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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※これは春コミの新刊「LUNA SOLEIL」の第一話に
当たるお話です。
 どんな内容になるのか参考までにお読みになって
判断して下さいませ(ペコリ)

―この奇妙な新婚生活は大晦日に『俺』に拉致され、
強引に挙式を挙げた日から始まっていた。
 もう一人の自分との婚礼という本来有り得ない出来事から
始まった新婚生活。
 
 『俺』から指輪を受け取り…とても幸せな気持ちで身体と心を重ねた夜。
 克哉は夜半に目覚めて…ふと瞼を開いていった。
 
「…ん、うっ…」
 
 微かなうめき声を漏らしていきながら克哉はそっと意識を覚醒していく。
 最初は見知らぬ天井だった。
 だがこの三ヶ月の間にもっとも『俺』と一緒の時間を過ごしたこの
寝室を軽く見回していくと、もう一人の自分の整った顔が存在していた。
 
「…あっ…」
 
 それに一瞬、ドキリとしながらつい相手の寝顔に見入ってしまった。
 基本的には自分とまったく同じ顔の造作をしている事ぐらい判っている。
 それでも窓から差し込む淡く儚い月光に照らされたもう一人の自分は綺麗だった。
 
(…今まで、こんなに穏やかな気持ちで…『俺』の寝顔を見た事
なんて、なかったな…)
 
  この三ヶ月間はハラハラドキドキと、このままずっと一瞬にいられるか
  どうか、漠然とした不安を抱えていた。
  けれど克哉の指には、今は自分達の愛の証が輝いている。
  これからも共に歩んで行きたいという強い気持ちを、この
運命の日に『俺』に伝えた。
 だから挙式の日にたった一度はめられて以来、ずっとこちらに
渡すのを保留にされていた指輪は…今、克哉の薬指に戻って来ていた。
 そのシルバーの輝きが今の彼に確かな自信を与えてくれていた。
 
「この指輪を貰った事…夢幻ではなかったんだな…良かった」
  
 克哉は己の指先に、マリッジリングがしっかり存在しているのを見て、
安堵の表情を浮かべた。
 右手を指輪にそっと覆い被させるように重ねて、愛しげに…自分の伴侶と
なった男を見つめていく。
 
「…何だろう。これが現実だって判っているけど…まだ、夢を見ているみたいだ…」
 
 今の自分はあまりに幸せな気持ちに満たされていて、逆に怖くなった。
 一瞬だけ…『俺』に会いたくても会えなくて気が狂いそうになっていた頃の
自分が脳裏をよぎっていく。
 
(…あいつがクリスマスの日に顔出してくれるまで、あんな風に挙式を
してくれるまで…今思い返すと、ずっとオレ…不安だったよな…)
 
 気まぐれにしか現れなかったもう一人の自分の気持ちはずっと
見えないままだった。
 だから抱かれる度に想いは募っていくのに…相手の心は見えなくて、
克哉はずっと怖かった。
 今なら彼の気持ちは自分にしっかり向けられていると確信出来る。
けれど何ヵ月か前の不安定だった頃の己を思い出して、克哉は
憂いの表情を浮かべていく。
 
―あいつの気持ちが見えるまで、ずっと…不安だった。
 
 気持ちが見えなかった頃の不安定な自分を思い出して…
克哉は苦笑していく。
 彼の想いを知った今なら…自分は何て馬鹿な真似をしようと
してたか滑稽さが良く判った。
 だが自分がそこまで思い詰めてしまった最大の要因は…。
 
「何かお前の気持ちが真っ直ぐに向けられているって知った今では…
あの頃のオレって馬鹿みたいだよな、と思うけど…。お前も言葉が
足りなさすぎたんだよな…あの頃は」
 
 そう呟きながらもう一人の自分の額を軽く小突く真似をしていった。
 だが相手は一向に目覚める様子はなかった。
 今、目の前で寝息を立てている彼は…克哉が見てきた中でも一番、
安らかな顔を浮かべていた。
 そう思うと…そっとしてもう少し寝かせておいてやりたかった。
 
(確か今日はまだ平日だから…『俺』は出勤しなきゃいけない筈だしな…)
 
 そう考えながら克哉はつい、月明かりに照らし出された相手の
端正な顔立ちを凝視してしまった。
 自分と同じ顔の造作をしている筈なのについ見とれてしまう。
 そうしている間に何だか心臓がバクバク言い始めてきた。
 
(うわ~だんだん恥ずかしくなってきた!)
 
