞ…?」
相手の吐息が、声が…自分の耳元に掛かっていく。
それだけでゾクゾクと背中が震えて…甘い痺れが走っていった。
暫く、二人はその後は…無言のままだった。
ただ…克哉が自分を強く抱きしめてくれている…その腕の強さに
彼の気持ちがこもっている気がして…嬉しかった。
トクン、トクン、トクン…トクン…。
息遣いと共に、相手の鼓動が背中の方に感じられる。
少し早めながらも…こんなに穏やかな音をしていたのだと…初めて気づく。
お互いの白い息が、微風によって宙にフワフワと浮かんでいた…。
「…引かないさ。お前が…こうして、抱きしめてくれているのなら…な…?」
「…っ!」
御堂から、そんな返答が戻ってくるとは予想もしてなかったのだろう。
克哉が言葉に詰まり、答えに窮していく。
ふと、今の彼の表情をこの目で見たい衝動に駆られていく。
…困惑している彼の腕からするりと抜け出すと…御堂はそのまま
少し腰を落としてベランダの手すりに…両腕で身体を支えるようにして
寄りかかっていた。
「御堂…何がおかしいんだ…?」
「ん? いや…君の驚いている顔など…こうやってゆっくりと見たのは
初めて…だからな。意外に愉快なものだと思ってな…?」
そうして、初めて穏やかな眼差しで佐伯克哉という男を見つめた。
こういう格好になると…彼よりも目線が低くなる形になった。
自分の方が確か少しだけ高いせいで…こんな高さで克哉の顔を
見るのは久しぶりだった。
「そう、か…」
克哉がふてくされた表情で、眼鏡を押し上げる仕草をする。
自分の真意を図りかねている。
そんな戸惑いの表情を浮かべている彼が…何か愛しく感じられた。
「佐伯…私は、君がそんな顔が出来る人間だとは…以前、監禁されていた
時は考えもしてなかった…」
監禁、という言葉に…克哉の顔に緊張が走っていく。
憎まれごとでも言われるとでも思ったのだろう…固唾を呑んで御堂の次の言葉を
待っていた。
「…あの時は、君が憎くて…仕方なかった。君の元に堕ちてやるものか!
私は君が…酷い事をすれば、するだけ…意地になった。
けれど…あぁ、北風と太陽の寓話というものがあったな。私達の関係は
それに凄く良く似ている…そう、思わないか? 佐伯…?」
そう、今思えば…自分達の関係はそのままあの有名な寓話に
当てはまっていた。
佐伯克哉という人間が御堂孝典という人間を手に入れようとやっきになって
酷い行為を続けている時は、決して自分は彼に心を預けようとしなかった。
しかし彼が…慈悲の心を見せて、この身と心を暖めてくれた時―自分は
心から、彼に惹かれた。
「御堂…それ、は…」
克哉とて、その有名な話ぐらいは知っている。
同時に…言葉の意味を察して、まさか…と思っているようだった。
驚愕に目を見開き、その唇を細かく震わせている。
…この傲慢な男に、こんな顔をさせているのが自分だと思うと…御堂は
愉快で仕方なかった。
「佐伯…」
初めて、心の底から彼を愛しいと思って笑顔を浮かべる。
今なら…彼の伝えてくれた言葉の数々を受け入れて、信じられる。
だから御堂は、本当に嬉しそうに笑っていた。
そのまま…彼の腕の中に勢い良く飛び込んで、その首に強く強く
こちらから抱きついた―。
『私も君が好きだ―』
そうして―ずっと克哉が待ち望んでいた言葉が
初めて、御堂の口から紡がれた―。
本日はうちの兄上の誕生日っす!
自分のバースディにじいさまの通夜になるっていう劇的な展開になったので
少しでも励まそうと問答無用でゲームボーイミクロを贈呈しました。
奴は古い時代からのファミコンユーザーなので、ファミコンデザインのそれを
受け取って凄い嬉しそうにしてくれました。
少しでも喜んで貰えたなら良かった。ちっと懐は痛かったけどね…(トホホン)
という訳で、ブログの話題の方に戻ります。
白銀の輪舞の方は、後二回で終了します。
それと…8000HITありがとうございました!!
明日でこのサイト立ち上げてから丸一ヶ月になりますが…こうして
毎日、書き続けられたのも読んでくれる人がいるというのが
励みになっているからです。感謝!
途中一回、書き直しが出たのが切なかったですが…どうにかこ~にか
一日一話ペースを守って来れました。
一応、頭の中に話が浮かぶ限りは続けてみます。
次の目標は…作品倉庫にあるラインナップを10個にするまでは
続ける…かしら。
鬼畜眼鏡での同人活動、というか…1月6日のBLゲームオンリーに出るか
どうか、うんと迷ったんですが…今回は見送ります。
(バタバタしてて申し込み用紙を書いたり郵便局行く暇がない)
けど冬コミかその辺りにコピー本一冊くらいは出してみたいんですが…ね。
こそっと無料配布の一冊でも置いてくれる慈悲深い方を募集してみたり。
(これならお金のやり取りの手間省けるし相手様の負担にならん…筈!)
あ~無理している訳でもなんでもなく、鬼畜眼鏡が大好きだし
読んでくれる人いるの嬉しいから、だからやろうって思っているんですよ。
黙ってヘコんでいるより…人を楽しませている方が自分自身にとっても
プラスですしね。
その方が愚痴っぽくならないで精神状態が良い方に保てますから。
拍手返信で~す
奈月様
感想、どうもありがとうです! このシーンは白銀の輪舞で絶対に書きたかった
シーンその2なので(その1は御堂が全力を持ってリハビリしているシーンです)
切ないとかそういって頂けるとすっごく嬉しいです。
私も実はこのシーンが最初に頭に浮かんだ時、N克哉の心情に瞳が潤んで
ました…よ(テヘ)
つ~訳で、ラストスパート掛けます!
次の話はどうしましょうか…?
現時点の候補はN克哉争奪戦もの、御堂×克哉(砂吐きそうな甘々もの)、太一×克哉の
バカップルもの、眼鏡VS黒太一もの…が頭の中で妄想されてます。
多分、一個書いたら次に浮かぶ妄想に押し流されていくので…書き出せるのは
この中の一個か、二個です。(浮かんで二週間もすると細部が引きずり出せなくなるんで…)
今回は、この中の候補でどれが読みたいですか~? と意見を求めてみたり。
拍手の方に清き一票(無記名OK)をどうぞ!
こんな奴ですが、これからも皆様…宜しくお願いします!(迷惑…?)
自分のバースディにじいさまの通夜になるっていう劇的な展開になったので
少しでも励まそうと問答無用でゲームボーイミクロを贈呈しました。
奴は古い時代からのファミコンユーザーなので、ファミコンデザインのそれを
受け取って凄い嬉しそうにしてくれました。
少しでも喜んで貰えたなら良かった。ちっと懐は痛かったけどね…(トホホン)
という訳で、ブログの話題の方に戻ります。
白銀の輪舞の方は、後二回で終了します。
それと…8000HITありがとうございました!!
明日でこのサイト立ち上げてから丸一ヶ月になりますが…こうして
毎日、書き続けられたのも読んでくれる人がいるというのが
励みになっているからです。感謝!
途中一回、書き直しが出たのが切なかったですが…どうにかこ~にか
一日一話ペースを守って来れました。
一応、頭の中に話が浮かぶ限りは続けてみます。
次の目標は…作品倉庫にあるラインナップを10個にするまでは
続ける…かしら。
鬼畜眼鏡での同人活動、というか…1月6日のBLゲームオンリーに出るか
どうか、うんと迷ったんですが…今回は見送ります。
(バタバタしてて申し込み用紙を書いたり郵便局行く暇がない)
けど冬コミかその辺りにコピー本一冊くらいは出してみたいんですが…ね。
こそっと無料配布の一冊でも置いてくれる慈悲深い方を募集してみたり。
(これならお金のやり取りの手間省けるし相手様の負担にならん…筈!)
あ~無理している訳でもなんでもなく、鬼畜眼鏡が大好きだし
読んでくれる人いるの嬉しいから、だからやろうって思っているんですよ。
黙ってヘコんでいるより…人を楽しませている方が自分自身にとっても
プラスですしね。
その方が愚痴っぽくならないで精神状態が良い方に保てますから。
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奈月様
感想、どうもありがとうです! このシーンは白銀の輪舞で絶対に書きたかった
シーンその2なので(その1は御堂が全力を持ってリハビリしているシーンです)
切ないとかそういって頂けるとすっごく嬉しいです。
私も実はこのシーンが最初に頭に浮かんだ時、N克哉の心情に瞳が潤んで
ました…よ(テヘ)
つ~訳で、ラストスパート掛けます!
次の話はどうしましょうか…?
現時点の候補はN克哉争奪戦もの、御堂×克哉(砂吐きそうな甘々もの)、太一×克哉の
バカップルもの、眼鏡VS黒太一もの…が頭の中で妄想されてます。
多分、一個書いたら次に浮かぶ妄想に押し流されていくので…書き出せるのは
この中の一個か、二個です。(浮かんで二週間もすると細部が引きずり出せなくなるんで…)
今回は、この中の候補でどれが読みたいですか~? と意見を求めてみたり。
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こんな奴ですが、これからも皆様…宜しくお願いします!(迷惑…?)
