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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 今日のはオムニバス形式の一つではなく、
純粋に季節ネタを扱ったものです。
 つか、克克の禁断症状が久しぶりに出たので
唐突に書き下ろします。

 たまには克克書きたいんだ~~~い!!(魂の叫び)
  一話完結の予定でしたが、予想よりも長くなったので二話に
分けます。ご了承下さいませ(ペコリ)


織姫と彦星は雨が降ると会えないという

 けれど一年に一度、確実に会おうねという約束があるだけ
救いがると思う。
 長い年月を経ても、そうして気持ちが続いている事も
その日だけでも会って確認することも出来るというだけで
今の克哉は羨ましかった。

 仕事帰りの帰り道、駅前の設置された大きな笹と七夕飾りを見て
ふと、そう感じた。
 最寄駅のロータリーには今日は、町内会で設置したと思われる
大きな笹の葉と長机が置かれていた。
 いつもならタクシーや送迎の車がひしめいている空間は、今日だけは
この七夕飾りに占拠されてしまっているようだった。
 折り紙で作られた織姫と牽牛、ヒラヒラとした天の川をイメージしたあみかざりに
五角形や六角形のいちまいぼし、様々な色が組み合わさっているひしがたつづり、
笹の葉や、わっかなどを繋げて長く繋いだものなど目にも鮮やかな
飾りが笹の葉の先に飾られていて、見た目も華やかになっていた。

変なの、今まで七夕の日にこんな事を考えた事なんて
一度もなかったのに
 どうして今年に限って、こんな風に感傷的になってしまうのだろうかと考えて…
その原因らしきものに思いいたっていく。
「…やっぱり、あいつのせいかな…」
 
 そう小さく呟いた瞬間、克哉の脳裏に浮かんだのはもう一人の
自分のシニカルな笑みだった。
 我ながら本当に重症だと思い知っていく。
 
(本当に…年に一回でも、確実に会える保証があるだけマシだと思う。
相手が愛してくれているのを実感出来るなら十分幸せだと思う。俺なんて…
いつ現れるか判らないし、こっちの事をどう思っているかなんてまったく判らないし…
あいつが何を考えてオレを抱いているのかなんて、本当に理解出来ないもんな…)
 
 そう考えて深く溜息を吐いていきながら…克哉は七夕飾りを眺めていった。
 夜風に吹かれて、折り紙で作られた飾りと…無数の人々の願いが
込められた短冊が風に揺れていく。
 其れを見て、心にジワリと一つの願いが浮かびあがってくるのを感じていった。
 
「短冊に願い事を書けば、叶うか…なら、オレの願いも書けば叶うのかな…」
 
 何故か唐突に、もう一人の自分に会いたいという気分になった。
 顔を合わせれば確実に好き勝手に抱かれて、翻弄させられる事は予測出来る。
 それでもどうして…自分は彼の顔を見たいとそう思ってしまっているのか…。
 その理由に何となく気づいていくと同時に…克哉は短冊を書くために用意されたスペースへと
足を向けていった。
 机の隅にはすでに穴を開けられて麻紐を通されてすぐに吊るせる状態になった
色とりどりの短冊が用意されていた。
 その中から一枚、水色のを手にとっていくと…克哉は少し迷った末にこう書いていった。
 
『どうかあいつに会わせて下さい』
 
 相手の名前も、自分の名前も明記しなかった。
 けれど…そう書いた瞬間に強く強く、もう一人の自分の顔を脳裏に描いていった。
 次にいつ会えるか、自分の前に現れるか判らないけれど…この短冊に
願掛けをする事で少しでも
早くその日が訪れるなら良い、その程度の期待を込めて…
克哉は笹の葉にそれを吊るして
いこうとしていった。
 
(これを吊るしたら、さっさと家に帰ろう…)
 
 そう考えて、静かな動作で飾りに短冊を掛けていこうとした瞬間…背後から
誰かの腕が伸びて、克哉の手首をグイっと握りしめていった。
 
「えっ…?」
 
 突然、背後から何者かに腕を掴まれて…克哉は心臓が止まりそうになっていく。
 それだけでも十分に驚いたというのに、次に聞こえた声に…更に目を瞠っていった。
 
『これでお前の願いは叶えてやったぞ…。満足したか…?』
 
 熱い息と共に、耳奥に注がれていく声。
 途端に、心臓がドクンと荒く脈動していくのが判った。
 まさか今夜、会えるとは予想してもいあなkっただけに克哉は…動揺を隠しきれなかった。
 すると、グイっと身体を反転させられて…駅前広場という場所柄であるにも関わらず、
強引に唇を奪われていった。
 一瞬、隙を突かれてしまったせいで対応が遅れたが…少し経って、正気に戻ると同時に
克哉は全力で相手の身体をドン、と強く突き飛ばしていった。
 
「な、なななな何を考えているだよ…! ここ、公衆の面前だぞ…!」
 
「くくっ…俺はそんなのはまったく気にしないが?」
 
「少しは気にしろー! せっかく会えたって、こんな処でとんでもない事をされちゃ
たまったもんじゃない! 少しは状況っていうのを考えろよ、お前は…!」
 
 克哉は顔を真っ赤にしながら力説していくが、もう一人の自分は其れを面白がって喉の奥で
ククっと笑っていくだけだった。
 其れが無性に克哉には腹立たしくて、ムっとなっていく。
 
(…久しぶりに会えた事自体は嬉しいけれど…! やっぱりこいつって…
すっごい意地悪だ!
せっかく会えたのに、いきなりこんなに意地が悪い事を
しなくたって良いじゃないか…もう…!)
 
 悔しくてキっと相手を睨んでいくが、相変わらず相手の表情には余裕があって…
癪な気分になっていく。
 会えたのも、キスされた事自体は嬉しいのに…場所に問題がありすぎるせいで
克哉は素直になれないでいた。
 
「…こんな処では、するなよ。誰に見られるか判らないだろ…!」
 
「…ほう、お前は羞恥を快楽に変える性質だと思ったがな。今のキスだって…もし
誰かに見られていてもお前なら、燃えるネタになるだけだと思ったが…?」
 
 バシィィィィン!!
 