 ただ寝顔を見ているだけで耳まで赤く染まっていくのを自覚して
克哉は相手から反射的に顔を背けていった。
 そうしている間に、ザワザワザワ…と自分の中で穏やかではない
衝動が湧き上がってきて、克哉は無意識の内に口元を覆っていった。
 
 ヤバイ、ヤバすぎる。
 顔を見ているだけで気持ちが落ち着かなくなって…さっきあれだけ
抱かれたのに、もっと相手が欲しくなってしまっていた。
 けれどその衝動のままに求めてしまったらもう一人の自分の
睡眠時間は大きく削れてしまうだろう。
 
(…オレの方は基本的に家の中で殆んど過ごすから問題ないけど、
『俺』は仕事中に寝る訳にいかないからな…ちゃんと少しは寝ておかないと…)
 
 そう考えて克哉は名残惜しい気はしたがゆっくりと慎重に彼から離れていく。
 だが己の欲望を自覚したばかりなので頬は紅潮して若干呼吸も
乱れがちになってしまっていた。
 
(…とりあえずベランダに出て、一旦頭を冷やそう。このままこいつの傍に
いたら…きっとまた、求めてしまいそうだから…)
 
 高校生や大学生の、まだ学生の内だったら授業をサボってその朝に
恋人とイチャつくのも良いかも知れない。
 だが自分はすでに何年も社会に出ている良い年をした大人だ。
 相手が働いてくれて日々の糧を得ている以上、そんな身勝手な真似を
する訳には行かなかった。
 
「…一旦、ベランダに出よう。それで頭を冷やした方が良いな…」
 
 そう呟きながら克哉は溜め息を吐いて、ベットから静かに
身体を起こしていった。
 そして足音を極力立てないようにしながらベランダへと向かっていった。
 外に出ると風が冷たかったが火照った身体には気持ち良かった。
 薄い裾が長いワイシャツを一枚だけ羽織って外に出たら…丁度月が沈んで
朝日が地平線からゆっくりと昇ろうとしている頃だった。
 朝と夜の境目。相反する存在である筈の太陽と月が
同居している幻想的な光景。
 藍色の空に、瞬くような星々が散らされ、その裾は淡く白い光で照らされている。
 それは自然が生み出した、空というキャンバスに描かれた
美しいグラデーションだった。
 
「…何かとても綺麗だ…。こんな風に穏やかな気持ちで朝日を見るのって
どれくらいぶりだろう…」
 
 そんな事をしみじみと呟きながら克哉はベランダの手すりに軽く
もたれ掛かながらその光景を眺めていく。
 ベランダの柵には板のような物がはめこまれているから外の人間が
見る限りはシャツ一枚の格好でも問題はないだろう。
 昨晩はもう一人の自分も気持ちが熱くなっていたのか身体中にキスマークが
散らされていたが…まだ辺りは薄暗いし、遠目で見る限りは全然大丈夫だ。
 
―近くに立たれてしまったらその限りではないのだが
 
 このマンションの周囲は…同じような住居用に建設されたビルが並んでいた。
 自分達が住んでいるのはこの周辺でも高級な方に分類される。
 すぐ足元に公園用の広いスペースが用意されているのはここぐらいだ。
 しかし視線を地平線の彼方に向ければ、あるのはただ無機質な高層ビルばかりだ。
 それでようやく…このマンションが都内でも一等地に建てられて
いるのを自覚していった。
 
「全てが夢みたいだ…」
 
 そう呟いた瞬間、胸の中にチクリと痛み始めていった。
 思い浮かぶのはかつての迷い苦しんでいる自分。…泣いていた頃の
自分の姿が鮮明に頭の中に再生されていく。
 
―お前の気持ちは一体、どこにあるんだ…!
 
「あいつはずっと…オレを想ってくれていたよ…。ただそれをあまり
口にしてくれなかったから…見えなかっただけだ…」
 
 そっと過去の自分に語りかけるように呟いていく。それでも…
泣き止む様子はなかった。
 
(…もう、泣かなくて良いんだよ…)
 
 そう以前の自分に語りかけた瞬間、走馬灯のように…
色んな出来事が脳裏に蘇っていった。
 それは今となっては遠い出来事のように感じられるもの。
 しかしかつては克哉を苦しめていた生々しい傷へと結び付いていた感情だった。
 
―お前のことを好きでしょうがなくて…だから、苦しいんだ…!
 