目覚めたら、隣に誰もいなかった。
時計の針は…昼の二時を指していた。
昨日、あれこれとやっている内に…かなりの時間が過ぎていたのだろう。
いつもの起床時間よりも大幅に遅れてしまっている事に気付いて、
御堂は苦笑いを浮かべた。
今朝はとても冷えていた。
窓ガラスにはうっすらと夜露が残っていて空気は凛と澄み切って
室内は静寂に包まれている。
「さ、えき…どこ、だ…?」
自分をしっかりと抱きしめていた筈の相手の姿はどこにもなく
ベッドシーツの上で、幾ら腕を彷徨わせても温もりの気配一つ
感じられない。
身を起こして、相手の姿を探したが…やはりどこにも痕跡がない。
「いない、のか…?」
昨日無理やり剥ぎ取られていた筈のパジャマや下着類は、寝ている間に
新しい物を着せられていたらしい。
緑と白のストライブの寝巻きは、真新しくて…微かに洗剤の香りが
残っていた。
ベッドから降りて、リビングやキッチン…バスルーム…そして、今彼が
寝泊りしている一室もくまなく探し回ったが、やはり姿がない。
確か本日は…週末だから、彼は仕事がなかった筈だ。
これが平日ならば、彼がいなくても不安など芽生えなかっただろう。
しかし…あんな時間を一緒に過ごしておいて、朝にはもぬけの空になって
いるなど少々冷たいのではないのだろうか?
そんな事を考えている自分に、思わず苦笑した。
「…私は、おかしくなっているな…彼の、せいで…」
冷たい窓ガラスにそっと手を添えながら…御堂は俯いていく。
十年間、MGNに在籍して…やっとの思いで築き上げた部長という肩書きや権力、
そして人脈の類は全てあの男に破壊されて、奪われたというのに。
今の御堂が持っているのは自分の貯金、マンション、そしてこの身体一つだけだ。
仕事に、理想に燃えて…全力でプロトファイバーのプロジェクトに当たっていた頃が
何と遠いのだろうか―。
あれだって、自分の持てる能力の全てを費やして当たった大事な企画だったのに。
…途中で、あの男に監禁されて…無理やり、外される形になってしまっていた。
身体と心まで一度は壊されて、この一年を無為に過ごしてしまった。
その事を考えれば、許せる筈が―ないのに…。
「…どうして、だろう…。今の私には、君を憎いという気持ちが…殆ど、なくなって
しまっている。この一ヶ月…それが、私を突き動かしていた原動力だったと
いうのにな…」
自分の両手を見つめながら、その指先を震わせていく。
本当に信じられなかった。
昨晩の透明な笑顔を浮かべて口付けた、いつもと異なる佐伯の顔が…
どうしても脳裏から消えてくれない。
たった一度のあの優しい抱擁は…彼に抱いていた恐怖心や、嫌悪感や憎悪や
その他のマイナス感情の全てを打ち砕いてしまっていた。
それで自覚せざる得なかった。
自分は…いつの間にか、彼にあんな風に優しく扱われる事を望んでいた事を―。
「…あんな風に優しくしておいて、その朝に…どうして、私を一人にするんだ…。
君は、本当に…酷い、男だ…」
自らの身体をぎゅっと抱きしめて、寒さに耐えていく。
部屋の中はとても寒くて…パジャマ姿のままでは、冷えて風邪を引いて
しまいそうだった。
エアコンのスイッチを入れようと、リビングに向かっていく。
お互いが寝泊りしている部屋にもちゃんと冷暖房は備え付けられているが
リビングだけは壁に電灯のスイッチと一緒につけられているので…リモコンを
探す手間が省けるからだ。
裸足のまま…フローリングの床を歩いて、リビングの暖房を点けていく。
何気なく…部屋の中を見回していると、外の変化にふと気付いて…意外そうな
表情を浮かべた。
「…雪…?」
そう、空は灰色の雲に覆われて…ポツリポツリ、と白いものを地上に
舞い落としていた。
この一ヶ月…日付感覚など失くしていたが、今は雪の一つくらい降っても
おかしくない季節である事を思い出す。
白い雪が、ヒラヒラと舞う。
その純白を眺めている内に…御堂は、引き寄せられるようにガラス戸を開けて
ベランダの方へと足を踏み入れていった―。
時計の針は…昼の二時を指していた。
昨日、あれこれとやっている内に…かなりの時間が過ぎていたのだろう。
いつもの起床時間よりも大幅に遅れてしまっている事に気付いて、
御堂は苦笑いを浮かべた。
今朝はとても冷えていた。
窓ガラスにはうっすらと夜露が残っていて空気は凛と澄み切って
室内は静寂に包まれている。
「さ、えき…どこ、だ…?」
自分をしっかりと抱きしめていた筈の相手の姿はどこにもなく
ベッドシーツの上で、幾ら腕を彷徨わせても温もりの気配一つ
感じられない。
身を起こして、相手の姿を探したが…やはりどこにも痕跡がない。
「いない、のか…?」
昨日無理やり剥ぎ取られていた筈のパジャマや下着類は、寝ている間に
新しい物を着せられていたらしい。
緑と白のストライブの寝巻きは、真新しくて…微かに洗剤の香りが
残っていた。
ベッドから降りて、リビングやキッチン…バスルーム…そして、今彼が
寝泊りしている一室もくまなく探し回ったが、やはり姿がない。
確か本日は…週末だから、彼は仕事がなかった筈だ。
これが平日ならば、彼がいなくても不安など芽生えなかっただろう。
しかし…あんな時間を一緒に過ごしておいて、朝にはもぬけの空になって
いるなど少々冷たいのではないのだろうか?
そんな事を考えている自分に、思わず苦笑した。
「…私は、おかしくなっているな…彼の、せいで…」
冷たい窓ガラスにそっと手を添えながら…御堂は俯いていく。
十年間、MGNに在籍して…やっとの思いで築き上げた部長という肩書きや権力、
そして人脈の類は全てあの男に破壊されて、奪われたというのに。
今の御堂が持っているのは自分の貯金、マンション、そしてこの身体一つだけだ。
仕事に、理想に燃えて…全力でプロトファイバーのプロジェクトに当たっていた頃が
何と遠いのだろうか―。
あれだって、自分の持てる能力の全てを費やして当たった大事な企画だったのに。
…途中で、あの男に監禁されて…無理やり、外される形になってしまっていた。
身体と心まで一度は壊されて、この一年を無為に過ごしてしまった。
その事を考えれば、許せる筈が―ないのに…。
「…どうして、だろう…。今の私には、君を憎いという気持ちが…殆ど、なくなって
しまっている。この一ヶ月…それが、私を突き動かしていた原動力だったと
いうのにな…」
自分の両手を見つめながら、その指先を震わせていく。
本当に信じられなかった。
昨晩の透明な笑顔を浮かべて口付けた、いつもと異なる佐伯の顔が…
どうしても脳裏から消えてくれない。
たった一度のあの優しい抱擁は…彼に抱いていた恐怖心や、嫌悪感や憎悪や
その他のマイナス感情の全てを打ち砕いてしまっていた。
それで自覚せざる得なかった。
自分は…いつの間にか、彼にあんな風に優しく扱われる事を望んでいた事を―。
「…あんな風に優しくしておいて、その朝に…どうして、私を一人にするんだ…。
君は、本当に…酷い、男だ…」
自らの身体をぎゅっと抱きしめて、寒さに耐えていく。
部屋の中はとても寒くて…パジャマ姿のままでは、冷えて風邪を引いて
しまいそうだった。
エアコンのスイッチを入れようと、リビングに向かっていく。
お互いが寝泊りしている部屋にもちゃんと冷暖房は備え付けられているが
リビングだけは壁に電灯のスイッチと一緒につけられているので…リモコンを
探す手間が省けるからだ。
裸足のまま…フローリングの床を歩いて、リビングの暖房を点けていく。
何気なく…部屋の中を見回していると、外の変化にふと気付いて…意外そうな
表情を浮かべた。
「…雪…?」
そう、空は灰色の雲に覆われて…ポツリポツリ、と白いものを地上に
舞い落としていた。
この一ヶ月…日付感覚など失くしていたが、今は雪の一つくらい降っても
おかしくない季節である事を思い出す。
白い雪が、ヒラヒラと舞う。
その純白を眺めている内に…御堂は、引き寄せられるようにガラス戸を開けて
ベランダの方へと足を踏み入れていった―。
―ずっと、この一年間二人を見守っていた。
もう一人の自分は…オレを必要としていない事ぐらい判っていた。
だからずっと大人しく息を潜めて…彼の内側から、自分は見守り
続けていた。
時々、彼と繋がって…夢の中で言葉を掛けた事があったが、それに
決して甘えることもなく、こちらが手を伸ばしても受け入れられる事もなく。
傍観者でいる事しか、出来なかった。
(やっと…貴方に手を伸ばせる…!)