 相手の物言いに、つい反射的に手が出てしまい盛大にその頬を叩いていった。
 
「ぶはっ…!」
 
 その勢いで、眼鏡の身体が大きく仰け反っていく。
 克哉の方は憤りで肩を大きく上下させていきながら叫んでいった。
 
「バカバカバカ!  少しはオレの気持ちも考えろ~!」
 
 そうして、克哉は全力でその場から駈け出していった。
 その背中を見送っていきながら眼鏡は小さく呟いていく。
 
「…まったく、ついからかい過ぎたか。仕方ない…追いかけるとしようか…」
 
 そうして、自分たちのやりとりを見て立ち止まっていた野次馬の視線など全く
気にした様子もなく…悠然とした様子で、もう一人の克哉はその場から立ち去り、
消えた克哉を追いかける事にしたのだった―
 
                           
 
 
 
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※この作品は『メッセージ』を共通項目としたCPランダムの
オムニバス作品集です。
 暫くの期間、出てくるCPはネタによって異なります。
 通常のように一つのCPに焦点を当てて掲載する話ではなく
1話完結から2~3話で纏めて、鬼畜眼鏡ゲーム本編に出てくる一通りの
CPを消化するまで続きます。
 期間中、それらを踏まえた上で作品をご覧になって下さい。
 この形での連載期間はタイトルの部分に扱うCPも同時に
表記する形になります。興味ない方はスルーなさって下さい。

 本多×克哉?  ガムガムメッセージ  1(完)
 眼鏡×秋紀    愛妻弁当                 4(完)
 太一×克哉    二人の記念日                
  

―太一が耳元で歌った曲と、オルゴールが奏でる澄んだメロディが
シンクロして、克哉の胸に強く響き渡っていった

 窓の外では、藍色の夜の帳が完全に消えて…ゆっくりと
朝の刻を迎えていこうとしていた。
 折り重なるような体制でベッドの上に横たわり…耳元で甘い吐息混じりに
歌われた克哉の顔は瞬く間にくすぐったさと嬉しさで真紅に染まっていく。

(うわっ…うわうわっ…! メチャクチャ、ドキドキするよ…! こんなの
不意打ち以外の何物でもないよ…!)

 あまりに耳奥に届く太一の声が掠れて甘くて、とても優しくて…
ドクドクドクと鼓動が荒立つのを自覚していった。
 
其れは一分程度の短い曲だった。
 小さく青い箱から、優しい旋律が奏でられていた。

―貴方に愛されて、手を取って歩んで来れて本当に良かった
 この記念すべき日をどうかいつまでも一緒に迎えていきたい
 あの日、貴方が手を取ってくれたから今の俺がいるんだから…
ずっとこれからも一緒にいようよ 愛しているよ…

 優しく、ゆったりしたテンポの曲だった。
 其れに合わせて、太一が耳元で愛の歌を歌っていく。
 一分弱の短い曲に、想いが要約された歌詞。
 飾らぬ言葉で紡がれた歌詞と、綺麗なメロディが…克哉の胸を
強く心を打っていった。
 
(この曲は…きっと…太一が、作った曲だ…太一の癖が、ちょっと残ってる…)

 一度聞いていっただけで克哉は、そう確信していった。
 微妙に太一が作る曲の癖が残っていたから、一度聞いただけで
すぐに判ってしまった。
 そのイメージを例えるならば、藍色の澄んだ夜空に月が輝いているような、
朝日の光がキラキラと輝いていうような…そんな感じだった。
 どこかで幻想的なものを感じさせる曲調を、オルゴールで奏でる事で
たった一度聞いただけで胸に鮮烈に焼きつくぐらいのインパクトを
生みだしていった。

「太一…ずるいよ…こんな綺麗なメロディに合わせて耳元でそんな風に歌われたら…
それだけで腰砕けになってしまいそうだよ…もう…」

「へへ、けど…俺の想いがダイレクトに克哉さんの胸にも響いたっしょ?
これ…克哉さんに贈ろうと作った世界で一つのオルゴールなんだ。
この曲はさ…オルゴールにすることを最初から考慮して作った曲なんだけど
良い出来でしょ?」

「…うん、凄く綺麗なイントロだよ。幻想的というか、ロマンチックというか…
子守唄のような優しさがある旋律だと思う。俺…凄く、この曲好きだな…」

「やった! 克哉さんに気に入って貰えたなら作った甲斐があったよ!
オルゴールで曲を作って、其れに合わせて歌って気持ちを伝えるって…
インパクトに残るかなって思ったからやってみたんだけど、大成功だったみたいで
マジで良かったよ」

「もう、太一ってば…子供みたいに、無邪気に笑うね…」

 肩越しに振り返って、年下の恋人の顔をそっと見つめていくと…
其処には自分のたくらみが大成功を収めて、心から喜んでいる
青年の顔があった。
 こんなサプライズが、この記念日に用意されているとは予想しても
いなかっただけに克哉の驚きと喜びは半端ではなく、うっかり涙腺すら
緩みそうになってしまう。
 ポロポロ、と克哉の意思と関係なく透明な雫が目から溢れて…
頬を伝っていく。
 この反応はそれだけ…太一の曲とメッセージが克哉の心の琴線に
触れて感動させていった何よりの証でもあった。


「あれ…克哉さん、泣いているの…?」

「うん、嬉しくて…まさか、太一がこんな贈り物をしてくれるなんて…
予想してもいなかった、から…わっ…!」

 これが嬉し涙であることを伝えると同時に、太一が克哉の
目元をそっと舐めとっていく。
 その行動も想定外のことだった為に慌ててしまうが…すぐに
唇に淡く口づけを落とされて、反論の言葉は封じられていった。

「…克哉さんが、喜んでくれて本当に良かった…!」

 そして、触れるだけのキスが解かれると同時に太陽のような
明るい太一の笑顔が視界に飛び込んできた。
 その瞬間、克哉は心から…あの日、彼と共に生きる事を
決断して良かったと思った。

(本当は四年前…駆け落ちすることになった時…凄く迷っていた。
何もかもを捨てて太一だけを選びとるのは…凄く勇気がいったけれど…
オレは、正しい道を選べたんだ…。今、心からそう思うよ…)

