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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この作品は『メッセージ』を共通項目としたCPランダムの
オムニバス作品集です。
 暫くの期間、出てくるCPはネタによって異なります。
 通常のように一つのCPに焦点を当てて掲載する話ではなく
1話完結から2~3話で纏めて、鬼畜眼鏡ゲーム本編に出てくる一通りの
CPを消化するまで続きます。
 期間中、それらを踏まえた上で作品をご覧になって下さい。
 この形での連載期間はタイトルの部分に扱うCPも同時に
表記する形になります。興味ない方はスルーなさって下さい。

 眼鏡×秋紀    愛妻弁当           

 眼鏡を掛けた克哉に脅されて、本多が売店に別の弁当を買いに
走っているのと同じ頃…秋紀は、屋上で一人克哉を想いながら弁当を
食べていた。
 いつもは一緒に食べてくれる友人ぐらいはいるのだが、今日は何となく
照れくさくて…校舎の屋上で一人で食べる事を選んだのだ。
 そして恐る恐るフタを開けて、失敗作の方の弁当を改めて見て行くと
恥ずかしくて顔を赤らめてしまう。

「…うっわ…こうして見ると凄く恥ずかしいよね。ちょっと大胆過ぎたかな…」

 そう呟いていくと、さっさと箸をつけて食べ始めていった。
 こっちの弁当は、克哉に渡した弁当と一緒に作った予備みたいなものだ。
 そして克哉に渡した物の方が良く出来たので…微妙に失敗した個所がある
弁当の方は秋紀が食べる事になったのだが、食べている内に何となく
甘酸っぱいようなくすぐったい気持になった。

「あ~あ、克哉さんがどんな顔をして食べてくれたか…見たかったなぁ」

 その事を心底、残念そうに思いながら…少しは照れたり、喜んでくれたり
しているのだろうか…と想像すると自然と笑みがこぼれてきた。
 この辺は自分と克哉の年齢差を考えると仕方ない。
 克哉は立派な大人であり社会人で…秋紀はまだ未成年で、学生という
身分である以上…平日は一緒にご飯を食べる事は出来ない。
 だからせめて一緒に食べている気分を味わいたくて、勇気を振り絞って
弁当を作ってこうして今日は一人で食べている訳だが…この同じ空の下で
克哉も今、昼食を食べようとしているのだろうか。

「…帰ったら絶対に、克哉さんに感想を聞こうっと…今から、ちょっと
楽しみだな…」

 そうして青空を仰ぎ見ながら…脳裏に愛しい人の顔を思い浮かべて、
秋紀は満面の微笑みを浮かべていきながら爽やかな風を受けていき…
屋上でのランチタイムをそれなりに楽しんでいたのだった―

                         *

 売店から全力疾走してきた本多の様子は、一見して哀れみを誘う程
切ないものだった。
 昼間の売店と食堂程、稼ぎ時を迎えて人が密集している処はない。
 克哉とご飯を一緒に食べる為とは言え、全力でその人ごみの中に立ち向かい…
戦利品を得た頃にはセットした髪は大幅に乱れて、服装もどこか
乱れてしまっていて…ついでに身体のアチコチに打ち身とうっすらとした
青痣が見て取れる事から…昼食合戦の激しさを如実に現れていた。
 だが、そこまでして新しい昼ごはんを猛スピードで調達してきた心意気を
評価して…克哉は仕方なく、本多と一緒に食べていた。
 空は晴れ渡るような快晴なのに、この暑苦しい男がいるだけで何となく
不快指数が上がっているように感じられるのは果たして気のせいだろうか。
 軽くイライラしていきながら、克哉は本多と食事にありついていった。
 本多がやっとの思いで購入出来たのはカレーパンとメロンパンの
二つだった。
 当然のことながらこの大食漢の男が、それっぽっちで足りる訳がない。
 だからこちらに訴えかけるように視線を向けている事が克哉の神経に
大いに触ってしまっていた。 