久しぶりに肉体のコントロール権が戻って、何分かは動けずにぐったり
しているしかなかった。
だが指先から…徐々に動かせるようになると、もう一人の克哉は―
銀縁眼鏡をゆっくりと外し始めた。
「…君、は…」
御堂は、ぎょっとなった。
一瞬で…自分を無理やり抱こうとしていた男の表情が豹変したからだ。
どこか鋭利で冷たい印象を持つ顔が、あっという間に穏やかで頼りなげな
ものに変わっていく。
(そういえば…初めて会った時の佐伯の顔は…こんな感じだったな…)
あの本多という、暑苦しくて体育会系まっしぐらな男と一緒に自分の処に
乗り込んで来た時は何て使えそうにない奴だ、としか思わなかった。
眼鏡を掛けた瞬間から…まったくの別人のような印象になって
―そして、自分の苛立ちが生まれるキッカケとなったのだ。
「本当に…御免なさい。御堂…さん…」
「………さん、だって…?」
目覚めてからはずっと、佐伯は自分の事を「御堂」と呼び捨てにしていた
筈だった。しかもさっきまでと全然声まで違う。
こんなに情けない様子の佐伯の声なんて…随分前に聞いたきりだ。
状況についていけずに困惑の表情を浮かべていると…強い力で
抱きしめられていく。
―それはどこまでも暖かい抱擁だった。
「さ、えき…君は…一体…」
なんなのだ? という問いかけはすでに言葉にならない。
ただどこまでも優しく抱きすくめられて…それでやっと、身体の力が
抜けていく。
こんな風に…彼に優しく抱きしめられた事など、初めてだった。
性的な意味合いを持たない、慈愛に満ちた腕の中は…御堂の中にあった
憎しみの感情を容赦なく溶かしていく。
もう一人の克哉は…泣いていた。
ただ静かな涙を頬に伝らせて…切ない表情を浮かべながら、御堂の
顔を優しく撫ぜ続けていた。
「御堂、さん…」
穏やかな、声で何度も飽く事なく…御堂の髪や頬に指を滑らせていく。
相手の涙が…御堂の頬に静かに落ちた。
顔がゆっくりと寄せられて…その唇が静かに重ねられた。
―それを拒む事なく、静かに御堂は受け入れていた。
(…この一年、ずっと…見ていた。どれだけもう一人の俺が…貴方を
愛していたかを…)
口は、上手く動いてくれない。
だから…克哉は、態度で相手への愛情を示し続けた。
自分は傍観者だった。
それだから、客観的な視点を持って判断出来た。
この人は紛れもなく…眼鏡を掛けた方の自分を想ってくれている。
あれだけ献身的に一年以上も世話を焼き続けていた、もう一人の自分の
努力は…実り始めていたのだ。
だからこそ、壊したくなかった。
やっと二人の間に芽生えた愛情の芽を守りたいと思った。
その強い想いが…強固な殻を突き破り…ほんの短い時間だけでも
こうして一年ぶりに表に出る事が出来たのだ。
「佐伯…私には、君が判らない…」
御堂も泣きそうな声で、呟いていた。
しかし…先程無理やり自分を貫こうとしていた克哉の性器が今は静まって
力を失っているのに気づくと…初めて、自分から彼を抱きしめていく。
こんなに…彼の身体を暖かいと思った事など、初めての事だった。
「…御堂、さん…これだけは…聞いて、欲しいんです…。どんなオレでも…
オレは、貴方を心から愛している…と…それだけは、忘れないで…下さい…」
本当は、自分が言うべき言葉ではない…と判っていた。
しかし…もう一人の自分は実は凄く不器用だという事も、知っていた。
眼鏡は酷く慎重になっていて…多分…御堂に想いを伝えるにはかなりの
時間を要するだろう。
けれど御堂は…たった一言、こちらの方から確かな想いを口にすれば…
心を開いてくれる筈だ、と確信があった。
それは人の心を読み取るのに長けた…穏やかな方の克哉だからこそ
判った事だった。
「…私、も…だ…」
御堂も、力なく応えて…こちらの身体をぎゅっと抱きしめていた。
それを感じて…急速に、意識が消えていくのが判った。
涙を流しながら、克哉はしっかりと…御堂を抱きしめていく。
自分がこうやって、表に出て…この人に触れる事はもう二度と
出来ないのかも知れない。
けれど、自分はそれでも良いと思った。
もう一人の自分も…紛れもなく自分自身なのだ。
どれだけ別人のようであったとしても…自分たちは確かに繋がっていて。
彼の悲しみは、自らの悲しみであり。
彼の喜びは、自分の喜びでもある。
例え二度と…こうして表に出る事は叶わなくても。
この二人が幸せならば…それで良い、と…克哉は思っていた。
(さようなら…御堂さん。もう一人の俺とどうか…幸せになって下さい…)
心からの願いを込めて…もう一人の自分に、この身体を返していく。
そのまま…穏やかな眠りが、御堂と…克哉の間に訪れた。
静かにその身を寄せ合って…ただ、間近に相手の体温と寝息を
感じ取っていく。
目覚めてから一ヶ月間、初めて二人の間に…こうして穏やかで
優しい時間が生まれたのだった―。
もう一人の自分は…オレを必要としていない事ぐらい判っていた。
だからずっと大人しく息を潜めて…彼の内側から、自分は見守り
続けていた。
時々、彼と繋がって…夢の中で言葉を掛けた事があったが、それに
決して甘えることもなく、こちらが手を伸ばしても受け入れられる事もなく。
傍観者でいる事しか、出来なかった。
(やっと…貴方に手を伸ばせる…!)
久しぶりに肉体のコントロール権が戻って、何分かは動けずにぐったり
しているしかなかった。
だが指先から…徐々に動かせるようになると、もう一人の克哉は―
銀縁眼鏡をゆっくりと外し始めた。
「…君、は…」
御堂は、ぎょっとなった。
一瞬で…自分を無理やり抱こうとしていた男の表情が豹変したからだ。
どこか鋭利で冷たい印象を持つ顔が、あっという間に穏やかで頼りなげな
ものに変わっていく。
(そういえば…初めて会った時の佐伯の顔は…こんな感じだったな…)
あの本多という、暑苦しくて体育会系まっしぐらな男と一緒に自分の処に
乗り込んで来た時は何て使えそうにない奴だ、としか思わなかった。
眼鏡を掛けた瞬間から…まったくの別人のような印象になって
―そして、自分の苛立ちが生まれるキッカケとなったのだ。
「本当に…御免なさい。御堂…さん…」
「………さん、だって…?」
目覚めてからはずっと、佐伯は自分の事を「御堂」と呼び捨てにしていた
筈だった。しかもさっきまでと全然声まで違う。
こんなに情けない様子の佐伯の声なんて…随分前に聞いたきりだ。
状況についていけずに困惑の表情を浮かべていると…強い力で
抱きしめられていく。
―それはどこまでも暖かい抱擁だった。
「さ、えき…君は…一体…」
なんなのだ? という問いかけはすでに言葉にならない。
ただどこまでも優しく抱きすくめられて…それでやっと、身体の力が
抜けていく。
こんな風に…彼に優しく抱きしめられた事など、初めてだった。
性的な意味合いを持たない、慈愛に満ちた腕の中は…御堂の中にあった
憎しみの感情を容赦なく溶かしていく。
もう一人の克哉は…泣いていた。
ただ静かな涙を頬に伝らせて…切ない表情を浮かべながら、御堂の
顔を優しく撫ぜ続けていた。
「御堂、さん…」
穏やかな、声で何度も飽く事なく…御堂の髪や頬に指を滑らせていく。
相手の涙が…御堂の頬に静かに落ちた。
顔がゆっくりと寄せられて…その唇が静かに重ねられた。
―それを拒む事なく、静かに御堂は受け入れていた。
(…この一年、ずっと…見ていた。どれだけもう一人の俺が…貴方を
愛していたかを…)
口は、上手く動いてくれない。
だから…克哉は、態度で相手への愛情を示し続けた。
自分は傍観者だった。
それだから、客観的な視点を持って判断出来た。
この人は紛れもなく…眼鏡を掛けた方の自分を想ってくれている。
あれだけ献身的に一年以上も世話を焼き続けていた、もう一人の自分の
努力は…実り始めていたのだ。
だからこそ、壊したくなかった。
やっと二人の間に芽生えた愛情の芽を守りたいと思った。
その強い想いが…強固な殻を突き破り…ほんの短い時間だけでも
こうして一年ぶりに表に出る事が出来たのだ。
「佐伯…私には、君が判らない…」
御堂も泣きそうな声で、呟いていた。
しかし…先程無理やり自分を貫こうとしていた克哉の性器が今は静まって
力を失っているのに気づくと…初めて、自分から彼を抱きしめていく。
こんなに…彼の身体を暖かいと思った事など、初めての事だった。
「…御堂、さん…これだけは…聞いて、欲しいんです…。どんなオレでも…
オレは、貴方を心から愛している…と…それだけは、忘れないで…下さい…」
本当は、自分が言うべき言葉ではない…と判っていた。
しかし…もう一人の自分は実は凄く不器用だという事も、知っていた。
眼鏡は酷く慎重になっていて…多分…御堂に想いを伝えるにはかなりの
時間を要するだろう。
けれど御堂は…たった一言、こちらの方から確かな想いを口にすれば…
心を開いてくれる筈だ、と確信があった。
それは人の心を読み取るのに長けた…穏やかな方の克哉だからこそ
判った事だった。
「…私、も…だ…」
御堂も、力なく応えて…こちらの身体をぎゅっと抱きしめていた。
それを感じて…急速に、意識が消えていくのが判った。
涙を流しながら、克哉はしっかりと…御堂を抱きしめていく。
自分がこうやって、表に出て…この人に触れる事はもう二度と
出来ないのかも知れない。
けれど、自分はそれでも良いと思った。
もう一人の自分も…紛れもなく自分自身なのだ。
どれだけ別人のようであったとしても…自分たちは確かに繋がっていて。
彼の悲しみは、自らの悲しみであり。
彼の喜びは、自分の喜びでもある。
例え二度と…こうして表に出る事は叶わなくても。
この二人が幸せならば…それで良い、と…克哉は思っていた。
(さようなら…御堂さん。もう一人の俺とどうか…幸せになって下さい…)
心からの願いを込めて…もう一人の自分に、この身体を返していく。
そのまま…穏やかな眠りが、御堂と…克哉の間に訪れた。
静かにその身を寄せ合って…ただ、間近に相手の体温と寝息を
感じ取っていく。
目覚めてから一ヶ月間、初めて二人の間に…こうして穏やかで
優しい時間が生まれたのだった―。
やっと正式な『白銀の輪舞6』をアップ出来ました(ほっ)
昨日23時半くらいにどうにかアップした後…寝落ちして、ボツになった方を
