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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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2009度のクリスマス小説。
  克克ものです。ちょっとサンタクロースの逸話を
  ネタに使っているので宜しくです。
  微妙にヒヤっとする描写もあったりしますのでそれを
 了承の上でお読み下さい。コミカル、ギャグ要素も有。

  白と黒のサンタ       

―自分ばかりがドキドキさせられてしまって、少し腹立たしかった

 ムスっとした様子で克哉はもう一人の自分が纏っているのと
対になっているデザインである、白いサンタクロースの衣装に
身を包んでいた。
 彼の方は、黒い衣装に身を包んでいる。
 デザイン自体は街中でこの時期に、沢山の人間が着ているので
見慣れているものだったが…克哉が強い違和感を覚えたのは
何よりもその色だった。

(…どうして赤じゃないんだろう…?)

 サンタクロースの衣装といったら、赤と白で構成されている
デザインのものが殆どだ。
 白と黒のサンタ衣装なんて、克哉は殆ど見かけたこともなければ
聞いた事もない。
 それにどうしてもう一人の自分が、自分と関わっている人たちに
プレゼントを配りに行こうという発想をしたのかも良く判らない。
 耳に届くのは結構大きなアイドリングとエンジンの音。
 
「…しかも、用意してある車は真紅のフェラーリだし…。車をこんなに
わざわざド派手な物にしなくても…」

「ん? 何か言ったか…?」

「ううん、別に…独り言だよ…」

 そういって高速で流れていく窓の外の風景を眺めていった。
 何というのだろうか…自分と一緒の顔として、似たようなデザインの服を
今は身につけているにも関わらず…もう一人の自分には妙にこの
赤いフェラーリが似合っていた。
 こういうゴージャスそうな車も、こちらの自分が運転していると妙に
様になるというか。
 克哉自身は免許は持っているが…自分で車を所有していなければ
ハンドルも何年も握っていないので完全にペーパードライバー状態である。
 自分の方がこの状態にも関わらず何でもない顔で運転している相手を
見るとちょっとだけ嫉妬の感情が湧き上がってくる。

(まあ…今更こいつに劣等感とかそういうのを抱いたって
無駄だって事は判りきっているんだけどね…)

 窓際に軽く肘をつけて、頬杖をついていきながら克哉は…
ただ風景と、窓ガラスに微かに映っているもう一人の自分の
残影を眺めていった。

(…オレがここ数ヶ月、どんな想いで過ごしていたか何て…きっと
こいつには判らないんだろうな…)

 どうして、自分の中にこの男に会いたいと思う気持ちがあったのか
克哉自身にもその感情が、何と言われる類のものなのか自覚がなかった。
 会えて嬉しい、と思う部分もあるのに…なかなか素直になることも出来ず。
 結局、少し不機嫌な顔をしながら相手に応対していた。
 チラっと相手を見つめていくと…どこまでも平常心で、克哉と会えてどう
思っているのかというのがまったく読み取れなかった。

「…オレばかりが悩んでいて、バカみたいだ…」

 そんなことを呟いている内に周囲の風景が変わっていった。
 どうやらこの辺りは高級住宅街のようだ。
 克哉が住んでいる場所も一応住宅街に位置しているが…其処とは明らかに
立てられている建物の類が異なっている。
 大きな敷地に、立派な家ばかりがズラっと並んでいる処を見ると…
この近くに住んでいるのは金持ちや、上流階級と言われる人達で
ある事は一目瞭然だった。
 だが、克哉自身にはまったく見覚えがなく、初めて来る場所だ。
 相手が車に取り付けられているナビを眺めて、小さく呟いていった。

「…そろそろ目的地だな」

「…なあ、一体お前は何処に行くつもりなんだ…?」

「…今夜は俺達はサンタクロースだと行っただろう? プレゼントを配る相手の家に
行くだけの話だが…?」

「えっ…? けど、ちょっと待てよ…。お前、誰にプレゼントを配りに行く
予定なんだよ…」

「…覚えていないのか? 亜紀とか言ったあの金髪の子供だ。一度俺が存分に
可愛がってやったな…」

「はっ…?」

 その瞬間、克哉の脳裏に…ある朝の記憶が鮮明に蘇っていく。
 そうだ、あの例の眼鏡を掛けた翌朝…自分はホテルのベッドに寝ていて…
隣には整った容姿をした高校生ぐらいの少年が裸で寝ていた。

(ここ…! もしかして、あの子の家だっていうのか…! どうしてこいつが
そんなのを知っているんだよ…!)

 事実を聞かされた途端、克哉の胸にはモヤモヤした感情が湧き上がっていった。
 それが何と言われる感情なのか、自覚したくなかった。
 必死になって抑え込んで…なんでもない顔を浮かべていくと、何でもないような
顔をしてもう一人の自分が言葉を続けていく。

「さて、夜は短い。モタモタしていたら全員分にプレゼントなど配れなくなって
しまうぞ…。さあ、行くぞ…『オレ』…」

「ちょ、ちょっと待てよ…! 待てったら…!」

 克哉がグルグルと考えている間に、相手は大きな袋を肩に担いでさっさと
家の中に入っていこうとしていた。
 克哉もまた慌ててその背中を追いかけていく。

(一体…今夜はどうなってしまうんだよ~!)

 克哉は心から叫んでいきながら、それでも…もう一人の自分を追いかけて、
一緒に家の中へと足を踏み入れていったのだった―


 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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