 それは相手に愛されていると実感出来なかった頃の自分の
悲痛な叫びだった。
 自分だけが相手に恋していると思い込んで、もう一人の自分に
本気になってしまっている事実に絶望して悲観に暮れてしまっていた。
 当然だ、本来なら自分達にハッピーエンドなど求められる筈がないのだ。
 それは奇跡が起こってくれたからこそ辿りつけた結末。
 しかしその未来を予想してもいなかった頃には…途方もない
夢物語以外の何物でもなかった。
 
「…そういえばあの頃はあいつの気持ちを知りたくて仕方なかった…。
式を挙げる一ヶ月前…去年の暮れぐらいが一番、煮詰まってしょうがなかったな…」
 
 その時期の自分の姿を思い出した途端にズキンと軋むような心の痛みを
覚えていった。
 あの頃の自分が犯した過ちを思い出して…蒼白になっていった。
 
(…俺はなんて…酷い事をしていたんだろう…)
 
 その事実に気づいた瞬間、克哉は自分がこんな幸せになる
資格などないような気がしてきた。
 己の罪を思い出していく。あの時、自分に特別な好意を向けて
くれていた御堂、本多、太一…彼等の気持ちを察していた癖に自分は
思わせ振りな態度を取り続けて、結果的に彼等の気持ちを持て遊んでしまった。
 
「…あんな真似をしたオレに幸せになる資格なんてないんじゃないか…?」
 
そう自問自答した瞬間、脳裏に声が響いていった。
 
―そんな事はありませんよ。貴方がその事をはっきりと思い出せなく
なっていたのは…あの方が望んだ事ですから…
 
「えっ…?」
 
 唐突に脳裏にMr.Rの声が響き渡って…克哉は瞠目していった。
 慌てて周囲を見渡していったが幾ら探してもその姿は見える事はなかった。
 
―幾ら私を探されましても見つかりませんよ。私は貴方がいらっしゃる
場所から離れた所から語りかけていますから…
 
「…えっと…それで何でこんなにはっきりと貴方の声が聞こえるんですか…?」
 
―それは企業秘密という奴ですよ。そんな些細な事はどうでも
宜しいじゃないですか…。
 それよりもつい先程、やり残していた事があるのに気づきましてね…。
それで声を掛けさせて頂きました…
 
「…あの、貴方がやり残した事って一体…」
 
―貴方と結婚するに至ったあの方の本心と真実。そして年末に戦った
恋敵となる方達とどのようにケリをつけていったかです。あの方は
無器用ですし…余計な事は言わないですからね。
 だからこうでもしない限り…貴方がその事実を知る事がないと
判断しました…。興味はありますか…?
 
「…はい、あります…」
 
 少しだけ間を空けてから…克哉は躊躇いがちに答えていった。
 相手がこちらに話そうとしなかった事を暴きたてるような真似など
本来ならするべきではないとは理解している。
 だがそれでも眼鏡の気持ちなら…克哉は知りたかった。
 今はとても愛してもらっていると知っているし実感もしている。
けれどあの時…自分が本当に辛くて仕方なかった時期に彼がどんな風に
感じて想ってくれていたのか…知れるものなら克哉は本当に知りたかった。
 だから男の言葉に素直に頷いていた。
 
―なら貴方に夢を見せて差し上げましょう。この朝と夜の境目…
月と太陽が同時に存在し、現実と幻想が混じりあう事が出来るこの時に…。
本来は一つの存在であった貴方達の心だけを束の間、一つに戻す形で…
あの方の記憶に貴方が触れられるように致しましょう…。
 これから貴方が垣間見るのは…あの方にとって忘れがたい思い出の欠片と、
貴方に伝える事はなかった想いと真実です…。覚悟はありますか…?
 
「…えぇ、お願いします…」
 
克哉は息を飲みながらゆっくりと頷いて瞼を閉じていった。
そして深呼吸をして…何が起こっても良いように身構えていく。
その瞬間、脳裏に真っ白い光が走り抜けていく感覚がしていった。
次いで頭の中でまるで火花が散っている衝撃が伝わってくる。
 
「くうっ…」
 
 思わずうめき声を漏らしていった。
 そのまま意識も…肉体の感覚も全てが遠くなっていく。
それは急速に泥の中に引きずり込まれていくような…恐怖感と、
暖かいぬるま湯に浸って浮かんでいるような…相反する感覚を
同時に覚えていった。
 
「んっ…はぁ…」
 
 そのまま、克哉は奇妙な快感を感じて…悩ましい声を漏らしていった。
 急速に走り抜ける強烈な衝動を堪えていくように我が身を強く抱きしめていく。
 そうしている間に、意識がだんだんと遠のいていくのが判った。
 
―さあ、貴方を誘いましょう…一時の夢の世界へと。それは貴方の
半身の想いの欠片…。それを知ることで貴方は苦しみ、引き裂かれるような
痛みも感じるでしょう…? 本当に後悔しませんか…?
 
