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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は結ばれて結構経過した眼鏡と御堂のお話です。
ふとした瞬間に、黒い欲望を克哉は覚えてしまい…それを
どう抑えるか、忠実になるか眼鏡が葛藤を覚えるお話です。

『刻印』         

 さっきまでの困惑と怯えの表情が嘘みたいに、御堂は目の前で
不適な笑みを浮かべていた。
 克哉はその表情に思わず意識が釘付けになった。
 そうだ、御堂にはこういった芯の強さのようなものが存在していて…
何より自分は、彼のこういった部分に猛烈に惹かれて
しまっていたのではないか。
 御堂は先程、率直に打ち明けろと言っていた。

(だが…流石に、あんな内容をあんたに真正面から口に出して
伝えるのは少し躊躇われるな…)

 御堂の言った内容自体は、克哉にとっては喜ばしいものだった。
 だが…自分の胸の奥に秘められていたドス黒い欲望はそのまま…
自分達二人の、暗黒時代に犯した罪に直結している内容だった。
 だからこそかつての罪を悔いている今は言い難く…今まで口に出すのも
はばかられていた訳なのだ。

―あんたの申し出は物凄く嬉しいが…素直になかなか口に
出せるもんじゃないな…
 
 そう思って、なかなか言い出せずにいると…御堂が焦れてきたのか
グイっとこちらの首元に抱きついて顔を寄せてくる。
 恋人の整った顔立ちがこちらを強く睨みつけていきながら…吐息が
掛かる程間近に迫ってきたのでガラになく、胸の鼓動が大きく跳ねて
いくのを感じていった。
 紫紺の双眸が…強い輝きを宿してこちらを睨みつけているのに応えて、
克哉もまた無言で暫くそれを見つめ返していった。

「…克哉、どうしたんだ…。さっきからいきなり黙り込んでいて…
さっき、言いたい事があるなら率直に口に出せと言ったばかりだろう…?」

「ああ、あんたのそういう不適な表情に…思わず見とれていただけだ。
やっぱりあんたのそういう顔は、酷く綺麗でそそるな、と…」

「…君、絶対にそれは悪趣味だと思うんだが。私は君を挑発しているんだぞ?
 その顔が本当に綺麗に見えているのか…?」

「ああ、俺にとっては世界で一番美しく見える男の顔だからな…」

「くっ…!」

 克哉は結局、言いだせずに相手をからかう発言をする事でワンクッションを
置く事にしていった。
 普段皮肉ばかり言っている克哉の口から、こんなに率直な賛美の
言葉が紡がれる事は相当に珍しかった。
 だからこそ殆ど免疫がない御堂にとっては、耐えがたい事となってしまった。

「…! もう良い、君にそんな風に真正面から賛美の言葉を吐かれてしまうと…
どんな反応をすれば良いのか判らなくなってくる…!」

 そういって、これ以上克哉の口から褒め言葉が出る前にぴしゃりと
会話を打ち切っていった。

「…くくっ、あんたは実際は本当に照れ屋なんだな。褒め言葉にこんなに
弱いといのなら…今度からはあんたを弄るのに使えそうだな…」

「こら、克哉…それはどう考えても悪趣味だと思うぞ…!」

 想像しただけで居たたまれなくなっている自分の姿が思い浮かんだので
制止の言葉を吐き、御堂は恋人を諌めていった。
 しかし当の本人は涼しげな顔をして…更に意地の悪い台詞を吐いていくので
御堂は思わず、克哉の腕をつねり上げていった。

「っ…! 痛いだろうが…。全く、あんたは本当にこういう処はシャイだな…」

「…あっ…」

 そうして、不意を突かれる形で克哉の唇が、こちらの口元に降り注いで
柔らかく重なっていった。
 若干乾いていて、意外と柔らかい克哉の唇の弾力にそれ以上の余計な
発言は奪われてしまう。
 暫くキスを続けている内に御堂の身体から力が抜けていくのが
伝わってくる。

「はっ…ぁ…」

「孝典、そろそろベッドに行くぞ…」

 本当なら昼食を食べてからずっと働きづくめだったので何かを食べたいと
いう肉体的な欲求は確かにあった。
 しかしこうして御堂を腕の中に抱き締めて口づけを交わしているだけで…
食欲はどうでも良くなり、ともかく愛しい存在を貪りたいという欲求ばかりが
膨れ上がっていった。
 だから有無を言わさぬ強い力で相手の腕を掴んでいき…玄関から
寝室の方へと脇目も振らずに突き進んでいく。
 やや乱暴に寝室の扉を開いていけば、ベッドに早足で近づいていって…
強い力で相手の身体をシーツの上に押していった。