 きっと、今…世界で一番、太一が克哉を必要としてくれているから。
 愛してくれているから、そう信じられるからこそ…克哉は四年前の
自分の決断が間違っていなかった事を確信していった。
 彼が傍にいてくれることに感謝して、胸が暖かくなるのを感じていった。

―世界でただ一つのオルゴールと、愛しい人間の肉声で歌われた一曲

 其れは、今でも太一が自分を愛してくれていると伝えてくれている
メッセージであり、最高の贈り物だった。
 嬉しくて嬉しくて、今ならきっと死んでも人生に悔いが残らないだろうと
確信出来るくらいに心が満ち足りているのが判った。

「太一、本当にありがとう…。今まで贈られたプレゼントの中で、
一番嬉しかったよ…」

 そうしてきつく抱きしめて、感謝の言葉を伝えていく。
 そして…彼が伝えてくれた想いに応えるように、克哉もまた
太一の耳元に唇を寄せて、そっと囁いていった。

『大好きだよ…これからもずっと太一の傍にいたい…』

 そう呟いた時、吐息が掛かるぐらい間近に存在している太一の顔が…
満面の笑みを浮かべて、克哉を強く強く抱きしめていく。

『ん、俺も同じ気持ちだよ…。だから一生、俺の傍にいてよ克哉さん…」

 その言葉にクスっと笑っていくと、了承の意を伝える為に羽のように
柔らかいキスを太一の唇に落としていった。
 気持ちを確認し合うように…無意識のうちに二人の指が絡め合って
ギュっと握りしめられていく。
 そして…キスをしながらお互いの想いを確認しあっていきながら、彼
らは四年目の記念日の夜明けを静かに抱きあいながら迎えていったのだった―


 





 とりあえず、『二人の記念日』の最終話は
5日の朝の内にアップするのは間に合いそうにないので
夜に掲載出来るよう頑張ります。
 もうちょっとだけお待ち下さいませ~。

 そして先日、報告したトラ猫の事をちょこっと
語らせて頂きます。
  一週間ほど前から我が家にウロチョロと顔を出すように
なったんですが…一応日増しに姿を見せる時間が増えています。
 こっちがフト、パソコンやゲームをしていると傍らに
チョコンと座っていたり寝そべっていたりします。
 そういう姿を見ていると本当に可愛いんですけどね…。

 何故かこの猫、シャーシャー言って普通に鳴きません

 …何というか、ヘビかこの猫はってツッコミたいんですけどね。
 出入りするようになってから、まともに鳴いているのを聞いたことが
ないんですよ。
 餌を上げる時もシャー! 近くに寄ってもシャー!
 警戒心をまだ持たれているみたいだから仕方ないかも知れないけれど
可愛い外見をしているんだから普通に鳴いてくれれば良いのに、と
心底思います。

 けどね、どうもミルクが大のお気に入りらしくて…ミルクを上げると
夢中で飲むんですよ。
 その姿は本当に可愛くて×3
 そして香坂、気づきました。

ツンデレの魅力ってコレなんだ!

 警戒心を持ってシャーシャー鳴いている癖に、気がつくと傍らにいて
寛いだりこっちの上げた餌を食べてくれているのはまさにツンデレ!
 嗚呼、ツンとしてデレっとしているよこの猫…と思ったら、今度は
普通にニャ~と鳴いている処を見たいと欲が出ています。
 何かこの二日間でこの子に牛乳のパック一本分は飲まれているんですが…
良いよ、貢いでやるよって感じになっています。

子猫は可愛いなぁ…これで外見が可愛くない猫にシャーシャー
言われたら叩きだしている処ですが、愛くるしい外見なので許す。
 …撫で撫でするよりも、早く普通にニャ~ニャ~言ってくれるように
祈っております。
 シャーシャー言う癖、出来れば早く直って欲しいものです。はふ…。

 7月5日、22時追記

 ちょっと気になったので『はじめに』のページを短く纏めました。
 と言ってもここからリンク外した連載作品等は全部、整理をした上で
『連載作品倉庫』に移動しただけです。
  トップからリンクを貼っているのは、ここ一年ぐらいに書いた作品になります。
 これでちょっとは見やすくなりましたかね?

 気づけば『はじめに』の記事の、掲載作品のリンクが
長くなっているのが気になったので…本日、ちょっと
色々と修正しました。
 一話完結系の話はここから取り払って、『一話完結倉庫』の
中に格納して、統合しました。
 その際に一話完結ものに対しても短いものですが
ほぼ全部の作品に説明文を附けさせて頂きましたので
良かったら見てやって下さい。

…説明文を書く為に過去の一話完結を読み返したら…
大半がチャットに参加したり、企画に参加したことに対しての
副産物でした。
 かつての私ってば頑張っていたのね…と少し遠い目に
なりました。
 とりあえず暇つぶし程度に目を通して下されば幸いです。では…。


 

オムニバス作品集(CPランダム。テーマは「メッセージ」で共通しています」

※この作品は『メッセージ』を共通項目としたCPランダムの
オムニバス作品集です。
 暫くの期間、出てくるCPはネタによって異なります。
 通常のように一つのCPに焦点を当てて掲載する話ではなく
1話完結から2~3話で纏めて、鬼畜眼鏡ゲーム本編に出てくる一通りの
CPを消化するまで続きます。
 期間中、それらを踏まえた上で作品をご覧になって下さい。
 この形での連載期間はタイトルの部分に扱うCPも同時に
表記する形になります。興味ない方はスルーなさって下さい。

 本多×克哉?  ガムガムメッセージ  1(完)
 眼鏡×秋紀    愛妻弁当                 4(完)
 太一×克哉    二人の記念日          

―激しく愛し合って、再び目を覚ました頃にはすでに窓の外は
白く染まり始めていた
 
 窓から眩い光が差し込んで来た事で克哉は意識を覚醒させていき、傍らに
太一の存在と、自分の身体の奥に愛し合った痕跡が残っているのを思い出し…
いきなり狼狽していった。
 
(ああ、もう夜明けか…。今の時期、確かに陽が昇るのは早くなっているけど、
昨晩は太一とあんなに激しく…うわっ、思い出したら何か恥ずかしくなってきた…!)
 
