鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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―あれから何度、御堂の情熱を身体の奥に注ぎ込まれたのか…目覚めた時、
克哉は覚えていなかった。
窓から朝日が差し込んで、それによって克哉の意識が覚醒していく。
時計の針は七時近く…いつもの起床時間になろうとしていた。
(…起きなきゃ、今日は…仕事があるんだし…)
確か本日は、まだ火曜日…週末には程遠い筈だった。
数時間前まで、絶え間なく抱かれ続けていたおかげで…体中に鈍い痛みと
筋肉痛が走っている。
体中がお互いの体液と汗でベタベタした感じがするし、自分の中には…御堂の
精がまだしっかりと残されているのを自覚して…克哉の顔がカァ~と赤くなった。
隣に横たわっている御堂の眠りは深いらしく、彼がゴソゴソと身動きしたくらいでは
起きる気配がなかった。
「…本当、昨日は…そのまま、死んじゃうかな…って少し、不安になったかな…」
相手の安らかな寝顔を見て、そんな事を呟きながらその唇に小さくキスを落として…
それから、ベッドから降りていった。
「…このままじゃ幾らなんでも、会社に行けないしな…。シャワーくらいは…浴びておこう…」
そうして、克哉は裸のままバスルームへと足を向けていく。
程なくして、浴室の方から…シャワーの水音と湯気がゆっくりと立ち昇り始めていった―
*
御堂が目を覚ました時…自分の傍らに克哉の姿がなかったので一瞬、ぎょっとなった。
慌てて相手の姿を探していくが…ベッドの上には温もりすら残されていなかったので…
すぐに身を起こして、シャツだけを羽織った格好で克哉を探し始めていく。
洗面所の方を見たが、すでに上がっているらしく…ガラス戸には水蒸気が残っているが
その向こうに人影は見られない。
キッチンの方へと向かうと…そこにはYシャツ一枚だけを羽織った、何とも目のやり場に
困る格好で克哉は朝食の支度を整えていた。
「…あ、おはようございます…。御堂さん。今…オレもシャワーを浴び終わったばかり
なんですが…貴方も良かったら、さっぱりして来て下さい。食事はオレの方で…
用意しておきますから…」
「…あぁ、なら…その言葉に甘えさせて貰おう…」
一瞬、そんな際どい格好でキッチンに立つ克哉の姿を背後から抱きすくめたいという
衝動に駆られたが、今の自分は…昨夜の行為の名残で、肌は汗でベタベタした感触が
残っている状態である。
風呂に入り終わったばかりの人間に、現状では抱きつくのは嫌がらせに近いだろうと…
辛うじて理性を働かせて、彼もシャワーを浴びに向かった。
…昨晩、胸の中に燻っていた憤りやモヤモヤも、散々…貪るように克哉を何度も抱いた事と
暖かいシャワーの湯を浴びた事でかなり晴れていた。
さっぱりした状態でキッチンに戻ってくると…テーブルの上には二人分の朝食が並べられて
ほんわりと湯気を立てていた。
「美味しそうだな…昨晩は夕食を食べる暇すらなかったから、流石に空腹だしな…」
「…っ! えっ…まあ、そうですね。だから…朝ですけど、結構ボリューム多めに作って
おきました。…オレも、ちょっとお腹空いていますし…」
「…そうだな。あれだけ激しい運動をしておきながら、夕食ナシだったのはキツかったな。
昨日はその辺を考慮しなくて…すまなかったな、克哉」
激しい運動、という言葉に…耳まで克哉の顔は赤く染まっていく。
それはとても可愛くて…キスの一つでもしたい心境になったが…ここで彼にキスしたら
また妙に滾ってしまいそうなので寸での処で押さえ込んでいく。
テーブルの上にはバターを塗った物と、ハムと蕩けるチーズを乗せてカリっと焼き上げられた
トーストが各一枚ずつ皿に並べられている。
もう一つの皿には半熟の目玉焼きとベーコン二枚、それと切れ目を綺麗に入れられた
ソーセージが二本ずつ。
もう一つの皿の上には大根とワカメ、ちりめんじゃこを散らして青じそドレッシングが
掛けられている和風テイストのサラダ。
