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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は結ばれて結構経過した眼鏡と御堂のお話です。
ふとした瞬間に、黒い欲望を克哉は覚えてしまい…それを
どう抑えるか、忠実になるか眼鏡が葛藤を覚えるお話です。

『刻印』     

 胸の奥に秘めていたドス黒い感情を自覚した途端、怒涛のように
過去の記憶が押し寄せて克哉の意識を飲みこんでいった。

 ―バシィィィ!
 
 脳裏に鋭く鞭を振るう音が鮮明に蘇っていく。
 それは嫌悪と、同時に歓喜の感情を克哉の中に
呼び起こしていった。
 
―やめろぉ…もう、やめてくれぇ…!
 
 泣きそうな、儚い声で御堂がか細くそう訴えかけていった。
そういえば御堂のこんな弱々しい声を自分は久しく聞いた事が
なかったように思う。
 
(俺はあんたがこうやって懇願の声を漏らす事に…確かにかつて、
暗い喜びを覚えていた…)
 
 脳裏に何度も何度も、以前の自分の過ちがフラッシュバックして
再生されていく。
 その度に苦々しい想いと…御堂と良好な関係を築くようになってから
封印していた衝動がせり上がってくるのを感じていった。
 荒々しい口づけを解いて、歯形をくっきりと刻んでいき…そして獣のように
無意識の内に舌なめずりをしていくと…目の前の御堂はどこか怯えたような
表情を浮かべていた。
 最近の克哉は、優しかった。
 こんな風に乱暴に貪られるような、息苦しいキスをされた事も…
思わずうめき声が漏れるぐらいに強く噛みつかれるのも、暫くなかっただけに…
困惑を隠し切れていないのが顔を見るだけで伝わってくる。

(全く…仕事中の鉄面皮のようなポーカーフェイスはどこに行ったんだか…だな…)
 
「克哉、どうして…こんな、乱暴に…するん、だ…。これでは、まるで…
前の、君のようじゃ…ない、か…」
 
「…ああ、そうだな…。今夜は…どうしても、抑えられそうにない…。久しぶりに、
凶暴な気分なんだ…。あんたに、酷い事をして…啼かせたくて、堪らないんだ…」
 
 御堂の瞳に強い怯えの感情が宿っている事に気づいて、克哉は少しの間だけ
正気を取り戻していく。
 けれど…ギリギリの処で理性で抑えても、きっと自分は小さな事をキッカケに
この衝動に身を委ねてしまう事も薄々判っていた。

「…どうして、いきなり…」

「いきなり、じゃない…。ずっと俺はこの穏やかな日常を送っている間も…
胸の奥にこういう…獣のような衝動を密かに覚え続けていた…」

「そん、な…」

 最初はMr.Rの誘惑の言葉に抵抗し続けていた。
 素直に認めたくなどなかった。
 けれど僅かな時間だけでもタガを外して、衝動のままに行動に移した途端…
暫く感じた事がないくらいの強烈な解放感を覚えた。
 だから自覚せざる得なかった。
 自分は御堂と結ばれたこの一年以上で、変わる事が出来たのだと思っていたが…
本質は何一つ、変わっていなかった。

―ただ、自分は巧妙に隠す事が上手くなっていたに過ぎなかったのだと…

 その事を自覚した途端、克哉は悔しくなって唇を噛みしめていった。

「…判った、君の話を…本音を、今夜はじっくりと聞く事にしよう…。だが、
こういった話をこれ以上…ここでするのは止めておこう…。
ベッドの方に移動しよう、続きは其処でした方が良いだろう…」

「…おい、待て…! 孝典、お前…正気か…?」

 そうして御堂は強引に克哉の腕を掴んで寝室の方に向かっていった。
 恋人の予想外の行動に、思わず声を挙げてしまったが…当の本人は
きっぱりとした口調で言い放っていった。

「ああ、私は正気だ。それでこうした方が良いととっさに判断して行動
しているに過ぎない。今の君の様子では…悠長に夕食の準備をして談笑
しながら食卓を囲む事はとても出来そうにないと思ったから最良と
思われる手段を取っている訳だが…何か文句があるだろうか?」

「…ふっ、本当に…あんたは、気丈な奴だな…」

「…そんなのは、君に監禁されていた時から判り切っている事だろう…」

「ああ、その通りだな…」

 そうしてグングンと手を引いた状態で、御堂自らが克哉を
寝室に連れ込んでいく。
 元々、御堂にはこういった気丈な一面があった。
 現在の関係では彼の方が抱かれる側ではあるが…受け身に回っている
からと言っても、硬質な意思の強さや…男性的な部分が損なわれて
しまっている訳ではない。
 先程の怯えは払拭されて、こちらの真意を問うかのように真っすぐに
見つめて来ていた。
 御堂はグイっと顔を寄せて来て…克哉の胸倉を痛いぐらいに強く
握りしめながら…吐息が掛かる程の距離でこちらの瞳を睨みつけてきていた。
 その強烈な意思が宿る視線に、こちらの魂までもが見透かされて
しまいそうだった。
 ベッドのすぐ傍らでそんなやり取りをしているせいか、二人の間には
奇妙な緊張感が生まれ始めていく。

「…孝典、さっきから俺が怖いんじゃなかったのか…?」

「ああ、あんな風に乱暴に扱われるのは久しぶりだったからな。最初は
面喰っていたが…少し冷静になったら、思い出したな…。最近は随分と
穏やかになって優しくて忘れかけていたが…君という人間は、元々どうしようも
なく酷くてロクデナシだった事をな…」

「おいおい、恋人をロクデナシ扱いするのか…随分と酷い言い草だな…」

「だが、事実だろう…? かつて君が私にした事は…筆舌しがたい程に
痛烈で、酷いものだった。…良く考えてみればどれだけ優しくなった
ように見えたって…私にあのような事をした過去が変わる訳ではない…。
全く、失念していたな…。元々、君は酷くてどうしようもない奴だって事を…
たった一年余りで忘れてしまっていたなんてな…」

「…全然フォローになっていないというか、流石に少し傷ついてきたんだが…。
まあいい、俺は実際…過去にあんたには本当に酷い事をやって来ている。
あんたが許してくれて、こちらの想いを受け入れてくれたからこうして…
一緒にいられている訳だが…孝典、お前の言う通りだ…。俺という人間の
本質がそう簡単に変わる訳がないっていうのはな…」

 そうして克哉は自嘲めいた笑みを浮かべていった。
 そんな恋人を、御堂は突き刺さるぐらいの鋭い眼差しで見据えてくる。

「…とりあえず、本音を話してみろ克哉…。私は君のパートナーであり、
こうして二人でいる間は…恋人同士だ。穏やかな関係を築くようになってから
君が何かを押し隠しているようなのはうっすらと伝わってはいた。なら…
一先ず言ってみると良い…」

「…本当に、良いのか? かつての悪夢が蘇るかも知れないんだぞ…?」

 克哉はどこか、驚いたような顔を浮かべてそう尋ねていった。
 その瞬間、御堂は強気な笑みを刻んでいく。

「…その悪夢を経た上でも、私はこうして君を選び…今も一緒にいるんだ。
何を恐れる事がある…?」

「っ…!」

 その一言を聞いた瞬間、克哉は驚愕に目を見開き…すぐに嬉しさで
僅かにだが口元を軽くほころばせて…笑みを浮かべ始めていったのだった―

 
 


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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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