 自分の言った一言が、余程太一の心に火を点けてしまったのか昨晩の行為は、
いつになく激しくて情熱的なものだった。
 おかげで克哉は途中で意識を手放す結果になり…その事を思い出すと同時に、
カアっと顔が赤く染まっていく。
 それでも身体が思いの外さっぱりしているのは、克哉が気を失っている間に
太一が身体を拭いてくれていたからのようだ。
 その事に気づいた克哉は、自分の傍らで眠りこけている太一を優しく
見つめて、そっと髪を梳いていった。
 
「…ありがと、太一…」
 
「ん…」
 
「あ…起こしちゃった…かな…?」
 
 軽く触れた瞬間、太一が身じろぎをしたので起こしてしまったかと
心配になったが…太一はその後も安らかな寝息を立てていたのでホッとした。
 こんな風にリラックスした感じで彼が眠っているのを見るのは本当に
久しぶりだったからもう少しだけでもそっとしておきたかったのだ。
 そうして愛しい恋人の顔を眺めていきながら、克哉はふとこの四年間を
軽く振り返り始めていった。
 
(…太一と駆け落ちして、もう…四年か。何か本当に…あっという間だったよな…)
 
 そして走馬灯のように、彼との様々な思い出が頭の中に蘇ってくる。
 プロとファイバーの営業を手がけていた頃に、喫茶店ロイドに通って太一と
色々な会話を過ごしていた事。
 太一が当時活動していたバンドのライブに初めて行った夜の事を。
 太一の部屋に上がって、ギターの弾き方を教えて貰った時の事を。
 そして…違法のサイトをやっている事が判明して問い詰めて、ゴタゴタしている間に
四国の実家に彼が連れ戻されてしまい…迎えに行った日の事。
 其れは駆け落ちするまでに起こった三カ月余りの事。
 そして…四年前の今日、自分たちは何もかもを捨てて…体一つでアメリカに渡ったのだ。
 本当にこれから先、二人でやっていけるか不安に思った事は何度もあった。
 
(けど…いつだって、太一は笑っていてくれたから。その笑顔が傍にあったからこそ…
この四年間を過ごして来れたんだなって今は思うよ…)
 
 言葉が通じないアメリカ国内での生活。
 それまで英語はそんなに得意ではなかったが生きていく為に、全力で太一も克哉も
英語を身体で覚えていった。
 最初は食べて行くのが精いっぱいだったが…向こうで新たにバンドを組む事となり、
その活動が軌道に乗ってそれなりの成果を出したからこそ…こうして再び日本の地を
踏む事が出来たのだろう。
そして今、思えばMGNの新商品のタイアップ曲を手がけるようになった頃が、
帰国してからの自分たちの転機だったように思う。
 祖父の寅一の事を恐れて、その気配を感じただけでアメリカに帰ろうと
言い出したぐらい、太一は自分の祖父の事を恐れていた。
 だが一度、克哉が誘拐された事で腹を括れたようだった。 
 祖父から逃げ続けている限り、自分を跡継ぎにしようと決して諦めることなく
追いかけてくる事を彼はきっと思い知ったに違いない。
 だから彼は初めて、祖父と向き合い…啖呵を切った。
 
―俺は絶対にあんたの後なんて継がないからな!!
 
 あれだけ恐れて逃げ回っていた祖父に対して、あんな風にきっぱり言うなんて…
恐らく物凄い勇気がいっただろう。
 けどそれでも太一はあの時、初めて正面切って祖父と対立も辞さない覚悟で…
自分の夢を選びとったのだ。
 
「…太一、本当にこの四年…頑張ったよね。オレ…本当に太一は偉かったし、
凄かったと思うよ…」
 
 そして慈しむように優しく太一の頬を撫ぜていった。
 その瞬間、眠っている相手にまつ毛が静かに揺れて…その瞼が開かれて、
明るい鳶色の双眸が表れていった。
 
「おはよ…克哉さん…」
 
「あ、御免…太一、起こしてしまったみたいで…」
 
「ううん、良いよ。それに外はもう明るくなっているみたいだし…そろそろ起きないと
せっかくの記念日が勿体ないから」
 
「あ、そうだね…もう、今日なんだよね。四年前…オレ達が駆け落ちしたのって…」
 
「うん、そう。俺達の運命の転機の日。ジジイの元から逃げ出して…新しい一歩を
踏み出した記念すべき日だよ…」
 
「うん、そう思う…。あの日、決断して…全てを捨てる覚悟で太一の傍にいる事を
選んだから…今のオレ達がいるんだよね…」
 
「そうだよ、克哉さん…。四年前に、オレの手を取ってくれてありがとう…。今でも
それを心から感謝している…」
 
 そうして目を焼くような眩い太陽の光が差し込んでくる中…太一が本当に
嬉しそうに笑顔を浮かべていった。
 其れを克哉は愛しげに見つめていく。
 ごく自然に二人の手は重なり合い、瞳を見つめあう。
 そうしている間にごく自然に微笑みあい…そして、柔らかく唇は重なり合っていった。
 太一の手が、克哉の手を確認するかのように強く握りしめていく。
 軽く痛みすら走るぐらい力を込められていても…克哉にはそれだけ太一が
こちらを求めてくれているような気分になったから、むしろ嬉しかった。
 そして静かにキスを解いていくと…太一の言葉に対しての返事をそっと呟いていく。
 
「ううん、礼を言うのはオレの方だよ…。オレ、この四年間でいろんな事を体験して…
見てきた。その経験の全ては、あの日…太一の手を取ったから得られたものだって
思っているから。自信がなくて、いつも俯いてばかりいたオレを変えて…自分に自信が
持てるようになったのは、太一がこんなオレを愛してくれたからだよ。だから…
オレの方こそ、太一に感謝しているよ…」
 
「克哉さん…うわっ、すげぇ嬉しいかも…。克哉さんにこんな事言って貰えるなんて…
感激のあまりに、俺…泣いちゃうかも知れない!」
 
「わわっ! お願いだからこんな事で泣かないでくれよ! ただでさえ太一は
ウソ泣き以外で泣いている処を今まで見た事がないんだから…今、涙を見せられたら
どんな顔をして良いのか判らなく、なってしまうから…わっ!」
 