起きた時に読み直した時はぎょっとして…どうしようって思いましたが
どうにか書き直せて嬉しいですv
唯一のエロシーンが心の描写だけで、全然エロくなってないやんか~!! と
昨日頭を振って吠えていたのはナイショですが…(待てい)
え~と…まあ、本来なら今日が7掲載、で明日が8…なんですが
6の書き直しだけでも相当な労力を費やしているんで(二時間掛かったよ…)
今日の分の更新はこれで、という形にします。
基本的に連載は一話につき三十分~一時間くらいの執筆時間…という感じにしているから
毎日連載なんぞ続けていられる訳で、一日の内にあんまり頑張りすぎると疲れて、
続けられなくなるんで…。
○○誕生日とか、季節イベント前後以外は…基本的にそういうスタンスで
やっています。後は突発的な萌えネタとか…ね(遠い眼)
ボツ版は、開き直ってそのまま晒しておきます。
展開一緒ですが…書き直した方が、お互いが好きなのに…という
切なさとエロい成分が滲み出ている…(筈)
お待たせしましたが拍手返信です。コメントの返事も後でしますので
もうちょいお待ち下さい。
071123 1:16 様
はい、4の二人はまさに新婚さんいらっしゃ~い…な状態です(笑)
ここは息抜きというか、ちょっとだけラブ成分を入れようと思ったので
反応下さって嬉しいです。書いててこのバカップルめ…! とか赤面
していたのは内緒です(笑)
たかね様
こんにちは! 初めまして! もしかして…萌えメガミドサイトを運営している
ご本人様でしょうか…?(緊張) うちのメガミド小説、気に入って下さったみたいで
良かったです。嗜虐エンド! 凄い萌えますよね! 私も眼鏡が御堂の為にグルグルして
葛藤しまくる場面は書いてて凄い楽しんでいます(いじめっ子)
とりあえずご期待に添えるように最後まで頑張らせてもらいます。
メッセージ、ありがとうございましたー! また来て下さいねv
071125 11:55様
暖かい一言、どうもありがとうございます。
とりあえず昨日から今日の昼に掛けてゆっくりと睡眠取りましたので
気持ちと体力は幾分は回復しております。
心配して下さって、感謝です。ではでは…。
まあ…実はこのサイト開設した時点で、『最低一ヶ月は毎日書いていく』と
決めていたんですよ。
その期間内にうちのじいさまが亡くなるのも想定の上でした。
それでもやはり昨日だけは、いつものようにスラスラ行きませんでしたが
本日は落ち着いております。
長くない、と言われてから二ヶ月…一応じいさんのお見舞いを最優先に
動いていましたからね。
悔いはないように大事な言葉も伝えましたから。
心配掛けてすみませんです。ではん。
昨日23時半くらいにどうにかアップした後…寝落ちして、ボツになった方を
起きた時に読み直した時はぎょっとして…どうしようって思いましたが
どうにか書き直せて嬉しいですv
唯一のエロシーンが心の描写だけで、全然エロくなってないやんか~!! と
昨日頭を振って吠えていたのはナイショですが…(待てい)
え~と…まあ、本来なら今日が7掲載、で明日が8…なんですが
6の書き直しだけでも相当な労力を費やしているんで(二時間掛かったよ…)
今日の分の更新はこれで、という形にします。
基本的に連載は一話につき三十分~一時間くらいの執筆時間…という感じにしているから
毎日連載なんぞ続けていられる訳で、一日の内にあんまり頑張りすぎると疲れて、
続けられなくなるんで…。
○○誕生日とか、季節イベント前後以外は…基本的にそういうスタンスで
やっています。後は突発的な萌えネタとか…ね(遠い眼)
ボツ版は、開き直ってそのまま晒しておきます。
展開一緒ですが…書き直した方が、お互いが好きなのに…という
切なさとエロい成分が滲み出ている…(筈)
お待たせしましたが拍手返信です。コメントの返事も後でしますので
もうちょいお待ち下さい。
071123 1:16 様
はい、4の二人はまさに新婚さんいらっしゃ~い…な状態です(笑)
ここは息抜きというか、ちょっとだけラブ成分を入れようと思ったので
反応下さって嬉しいです。書いててこのバカップルめ…! とか赤面
していたのは内緒です(笑)
たかね様
こんにちは! 初めまして! もしかして…萌えメガミドサイトを運営している
ご本人様でしょうか…?(緊張) うちのメガミド小説、気に入って下さったみたいで
良かったです。嗜虐エンド! 凄い萌えますよね! 私も眼鏡が御堂の為にグルグルして
葛藤しまくる場面は書いてて凄い楽しんでいます(いじめっ子)
とりあえずご期待に添えるように最後まで頑張らせてもらいます。
メッセージ、ありがとうございましたー! また来て下さいねv
071125 11:55様
暖かい一言、どうもありがとうございます。
とりあえず昨日から今日の昼に掛けてゆっくりと睡眠取りましたので
気持ちと体力は幾分は回復しております。
心配して下さって、感謝です。ではでは…。
まあ…実はこのサイト開設した時点で、『最低一ヶ月は毎日書いていく』と
決めていたんですよ。
その期間内にうちのじいさまが亡くなるのも想定の上でした。
それでもやはり昨日だけは、いつものようにスラスラ行きませんでしたが
本日は落ち着いております。
長くない、と言われてから二ヶ月…一応じいさんのお見舞いを最優先に
動いていましたからね。
悔いはないように大事な言葉も伝えましたから。
心配掛けてすみませんです。ではん。
バァァァン!!!
荒々しく克哉が扉を開け放った音が、静寂の中に響き渡った。
御堂はその音にはっとなって、自慰行為を中断して身を起こしたが
声を出す間もなく組み敷かれ、唇を塞がれていく。
「っ…!!」
噛み付くような、乱暴なキスだった。
強く唇を食まれて、何度も痛いぐらいに唇を食まれて…気づけば
血の味が微かに混じり始めていった。
状況が判断出来ない状態で、強引に身体を弄られて…足を大きく
開かされて、身体を割り込まされていく。
相手の膝が、寛げて露出していた性器を性急に擦り上げていけば…
たったそれだけの刺激で、溢れんばかりの蜜が相手のズボンを汚し始めて
いった。
「なっ…! や、め…ろっ! ど、うして…!」
無理やり身体を開かれそうになって、懸命に身を捩って御堂は
抵抗していく。
しかし…克哉は獰猛な光を瞳に称えたまま…こちらを射抜くように
きつく見据えて…パジャマの襟元の部分に手をかけて…手荒く布地を
引き裂いていった。
「ひっ…! あっ…あぁ!!」
硬く張り詰めていた胸の突起を両方同時に押し潰されるように愛撫されて
痛みと快楽の入り混じった感覚が全身を走り抜けていく。
余裕なく零される悲鳴は、相手に貪るように深く口付けられて…
封じ込まれていった。
「御堂…み、どう…っ!!」
今の克哉はまさにケダモノ、としか形容しようがなかった。
御堂という美味しそうな香気を放つ獲物を前に理性を失い、それを
貪り尽くしたいという欲だけが彼の心の中を支配している。
熱い舌先が、御堂の口腔を縦横無尽に舐め尽し…御堂の舌を
容赦なく絡め取って…息苦しくなるぐらいに吸い上げていく。
御堂の硬く張り詰めている性器に、克哉の欲望が何度もぶつかり
自己主張していく。
あからさまなソレに、御堂は恐怖心と…言いようのない身体の疼きを
覚えていた。
(ど、うして…こんな酷い事をされて…私、は…感じている、んだ…?)
相手が己を求めて、昂ぶっていることに悦びを感じている自分がいる。
それと同じくらいに…今の克哉は、恐かった。
想いを伝えてくれる言葉の一つも口にせず、ただ…こちらの身体を煽って
高め上げていく。
…この一ヶ月で克哉の事を好きになりつつあるからこそ…言葉一つなく
無理やり身体を開かされる事に抵抗を覚えて、何度も何度ももがいて
相手の腕の中から抜け出そうと試みていく。
「御堂…俺を、拒むな…っ! そんなに…俺が、嫌、なのか…!」
「違う、佐伯… ち、がう…んだっ! ひゃあ…!」
今の克哉には、御堂の言葉を詳しく聞いていられる程の余裕はない。
相手の性器をギュっと強く握りこんでいくと…根元から棹の部分を何度も
扱き上げて…脆弱な鈴口を執拗に攻め上げていく。
ただでさえさっきまで自らの手で追い上げてビンビンに硬くなっていたのだ。
他人の手でそんなに強い刺激を加えられたら…ひとたまりもない。
「だ、だめっ…や、だ…こんなに、乱暴なのは…っ! 嫌、だぁ…!」
克哉が、嫌な訳じゃない。
事実先程まで…自分は彼にどこかでこうして欲しいと思ってペニスを
慰めていたぐらいなのだから…。
御堂が必死になって訴えているのは、愛情の確認もなく強引に身体を
繋げるのは嫌だ…という事なのだ。
しかし欲望で頭に血が昇りきっている今の克哉にはその細かいニュアンスを
判断して分析出来るほど、冷静になりきれてなかった。
ただ…相手からの「嫌」と「だめ」という言葉だけで…己が拒絶されているように
感じられて切なげに瞳を伏せていく。
「俺じゃ…やはり、駄目…なのかっ!? 」
「違…っ…佐伯、お願い、だから…聞い、てっ…くっ…れ…! あぁぁぁ!!」
いつの間にか性急に下着ごと、パジャマのズボンが剥ぎ取られて
恥ずかしく収縮している蕾まで相手の前に晒されていた。
其処に無理やり、蜜を塗り込められて…鉤状に曲げた人差し指を
奥深くまで突き入れられたのだから…堪らない。
前立腺の部位を的確に指の腹で探り、擦り上げていくと…御堂は
全身を大きく痙攣させて、その甘美な攻めに耐えていく。
「………っ!!」
ふいに、御堂の顔が恐怖心で強張った。
焦燥に駆られて暗く獰猛な眼でこちらを見つめてくる克哉の眼差しが
こちらが正気を失う寸前の…陵辱行為を繰り広げていた恐ろしい彼の
瞳と被さっていく。
その瞬間…穏やかな日々で塞がりつつあった筈の心の傷が…パクリと
開いてどっと血が吹き出し始めていった。
―御堂の心は、一瞬にして過去の記憶に囚われていった。
「あっ…あっ…あぁぁぁぁっ!!!!」
忘れていた筈の恐怖心がどっと吹き出して、涙が零れ始めていく。
御堂の瞳は瞬く間に虚ろになり、ガラス玉のように力ない…無機質な
ものへと変わり果てていく。
その変貌に、克哉は焦燥感を覚える。
こんなに愛しいと思っているのに!