「はい…!」
 
 男に念を押されて、克哉は一瞬だけ竦みそうになった。
 それでも勇気を振り絞って頷いて…その先を促していく。
 全く恐怖心や不安がない、と言ったら嘘になる。
 けれどそれ以上に…好奇心の方が勝ってしまったのだ。
 克哉が頷いていくと同時に…黒衣の男が愉快そうに微笑んでいくような、
そんなビジョンが鮮明に脳裏に描かれていく。
 瞬く間に全身から身体の力が抜けて、世界が…遠くなる。
 
―お前の事を、オレは…もっと知りたい…!
 
 最後に強くそう想いながら…克哉は、黒衣の男が魅せる
一時の幻想へと堕ちていく。
 切なくも辛い…真実と、彼が胸に秘めていた想いを知る為の旅路は
そうして…始まりを告げていったのだった―
 
 

 
 
 
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 ※本日は澤村本のイメージが強烈に浮かんできた為にそちらに
専念しておりました。
 2時間近く集中して書いたので…本日は日付変更までにもう一本は
出来そうにないので、今日書いた分の冒頭部分掲載で失礼します。

 イメージは…御克ルート前提で、澤村が若干絡んでくるみたいな造りです。
 現在雑誌に掲載されている情報を元に、原作に忠実をモットーに…
ノマと澤村と夢の中で絡ませる…という感じのお話になります。
 新キャラの澤村さんは眼鏡と深く絡んでもノマとはあんまりな感じなので
個人的な萌え要素を詰め込んだものになると思います。
 一言でいうなら、「俺の事を忘れて他の奴と一緒になって幸せになって
いるなんて許せない」みたいな雰囲気の話になります。
 それで踏まえた上で興味ある方のみ、「つづきはこちら」をクリックして
お読みください。
 まだ正式なタイトルはないので「澤村本 冒頭」としておきます。
 では…。

 とりあえず、昨日の晩からせっせとメガミド本の製本作業を
頑張って…どうにか本日中に宅配業者の方に荷物発送しました!
 …一応荷物、30日必着だったのでこちらの作業の方を優先して
やっておりました。
 どうにか1月に発行した克克、太克本も合わせて…三種類は当日
机の上に並んでいると思います。
 お願いだから、無事に荷物届いていて下さい(ガタブルガタブル)

 それと…今晩から明日に掛けて、ちょっともう一冊の原稿を
頑張ってやってみたい気分になったので…本日はそのオフ本の
冒頭部分掲載という形にさせて貰います。
 …ちょっとイメージが鮮明な内に形にしておきたいんで。
 現在連載中の御堂×克哉の掲載の続きは明日にさせて貰います。
 ご了承頂けると幸いです。
 …話のベクトルが真逆の話同士なので、混ぜると今…頭が混乱しそう
なんで…(汗)
 んじゃ原稿頑張ってきます。ではでは…(ペコリ)

『月と銀剣』 冒頭部分①


―さあ、解放を望まれるのでしたら…是非それを手に取りなさい。それは今、閉ざされた
関係に悩む貴方を…その袋小路から解き放つ救いそのもの。
 今、胸を焼き焦がすその強い想いに苦しんでいらっしゃるのでしょう? 
それなら…受け取って下さい。
 ソレは貴方たちにとってもある種の救いを齎す代物ですから…
 
 男は長い金髪を闇の中で揺らめかせながら、謡うように告げていく。 
 静まり返った深夜の歩道橋の上。
 月がとても綺麗で、怖いくらいだった夜に…彼は渡された一本の銀剣を呆然と
握り締めていく。
 それは金属とは思えないほど、しっとりした手触りで…自分の肌に吸い付いて、
早くも馴染み始めている。
 
 はあ、はあ、はあ、はあ…。
 
 次第に、凶器を持っているせいか…胸に抱えている大きな葛藤のせいか、
 彼の呼吸が乱れててきた。

 ―本当にこれで、オレは解放されますか…?
 
―えぇ、あの人の心が見えなくて悲しいのでしょう? その御心が日々遠く…
ご自分の中から消えていってしまうのが辛いのでしょう?
 それは…貴方達を一つの存在に戻す為の鍵。 
 同一になる為の儀式に欠かせない神具のようなものですよ。
 それであの方を刺しても…殺す訳ではありません。一つに還るだけ…ですよ。
 
 そう言われて彼は恐怖を抱きつつも…ぎゅっと銀剣を握り締めていく。
 
―えぇ…オレはもう、嫌…なんです。日々、あいつの気配がオレの中から感じられなく
なるのも…何を思っていのか判らないのも…!
 
