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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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   ―あんな奴なんて、知らない!

 克哉は、期待した分だけ怒りを覚えてしまっていた。
 感情に任せて、外に飛び出そうと玄関を目指していたその時、
濃厚なミルクの香りが不意に鼻に付いていく。

(ミルクの香り…?)

 その疑問が、克哉の足を止めさせていく。
 どうやらその香りの元は、バスルームからのようだった。
 
「何でこんな匂いが…?」

 本当は一旦、頭を冷やすために外に向かいたかったが…好奇心に
駆られて克哉はつい、洗面所を通って浴室へと足を向けてしまっていた。
 その時、目の前に広がっている光景につい呆気に取られてしまった。

「うわっ! これは一体…!」

 大きめに作られた浴槽には、溢れんばかりの真っ白な泡が
モコモコと湧き上がっていた。
 基本的に克哉も、夫となる眼鏡もシャワー党で…普段はバスタブに
お湯を張る事すら殆どないから、目の前の光景が信じられなかった。
 何故、いつの間にお湯が張られて…しかもこんな泡ばかりの状態になって
いるのか心当たりがまったくなかっただけに、克哉はその場に立ち止まって
混乱していた。

(何でこんな泡風呂が…? 午前中に掃除した時にはこんなのは
絶対になかった筈だぞ…?)

 しかも湯気の立ち昇り具合から見て、用意されてから一時間も
立っていなさそうな感じだった。
 その時、さっき夕食の準備をしていた時…もう一人の自分が先に
シャワーを浴びた事を思い出した。

「まさか…? うわわっ…!」

 克哉がその場に立ち止まって、考え込んでいた間に…気づかない内に
後ろに眼鏡が立っていたらしい。
 背後からすっぽりと包み込まれるような体制で抱きすくめられて、一瞬
克哉は身体を硬くしていった。

「そんな大声で騒ぐな。風呂場中に響くだろうが…」

「無茶、言うなよ…。いきなり浴槽がこんな事になっていたら…
驚いたって当然だろう?」

「…そんなに、俺がこれを用意しておいた事が驚く事か?」

「うん、かなり…。だってオレもお前も…シャワー党で、滅多に湯船なんて
入らないじゃないか…」

 だんだんと声が小さく、ボソボソという感じで答えていくと…ふいに首筋に
熱い舌先を這わされて、ゾワっとした感覚が走り抜けていった。

「ひゃう…!」

「たまには…お前と一緒に風呂に入るのも悪くないと思ってな…用意しておいた。
あの男がどうぞ~と寄越して来た代物だ…試してみるか?」

「えっ…? あの男って誰、だよ…?」

「…俺達の結婚式に立ち会った奴だ」

 即答されて、脳裏に浮かんだのはMr.Rだった。
 確かにその条件に該当するのは…彼しか存在しない。
 あの運命の日、問答無用で拉致されて…連れていかれた教会で自分達は…
その狂乱的な、淫靡な一夜の記憶が蘇ると同時に…嫌でも自分の肌がゾワゾワと
粟立つのが判った。

(…あの日を、思い出したせいで…身体、が…熱くなっている…)

 湯気が立ち昇っている浴槽にいるだけでもじっとりと身体が汗ばんでくるのに、
頭の中に…余りに乱されまくった夜の記憶が再生されて、身体の奥から
ジワリ…と熱が競り上がって来ていた。
 あの夜に、自分は儀式をした。
 …そして、もう一人の自分の情熱を身の奥に受けて…交わって、そして…。

「…ねえ、『俺』…一つ、聞いて良いかな…?」

「…何だ?」

 相手の腕の中に抱きしめられて、背を向けた状態で…問いかけていく。
 今の自分達は、結ばれ…挙式して、こうして一緒に暮らしている。
 けれど、結婚している間柄ならばどうして…自分達には、その証を
身に着ける事がないままなのだろう。
 その疑問が…膨れ上がって、克哉を突き動かしていく。

「…オレ達、結婚したんだよね…? それならどうして、指輪がオレ達には
ないのかな…?」

 あんな風に、自分を抱いて刻み付けた癖に。
 あの夜から、一夜も欠かさずに自分の最奥に…想いの証を注ぎ込み続けて
いる癖に…所有の痕を必ずつけて、痕跡を残しまくっている癖に…。
 自分達は、婚約指輪も結婚指輪もつけていなかった。
 一瞬だけ、誓いの言葉を交し合って深く口付けた記憶が蘇っていく。
 あの時から、不思議だった。
 あんな儀式をした癖に…どうして、指輪が用意されていなかったのだろうかと―

「それについての答えは、俺達の初夜の時に説明した筈だ…。最初の三ヶ月が
過ぎる日まで…お前には選択の余地が残されていると。
 お前が代価を払って、俺と生きる道を選択するか…この生活を終わらせて
元の生活に戻るか。いわば今は…お試し期間に過ぎない。
 お前が…三ヶ月後に、それでも代価を払って…俺と生きる事を選択したなら
その時は…必ず、贈ってやるさ…」