(本当にこの男はうざいな…。何をそんなに物欲しそうに見ている。
これだけは絶対にコイツにやらんぞ…。初めて秋紀が俺の為に頑張って
作って貴重な弁当だからな…)

 秋紀が今朝、必死の様子でこの弁当を作ってくれていた姿を
思い出して克哉はつい微笑みを浮かべてしまっていた。 
 果たしてどんな物を作ってくれたのだろうかという期待感が
高まっていくのを感じていく。
 そうして水色の包みを解いて、弁当の蓋を開いていくと…其処に
込められているメッセージが真っ先に目に飛び込んできた。

『大好き』

 それが弁当のご飯の上に、海苔を使って描かれていた。
 予想もしていなかったストレートな言葉だっただけに克哉も最初は
びっくりしたが…次第に、声を立てて笑い始めていった。

「まったく…あいつは。こんなに可愛い事を仕掛けるとはな…」

「って、待てよ! 克哉…これってもしかして愛妻弁当とか、彼女に作って
貰ったとかそういう物だったのかよ!」

「…そんなの見れば判るだろう。俺は自分で食べる弁当に『大好き』などと
文字を描くなんて寒い真似をする趣味はないからな」

「い、いつの間に…一体いつからの付き合いなんだよ! ちくしょう…何か
羨ましいぜ!」

 克哉は本多に対して、秋紀の事はいつも「俺の可愛い飼い猫」とか
「猫」という言い回しで伝えていた。
 だから友人は猫=恋人という図式を知らなかったのだ。

「ああ、存分に羨ましがれ。せめてお前に対して見せびらかすぐらいは
させて貰わないともったいないからな」

「ぐおおおお! 恋人がいない奴に対して宛てつけのような真似を
しやがって! ちくしょう! それならそのタコさんウインナーを俺が
食べてやるぅぅ!」

「何っ!」

 本多が悔しさのあまり、克哉からおかずを奪おうと指を伸ばしてくるが…
即座にその不穏な空気を察し、弁当を後ろに逃がしていった。
 その一撃は結果、空振りに終わり…本多の顔により一層切ないものが
滲み始めていく。

「貴様ごとぎに俺の可愛い猫が作ってくれた初めての弁当をくれてやる
気は毛頭ない。せいぜい空腹をどうにか誤魔化す手段を見つける事だな…」

「ううううっ…今日の克哉の冷たさっぷりは本気で泣きたくなるぜ…!
いつからお前はそんなに冷たい奴になっちまったんだぁぁぁ!」

「うるさい、そんな湿っぽい顔をしてグチグチ言っているだけなら…
昼食がまずくなるだけだから、他の処に行ってくれ。お前が傍にいたら
弁当の味に集中出来なくなりそうだからな…」

「ひでぇ! ひでぇよ克哉! さっきからどうしてそんなに冷たい事ばかり
言うんだよぉぉぉ!」

 本多が本気で嘆いているのを尻目に、克哉は弁当を一口…食べていく。

「うむ、旨いな…」

「…ごくり」

 克哉の満足そうな笑みを見て、本多の食欲がそそられていく。
 だがにじり寄ろうとしたが…克哉に目線で制されていった。
 まさか弁当を作った秋紀も、こんな邪魔が入っている事など予想もして
いなかったに違いない。
 
(…本気で今日ほど、こいつの空気の読めなさぶりとうざさに…殺意すら
覚えた日はないな…)

 虎視耽々とこちらの弁当を狙っているのが明白な眼差しを浮かべている
友人に向かって、心の底からこの場から消えてくれと克哉は祈った。
 普通に昼食を食べているだけならここまで反発を覚えなかったが…
今日は秋紀が精一杯作ってくれた弁当を味わうのに集中したかった。

―早くこいつをどうにかしてくれ…!

 心の底から克哉が祈って行った次の瞬間、彼の強い願いが叶ったのか…
屋上の入り口の方からバタンと大きな音が聞こえていき…その場に克哉に
とっての救い主が颯爽と現れてくれたのだった―
 



 
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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