 この一年、突然現れるもう一人の自分にどれだけ翻弄され、犯され続けたのだろう。
強引に快楽を引きずり出されて乱れさせられただろう。
その癖、いつも意地悪で傲慢で…こちらを嬲るような発言しかしない、
身勝手で冷酷な男だった。
 
―だが彼の胸を満たすのは燃え上がるような強い恋情。
 
 いつから惹かれていたのか、想うようになっていたのか…最早、自分でも
判らなくなっていた。
 それでも、そんな己の狂暴な感情が恐ろしいのか、小刻に肩と指先が
震え続けている。
 そんな彼をあやすように黒衣な男は艶やかに笑い、優しく言葉を紡いでいく。
 
―愛する人間を独占したい。近付きたい…一つになりたいと望む事は、恋をしたなら
誰の心にも生じるごく自然な感情です。
 それを実際に使われるか、ただ持っているだけに留めておくかは…貴方の判断に任せます。
…ではご機嫌よう、佐伯克哉さん…
 
 そう告げて男が音もなく踵を返すと同時に…瞬く間にその姿が闇に
溶け込んでいく。
 掌の中に在る物の質感と重みが怖かった。
 だが克哉は何かに操られているかのように、十四夜…後、一日で完全に満ちようと
している月に向かって翳していく。

 月はルナティックという言葉の語源にもなっている通り、人の心を時に狂わせる魔力が
あるという。
 こんな風に空気が冴え渡って、一際月が美しく見える夜は…余計に惑う者の心をも
乱していくのかも知れない。
 魂を魅了するぐらいに美しい刀身が淡い光に照らされていく。
 
―其れは晧々とした眩い月光を受けて、銀色に美しく輝いていた―

 

  連載中の小説、最終話掲載は水~木曜日の間くらいになります。
  多分、二回に掛けて執筆しないと終わらないと思いますので。
  ご了承下さいませ。
  もうここまで来ると焦って掲載を急ぐよりも、普段よりも少し時間を掛けて
納得いくまでやりたい心境に達しましたのでね。
 待たせる代わりに精一杯やらせて頂きます(ペコリ)
 いつも見に来て下さっている方々、本当に有難うございますです。

  と言っても何にも載せないのもいい加減、ちょっと心苦しいので
携帯の方で書いた原稿の冒頭部分だけちょこっと掲載。
 まあ…眼鏡×御堂本は大体こんな雰囲気ですよ~という
参考ぐらいにはなるかと。

 夜桜幻想2(冒頭部分)

克哉が三ヶ月前から予約していたという宿は古めかしく厳かな雰囲気を
漂わせている建物だった。
彼が宿泊手続きを終えて受付で合流すると、仲居に案内されて離れがある
一郭に通されていく。
 
「こちらでございます」
 
 こざっぱりした身なりの三十代半ばの仲居がハキハキした声で告げていく。
 それは十二畳程の和室二間と独立した露天風呂で構成されていた。
 見ただけで豪華な造りだと判るほどだ。
 
「この離れの場合ですと食事時以外は呼ばれません限りはお客様のお部屋に
立ち寄る事はございません。何か入り用でしたら内線でご気軽にお呼び下さいませ。
では私はこれで失礼致します…」
 
「あぁ、ご丁寧にどうも。これはささやかなこちらからの気持ちだ。気楽に受け取って
もらいたい…」
 
「あらあら、こちらこそご丁寧にありがとうございます」
 
 そういって女性は克哉からの心付けを恭しく頭を下げて受け取っていくと優美な
立ち振る舞いをしながら…目の前から立ち去っていった。
 その場に克哉と御堂だけが残されると、いきなり眼鏡に容赦ない力で強く腕を
引かれていった。
 
「佐伯っ?」
 
「…あまり悠長に過ごしていたらあっという間に二人きりの時間が終わるからな…」
 
「それは…判るが…! どうして君はいつだってそう強引なんた…! 少しはこっちの事も
考えてくれっ!」
 
 …いつも心から希望しているが叶った試しがない事を叫んで行きながら御堂は相手に
中へと連れ込まれていった。
 純和風な内装の部屋に有無を言わさずに誘導されると、入り口の付近でいきなり強く
抱き締められていく。
 
「…あぁ、あんたの匂いだな…」
 
 ほっとしたような、懐かしそうな…そんな口調で克哉がしみじみと呟いていった。
 
「…まったく。君はいつも行動が唐突過ぎるぞ…」
 
 ふう、と深く息を吐いて文句を言っていくが…口調と裏腹に御堂はおとなしく身を
委ねていった。
 そうしている間に、克哉の唇がこちらの髪や額にそっと落とされていく。
少しくすぐったいが、悪くない感覚だ。
 