「…本当、に…」

「あぁ、俺を…信じろ」

 その声は力強くて、頼もしくて…聞いているだけでほっと出来た。
 相手の手が、こちらの顎に伸ばされていく。
 静かな仕草で、後ろに振り向くように促されて…克哉は素直にそれに
応えていった。

「うん…信じる、よ…」

 嬉しそうな、そんな表情を浮かべてそっと目を伏せていく。
 そして唇がそっと重ねられて、啄ばむように口付けを落とされる。
 幸せ、という感情が…緩やかに克哉の胸を満たしていった。
 そして…ようやく克哉が瞳を開いていくと、さっき割った筈の眼鏡を
平然と掛けて微笑んでいるもう一人の自分の顔があった。

(あれ…?)

 その瞬間、心底疑問を覚えていく。
 …さっき、パリィィィィンと盛大な音を立ててこの銀縁眼鏡は割れて
いた筈ではなかっただろうか?
 もう一人の自分のこんな顔を見れるのは純粋に嬉しい。
 優しい穏やかな表情を浮かべているのはレアな事態だから、本当なら
喜ぶべき事なのに…どうしてもムクムクと湧き上がってくる疑問に、
克哉は抗えなかった。

「…あの、眼鏡…大丈夫だったの…?」

「あぁ、これか? さっきお前が俺のプレゼントを顔面に勢い良く投げつけてくれた
おかげで見事にひび割れたぞ。すぐに復元したが」

「…はぁ?」

 今、サラリととんでもない発言が飛び出したような気がして…克哉が
瞠目していくと…更にありえない説明が続いていった。

「…流石あの男がくれた眼鏡だな。手元から離しても自動的に戻ってくるだけじゃ
なくて勝手に再生する能力まであるとは…。俺も目の前で、ひび割れた眼鏡が
勝手に再生する現場を見た時は本気で驚いたものだぞ。まあ…あの男に
絡んでいるのなら、何が起こっても不思議ではないがな…」

「はぁぁぁ~?」

 一体、それはどんな怪奇現象だというのだろうか?
 とんでもない説明を受けて、克哉がアタフタしていくと…いつの間にか
眼鏡の手が克哉の着衣を脱がすように蠢き始めていた。

「って…何をどさくさに紛れて脱がしているんだよ!」

「…せっかくこんな見事な泡風呂を用意したんだ。一緒に堪能しようじゃ
ないか…たまにはベッド以外の所で楽しむのもオツだからな…」

「…っ! お前、ここでエッチな事するの前提の言い回しをしてないか…?」

「…何を今更…。当然の事だろうが。自分の伴侶と二人で一緒に風呂に
入っていて手を出さないでいるなんて真似を、俺がやると思うか?」

「そういう事を堂々と言い放つなよっ! 聞いているこっちが心底恥ずかしく
なるだろー!」

 浴室中に、克哉の盛大な叫び声が響き渡り続けていたが…眼鏡の手は
一層大胆さを増すばかりで、こちらが必死にもがいて抵抗しているにも関わらず
スルスルと器用に衣服を脱がされていってしまう。
 その手腕の見事さは一体、何だというのだろうか?

「うわっ…! や、待って…!」

 完全に衣類を脱がされて、覆うものが全て取り払われる。
 その状態でいやらしく相手の掌が、こちらの敏感な場所ばかりに這わされるのを
感じて、克哉の胸の突起はすでに硬く反応し始めていた。

「…待つ気は、ないな…。俺はずっと…愉しみに待っていたんだからな…?」

 そうして、眼鏡は強気に微笑みながら…シャワーのコックを回して、克哉の
頭の方からお湯を被せていく。

「わわっ…!」

 こちらが驚いて身を竦ませている間に、軽く突き飛ばされてタイルの上に尻餅を
ついていく格好にさせられた。
 その間に、眼鏡は目の前で衣類を脱ぎ去って…洗面所の方へと勢い良く自らの
衣類を放っていく。
 目の前の相手の性器は、すでに臨戦態勢で…思わず、それが視界に飛び込んできて
怯みそうになった。
 なのに、目を逸らすことが出来ない。
 食い入るように…つい、その猛り切ったものを見つめてしまい…その間に
相手は高らかに宣言していく。

「お前を、抱くぞ…」

「あっ…」

 その声が、浴槽中に響き渡って妙に甘く耳に届いていった。
 同時に、ゴクンと息を呑んで…顔を真っ赤に染め上げながら…克哉は
頷いてしまった。

「…判った…」

 そう、観念して克哉が呟いた瞬間…心底愉しそうに、眼鏡は笑みを
刻んでみせたのだった―

 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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