それに玉ねぎとニンジンのみじん切りをさっと煮込んで作られたコンソメスープがついていた。
朝食にしては結構なボリュームがあって…良い感じだった。
「…孝典さん、味はどうですか…?」
「あぁ…美味しい。特に今は空腹だから…有難い。作ってくれてありがとう…克哉…」
「いえ、その…オレにはこれくらい、しか…出来ないですから…」
そうやって頬を染めて、照れくさそうに言う様は…自分が良く知るいつもの克哉だ。
昨日の朝に見た、冷徹な表情を浮かべて強引に抱こうとした眼鏡を掛けた彼や…ベッドの
上で淫乱と言えるぐらいに乱れて喘いでいる姿は、其処からは想像出来ない。
「うっ…」
「…どうしました?」
「いや…何でもない…」
とっさに、昨日の克哉の艶っぽい姿を思い出して鼻血が出そうになった…とは
いい年した男が口が裂けても言える訳がないので、適当に流す事にした。
サラダを食べる度にシャキシャキ、と大根を噛み砕く小気味の良い音が聞こえる。
こういう時、彼が自炊にそれなりに慣れていて…そこそこ美味しい料理を作ってくれる
事に御堂は感謝を覚えていた。
そのまま二人で無言のまま…朝食を食べ進めていく。
いつもの自分たちに戻れたような…そんな錯覚すら覚えていく。
だが…目が合った瞬間に見せる克哉の表情は、やはりどこか儚いままで…
見ている御堂の気持ちを落ち着かなくさせていった。
そして…食事を食べ終わり、お互いに食器を皿の上に置いていく。
其処で改まった態度で、克哉がこちらに語りかけて来た。
「…孝典さん。そのままで良いですから…オレの話、聞いて貰えますか…?」
「…あぁ、構わない」
短くそう答えて、御堂は克哉の話を聞く体制を整えていく。
スッと…その表情が変化して、引き締まったものに代わり…こちらを真っ直ぐに
見つめて来た。
「…ありがとうございます。…どうしても、貴方に言いたい事があったから…。
貴方は今、オレの事をどう思っているか…判らないけれど。もし…もう一つの
人格がある事を受け入れられない、と思うのなら…どうぞ、オレと別れて下さい。
それをお願いしたかったから…」
「何っ…!」
食卓の椅子から、血相を変えて御堂が立ち上がっていく。
だが…克哉の表情は、どこか達観しきったような静かなものだった。
「…君には、あれだけ抱いても…私の気持ちが伝わっていないのかっ! 別れたいなどと
思っている相手をあんな風に抱ける訳がないだろっ!」
「…えぇ、判っています。シャワーを浴びた後に鏡を見て…昨夜はどれだけ、貴方が
オレを愛してくれたか…驚いたくらいですから。けど…貴方が愛しているのは、あくまで
<オレ>の方だけであって…あちらは、そうじゃないんでしょう?
けど…オレはもう知ってしまったから。もう一人の<俺>がどれだけ…貴方がオレだけを
愛している事で、苦しんでいたか…を…。だから…せめて…貴方に、あいつの存在を容認
して貰わない限りは…あいつはこれからも苦しみ続ける。
けれど…あんな事をしたあいつを、貴方が受け入れられないというのなら…その時は、
別れる事も仕方ないと…オレは考えました…」
「そ、んな…」
その言葉に、御堂は肩を震わせる事しか出来なかった。
だが克哉の瞳は…強い意思を宿して、輝いている。
「…孝典さん。オレは…貴方を愛している。だからこそ…貴方を自分のエゴで縛りたく
ないんです。…あいつをひっくるめて、受け入れて欲しいと望む気持ちを押し付けるような
そんな真似をしたくないんです…。貴方にも、選択の自由はあると思うから…」
泣きそうな顔をしながら、それでも瞳を逸らさずに…克哉は御堂に気持ちを伝え
続ける。今にも涙が溢れそうな…切ない表情を浮かべながら…こちらに選択を
する余地を与えようとする恋人の姿に…御堂は胸が引き攣れるような思いになった。
「…君はどこまで…残酷な問いを私に投げかけるんだな…」
私にとって、残酷な問いかけと…選択を迫るのだろう。
君だけならば、私の答えは決まっている。
決して…君を自分から手放したりなどしない。それは誓って言える。
だが…昨日、自分にあんな振る舞いをした…まったく別の意識の方までを容認出来るか?