これだけ欲しいと言う気持ちでいっぱいだというのに!!
御堂自身にそれが届く事も、受け入れられる事もなく。
行き場のない強い想いは逃げ場を失い、強烈な奔流となって
克哉を突き動かす衝動へと変換されていく。
「御堂っ! 俺を拒むな! 受け入れて、くれっ…!」
まだ慣らしてもいない場所に、ペニスを強引に宛がって
先端を挿入しようと試みていく。
その行動によって、御堂の身体は一層強く強張っていく。
御堂の拒絶するような反応が、克哉の心を余計に焦らせて
彼から冷静な判断力を奪い去っていた。
「嫌だっ…お願い、待って…くれっ! さ、えきぃ…!」
快楽に抗うように必死に喘ぎながら、体制を立て直す為の
時間を御堂は求めていく。
多分、恐怖の感情が呼び起こされている状態では…せっかく身体を
繋げても悲しい結末を招くだけだ。
好きだから、そうなりたくない。その一心で叫んでいるのに
今の克哉にはその言外の気持ちが正しく伝わる事はない。
「そんな、に…あんたは…っ! 俺が、嫌いなのか…!!」
引き絞るように克哉が叫んでいく。
あの傲慢で冷たかった男が涙を瞳に滲ませながら、こんな事を
口にするなど…以前は考えられなかった。
同時に、信じられなかった。
(違う! 佐伯…違う、んだ…っ!)
必死に頭を振りながら、否定の意思を示していく。
けれど…トラウマが目覚めている状態では、舌がもつれて…言葉が
上手く紡ぐ事が出来なくなっていた。
喉の奥から、くぐもった呻き声しか漏れず…虚ろな眼差しだけしか
返せない自分が恨めしかった。
この一ヶ月の日々でようやく取り戻した己のコントロール権が…
一気に奪われていく。
恐らく、このまま…無理やり抱かれれば、恐怖の感情が再び
御堂の心を壊して、外界への扉は閉ざされて暫く帰って来る事が出来なく
なってしまうだろう。
かつて、克哉が御堂に与えた仕打ちは…それだけ陰惨で
酷かったのだから…。
「助けっ…!!」
「御堂っ!」
やっと出てくれた言葉が、それだった。
克哉は必死になってその身体を掻き抱いて…泣きそうな顔を
浮かべている。
指を引き抜いて、熱く滾ったペニスが宛がわれた。
少ししか解されていない其処を割り開くように腰を進め始めていく。
御堂は必死に括約筋に力を込めて、克哉の侵入を拒んだ。
「今は…ダメ…だ…止め…!!」
力なく涙を零しながら…消え入るような声で訴えていく。
けれど暴走している克哉は…もう止めれない。
好きだから御堂が欲しいだけなのだ。
なのに、相手に拒絶されてしまっている。
その悲しみと憤りが…悲しいすれ違いを生んでいく。
紛れもなく今は両思いな筈なのに…僅かな気持ちの行き違いが
悲しい結末を呼び起こそうとしていた―。
『そんなのはダメだ…!!』
ふいに、頭の中から声が聞こえた。
最初は幻聴かと、思った。
しかしその一言ははっきりと克哉の脳裏に響き渡り
次の瞬間、更に大きな音が響き渡った。
パリィィィィィィン!!!!
それは大きなガラスが盛大に砕け散る音に良く似ていた。
まるでタマゴから雛が孵り、もがいて内側からその殻を突き破るような
―そんな感覚だった。
白いイメージが、一気に克哉の意識を駆け巡って…光輝く
何かに…自分の意思が覆われて、包み込まれていく。
「お前、は…っ!」
克哉の瞳が驚愕で見開かれていく。
次の瞬間、ブレーカーが落ちるように…いきなり身体から力が抜けて
御堂の身体の上に倒れこんだ―。
「…さ、えき…?」
暫くして…御堂が力なく問いかけるが…克哉の身体はいきなり
活動を止めて…彼の身体の上でぐったりとなっていた。
「おい! 佐、伯…一体…どうした、んだっ!」
必死になって御堂が呼びかけるが、克哉の身体はピクリともしない。
その身体からは…今は完全に、意識は失われてしまっていたのだった―。
荒々しく克哉が扉を開け放った音が、静寂の中に響き渡った。
御堂はその音にはっとなって、自慰行為を中断して身を起こしたが
声を出す間もなく組み敷かれ、唇を塞がれていく。
「っ…!!」
噛み付くような、乱暴なキスだった。
強く唇を食まれて、何度も痛いぐらいに唇を食まれて…気づけば
血の味が微かに混じり始めていった。
状況が判断出来ない状態で、強引に身体を弄られて…足を大きく
開かされて、身体を割り込まされていく。
相手の膝が、寛げて露出していた性器を性急に擦り上げていけば…
たったそれだけの刺激で、溢れんばかりの蜜が相手のズボンを汚し始めて
いった。
「なっ…! や、め…ろっ! ど、うして…!」
無理やり身体を開かれそうになって、懸命に身を捩って御堂は
抵抗していく。
しかし…克哉は獰猛な光を瞳に称えたまま…こちらを射抜くように
きつく見据えて…パジャマの襟元の部分に手をかけて…手荒く布地を
引き裂いていった。
「ひっ…! あっ…あぁ!!」
硬く張り詰めていた胸の突起を両方同時に押し潰されるように愛撫されて
痛みと快楽の入り混じった感覚が全身を走り抜けていく。
余裕なく零される悲鳴は、相手に貪るように深く口付けられて…
封じ込まれていった。
「御堂…み、どう…っ!!」
今の克哉はまさにケダモノ、としか形容しようがなかった。
御堂という美味しそうな香気を放つ獲物を前に理性を失い、それを
貪り尽くしたいという欲だけが彼の心の中を支配している。
熱い舌先が、御堂の口腔を縦横無尽に舐め尽し…御堂の舌を
容赦なく絡め取って…息苦しくなるぐらいに吸い上げていく。
御堂の硬く張り詰めている性器に、克哉の欲望が何度もぶつかり
自己主張していく。
あからさまなソレに、御堂は恐怖心と…言いようのない身体の疼きを
覚えていた。
(ど、うして…こんな酷い事をされて…私、は…感じている、んだ…?)
相手が己を求めて、昂ぶっていることに悦びを感じている自分がいる。
それと同じくらいに…今の克哉は、恐かった。
想いを伝えてくれる言葉の一つも口にせず、ただ…こちらの身体を煽って
高め上げていく。
…この一ヶ月で克哉の事を好きになりつつあるからこそ…言葉一つなく
無理やり身体を開かされる事に抵抗を覚えて、何度も何度ももがいて
相手の腕の中から抜け出そうと試みていく。
「御堂…俺を、拒むな…っ! そんなに…俺が、嫌、なのか…!」
「違う、佐伯… ち、がう…んだっ! ひゃあ…!」
今の克哉には、御堂の言葉を詳しく聞いていられる程の余裕はない。
相手の性器をギュっと強く握りこんでいくと…根元から棹の部分を何度も
扱き上げて…脆弱な鈴口を執拗に攻め上げていく。
ただでさえさっきまで自らの手で追い上げてビンビンに硬くなっていたのだ。
他人の手でそんなに強い刺激を加えられたら…ひとたまりもない。
「だ、だめっ…や、だ…こんなに、乱暴なのは…っ! 嫌、だぁ…!」
克哉が、嫌な訳じゃない。
事実先程まで…自分は彼にどこかでこうして欲しいと思ってペニスを
慰めていたぐらいなのだから…。
御堂が必死になって訴えているのは、愛情の確認もなく強引に身体を
繋げるのは嫌だ…という事なのだ。
しかし欲望で頭に血が昇りきっている今の克哉にはその細かいニュアンスを
判断して分析出来るほど、冷静になりきれてなかった。
ただ…相手からの「嫌」と「だめ」という言葉だけで…己が拒絶されているように
感じられて切なげに瞳を伏せていく。
「俺じゃ…やはり、駄目…なのかっ!? 」
「違…っ…佐伯、お願い、だから…聞い、てっ…くっ…れ…! あぁぁぁ!!」
いつの間にか性急に下着ごと、パジャマのズボンが剥ぎ取られて
恥ずかしく収縮している蕾まで相手の前に晒されていた。
其処に無理やり、蜜を塗り込められて…鉤状に曲げた人差し指を
奥深くまで突き入れられたのだから…堪らない。
前立腺の部位を的確に指の腹で探り、擦り上げていくと…御堂は
全身を大きく痙攣させて、その甘美な攻めに耐えていく。
「………っ!!」
ふいに、御堂の顔が恐怖心で強張った。
焦燥に駆られて暗く獰猛な眼でこちらを見つめてくる克哉の眼差しが
こちらが正気を失う寸前の…陵辱行為を繰り広げていた恐ろしい彼の
瞳と被さっていく。
その瞬間…穏やかな日々で塞がりつつあった筈の心の傷が…パクリと
開いてどっと血が吹き出し始めていった。
―御堂の心は、一瞬にして過去の記憶に囚われていった。
「あっ…あっ…あぁぁぁぁっ!!!!」
忘れていた筈の恐怖心がどっと吹き出して、涙が零れ始めていく。
御堂の瞳は瞬く間に虚ろになり、ガラス玉のように力ない…無機質な
ものへと変わり果てていく。
その変貌に、克哉は焦燥感を覚える。
こんなに愛しいと思っているのに!