「隙あり!」
 
 太一の『泣いちゃうかも』発言に克哉が狼狽している間に、いきなりガバっと
強く抱きつかれて身体の上に覆い被さられていった。
 さっきまでは克哉が身体を起こして、太一が寝そべっている体制だったのが
一瞬で逆転されていく。
 吐息が掛かりそうな距離に、太一の顔が存在していて克哉の心臓が思わず
大きく跳ねていった。
 
(うわ…何で今更、こんなにドキドキしているんだよ…! 恋人同士になって
数え切れないぐらい抱き合っているのに…今日の太一は何となく違って見えるから…
凄い、ときめいちゃっているよな…)
 
 今度は太一の方が上になる体制になったせいか、窓から差し込む太陽の光が…
太一の明るいオレンジの髪を透かして、まるで炎のように克哉の目には映っていった。
 何となく恋人の胸の奥に潜んでいる情熱的な面をチラリと垣間見たような気がして…
再び体温が上昇していくのを感じていった。
 
(こんなに密着していたら…太一に、心臓がバクバクしているの聞かれて
しまうかも知れない…!)
 
 其れが何となく恥ずかしくて、真っすぐにこちらを見つめてくる恋人の顔を
まともに見つめ返せなくなり…視線を逸らすように横を向いていく。
 
「こっちを見てよ…克哉さん。そんな態度されていたら…用意していた贈り物、
そっちに渡せなくなっちゃうから…」
 
「えっ…贈り物、って…?」
 その単語が不意に、意識に引っ掛かっていく。
 そういえば…さっき、玄関先で抱きあう直前にも太一は何かを用意している
ような発言をしていたような気がした。
 
「あ、そうか…この体制でも十分に伝えられるか。ちょっと待ってて…」
 
「えっ…わっ! な、何をするんだよ…! どうしてうつ伏せになんて…!」
 
 太一が何かを思いついた途端に、克哉の身体は思いっきり反転させられて…
うつ伏せにさせられていき、背中にノシっと太一にのしかかられる格好に
させられていった。
 そのおかげで相手の表情や行動が、全く判らない状況にされていく。
 克哉は思わずもがいたが、太一の体重が掛かっているせいで思うように身動きが
取れなくなってしまう。
 そうしている間に太一は背後から何かを探っているようにゴソゴソと音を立てていき…
そしてゴトン、と音を立ててベッドの傍にあるテーブルに何か重量がありそうな
品を置いていった。
 
「克哉さん…良ければ、そのまま聞いて…。これが今の俺の気持ちだから…」
 
 そう囁かれると同時に、ジージーと何かを回す音が耳に届いていく。
 そして部屋の中に澄んだ旋律が響き渡り…その音に合わせるように、太一が
己の声を重ねて優しく耳元で歌い始めていったのだった―
 
 



 とりあえず、『二人の記念日』の最終話を書き上がるまで
ちょっと時間掛かりそうなので軽く近況をば。

 最近、眼鏡が壊れました。
 そして修理に出したポメラ2は、新しい製品と早くも交換される形で
手元に戻って来ました。
 …ん~眼鏡は二年ぐらい使用した後だから、まあ自然現象とも
言えるんだけど新しいポメラ、一カ月経たないで壊すって一体どうよ。
 まあ…新しい子にも保証書がついていたから、これから11か月の間にまた
壊れた場合は交換や修理をして貰える訳ですが…出来れば、使いたくないっすね。
  けど、私…一体何をやったんだろって感じです。

 後、最近…うちにまた新しい猫が一匹出入りするようになりました。
 何かね、見た目が凄く可愛い子なので…私的にはすでにメロメロです。
 生後3~4カ月程度の子なんですが、一週間ぐらい前から家の中を
ダダダダ~と駆け抜けていて、ここ数日ぐらいからご飯を食べるようになっております。
 どうにか写真撮影に成功したので、ここにちょこっと。



 名前はトラって名づけられました。
 どうやらメス猫っぽいです。
 そしてウチに出入りしているオス猫が連れて来た子っぽい…。
 けど写真の通り、可愛い猫なので…まだ警戒されているので撫でたりは
出来ないんですが、私が作業していると傍らにチョコンと横たわって寛いで
いたりするのですでにメロメロ状態です。
 どうせ猫に弱いです。可愛い猫に懐かれたら勝てません。
 ええ、メチャクチャ猫には甘い性分なので(汗)

 子猫はあっという間に大きくなってしまうので…出来れば今くらいの大きさの内に
撫で撫で出来るようになりたいな~というのが密かな野望です。
 後、最近…AXNで『LOST』という海外ドラマを見るようになりました。
 お父さんが3月ぐらいからずっと平日は毎日見てて…ちゃんと見るように
なったのはここ2~3週間ぐらいですが、流し見してて興味が湧いたので
最近は時間になると待ち構えて最初から終わりまでちゃんと見ています。
 シーズン4から5に掛けてからの頃しかまともに見てないので…その前の事が
全然判らないですが、それを全部見ている母に質問したりして、どうにか
埋めております。
 7月11日の1~5の総集編番組は絶対に見てやろうともくろんでおります。
 
 最近の私の近況はこんな感じです。
 …とりあえず太一×克哉編は金曜日の夜までにはアップして仕上げるのを
目標にしております。それまでちょっとお待ち下さいませ~ではでは!
 