二重人格である事実までを全て受け入れてこれからも変わらず…付き合っていけるのか、
確かに自分でも迷う部分があった。
その惑う部分を感じ取っているのだろう。
克哉は…柔らかく微笑みながら、愛しい人に告げていく。
「…すみません。けど…この件をもうこれ以上、曖昧になど…したくなかったですから…。
…オレも週末までにはどうにかもう一人の自分の件をケリつけておきます。
ですから…もし、あいつの存在込みでこれからもオレと付き合って下さると…そう思えたの
なら、今週の週末にこの部屋にもう一度…来て下さい。
貴方が来ないままでしたら…オレはそれで、この恋を潔く諦めます、から…」
瞳を閉じて、何もかも観念したような…そんな顔を克哉が浮かべていく。
全てをこちらの選択に委ねて、克哉はその運命を受け入れると言い張った。
その言葉の奥にある真意の重さに…御堂は、呻くしかなかった。
「克哉…」
だが、御堂もまた…それ以上の言葉を続けられなかった。
眼鏡の方の意識も込みで、君を受け入れる。
そう即答出来ない自分に腹が立ってしょうがなかった。
だが…昨日の朝の、あまりに豹変した克哉に無理やり組み敷かれた時の恐怖や
惑いの感情が…彼の思考を鈍くさせていく。
…悔しいが、確かに…落ち着いて考える時間が今の自分達には必要なのは
事実、だった。
(…あいつを受け入れなければ、私は…君まで失う、というのか…?)
御堂はその事実に愕然となりながら…克哉を見つめていく。
あれだけ昨晩は腕の中に抱きしめ続けたのに、愛しいと思いながら情熱を
注ぎ込み続けたのに…今は、互いの心がどこまでも遠く感じられていく。
「…ごめんなさい。それは貴方にとって…酷な事だとは承知しています。
けれど…あいつもまた、紛れも無いオレの心の一部なんです。それを恐れたり
蔑ろにしたから…あいつは暴走して、こんな事態を招いてしまった。
だからオレは…心の中にあいつが存在している。その事実から逃げる事は
もう止めたいんです…。其処にいるのに、存在を否定され続ける。
それはどんな人間だって…辛くて、仕方ない事でしょうから…」
一筋の涙を頬に伝らせながら、克哉は…穏やかな声で告げていく。
その一言に、御堂ははっとなる。
だが…今はまだ、グルグルと迷いが生じて…はっきりした答えを出せずにいた。
(愛している、のに…! 私は…こんなに、君を…!)