「こら…くすぐったいぞ…佐伯…」
 
「…いい加減、俺を佐伯と呼ぶのはよせ。…今は二人きり…だろう?」
 
 そう指摘されて、御堂はグッと言葉に詰まっていく。
 …再会してからまだ数ヵ月しか経っていないし…職場では他の人間に悟られないよう、
佐伯と呼ぶ事を徹底している。
 …だから彼の事を下の名で呼称する事は未だに慣れないのだ。
 
「む…そ、それは…」
 
「…呼んで、くれないのか…?」
 
 フッと一瞬だけ克哉が切なそうに目を細めると、余計に困ってしまう。
 
(あぁ…もう、お前にそんな顔されるとこちらがそんな悪い事をしているような気分に
なるじゃないか…)
 
 …何か本日は克哉のペースに巻き込まれてしまっているように感じられる。
それが少し気に入らなかったが…更に瞳を覗き込まれるように相手に見つめられて
いくと漸く彼は観念していった。
 
「…判った。今は君を『克哉』と呼べば良いんだろう…?」
 
 そう口にした瞬間―克哉は心から嬉しそうな笑みをそっと浮かべていった。
 
「…やっと俺の名を呼んだな…孝典…」
 
「君が私に呼べとせがんだんだろう…」
 
 頬を赤く染めながら、相手から顔を背けていくと…間髪を入れずに克哉が
肩口に顔を埋めてきた。
 
「…っ!」
 
 すぐに強く吸い上げられて鈍い痛みが首筋の付け根に走っていく。
 反射的に相手を突き放そうとしたが、少しくらい力を込めたくらいでは…同体各の
相手は引き離せなかった。
 
「…こらっ…一体…な、に…を…!」
 
「…軽い味見だ。…最近忙しくて…全然、あんたに触れられなかったからな…」
 
 熱い舌先で、御堂の首筋をなぞりあげていきながら…男は余裕ありげに微笑んでいった。
 だが対照的に、御堂の方はそれ所じゃない。克哉が与えてくる感覚に
耐える事だけで精一杯だ。
 
 背骨のラインを指先でやんわりと辿っていきながらその手がゆっくりと下ってくる。
腰から臀部にかけて、じんわりと擦られるだけで甘い電流が走り抜けていくかのようだ。
 
「くくっ…あんたは本当に良い感度をしているな…。抱き締めて軽く触れるだけで
この反応か…?」
 
「…そういう事を、しれっと涼しい顔して言うな! 私ばかりが乱されて…非常に
不公平じゃ…あっ…ないのかっ…!」
 
 自分ばかりが反応している現状にいたたまれなくて…キッと目の前の男を
睨んでいくが、顔色一つ変える気配がなかった。
 
 そうしている間に、克哉のチョッカイは更にエスカレートしていった。
 両手でいつしか両尻を鷲掴みにされて、揉みしだかれていく。
 下肢の中心部分を太股で挑発されて、ゆっくりとズボン生地の下で性器が熱を
帯びていくのが自分でも判った。
 
「ん…はぁ…」
 
 口から悩ましい声が溢れて…もう抵抗する気力さえも萎えた瞬間。
 いきなり克哉は体を離して、御堂への愛撫を全て止めていった。
 突然の行為の中断に御堂が途方に暮れた眼差しを浮かべていくと…。
 
「な、んで…途中…で…?」
 
 自分でも不満げな声になっているのは少し悔しかったが…こんな中途半端な所で
投げ出されれば誰だって燻るしかないだろう。
 
「そろそろ夕飯がいつ運ばれて来てもおかしくない時間帯だ。…あんたが他の人間に
見られた方が燃えるっていうのなら…すぐに続きをしても構わないがな。
…それに最初から、俺はこれは味見だって言っていただろう…?」
 
 悪戯っぽく微笑みながらこちらにとっては逆鱗に触れるような事を平然と言って退けていく。
 
「…君は、味見でここまでやるのか…! 悪質にも程があるぞ…!」
 
「…怒った顔もあんたは可愛いな。…そういう顔が見たいから…ついこちらも
いじめたい気分になる…」
 
「きさま、はー! どこまで私を愚弄すれば気が済むんだー!」
 
 先程まで興奮していたせいだろうか。
 それとも自分のペースを乱されまくっているせいだろうか。
 こんなに声を荒げて叫ぶ事などみっともないと分かっているのに…今は高ぶりが
収まってくれない。
 