 
 

※この作品は『メッセージ』を共通項目としたCPランダムの
オムニバス作品集です。
 暫くの期間、出てくるCPはネタによって異なります。
 通常のように一つのCPに焦点を当てて掲載する話ではなく
1話完結から2~3話で纏めて、鬼畜眼鏡ゲーム本編に出てくる一通りの
CPを消化するまで続きます。
 期間中、それらを踏まえた上で作品をご覧になって下さい。
 この形での連載期間はタイトルの部分に扱うCPも同時に
表記する形になります。興味ない方はスルーなさって下さい。

 太一×克哉    二人の記念日      1

さっきまで泣きそうな顔をしてこちらの事を責めていた筈なのに、強引な力で
克哉を引き寄せた太一の顔は『男』の表情になっていた。
 お互いの吐息すら掛かりそうな位置で、それを目の当たりにして克哉は
つい言葉を失ってしまう。

「…克哉さんが俺たちの記念日をちゃんと正しく覚えていてくれて良かった。むしろ、
今日だねってカマを掛けて頷かれてしまったら、俺…悲しかったから」

「…やっぱり、そうだったんだ。もう…太一、人が悪いよ。あんまり何回も聞いて
くるから少し不安に思ってしまっただろ…」

「ごめんごめん、けど克哉さんって凄く控えめな性格しているからさ。たまには
愛されているんだって確認、どうしてもしたくなってしまうんだよ。だから
怒らないで欲しい…ごめんね」

「もう…そんな顔されたら、怒れないだろ…ズルいよ、太一…」

 そうして二人はマンションの玄関先で抱きあいながら…戯れるような
キスを交わしあっていく。
 太一が本当にすまなそうな顔をしているせいで、克哉も相手の試すような
行為を咎める事が出来なくなってしまった。
 それに軽く苦笑していきながら…啄むようなキスをして、機嫌を直さざる
得なくなってしまう。

「…あれから、もう四年か。何か太一と出会ってから…時間が物凄く
早く過ぎているように感じられてしまう。最初に太一と会話した頃には…
こんな風な関係になるなんてまったく予想していなかったな…」

「そう? 俺は克哉さんが食パンを咥えてロイドの前を全力疾走している姿を
見た時から何か運命感じたけど。何というか、俺からしたら克哉さんの
印象って…半端なく凄かったから」

「っ…! もう、またそれを言う! 恥ずかしいからそのことを何度も
言うの止めろよ。恥ずかしくなるだろ…!」

 二人の馴れ初め、というか太一が克哉を初めて見た日のことは駆け落ちした
四年間に何度も話題に上がって来た。
 その度に克哉は顔を赤くして恥ずかしがり、太一はその反応を可愛いと思いつつ
からかうような笑みを浮かべて楽しんでいく。
 それは二人の間で何度も繰り返されてお馴染みのやりとりだった。

「ううん、一生忘れない。その出来ごとがあったから…俺は克哉さんの事を
強烈に覚えていて…今、こうして一緒にいられるようになったんだと思うから…」

「もう…太一ってば…んっ…」

 そして、少しだけ深い口づけを交わし…その感触と相手の温もりをしっかりと
感じ取っていく。
 キスを解いた頃、リビングに掛けてある時計をチラリと眺めていく。
 今日が、後40分程度で終わろうとしている。
 そのことを自覚した途端、克哉はしみじみと呟いていった。

「明日で…オレ達が駆け落ちした日から、四年か。何かアメリカに
渡ってから日本でおじいさんと和解するまでの期間って…必死になってて
あっという間に過ぎてしまった気がする…」

「ん、そうだね…。あのジジイの手から逃れる為に、五十嵐の屋敷を
脱出してから速攻でアメリカ行きを決めたもんね。あの時は無我夢中だったし…
余裕なんてまったくなかったから。けど、俺…その時からずっと克哉さんが
傍にいてくれることを感謝していた。克哉さんが俺を追いかけてくれなかったら、
何もかも捨ててでも夢を追いかけるって、その道を選びとれなかった気が
するからさ…」

「…それは、オレも一緒だよ。太一がいてくれたから…今の未来があると
思っているから。ま…太一は大学中退になっちゃったし、オレもキクチを
中途半端な形で辞める事になったから、それだけは心残りだけど…
あの時は振り返っている余裕なかったもんね。モタモタしていたら、また
引き離されるだけだったから…」
 
 そうして二人は4年前の出来事を思い出して、クスクス笑っていく。
 一連の流れを思い出して、克哉がふと…愉快そうに笑っていった。

「あ…でも、今日も良く考えたら、オレ達の記念日だよ…?」

「えっ…どういう意味、克哉さん?」

「ん…駆け落ちしたのは確かに明日だったけど。その前夜にオレ達…
初めて結ばれたじゃん。それを入れたら…今日だって、充分にオレ達の
記念日だろ?」

「っ…! 克哉さん、それ言うの反則。そんなことを言われたら、
贈り物をするよりも克哉さんを欲しくなっちゃうよ…」

「えっ…贈り物って、太一…んんっ!」

 そうしている合間に太一からの抱擁と口づけが熱を孕んだものに変わっていく。
 それに反応して克哉も余裕を失っていく。
 何もかもを奪いつくされそうな情熱的なキスに意識が遠くなり、何も
考えられなくなっていった。

「太一…!」

 そして、克哉が応えるように甘い声で名前を呼んでいくと…太一は
玄関先で克哉を求め始めて、二人はその熱を貪るのに無我夢中に
なっていったのだった―

 

 

※この作品は『メッセージ』を共通項目としたCPランダムの
オムニバス作品集です。
 暫くの期間、出てくるCPはネタによって異なります。
 通常のように一つのCPに焦点を当てて掲載する話ではなく
1話完結から2~3話で纏めて、鬼畜眼鏡ゲーム本編に出てくる一通りの
CPを消化するまで続きます。
 期間中、それらを踏まえた上で作品をご覧になって下さい。
 この形での連載期間はタイトルの部分に扱うCPも同時に
表記する形になります。興味ない方はスルーなさって下さい。

―ねえねえ克哉さん、今日が何の日だったか覚えてる?

 一日の活動を無事に終えて、現在自分たちが拠点としているマンションに
戻ると同時に、太一はそう克哉に聞いてきた。
 三年間のアメリカでの活動を経て、今年に入ってMGNの新商品のタイアップ曲を
手がける為に日本に戻って来て。
 紆余曲折を経て、太一の祖父とも一応和解し…安定した生活をようやく得られた
ばかりの頃だったから、その質問には克哉は言葉をつい失ってしまった。

「えっ…? 今日に、何かあったっけ…?」

「ええっ! 覚えていないの! 克哉さんってば酷い! 今日、俺達の記念日じゃん!」

「………っ?」

 克哉は突然の質問に、言葉を失ってしまい…たった今、点けられたばかりの
蛍光灯の光の下で、自分の恋人の顔をマジマジと見つめてしまっていた。

(今日って確か…11月の終わりだったよな。その日に何かイベントとか行事とか
あったっけ…少なくとも、『今日』には何もなかった筈だけど…?)