これだけ欲しいと言う気持ちでいっぱいだというのに!!
御堂自身にそれが届く事も、受け入れられる事もなく。
行き場のない強い想いは逃げ場を失い、強烈な奔流となって
克哉を突き動かす衝動へと変換されていく。
「御堂っ! 俺を拒むな! 受け入れて、くれっ…!」
まだ慣らしてもいない場所に、ペニスを強引に宛がって
先端を挿入しようと試みていく。
その行動によって、御堂の身体は一層強く強張っていく。
御堂の拒絶するような反応が、克哉の心を余計に焦らせて
彼から冷静な判断力を奪い去っていた。
「嫌だっ…お願い、待って…くれっ! さ、えきぃ…!」
快楽に抗うように必死に喘ぎながら、体制を立て直す為の
時間を御堂は求めていく。
多分、恐怖の感情が呼び起こされている状態では…せっかく身体を
繋げても悲しい結末を招くだけだ。
好きだから、そうなりたくない。その一心で叫んでいるのに
今の克哉にはその言外の気持ちが正しく伝わる事はない。
「そんな、に…あんたは…っ! 俺が、嫌いなのか…!!」
引き絞るように克哉が叫んでいく。
あの傲慢で冷たかった男が涙を瞳に滲ませながら、こんな事を
口にするなど…以前は考えられなかった。
同時に、信じられなかった。
(違う! 佐伯…違う、んだ…っ!)
必死に頭を振りながら、否定の意思を示していく。
けれど…トラウマが目覚めている状態では、舌がもつれて…言葉が
上手く紡ぐ事が出来なくなっていた。
喉の奥から、くぐもった呻き声しか漏れず…虚ろな眼差しだけしか
返せない自分が恨めしかった。
この一ヶ月の日々でようやく取り戻した己のコントロール権が…
一気に奪われていく。
恐らく、このまま…無理やり抱かれれば、恐怖の感情が再び
御堂の心を壊して、外界への扉は閉ざされて暫く帰って来る事が出来なく
なってしまうだろう。
かつて、克哉が御堂に与えた仕打ちは…それだけ陰惨で
酷かったのだから…。
「助けっ…!!」
「御堂っ!」
やっと出てくれた言葉が、それだった。
克哉は必死になってその身体を掻き抱いて…泣きそうな顔を
浮かべている。
指を引き抜いて、熱く滾ったペニスが宛がわれた。
少ししか解されていない其処を割り開くように腰を進め始めていく。
御堂は必死に括約筋に力を込めて、克哉の侵入を拒んだ。
「今は…ダメ…だ…止め…!!」
力なく涙を零しながら…消え入るような声で訴えていく。
けれど暴走している克哉は…もう止めれない。
好きだから御堂が欲しいだけなのだ。
なのに、相手に拒絶されてしまっている。
その悲しみと憤りが…悲しいすれ違いを生んでいく。
紛れもなく今は両思いな筈なのに…僅かな気持ちの行き違いが
悲しい結末を呼び起こそうとしていた―。
『そんなのはダメだ…!!』
ふいに、頭の中から声が聞こえた。
最初は幻聴かと、思った。
しかしその一言ははっきりと克哉の脳裏に響き渡り
次の瞬間、更に大きな音が響き渡った。
パリィィィィィィン!!!!
それは大きなガラスが盛大に砕け散る音に良く似ていた。
まるでタマゴから雛が孵り、もがいて内側からその殻を突き破るような
―そんな感覚だった。
白いイメージが、一気に克哉の意識を駆け巡って…光輝く
何かに…自分の意思が覆われて、包み込まれていく。
「お前、は…っ!」
克哉の瞳が驚愕で見開かれていく。
次の瞬間、ブレーカーが落ちるように…いきなり身体から力が抜けて
御堂の身体の上に倒れこんだ―。
「…さ、えき…?」
暫くして…御堂が力なく問いかけるが…克哉の身体はいきなり
活動を止めて…彼の身体の上でぐったりとなっていた。
「おい! 佐、伯…一体…どうした、んだっ!」
必死になって御堂が呼びかけるが、克哉の身体はピクリともしない。
その身体からは…今は完全に、意識は失われてしまっていたのだった―。
申し訳ないですが…11月24日分掲載の白銀の輪舞6、とりあえずこれから寝て
体調が整ったらもう一回書き直します。
理由は24日早朝に血の繋がった祖父が亡くなって体調的にも精神的にも
調子良くない状態で書いたのが出まくっているからです。
後は単純に…時間的余裕もなかったですから。
ここは物語的に重要な部分なので、ここが満足いかない出来なのは
本気で悔しいから。
という訳で今回は初めて、書き直しという形を取らせて貰いますです。
幸い25日はフリーというかゆっくり休んで余裕もあるんで…日中に
暇見てじっくり手直しします。
という訳で今掲載のは、書き直したものが完成した時点でお蔵入りします。
ま…じいさんについては、もう長くないって判ってから家族全員で
出来るだけ時間作って見舞いに行ったり、やれる限りの事はやったんで…
そんなに悔いはないです。
安らかで穏やかな顔してましたしね。
その他の拍手返信とセーラーロイド(それかい)、白銀の輪舞7については…
寝て気力体力戻った頃に改めて着手します。
それではおやすみなさいませ…。
体調が整ったらもう一回書き直します。
理由は24日早朝に血の繋がった祖父が亡くなって体調的にも精神的にも
調子良くない状態で書いたのが出まくっているからです。
後は単純に…時間的余裕もなかったですから。
ここは物語的に重要な部分なので、ここが満足いかない出来なのは
本気で悔しいから。
という訳で今回は初めて、書き直しという形を取らせて貰いますです。
幸い25日はフリーというかゆっくり休んで余裕もあるんで…日中に
暇見てじっくり手直しします。
という訳で今掲載のは、書き直したものが完成した時点でお蔵入りします。
ま…じいさんについては、もう長くないって判ってから家族全員で
出来るだけ時間作って見舞いに行ったり、やれる限りの事はやったんで…
そんなに悔いはないです。
安らかで穏やかな顔してましたしね。
その他の拍手返信とセーラーロイド(それかい)、白銀の輪舞7については…
寝て気力体力戻った頃に改めて着手します。
それではおやすみなさいませ…。
※諸事情により、このバージョンはボツになりました。
こちらのは…正式アップバージョンとの比較の上でお読み下さい。
正式アップは25日の14時から18時までの間に掲載予定です。
バタン!! と大きな扉を開け放つ音が部屋中に響き渡った。
それにビクっと御堂が身を震わせている内に…いきなり黒い人影が
飛び込んできて、こちらを組み敷いていった。
「なっ…!」
とっさに反応出来ずに、全力でもがいて逃れようと足掻いていく。
しかし…影はこちらをがっしりと抑え込んで離そうとしなかった。
「…さ、え…きっ…?」
最初は…あまりに突然の事過ぎて、状況判断が出来ずにいた。
しかし、両者ともここ一年くらいは誰とも交流を持たずにこの部屋で
過ごしてきたのだ。他の人間が訪れようもない。
「み、どう…っ!」
掠れた、切羽詰った声音を零しながら…有無を言わさずに首筋を
吸い上げられていく。
鋭い痛みが走って、肩を大きく震わせていった。
その隙に克哉の膝が足の間に差し込まれて…こちらの下肢を
容赦なく擦り上げていく。
「ひっ…ぃ…!」
先程まで自らの手で慰めて、ビクビクと派手に痙攣を繰り返しているソレを
布地越しとは言え擦り上げられて…御堂は余裕のない声を漏らす。
パジャマ生地の上から、胸板全体を揉みしだくように愛撫されて…突起が
硬く張り詰めていく。
敏感な箇所を同時に攻められて、御堂の身体は嫌でも煽られて…欲望の火を
灯されていった。
「御堂…御、堂…!」
欲望という熱に浮かされて、幾度も余裕のない声で相手の名を呼び続ける。
興奮して荒い呼吸を繰り返し、瞳を情欲でギラつかせている克哉は…
この一ヶ月間の穏やかさなど微塵もなかった。
―それは正気を手放す前に見た、狂気の瞳に似た輝きを帯びていた。
「ひぃぃぃ! や、止めろ…! 止めて、くれ…! さ、えきぃ…!!」
電撃のように脳裏を駆け抜けていくのは、苛烈な陵辱行為を繰り返していく