「っ…! 全く、もう少し優しく扱ったらどうなんだ…! 君は時々、本当に私を
大切にしているのかどうか疑いたくなるような仕打ちを平然とやるな…!」

「そんな事は言われるまでもない。俺は世界中の人間の中で一番…
お前を愛して、大切に思っている。だが、たまには…どれだけ愛おしくても
愛する人間を乱暴に扱いたくなる時だってある。それが…オスの習性と
いうものだ…」

 そうして克哉は問答無用で御堂の身体をベッドの上に組み敷いて…
首筋に赤い痕を再び刻みつけていった。
 最愛の人間の身体に、己の所有の証を強く刻みつけていく。
 たったそれだけの事で身体が歓喜に震えてしまいそうだった。

(嗚呼…俺は、あんたと過ごしたこの一年余りの時間で大きく変わる事が
出来たのだと信じ込んでいた…。けれど実際は、俺という人間の本質というのは
全く変わっていなかったんだな…)

 かつての自分は、御堂を何が何でも得ようと…彼を監禁して閉じ込めて、
数え切れないぐらいに一方的に抱いて、痛々しいぐらいに様々な傷を
その肉体に刻みつけて、彼は自分のものである事を誇示しようとしていた。
 けれど…結局は、そんな真似をしてもその時は御堂の心を得る事は
出来なかった。
 己の所有の痕を刻みつけたからと言って、欲しい人間が自分のものに
心からなってくれる訳ではない。
 自分が相手を解放したから、自由を再び与えたから…その冷却期間を
経たからこそ眼鏡と御堂は結ばれる事が出来たのだと。
 そんなの判り切っているのに、何故…自分の中には未だにこんなにも
強い欲望が宿っているのだろう。

―あんたの身体の隅々まで、御堂孝典という人間が俺のモノである証を
刻みつけてやりたい…

 そして、ベッドの上で改めて…克哉はそのどす黒い欲望を自覚していった。
 だが、一瞬だけ泣き叫んでいる頃の御堂の顔と…その悲鳴が脳裏を
過ぎって、克哉は手を止めていってしまう。
 しかし御堂は目の前の恋人のそんな微妙な変化から何かを
読み取っていったのだろう。
 ふいに…克哉の頬を両手で包み込んで、真摯にこちらを見つめていきながら
声を掛けてきた。

「…私にしたい事があるなら、今更何も遠慮をするな…。かつての君は
本当に酷くて無体な事を延々と私に強いた訳だが…忘れるなよ。
私は君にそうされても…結局は赦して、傍にいる道を選んだんだ。
多少かつてのようにロクでもない事をしようと、今更愛想を尽かしたりしないぞ…」

「っ! …な、何でその事を…?」

 御堂にだけは伝えるべきじゃないと。
 そんな資格などないと言わないではぐらかしてやり過ごそうとしていた事を
あっさりと相手から言われてしまい、克哉は面喰っていった。
 すると恋人は、フっと瞳を細めながら小さく笑って告げていった。

「…いや、確証を得ていた訳じゃないがな。だが…良好な関係を築いてから
君が時々…何かを必死で堪えているような様子を見せていたからな。
だから半分、かまを掛けてみた訳だが…やはり君がどこか躊躇った様子を
見せていた原因はその事だったのか…」

「ああ、その通りだ…。俺は、大馬鹿野郎なんでな。かつてのあんたに
あれだけ酷い事をしておきながら…その癖、未だにあんたに対してそんな
欲望を抱いて…懇願するまで責め立てて、俺の腕の中で啼かせてやりたいって
気持ちを消す事が出来ないでいる…。呆れても良いんだぞ…」

 ようやく観念して、克哉はポロリと本音を零していった。
 だが…御堂は、愉快そうに微笑んでいくと…力強くこう口に出していった。

「…全く、そんな事で愛想を尽かす程…君は私の想いが軽いものだと
思っていたのか…?」

「っ…!」

 完全に予想外の一言を言われて、ギョッと克哉は目を剥いていく。
 次の瞬間、強い力で引き寄せられて…唇を強引に重ねられていった。
 そうして脳髄が蕩けてしまうような魅惑的な口づけを交わし始めていった。
 キスによって色んなものが溶けていくのを感じていくと…御堂は唇を
離した瞬間、微かな声で囁いていった。

『今更、そんな気遣いは無用だ…。多少酷くされようとも、意地悪な姿を
再び見せたからと言って…そんなのはもう嫌って程見て来たし、君が
そういう男だっていうのを知っている。だから変な遠慮は必要ないだろう…?』

「あ、ああ…そう、だな…。もう今更隠したって、あんたには全部…
バレてしまっているんだもんな…」

 その言葉を聞いた時、途端におかしくなった。
 同時に気持ちが解放されていくような気分になって…大きな声で
気づいたら笑っていた。
 
―その瞬間、克哉は久しぶりに実にすがすがしい気持ちになって、
悩んでいた事の何もかもがバカらしく思えて来たのだった―


 



 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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