 突然、太一から投げかけられた疑問は、克哉を軽く思考の海へと叩き落とす形となった。
 カレンダー上の記念日や、行事の関係はパッと見…思いつかない。
 これが10月の終わりなら「ハロウィン」という答えが出来た訳だが、11月では
まったく心当たりがない。

(…どうしよう、思い浮かばない!)

 そして1~2分間、克哉は脳味噌をフル回転させて考えて抜いた。
 だが真剣に考えれば考えるだけ思考の迷路に入り込んで抜け出せなくなって
しまうような気がした。
 そんな彼の反応に、最初はワクワクした様子で待っていた太一も時間が
過ぎれば過ぎるだけ落胆の色が濃くなっていく。
 元々、人の顔色を伺う部分があった克哉はその表情の変化を見て…太一に
対して心底、申し訳ない心境になった。

(ああああ…! 太一ゴメン! 何かオレってば重要なことを忘れてしまって
いるみたい…!)

 心の中で恋人に対して盛大に謝罪していく。
 だが、それでもピンと来る回答が思い浮かばなかったので克哉は本気で
途方に暮れていった。
 一つ、思い当たるものがあったが…克哉はその日のことは決して忘れない。

(まだ、その日になっていないのに…今日の時点で言える訳ない。一日でもズレるのは嫌だし…。
やはりオレの答えは「今日は記念日じゃない…だよ、太一…!)

 同時に、だからこそそれは今日ではないと確信を持って言えるから…克哉は
口を閉ざすしかなかった。

「…ねえ、克哉さん。…本当に思い出せない訳…?」

「ご、ごめん…! とっさにそう聞かれても何も思い浮かばなかった…。
あの、今日に何があったのかな…?」

 克哉は太一を刺激しないように恐る恐る問い尋ねていった。
 だが、答えられないということが太一にとっては余程ショックだったらしい。
 大げさに泣くような真似をして、畳みかけるように言葉を並べ始めていった。

「か、克哉さんってば実は凄い薄情だったんだね…! 俺はこの記念すべき日
のことをこの四年間、一日だって忘れたことがなかったのに…! 克哉さんに
とってはたったそれっぽっちで忘れてしまえる日だったなんて…!」

「え、ええっ…! け、けどゴメン…。それは今日じゃなかった気がするんだけど…!」

 相手の剣幕に、克哉は一つだけ心当たりを思い出していく。
 だが、携帯でとっさに確認していったがやはりまだ…その日ではなかった。
 それに至るまで、一時間近くあるのを見て…克哉は迂闊なことは言えないと思った。
 
「じゃあ、それはいつな訳…?」

「その、それは間違いなく…明日の方だったと思う。だから今日は記念日じゃない。
それがオレの回答なんだけど…違うかな?」

 克哉は、しっかりとした声でそう答えていく。
 最初それを聞いた時…太一は軽く目を瞠っていったが…次の瞬間、小刻みに
身体を震わせていき…次の瞬間、意地の悪い笑みを浮かべていった。

「えっ、太一…?」

 その顔を見て、克哉が茫然となっていくと…克哉は唐突に、強い力で
太一の腕の中に抱き込まれていったのだった―

 


 

※この作品は『メッセージ』を共通項目としたCPランダムの
オムニバス作品集です。
 暫くの期間、出てくるCPはネタによって異なります。
 通常のように一つのCPに焦点を当てて掲載する話ではなく
1話完結から2~3話で纏めて、鬼畜眼鏡ゲーム本編に出てくる一通りの
CPを消化するまで続きます。
 期間中、それらを踏まえた上で作品をご覧になって下さい。
 この形での連載期間はタイトルの部分に扱うCPも同時に
表記する形になります。興味ない方はスルーなさって下さい。

 本多×克哉?  ガムガムメッセージ  1(完)
 眼鏡×秋紀    愛妻弁当             



 屋上に飛び込んできた人物は、現在の克哉の直属の上司に当たる
御堂だった。
 本多にとっても本日午後から開かれる打ち合わせで顔を合わせる
予定の人物だった。
 その突然の乱入に空気がピリピリするのと同時にその場に
御堂の大声が響き渡っていった。

「佐伯君! ちょっと本多君を借りて構わないか!」

 扉をバァンと強く打ちつけながら登場されたので二人の視線も
自然と其処に釘付けになった。
御堂はどう見てもすごい剣幕だった。

「あ、あの…御堂部長。俺、何かしましたか…?」

 基本的に御堂に敵意を持って、反発心を抱いている本多も相手の
剣幕に自分は何か大きな失敗をしてしまったと察したようだ。
 恐る恐る尋ねていくと、御堂の切れ長の双眸がキっと一層つり上がっていく。

「何をしたか、じゃない! これから打ち合わせに使用する予定の書類一式が
まったく違う物と間違って入っていたぞ! これは前回、君の会社に営業を
任せた製品に関する資料ではないか! これでは打ち合わせなど出来ないだろう!
 即刻取りに戻ってくれ! 二時の打ち合わせ開始までには何が何でも
間に合わせてくれなければこの仕事の話は無かったことにさせてもらう!」

「ええええええっ!」

 矢つき早に、自分がやってしまった失敗を羅列されてついでに命令も
下されてしまった為に本多はみるみる内にに顔面を蒼白させていった。

(そ、そういえば今日は…久しぶりに克哉と一緒に昼飯が食えると思って
会社を出る前、すっげー浮かれていたかも…)

 本多はさっきまでの自分の様子を思い出して、心臓が不安で脈動を
激しくさせているのを感じていった。
 人間、何か他の事に大きく気を取られている時は得てして小さなミスを
しやすいものだ。
 克哉に会えると浮かれて、昼飯を何を買っていくかに意識を取られて
しまっていたから、本多は書類の確認という初歩的な行為をつい忘れて
会社を出て来てしまったのだ。
 その事に気づいた瞬間、本多はその場に立ち上がり…大慌てでこう叫んでいった。