佐伯克哉の憤りを帯びたぎらついた瞳だった。
一年前、最後に見た克哉の眼もこんな飢えた光を称えていた。
それが恐くて…どうしてそんな眼で自分を見ながら、あんなに酷い行為を
延々と繰り返し続けているのか判らなくて…その混乱と限度を超えた恐怖心が
一度は御堂の正気を破壊し、廃人寸前まで追い込んでいった。
必死になってその最悪の過去を打ち消そうと…その身体を抱きしめて、気持ちと
体温を伝えていく。
「…っ! 俺は…! お前を求めているだけだ! 御堂!! もう…酷い事は、
絶対にしない! だから! そんなに…怯えない、でくれ…!」
克哉が哀願にも似た、切羽詰った声で訴え掛けていく。
しかし今の御堂にはその叫びは正しく届かない。
一度、深過ぎる傷が開いてしまえば…その胸の痛みに気を取られていて
人は正常な判断能力を失う場合が殆どだからだ。
「嫌だ! もう嫌だ!! …無理やり、は…も、う…嫌だぁ!!」
御堂の中には、今は確かに克哉に対して好意的な思いが存在している。
しかし…同時に、己を破壊する程一度は追い詰めた憎い相手である事も確かなのだ。
一旦、マイナスの方に天秤が傾いてしまえば…ずっと心の底に眠っていた
ネガティブな感情や、恐怖心の類が一気に吹き出していく。
今の御堂にはどれだけ叫ぼうとも…克哉の訴えは届く事はない。
何故なら…今の彼が見ているのは、過去の記憶。
忌まわしく消してしまいたい…御堂への想いを自覚する以前の、あまりに非道な行為を
繰り返していた頃の克哉なのだから―。
「もう! 絶対にしない! だから…正気に戻ってくれ! 御堂、御堂!!」
相手の瞳を覗き込みながら、噛み付くように口付けていく。
優しくしたい、という気持ちがあっても…余裕のない状態ではその苛立ちは
行き場を失って、更に克哉の気持ちを追い込んでいた。
「嫌だぁ!! もう…許して! 助けてくれっ…! も、う…わ、たし…はっ…!」
それは壊れる寸前に見せた、あまりにみじめで弱々しい御堂の姿だった。
あれだけ誇り高く、どんなに大事なものを奪い続けても屈する事がなかった
気高い男が…こんなみっともない振る舞いをする事をかつての自分は許す
事が出来なかった。
だから、憤りをそのままぶつけ続けて…彼を、壊したのだ。
こんなに彼を追い詰めたのは、自分なのだ。
久しぶりに見た御堂の弱い姿は、克哉に己の罪を突きつけていた。
―この男をここまで追い詰めたのは紛れもなく自分自身なのだ。
そんな自分が許せなかった。
御堂ではなく、自分自身が堪らなく憎くなって…克哉は憤っていた。
だから…性欲はコントロールを失い、制御出来なくなっていく。
性欲と、憤りの感情は実は男性の生理上…実は良く似ている。
怒張、という言葉があるように…男性器は性的な刺激以外に、強烈な
怒りの感情を抱いていても硬く勃起するのだ。
怒りが強くなればなるだけ、解放を求めて…性欲が高まる。
それはオスである以上…避ける事が出来ない本能に近いものがあった。
「…いい加減に、したらどうだ…?」
怒りが、性欲が…先程まで抱いていた克哉の理性を完全に打ち壊して
かつての酷い行為を繰り返していた頃の彼を誘発していく。
そこにいたのはここ一ヶ月の、穏やかな克哉の顔ではない。
御堂のトラウマとして刻み込まれている冷たく…怜悧な表情だった。
「…や、だ…助け…!!」
怯える御堂を無理やり押さえつけると…今度は強引に相手の足から
下着とパジャマのズボンを剥ぎ取って、外気に晒していく。
恐ろしいのに…すっかりと反応して、硬く張り詰めている性器と…ヒクついている
自分の蕾が恨めしかった。
其処を慣らしもせずに、いきなり…克哉のドクドクと脈動している熱いペニスを
宛がわれてぎょっとなっていく。
「そ、それは…や、やめて…く、れ…! 佐、伯…!」
やっとこの一ヶ月で、最悪の記憶から…相手の姿を上書き出来たと
思っていたのだ。
許せないけれど、夕食前にキスされた時…憎い筈だった男を
愛しいと感じていた。
夕食と入浴を終えても火照りは収まらずに…身体が疼いて、先程まで
自らの手で宥めざるを得ないほど…確かに欲しがっていた。
しかし、こんな乱暴に求められるのはやはり…まだ、恐かった。
克哉がこちらを労わり、気遣うような言動をしながら抱いてくれたのならば…
御堂はここまで怯えることも、恐がることもなく素直に克哉を受け入れていただろう。
しかし…こんな乱暴な手段では、駄目だった。
「…あんたのココは…俺を求めて、こんなに激しく…収縮を繰り返して
吸い付いてきているぞ…? 少しぐらいは自分の欲望に…正直になっても
良いんじゃないのか…? 御堂…」
先端から蜜が滲んでいるペニスを何度も、何度もじれったくなるぐらいに入念に
相手のアヌスの縁に擦り付けて…ごく浅い抽送を繰り返していく。
それだけで…御堂の身体はかつて克哉から与えられた強烈な快感を思い出して
意思と裏腹に蠢いて、相手を求めているように収縮し続けている。
「そ、んな…事は、なっ…い…! デタラメ、を…」
「随分と…意地を貼るな…御堂…? お前の口は…本当に…嘘つきだ…」
克哉が腰を揺らす度に、グチャネチャと…いやらしい水音が
部屋中に響き渡っていく。
お互いの荒い呼吸と鼓動も…耳を突く。
ほんの少し克哉が腰を突き入れれば…御堂の最奥を深く抉る事だろう。
しかし…克哉は、部屋の電灯が消えているせいで…気づいてなかった。
御堂の瞳が…再び虚ろになりつつある事を…。
「さ、えき…本当に、やめ…て、くれ…!」
御堂はあの暗く閉ざされた世界に戻りたくなくて、必死になって
克哉に懇願していく。
多分、今ここで無理やり身体を貫かれれば…恐怖心が御堂の正気を
再び覆い尽くして…やっと開いた心の扉は無理やり閉ざされることだろう。
それを避けたくて、御堂は懸命に頭を振って…訴えていく。
しかし…憤りによって、かつての姿を取り戻している克哉には…その声は
正しく届く事はない。
お互いに好意がある事は確かなのに…二人の心はすれ違い続けて
最悪の展開へと突き進もうとしていた。
「こ、んな…のは…嫌だぁぁぁ!!」
御堂が、悲鳴を上げていく。
やっと…この男を好きだと、自覚したばかりだというのに。
それなのに…こんなに悲しい形で、また身体を繋げるという事実が
あまりに悲しくて…涙が、とめどなく溢れ続けていた。
けれど、暴走してしまった克哉には…すでに相手の懇願や涙程度では
ブレーキを掛けることは出来ない。
克哉もまた…根っこの部分では、御堂が愛しいと想う気持ちが
存在していた。
だから欲しい。深く感じ取りたい。心行くまで御堂を感じて貪りたい。
それと憤りの感情が絡まりあって…凶暴な性欲となり、克哉を突き
動かしているのだから…。
「御堂、俺を…拒むなっ! 受け入れて、くれ…っ!」
必死の形相で、相手の硬く慣らしてもいない内部に…ペニスを
ググっと押し込もうとしていく。
その瞬間、御堂の身体が恐怖に強張って、克哉の侵入を
拒んでいった。
「いた、痛いっ…さ、えき…! 止め、ろぉ…!!」
御堂もまた、心から克哉を拒んでいる訳ではない。
こんなレイプみたいな形で、身体を繋げるのが嫌なだけなのだ。
ほんの少しでも克哉の優しさや気遣いが感じられる形での
行為であったのなら…ここまで強固に克哉を拒絶する事はなかった。
しかし今の克哉には…そこまで察する余裕はない。
ただ…自分が相手にまた、拒まれてしまっている。
その事実が胸を切り裂き、どうしようもない痛みを齎していた。
「また…俺を、拒むのか…?」
泣きそうな顔をしながら、克哉は力なく呟いていく。
その瞬間…脳裏に音が鳴り響いた。
パリィィィィン!!!
それはガラスが盛大に割れる音にも、タマゴから雛が孵って
突き破って生まれてくる音の両方に似ていた。
その音が響き渡った瞬間、強烈な意思が克哉の意思を抑え込み
無理やり闇へと押し込んでいった。
(お前、は…!)