「…今のあんたの顔、凄くそそるぜ。見ているだけでこちらも勃ちそうになる」
 
 実に艶めいた眼差しを浮かべながらそんな際どい事をあっさり言われたら…言葉に
詰まるしかなくなる。
 フルフルと肩をわななかせている御堂に対して唇にかすめるようなキスを落として、
克哉は踵を返していった。
 
「…克哉っ! 一体どこへ行くつもりだっ!」
 
「車に忘れ物をしたから…ちょっと取りに行くだけだ。すぐに戻る…」
 
 そうして克哉は激昂している御堂をあっさりと置き去りにしてその場を立ち去っていく。
 その展開についていけずに暫し呆然とその場に膝を突いていき…。
 
「…あ、あいつは…あいつは一体何を考えているんだー!」
 
 御堂はその場に座り込みながら、下肢の高ぶりが収まるまで待つしかなく。
 歯噛みしたい気持ちをどうにか抑えて、平静さを取り戻そうと試みていたのだった―
こんにちは、香坂です。
 最近、更新ペースは乱れまくってて本当に
すみませんです(汗)

 何でこんなに身辺がいつまで経っても落ち着かないんじゃ~と
雄叫びの一つもあげたくなりますがもう、こういう時期なんだと
潔く割り切る事にします。

 後、連載中の話は私の中で最初に生まれた通りの
結末をそのまま貫きます。
 三人一緒にするか、決別させるか実は最後まで迷いましたが
(更新速度が45話から一気に遅くなったのはその迷いのせい)
私は克哉と眼鏡を決別させる選択しました。
 決別させた理由と考えは48話で述べます。
 後、三話。最終話まで時間が掛かっても完結するまで頑張ります。
 48話は明日の早朝アップを目標に頑張ります。

 で、原稿をどうやってやるかここ暫く必死に考えていたんですよ。
 電車の中にPCを持ち運んでやれば結構執筆時間は出来るんですが
万が一落下させて壊してしまったら、今の自分にはもう一台パソコンを買う
資金的余裕はとてもありません。
 けど、移動中以外に原稿をやる時間は捻出出来そうにない。

 んじゃ携帯でやってみるか

 という事で本日、オフ本(眼鏡×御堂)の冒頭に当たる部分を実際に
携帯電話で打ち込んで執筆してみました。
 以下にそれを貼り付けて最初の部分だけ閲覧出来るようにしてみました。
 まあ、携帯小説というジャンルもあるんだし昨今、携帯使って小説書くぐらいは
珍しくないでしょうけどね。
 オフ原稿を携帯でやろう、という人間はあまり見かけないが今はパソコンが
壊れるという危険を犯せない時期だからしゃあないかと。
 という訳で今日一時間20分くらい掛けて、打ち込んでみました。
 これを本日分の更新とさせて貰います。
 それではまた明日!

 夜桜幻想(冒頭部分)


それは出張先で大きな取引きを一つ終えたばかりの頃の話だった
 
佐伯克哉が独立して自分の会社を興してから早くも三ヶ月目を迎えようとしていた。
彼の経営手段はかなりのもので、設立してからまだ日が浅い新会社であるにも関わらず、
すでに二人では回しきれないくらいの多くの仕事を担当するくらいまでになっていた。
最近ではMGNから御堂を慕って移籍した藤田を始めとする何人かの元部下を登用して、
大きなプロジェクトを担当するくらいまでになっていた。
季節は四月の始め。都内では地域によっては桜の満開の時期が訪れようとしている。
神奈川県鎌倉市。鶴岡八幡宮の周辺を車で走りながら御堂は深い溜め息をついていた。
 
そろそろ桜が見頃を迎えようとしているな
 
ハンドルを握りながら自分がそう呟くと助手席から克哉が書類を眺めながら相槌を打っていく。
 
「あぁ、そうだな。あんたは花見でも楽しみたいのか?」
 
一応、自分達は仕事上のパートナーであると同時に恋人同士でもある。それなのにこの
そっけなさはどうかと御堂は感じた。
 
「あぁそうだな。最近は誰かさんがこっちを濃き使ってくれるから正直、風景を楽しむ余裕すらない。
ここで一つ太っ腹な処を見せて是非良く働く従業員を労って欲しいものだがな
 
