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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※この話は2009年度の眼鏡×御堂の誕生日話となります。
 カレンダーの日付等も2009年のを使用しています。
 そしてややファンタジーというか、不思議な要素が入り混じるお話ですが
この三点をご了承の上でお読み下さいませ~(ペコリ)

 魔法の鍵  

―Mr.Rから渡された鍵を使用するか否か、必死になって考えている内に
あっという間に一週間が過ぎ、ついに克哉は恋人の誕生日当日を迎えてしまっていた。
 
(ついにこの日が来てしまったか…)
 
 アクワイヤ・アソシエーションのオフィスで、御堂と二人で就業時間後も業務を
こなしている内に…どっぷりと日は暮れてしまい、代わりの物を手配出来ずじまいに
なってしまっていた。
 本命であった御堂の生まれ年のヴァンテージワインは、結局水準を超える物が
オークションには出ず、諦めるしかなかった。
 贈る以上は絶対に御堂に喜んで貰える物を、という気持ちがあるせいか中途半端な
物を選ぶ気にはとてもなれず…完璧にこだわってしまったせいで、逆に何も用意
できてない状況に陥ってしまった。
 
(さて、どうするかな…。せめてこの近くの貴金属店にでも行って、ネクタイピンや
カフス、腕時計の類でも選んで購入するか…?)
 
 かなり間に合わせになってしまう事は否めないが、このまま大切な人間の誕生日を
黙ってスルーしてしまうよりはマシだろう。
 そう考えて、克哉は仕方なく妥協をする事を決心した。
 今夜、これから急いで駆け込めば明日、当日には確実に御堂に
手渡す事が出来る。
 そう考えて、克哉は顔を上げて…隣のディスクで熱心に書類に向き合っている
御堂に声を掛けていく。
 
「御堂…これから、30分くらい席を外す。出来るだけすぐに戻ってくる
予定だから…待っててくれ」
 
「…この時間から用事か? 珍しいな…そんなに時間の都合がつかない
クライアントでもいたのか?」
 
「いや、ちょっとした俺個人の私用だ。今夜中に済ませておきたい事が
出来たのでね…」
 
「そうか、判った。私の方は君が戻って来るまでここで待っている。もう少し
この件を整理しておきたいからな…」
 
「すまないな。それじゃあ行ってくる…」
 
 御堂に対して柔らかく微笑みながら克哉はそっと椅子から
立ち上がっていった。
 春の一件を経てから、自分たちの関係は随分と安定してきていた。
 その前までは薄氷の上にギリギリ成り立っているような危うい部分が自分たちの
間にはあったが…雨降って地、固まるとは良く言ったものだ。
 澤村の一件は本気で腹を立てたが、それを乗り越えた事で自分たちは相手に
対して信頼出来るようになった。
 それが自分たちの間にあった危ういものを払拭出来たと克哉は感じていた。
 
(…こういうやりとりも、悪くないものだな…)
 
 この忙しい中で30分抜けると言っても、特に細かく詮索せずに送り出して
くれることが嬉しかった。
 軽くほくそ笑みながらオフィスを後にして、エレベーターに乗り込んで下に降りて
ビルを出ようとした矢先に、克哉はぎょっとなった。
 漆黒のコートに目にも鮮やかな長い金髪。
 そして独特の空気を感じ取って克哉は確信していた。
 
「貴様…どうして、ここにいる…」
 
「おや、克哉さん。一週間前に例の鍵を渡した時にお伝えしたでしょう…? 
当日にお迎えに上がりますと…」
 
「…俺はこの件でお前に協力を仰ぐつもりはない。お引き取り願おうか…」
 
 この男相手にはともかく強気で応対しなくてはならない。そう直感的に察して
克哉はきっぱりと相手の申し出を拒絶していく。
 だが男はそんな彼の様子を愉快そうに眺めてきた。
 
「…強がりを言っても私の前では無駄ですよ…。貴方がちゃんと御堂様に
相応しいプレゼントを用意されていたのならばこんなに差し出がましい真似を
しませんでしたけどね…。愛しくて堪らない方と恋人同士になり、初めて迎える
御堂様の生誕日…。それを適当な物で妥協されて貴方は本当に後悔しませんか…?」
 
「くっ…!」
 
 その一言を言われると、こちらはそれ以上反論が出来なくなってしまった。
 相手の言う通りだった。ワインをメインに扱っているオークションサイトの
品ぞろえの悪い時期に当たってしまって、求めていた物をこちらが
得られなかったのは確かだからだ。
 
「…貴方に一週間前に渡した鍵を使えば、少なくとも一生の思い出になるとは
思いますよ。滅多に出来る経験ではないですしね。遊園地のアトラクションの
一つ程度に据えれば良いんですよ…」
 
「アトラクション、か…」
 
 本能的にこんな怪しい男の言葉に乗ったら確実にろくでもないことになりそうなのに…
そういわれてしまうと心が動き始めている自分がいた。
 こちらの心が動き始めているのが判ったのだろう。
 克哉が沈黙していくと…対照的にMr.Rは愉快そうに微笑み始めていく。
 
「…ふふ、心は揺れ動き始めているみたいですね…」
 
「…本当に御堂を楽しませたり、驚かしたり出きるんだろうな…?」
 
「えぇ私はそういうことでは嘘は言いませんよ。少なくとも確実に御堂様を
びっくりさせることだけは出来ます。それは保障しますよ…」
 
 そう言われて…スーツの上着ポケットの中にひっそりと忍ばせていた例の鍵を
無意識のうちに握り締めていく。
 その冷たさと金属特有の冷たさを指先で感じて…克哉は決心していく。
 
「本当に…大丈夫なんだろうな?」
 
「えぇ…私を信じて下さい」
 
「…さりげなく困難なことをこちらに要求してくるな」
 
 黒衣の男からの友好的な笑みと言葉を克哉はばっさりと断ち切りながら、
言葉を続けていく。
 
「…なら、この鍵を使う場所にはどうやって連れていくつもりだ…?」
 
「…そうですね。後、一時間もしたら御堂様の仕事の方も片付くでしょうし…その頃を
見計らってお迎えに上がります。お二人はオフィスにいて下されば結構ですよ…」
 
「…そうか。なら待っている事にしよう」
 
「はい、期待して待ってて下さいませ…」
 
 男の物言いに物凄い不安を覚えていくが、一度決めた以上…これ以上
疑ったり、ガタガタ文句を言っても仕方がない。
 克哉がうなずいていくと恭しく黒衣の男は頭を下げていき…そして踵を返して、
悠然とその場を立ち去っていった。
 
「…本当に、大丈夫なんだろうな…」
 
 克哉は一抹の不安を覚えつつ…どうしてあの男の口車に乗って頷いて
しまったのだろうかと早くも後悔し始める。
 だが、一度決めた以上ジタバタするのは情けなかった。
 
「腹を括るしかないな…」
 
 そして暫く時間が経過してから、短くそう呟きながら…克哉は
覚悟を決めていったのだった―
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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