そう、心の中で叫んだが…遅かった。
次の瞬間…克哉の意識は、深い深い闇の中へと沈み、そのままベッドの上に
力なく身体を投げ出して、倒れこんでいったのだった―。
こちらのは…正式アップバージョンとの比較の上でお読み下さい。
正式アップは25日の14時から18時までの間に掲載予定です。
バタン!! と大きな扉を開け放つ音が部屋中に響き渡った。
それにビクっと御堂が身を震わせている内に…いきなり黒い人影が
飛び込んできて、こちらを組み敷いていった。
「なっ…!」
とっさに反応出来ずに、全力でもがいて逃れようと足掻いていく。
しかし…影はこちらをがっしりと抑え込んで離そうとしなかった。
「…さ、え…きっ…?」
最初は…あまりに突然の事過ぎて、状況判断が出来ずにいた。
しかし、両者ともここ一年くらいは誰とも交流を持たずにこの部屋で
過ごしてきたのだ。他の人間が訪れようもない。
「み、どう…っ!」
掠れた、切羽詰った声音を零しながら…有無を言わさずに首筋を
吸い上げられていく。
鋭い痛みが走って、肩を大きく震わせていった。
その隙に克哉の膝が足の間に差し込まれて…こちらの下肢を
容赦なく擦り上げていく。
「ひっ…ぃ…!」
先程まで自らの手で慰めて、ビクビクと派手に痙攣を繰り返しているソレを
布地越しとは言え擦り上げられて…御堂は余裕のない声を漏らす。
パジャマ生地の上から、胸板全体を揉みしだくように愛撫されて…突起が
硬く張り詰めていく。
敏感な箇所を同時に攻められて、御堂の身体は嫌でも煽られて…欲望の火を
灯されていった。
「御堂…御、堂…!」
欲望という熱に浮かされて、幾度も余裕のない声で相手の名を呼び続ける。
興奮して荒い呼吸を繰り返し、瞳を情欲でギラつかせている克哉は…
この一ヶ月間の穏やかさなど微塵もなかった。
―それは正気を手放す前に見た、狂気の瞳に似た輝きを帯びていた。
「ひぃぃぃ! や、止めろ…! 止めて、くれ…! さ、えきぃ…!!」
電撃のように脳裏を駆け抜けていくのは、苛烈な陵辱行為を繰り返していく
佐伯克哉の憤りを帯びたぎらついた瞳だった。
一年前、最後に見た克哉の眼もこんな飢えた光を称えていた。
それが恐くて…どうしてそんな眼で自分を見ながら、あんなに酷い行為を
延々と繰り返し続けているのか判らなくて…その混乱と限度を超えた恐怖心が
一度は御堂の正気を破壊し、廃人寸前まで追い込んでいった。
必死になってその最悪の過去を打ち消そうと…その身体を抱きしめて、気持ちと
体温を伝えていく。
「…っ! 俺は…! お前を求めているだけだ! 御堂!! もう…酷い事は、
絶対にしない! だから! そんなに…怯えない、でくれ…!」
克哉が哀願にも似た、切羽詰った声で訴え掛けていく。
しかし今の御堂にはその叫びは正しく届かない。
一度、深過ぎる傷が開いてしまえば…その胸の痛みに気を取られていて
人は正常な判断能力を失う場合が殆どだからだ。
「嫌だ! もう嫌だ!! …無理やり、は…も、う…嫌だぁ!!」
御堂の中には、今は確かに克哉に対して好意的な思いが存在している。
しかし…同時に、己を破壊する程一度は追い詰めた憎い相手である事も確かなのだ。
一旦、マイナスの方に天秤が傾いてしまえば…ずっと心の底に眠っていた
ネガティブな感情や、恐怖心の類が一気に吹き出していく。
今の御堂にはどれだけ叫ぼうとも…克哉の訴えは届く事はない。
何故なら…今の彼が見ているのは、過去の記憶。
忌まわしく消してしまいたい…御堂への想いを自覚する以前の、あまりに非道な行為を
繰り返していた頃の克哉なのだから―。
「もう! 絶対にしない! だから…正気に戻ってくれ! 御堂、御堂!!」
相手の瞳を覗き込みながら、噛み付くように口付けていく。
優しくしたい、という気持ちがあっても…余裕のない状態ではその苛立ちは
行き場を失って、更に克哉の気持ちを追い込んでいた。
「嫌だぁ!! もう…許して! 助けてくれっ…! も、う…わ、たし…はっ…!」
それは壊れる寸前に見せた、あまりにみじめで弱々しい御堂の姿だった。
あれだけ誇り高く、どんなに大事なものを奪い続けても屈する事がなかった
気高い男が…こんなみっともない振る舞いをする事をかつての自分は許す
事が出来なかった。
だから、憤りをそのままぶつけ続けて…彼を、壊したのだ。
こんなに彼を追い詰めたのは、自分なのだ。
久しぶりに見た御堂の弱い姿は、克哉に己の罪を突きつけていた。
―この男をここまで追い詰めたのは紛れもなく自分自身なのだ。
そんな自分が許せなかった。
御堂ではなく、自分自身が堪らなく憎くなって…克哉は憤っていた。
だから…性欲はコントロールを失い、制御出来なくなっていく。
性欲と、憤りの感情は実は男性の生理上…実は良く似ている。
怒張、という言葉があるように…男性器は性的な刺激以外に、強烈な
怒りの感情を抱いていても硬く勃起するのだ。
怒りが強くなればなるだけ、解放を求めて…性欲が高まる。
それはオスである以上…避ける事が出来ない本能に近いものがあった。
「…いい加減に、したらどうだ…?」
怒りが、性欲が…先程まで抱いていた克哉の理性を完全に打ち壊して
かつての酷い行為を繰り返していた頃の彼を誘発していく。
そこにいたのはここ一ヶ月の、穏やかな克哉の顔ではない。
御堂のトラウマとして刻み込まれている冷たく…怜悧な表情だった。
「…や、だ…助け…!!」
怯える御堂を無理やり押さえつけると…今度は強引に相手の足から
下着とパジャマのズボンを剥ぎ取って、外気に晒していく。
恐ろしいのに…すっかりと反応して、硬く張り詰めている性器と…ヒクついている
自分の蕾が恨めしかった。
其処を慣らしもせずに、いきなり…克哉のドクドクと脈動している熱いペニスを
宛がわれてぎょっとなっていく。
「そ、それは…や、やめて…く、れ…! 佐、伯…!」
やっとこの一ヶ月で、最悪の記憶から…相手の姿を上書き出来たと
思っていたのだ。
許せないけれど、夕食前にキスされた時…憎い筈だった男を
愛しいと感じていた。
夕食と入浴を終えても火照りは収まらずに…身体が疼いて、先程まで
自らの手で宥めざるを得ないほど…確かに欲しがっていた。
しかし、こんな乱暴に求められるのはやはり…まだ、恐かった。
克哉がこちらを労わり、気遣うような言動をしながら抱いてくれたのならば…
御堂はここまで怯えることも、恐がることもなく素直に克哉を受け入れていただろう。
しかし…こんな乱暴な手段では、駄目だった。
「…あんたのココは…俺を求めて、こんなに激しく…収縮を繰り返して
吸い付いてきているぞ…? 少しぐらいは自分の欲望に…正直になっても
良いんじゃないのか…? 御堂…」
先端から蜜が滲んでいるペニスを何度も、何度もじれったくなるぐらいに入念に
相手のアヌスの縁に擦り付けて…ごく浅い抽送を繰り返していく。
それだけで…御堂の身体はかつて克哉から与えられた強烈な快感を思い出して
意思と裏腹に蠢いて、相手を求めているように収縮し続けている。
「そ、んな…事は、なっ…い…! デタラメ、を…」
「随分と…意地を貼るな…御堂…? お前の口は…本当に…嘘つきだ…」
克哉が腰を揺らす度に、グチャネチャと…いやらしい水音が
部屋中に響き渡っていく。
お互いの荒い呼吸と鼓動も…耳を突く。
ほんの少し克哉が腰を突き入れれば…御堂の最奥を深く抉る事だろう。
しかし…克哉は、部屋の電灯が消えているせいで…気づいてなかった。
御堂の瞳が…再び虚ろになりつつある事を…。
「さ、えき…本当に、やめ…て、くれ…!」
御堂はあの暗く閉ざされた世界に戻りたくなくて、必死になって
克哉に懇願していく。
多分、今ここで無理やり身体を貫かれれば…恐怖心が御堂の正気を
再び覆い尽くして…やっと開いた心の扉は無理やり閉ざされることだろう。
それを避けたくて、御堂は懸命に頭を振って…訴えていく。
しかし…憤りによって、かつての姿を取り戻している克哉には…その声は
正しく届く事はない。
お互いに好意がある事は確かなのに…二人の心はすれ違い続けて
最悪の展開へと突き進もうとしていた。
「こ、んな…のは…嫌だぁぁぁ!!」
御堂が、悲鳴を上げていく。
やっと…この男を好きだと、自覚したばかりだというのに。
それなのに…こんなに悲しい形で、また身体を繋げるという事実が
あまりに悲しくて…涙が、とめどなく溢れ続けていた。
けれど、暴走してしまった克哉には…すでに相手の懇願や涙程度では
ブレーキを掛けることは出来ない。
克哉もまた…根っこの部分では、御堂が愛しいと想う気持ちが
存在していた。
だから欲しい。深く感じ取りたい。心行くまで御堂を感じて貪りたい。
それと憤りの感情が絡まりあって…凶暴な性欲となり、克哉を突き
動かしているのだから…。
「御堂、俺を…拒むなっ! 受け入れて、くれ…っ!」
必死の形相で、相手の硬く慣らしてもいない内部に…ペニスを
ググっと押し込もうとしていく。
その瞬間、御堂の身体が恐怖に強張って、克哉の侵入を
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「いた、痛いっ…さ、えき…! 止め、ろぉ…!!」
御堂もまた、心から克哉を拒んでいる訳ではない。
こんなレイプみたいな形で、身体を繋げるのが嫌なだけなのだ。
ほんの少しでも克哉の優しさや気遣いが感じられる形での
行為であったのなら…ここまで強固に克哉を拒絶する事はなかった。
しかし今の克哉には…そこまで察する余裕はない。
ただ…自分が相手にまた、拒まれてしまっている。
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香坂
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女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
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