歯噛みしながら、自分達の間に今広がっている…溝の大きさに御堂は憤るしか
なかった。
朝の光が注ぐ中…二人の間に、沈黙が落ち続ける。
『君もあいつも、全て受け入れる!』
今、この瞬間にその覚悟を決めて…彼にそう言ってやれない自分の器の狭さと
弱さに、本気で御堂は怒りを覚えていた。
そんな彼を…克哉は、席を立ってフワリと抱きついて口づけていく。
心を通わすキスじゃなく、それは惑い苦しむ御堂の心を少しでも慰める為の口付け。
その口付けを受けて…とりあえず身体の力を抜いて、その優しい感触に御堂は
身を委ねていく。
こうして触れ合っていても…今はまだ、どこかお互いの心が遠い現実が…
少し、悲しかった―
克哉は覚えていなかった。
窓から朝日が差し込んで、それによって克哉の意識が覚醒していく。
時計の針は七時近く…いつもの起床時間になろうとしていた。
(…起きなきゃ、今日は…仕事があるんだし…)
確か本日は、まだ火曜日…週末には程遠い筈だった。
数時間前まで、絶え間なく抱かれ続けていたおかげで…体中に鈍い痛みと
筋肉痛が走っている。
体中がお互いの体液と汗でベタベタした感じがするし、自分の中には…御堂の
精がまだしっかりと残されているのを自覚して…克哉の顔がカァ~と赤くなった。
隣に横たわっている御堂の眠りは深いらしく、彼がゴソゴソと身動きしたくらいでは
起きる気配がなかった。
「…本当、昨日は…そのまま、死んじゃうかな…って少し、不安になったかな…」
相手の安らかな寝顔を見て、そんな事を呟きながらその唇に小さくキスを落として…
それから、ベッドから降りていった。
「…このままじゃ幾らなんでも、会社に行けないしな…。シャワーくらいは…浴びておこう…」
そうして、克哉は裸のままバスルームへと足を向けていく。
程なくして、浴室の方から…シャワーの水音と湯気がゆっくりと立ち昇り始めていった―
*
御堂が目を覚ました時…自分の傍らに克哉の姿がなかったので一瞬、ぎょっとなった。
慌てて相手の姿を探していくが…ベッドの上には温もりすら残されていなかったので…
すぐに身を起こして、シャツだけを羽織った格好で克哉を探し始めていく。
洗面所の方を見たが、すでに上がっているらしく…ガラス戸には水蒸気が残っているが
その向こうに人影は見られない。
キッチンの方へと向かうと…そこにはYシャツ一枚だけを羽織った、何とも目のやり場に
困る格好で克哉は朝食の支度を整えていた。
「…あ、おはようございます…。御堂さん。今…オレもシャワーを浴び終わったばかり
なんですが…貴方も良かったら、さっぱりして来て下さい。食事はオレの方で…
用意しておきますから…」
「…あぁ、なら…その言葉に甘えさせて貰おう…」
一瞬、そんな際どい格好でキッチンに立つ克哉の姿を背後から抱きすくめたいという
衝動に駆られたが、今の自分は…昨夜の行為の名残で、肌は汗でベタベタした感触が
残っている状態である。
風呂に入り終わったばかりの人間に、現状では抱きつくのは嫌がらせに近いだろうと…
辛うじて理性を働かせて、彼もシャワーを浴びに向かった。
…昨晩、胸の中に燻っていた憤りやモヤモヤも、散々…貪るように克哉を何度も抱いた事と
暖かいシャワーの湯を浴びた事でかなり晴れていた。
さっぱりした状態でキッチンに戻ってくると…テーブルの上には二人分の朝食が並べられて
ほんわりと湯気を立てていた。
「美味しそうだな…昨晩は夕食を食べる暇すらなかったから、流石に空腹だしな…」
「…っ! えっ…まあ、そうですね。だから…朝ですけど、結構ボリューム多めに作って
おきました。…オレも、ちょっとお腹空いていますし…」
「…そうだな。あれだけ激しい運動をしておきながら、夕食ナシだったのはキツかったな。
昨日はその辺を考慮しなくて…すまなかったな、克哉」
激しい運動、という言葉に…耳まで克哉の顔は赤く染まっていく。
それはとても可愛くて…キスの一つでもしたい心境になったが…ここで彼にキスしたら
また妙に滾ってしまいそうなので寸での処で押さえ込んでいく。
テーブルの上にはバターを塗った物と、ハムと蕩けるチーズを乗せてカリっと焼き上げられた
トーストが各一枚ずつ皿に並べられている。
もう一つの皿には半熟の目玉焼きとベーコン二枚、それと切れ目を綺麗に入れられた