「す、すみません! 今から大急ぎでキクチまで戻って…必要な書類一式を取ってきます!」

「ああ、必ず間に合わせてくれよ。君たち営業八課の力を見込んでもう一度
頼むことにしたんだから…その期待をこんな事で裏切る真似だけはしないで
もらいたい」

「わ、判ってます! じゃあ今から急いで帰社します!」

 もうさっきまでの克哉の一言一言に傷ついて泣きそうになっていた
面影は全くなかった。
 大急ぎで仕事をしている男の表情に戻って、きっぱりとそう宣言していく。
 そして慌てて克哉の方を向きかえり、最後にこう告げていった。

「わりっ…克哉! キクチに戻らないといけなくなった! この埋め合わせは
いずれさせて貰うから…またな!」

 そう残して、電光石火の勢いでその場から本多は消えていった。
 そしてポツリと、友人が残って聞いていたのなら確実に傷つけそうな一言を
呟いていった。

「…別に埋めわせなどしなくて良いが。むしろ俺は一人で今日は飯を食えて
嬉しいぐらいだがな…」

 そうしてさっさと、乱入してきた本多と御堂の事を頭の隅に追いやって
克哉は秋紀が作ってくれた弁当に集中していく。
 御堂は用事が終わったらさっさとその場から立ち去って行ったようなので
彼は心おきなく、昼食を食べるのに専念していった。
 秋紀の初めて作ってくれた弁当は正直、味付けがまだ未熟な部分が
時々感じられた。
 だが付き合い始めた当初は…全く料理が出来なかったことを思えば、
恋人の少年がどれだけ努力してここまで作れるように持って行ったのかが
感じられてつい微笑ましい気分になっていく。

(頑張ったな…秋紀…)

 食べ終わった頃には米粒一つ残すことなく、弁当箱の中身は
綺麗に平らげられていた。
 そして青空を見て、年下の恋人の顔を思い描いていく。
 丁度その同じ頃に…通っている高校の屋上で秋紀もまた同じ行動を
取っている事など想いもよらず…。

『大好き』

 弁当のご飯の上に象られていたメッセージ。
 それを見て、心が暖かくなっていく。
 ふと声を聞きたい気分になり…克哉は携帯を取り出していった。

(繋がるかどうかは判らないがな…)

 そう思いながら恋人の番号をダイヤルしていくと、ワンコールですぐに
繋がっていった。

『克哉さん! お弁当どうでしたか!』

 どうやら、秋紀は克哉の感想がどうだったかずっとやきもきしながら
携帯を手に持っていたのだろう。
 そうでなければこれだけのレスポンスの早さは望めないだろう。
 相手の心情が手に取るように判ってしまって、つい微笑ましい気分に
なってしまう。
 そして克哉は優しい声音でこう告げていった。

「ああ、とても旨かった…。そして俺も、お前のことが『大好き』だぞ…秋紀…」

『あ…』
 
 克哉からその一言を聞いただけで、電話口の向こうで秋紀が嬉しさで
泣いているのが伝わってくる。
 本当に彼が、克哉のことを好きでいてくれているんだと思って…自然に
笑みがこぼれていった。

「…今夜は早目に帰る。たっぷりと可愛がってやるから…覚悟しておくんだな」

『か、克哉さん! は、はい…僕、待っていますから…。お仕事、
頑張って下さいね…』

「ああ。お前もな…じゃあ、そろそろ切るぞ…」

 そうして短いラブコールの時間は終わっていく。
 そして今から恋人に会えることを心待ちにしていった。

―ありがとうの言葉は、帰宅して直接顔を合わせた時に言うとしよう…

 そう心に決めて、克哉は恋人からの愛情を感じられる弁当の味を
思い出して…幸福な気持ちに浸っていったのだった―
 


 

 23日の日中は、ドラクエ9のすれ違い通信の相手を求めて
横浜に足を延ばしました。
 成分献血をして、漫画喫茶でのんびりする予定でしたが…。

 すれ違い通信の相手があんまり捕まらない!

 というのと…5月2日に400ミリリットル提供したばっかりだから
私が成分献血出来るようになるの6月27日からだったので
実はどっちも出来なかったというオチでした(駄目じゃん!)

 一年前にこのスポットですれ違い通信の相手を求めたら
30~40分程度で30人達成出来たのは今は昔。
 平日の昼間だと、30分に5人ぐらいしか出来なかったので…。

 仕方ないから30人やる為に3時間ぐらい横浜駅を歩き回りました

 …いや、友人の代わりにやってくると申し出た以上…せめてリッカの宿の
全ての施設が解放される最低ラインの30人はやらんとと思ったし、
その友人にはここ数年、世話になっていますからねぇ。
 途中メゲそうになりましたが、気合で30人集めるまで頑張りました。
 そのせいで漫画喫茶に入る余裕なんてまったくなかったよ。

 あ、でもアニメイトに行ってようやく鬼畜眼鏡のCDドラマとか欲しかった物を
多数購入してホクホクでした。
 オタクにはこういう潤いは絶対に必須だよ…!
 黒執事やおおきく振りかぶってはどちらも一巻が出た辺りから買っている
作品ですから。ああ、最近本屋から遠ざかっている生活送っているから
有り難かったよ。
 後、他にもベリーベリーと国崎出雲の事情も購入。
 …はははは、何気に出雲、好きだったりします。
 だって可愛い男子が女装したり奮闘する話って好きなんだもん! 悪いかぁぁ!
 鋼の錬金術師の最新刊も購入、本誌では連載が終了したらしいけど…良く
月刊誌でここまで描き切ったと思う。
 私は単行本派なので最終巻が出るの今から楽しみにしております。

 ちなみにすれ違い通信やっていたらひょっこり従妹(いとこ)と顔を
合わせてちょっとびっくりしました。
 けど、30人達成したら即座に友人の元にソフトを返却しに行って
任務は無事に果たしましたよ!

 とりあえず連載は25日夜には眼鏡×秋紀編は完結させます。
 そうしたら次のカップリングは誰が来るか予想するのも一興かと
思います。
 一応、現時点では10カップリングをやるつもりです。
 公式+個人的に萌えている3CPをひっそりとという感じです。 
 お楽しみに~~!
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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