それなら問題ない。今夜は桜をたっぷりと愛でられるようにこの近くの宿を手配してある
そこで自然を楽しむくらいは幾らでも出来るぞ」

 
「な、何だとっ?」
 
皮肉たっぷりに言い放った次の瞬間、予想もしてなかった答えが返ってきた。
つくづく自分はこの男に振り回される星の元に生まれているのかと疑いたくなってしまった。
 
「何をそんなに驚いている?俺にとってはあんたは愛しい大事な恋人だからな。
これくらいの気遣いは当然だろう?
それともあんたは色気なく東京の方にトンボ帰りをしたいのか?」
 
っ!そ、そんな訳ないだろ!で、件のお前が手配した宿というのはどこにあるんだ?
場所が詳しく判るならナビで指定してくれると有難いのだが
 
「あぁ、メモに書いてあった住所だと大体この辺だな。また近くなったら周辺を拡大表示して
改めて指示する。まずはこの付近まで車を走らせてみてくれ」
 
二人が社用で頻繁に使用している車には高性能のだがなナビゲーションシステムが
取りつけられていた。
たった今、克哉が指示した場所は鎌倉の外れの方に位置していた。
それでもこの周辺なら前会社に所属していた頃に何度も走っている。
大まかな位置を指定されるだけで迷いなく御堂は現地に向かい始めていった。
 
本当に今日は楽しみだな
 
悠然と微笑みながらそう呟く克哉に少しムッとなりながらも御堂はおとなしく目的地に
向かって運転を続けていった。
暫くして辿りついた場所は鎌倉の外れにある、古い建物や自然がまだ色濃く残されている区域だった。
 観光名所が集まっている処と違い、人の気配もあまりなくひっそりとした佇まいを見せていた
人家の姿もあまり無く、辛うじて舗装されている道路を進みながら御堂は呟いていく。 

「随分と閑散とした場所ばかり続いているが佐伯。本当にこの道で良いのか?」

「あぁ、道はちゃんとあっている。俺を信じろ」 

(…どうしてコイツはいつだってこんなに自信満々でいられるんだ…?)  
 相手のあまりに自信に満ち溢れた態度に内心でツッコミを入れつつ、
小さく頷いてみせる。 
 この付近には手付かずになっている古くからある原生林がも多い。
 都会で生活している身としては四方八方どこを見ても樹海を思わせる光景は
圧巻されると同時に馴染みが無さすぎて。そればかり続くと少し不安を覚えるくらいだ。

「そんな不満そうな顔をするな行けばお前もきっと気に入るだろうからな」 

「…以前から常々思っていたんだが、君のその自信は一体どこから発生しているんだ?
先ほどから随分と決めつけが多いように感じられるのだが…?」

 「決めつけじゃない。確信しているから言っている。一度下見にこの辺りまで
来ているからな。それで気に入って一番のお薦めの時期であるこの時期に、
三ヶ月前から予約して部屋を押さえたんだからな」

 さも当然とばかりに言い放つ相手の態度を運転席からチラリと眺めて。
  その相手の言葉の意図を察して、つい顔を赤らめそうになり照れ隠しに
心持ち克哉から顔を背けていく。

 (三ヶ月前から?それでは私と再会してから間もない時期から、すでに予約
していたというのか…?)

 しかも新会社を設立して社長の立場に就いてからの克哉は多忙を極めている。
 それは彼の片腕として働き、ずっと見続けていたから良く知っている。 
 なのにその最中で下見までして部屋を確保していたという事は、御堂と一緒に
過ごしたいと願っている彼の気持ちを如実に示している。
 御堂はそれに気付いたからこそいたたまれないくらいの気恥ずかしさを覚えていた。

 「何だ、照れているのか?」

 「っ!だ、誰が!」

 唇から反論の言葉が溢れようとした途端、視界が急に開けて一軒の大きな旅館の姿が
現れていく。
 年期の入った木造の建築物に圧倒されそうだ。
 深い深い森林の奥にそびえる建築物を前にして御堂が言葉を失っていくと克哉が
傲然と告げていった。
 
「俺が予約した旅館はここだ。知る人ぞ知るという場所だ。ここから見える桜はかなりの物と
聞いている。ここでゆっくりと二人で花を愛でようじゃないか。行くぞ、孝典…」

そうして御堂が駐車場に自家用車を停めた途端に先に克哉から車から降りていった。 

「先に降りて宿泊手続きしてくる。あんたはゆっくりと後から来ると良い」 

 そう告げて、克哉の姿はあっという間に消えていく。
 その後ろ姿を見送ってから本日何度目になるか判らない、深い溜め息をついていった。

「…あいつは、どこまで私のペースを乱せば気が済むんだ…」 

トコトン苦々しく呟きながら、御堂は車を完全に停車させて彼の後に続いていった―
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小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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