ソーセージが二本ずつ。
もう一つの皿の上には大根とワカメ、ちりめんじゃこを散らして青じそドレッシングが
掛けられている和風テイストのサラダ。
それに玉ねぎとニンジンのみじん切りをさっと煮込んで作られたコンソメスープがついていた。
朝食にしては結構なボリュームがあって…良い感じだった。
「…孝典さん、味はどうですか…?」
「あぁ…美味しい。特に今は空腹だから…有難い。作ってくれてありがとう…克哉…」
「いえ、その…オレにはこれくらい、しか…出来ないですから…」
そうやって頬を染めて、照れくさそうに言う様は…自分が良く知るいつもの克哉だ。
昨日の朝に見た、冷徹な表情を浮かべて強引に抱こうとした眼鏡を掛けた彼や…ベッドの
上で淫乱と言えるぐらいに乱れて喘いでいる姿は、其処からは想像出来ない。
「うっ…」
「…どうしました?」
「いや…何でもない…」
とっさに、昨日の克哉の艶っぽい姿を思い出して鼻血が出そうになった…とは
いい年した男が口が裂けても言える訳がないので、適当に流す事にした。
サラダを食べる度にシャキシャキ、と大根を噛み砕く小気味の良い音が聞こえる。
こういう時、彼が自炊にそれなりに慣れていて…そこそこ美味しい料理を作ってくれる
事に御堂は感謝を覚えていた。
そのまま二人で無言のまま…朝食を食べ進めていく。
いつもの自分たちに戻れたような…そんな錯覚すら覚えていく。
だが…目が合った瞬間に見せる克哉の表情は、やはりどこか儚いままで…
見ている御堂の気持ちを落ち着かなくさせていった。
そして…食事を食べ終わり、お互いに食器を皿の上に置いていく。
其処で改まった態度で、克哉がこちらに語りかけて来た。
「…孝典さん。そのままで良いですから…オレの話、聞いて貰えますか…?」
「…あぁ、構わない」
短くそう答えて、御堂は克哉の話を聞く体制を整えていく。
スッと…その表情が変化して、引き締まったものに代わり…こちらを真っ直ぐに
見つめて来た。
「…ありがとうございます。…どうしても、貴方に言いたい事があったから…。
貴方は今、オレの事をどう思っているか…判らないけれど。もし…もう一つの
人格がある事を受け入れられない、と思うのなら…どうぞ、オレと別れて下さい。
それをお願いしたかったから…」
「何っ…!」
食卓の椅子から、血相を変えて御堂が立ち上がっていく。
だが…克哉の表情は、どこか達観しきったような静かなものだった。
「…君には、あれだけ抱いても…私の気持ちが伝わっていないのかっ! 別れたいなどと
思っている相手をあんな風に抱ける訳がないだろっ!」
「…えぇ、判っています。シャワーを浴びた後に鏡を見て…昨夜はどれだけ、貴方が
オレを愛してくれたか…驚いたくらいですから。けど…貴方が愛しているのは、あくまで
<オレ>の方だけであって…あちらは、そうじゃないんでしょう?
けど…オレはもう知ってしまったから。もう一人の<俺>がどれだけ…貴方がオレだけを
愛している事で、苦しんでいたか…を…。だから…せめて…貴方に、あいつの存在を容認
して貰わない限りは…あいつはこれからも苦しみ続ける。
けれど…あんな事をしたあいつを、貴方が受け入れられないというのなら…その時は、
別れる事も仕方ないと…オレは考えました…」
「そ、んな…」
その言葉に、御堂は肩を震わせる事しか出来なかった。
だが克哉の瞳は…強い意思を宿して、輝いている。
「…孝典さん。オレは…貴方を愛している。だからこそ…貴方を自分のエゴで縛りたく
ないんです。…あいつをひっくるめて、受け入れて欲しいと望む気持ちを押し付けるような
そんな真似をしたくないんです…。貴方にも、選択の自由はあると思うから…」
泣きそうな顔をしながら、それでも瞳を逸らさずに…克哉は御堂に気持ちを伝え
続ける。今にも涙が溢れそうな…切ない表情を浮かべながら…こちらに選択を
する余地を与えようとする恋人の姿に…御堂は胸が引き攣れるような思いになった。
「…君はどこまで…残酷な問いを私に投げかけるんだな…」
私にとって、残酷な問いかけと…選択を迫るのだろう。
君だけならば、私の答えは決まっている。
決して…君を自分から手放したりなどしない。それは誓って言える。
だが…昨日、自分にあんな振る舞いをした…まったく別の意識の方までを容認出来るか?
二重人格である事実までを全て受け入れてこれからも変わらず…付き合っていけるのか、
確かに自分でも迷う部分があった。
その惑う部分を感じ取っているのだろう。
克哉は…柔らかく微笑みながら、愛しい人に告げていく。
「…すみません。けど…この件をもうこれ以上、曖昧になど…したくなかったですから…。
…オレも週末までにはどうにかもう一人の自分の件をケリつけておきます。
ですから…もし、あいつの存在込みでこれからもオレと付き合って下さると…そう思えたの
なら、今週の週末にこの部屋にもう一度…来て下さい。
貴方が来ないままでしたら…オレはそれで、この恋を潔く諦めます、から…」
瞳を閉じて、何もかも観念したような…そんな顔を克哉が浮かべていく。
全てをこちらの選択に委ねて、克哉はその運命を受け入れると言い張った。
その言葉の奥にある真意の重さに…御堂は、呻くしかなかった。
「克哉…」
だが、御堂もまた…それ以上の言葉を続けられなかった。
眼鏡の方の意識も込みで、君を受け入れる。
そう即答出来ない自分に腹が立ってしょうがなかった。
だが…昨日の朝の、あまりに豹変した克哉に無理やり組み敷かれた時の恐怖や
惑いの感情が…彼の思考を鈍くさせていく。
…悔しいが、確かに…落ち着いて考える時間が今の自分達には必要なのは
事実、だった。
(…あいつを受け入れなければ、私は…君まで失う、というのか…?)
御堂はその事実に愕然となりながら…克哉を見つめていく。
あれだけ昨晩は腕の中に抱きしめ続けたのに、愛しいと思いながら情熱を
注ぎ込み続けたのに…今は、互いの心がどこまでも遠く感じられていく。
「…ごめんなさい。それは貴方にとって…酷な事だとは承知しています。
けれど…あいつもまた、紛れも無いオレの心の一部なんです。それを恐れたり
蔑ろにしたから…あいつは暴走して、こんな事態を招いてしまった。
だからオレは…心の中にあいつが存在している。その事実から逃げる事は
もう止めたいんです…。其処にいるのに、存在を否定され続ける。
それはどんな人間だって…辛くて、仕方ない事でしょうから…」
一筋の涙を頬に伝らせながら、克哉は…穏やかな声で告げていく。
その一言に、御堂ははっとなる。
だが…今はまだ、グルグルと迷いが生じて…はっきりした答えを出せずにいた。
(愛している、のに…! 私は…こんなに、君を…!)
歯噛みしながら、自分達の間に今広がっている…溝の大きさに御堂は憤るしか
なかった。
朝の光が注ぐ中…二人の間に、沈黙が落ち続ける。
『君もあいつも、全て受け入れる!』
今、この瞬間にその覚悟を決めて…彼にそう言ってやれない自分の器の狭さと
弱さに、本気で御堂は怒りを覚えていた。
そんな彼を…克哉は、席を立ってフワリと抱きついて口づけていく。
心を通わすキスじゃなく、それは惑い苦しむ御堂の心を少しでも慰める為の口付け。
その口付けを受けて…とりあえず身体の力を抜いて、その優しい感触に御堂は
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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