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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※4月1日からの新連載です。
それぞれ異なる結末を迎えた御堂と克哉が様々な
謎を孕んだまま出会う話です。
 彼らがどんな結末を辿った末に巡り合ったのかを
推測しながら読んでください。
 途中経過、結構ダークな展開も出て来ます。
  同時に他のカップリングの要素も孕む展開も出てくる可能性があります。
 それらを了承の上でお読み下さいませ。

   GHOST         

―男が去った後、結局御堂は別人のように様変わりをしてしまった相手に対して
何を聞けばいいのか判らずにいた

Mr.Rが立ち去った後、二人は暫く無言で見つめ合い、立ち尽くしていたが…
そのまま御堂は口を閉ざしたまま…白い霧が立ち込める中、帰路に
ついていった。
 やや速足のまま…それでもぼんやりと街の景観が浮かび上がっていく中…
自宅であるマンションを目指して彼は一直線に向かっていった。
 そんな彼の後を克哉は必死に追いかけていく。
 御堂の背中には、もしこの霧の中で自分を見失ってしまったのならば
決してこちらを探したりなどしない、そのまま振り返らずに進んでいくという…
そういう絶対的な意思のようなものが感じられた。

(御堂さん…怒っているよな…きっと…。どうやら、ここでの御堂さんは…
どちらの佐伯克哉ともそんなに深く関わり合わなかったみたいだし…)

 克哉には、今がどういう状況なのか把握し切れていなかった。
 ただ一つ言えるのは…ここはまだ、自分にとっての可能性が残されている
場所という事だけだ。
 胸の中に浮かぶのはあの二人の姿。
 お互いを必要としあい、信頼しあって…真っすぐに一つの目標へと
突き進んでいる姿はまぶしすぎて、同時に強い嫉妬を抱き続けていた。
 
(…けど、あのままではオレは何も出来ずに自然淘汰されるだけだった…)

 何も出来ずに、自己主張も行動も出来ずに…ただぼんやりとガラス越しの
ように世界を眺める事しか出来ない日々。
 その事を思い返せば、今はこうして自分の肉体を持って行動する
事が許されているだけ…たったそれだけでも克哉にとっては幸いだった。
 
―オレは亡霊みたいなものだったから…なら、こうして再び何かする事が
許されたのなら…何かを、残したい。この人の中でも…この世界にでも、
誰かに、いや…どこかで良いからオレが生きた証を…一つだけでも…

 心の中で強くそう思いながら、克哉は懸命に先を歩いている御堂に
追いすがっていった。
 胸に強い願いはあっても、それを叶える為に自分が何をすれば良いのか
まだ彼には見えていなかった。
 だが、御堂の傍にいる限りは…少なくとも考える時間ぐらいは与えられる。
 あまり悠長にしていられないと判っていても、ほんの数日程度でも多少は
時間は与えられているのだと信じたい。

(この人に手が延ばされるまでは…少しは間がある筈だ。どれくらいかは
判らないけれど…少しぐらいは抵抗したり、抗う猶予ぐらいは与えてくれていると
信じたい。そうしなきゃ…Mr.Rにとってこの『ゲーム』は何の面白みも
なくなってしまうから。ワンサイドゲームになるのはきっと…あの人の
趣味じゃない筈だから…)

 実際の処、あの男性が何を考えてこんな趣向を凝らしたのか…こうして
自分にチャンスを与えるような真似をしたのか、克哉には判らなかったので
断定はできない。
 だから希望的観測と判っていても、強く願い続けていく。
 そうしている内に御堂のマンションの玄関に辿りついて…カードキーを
使って御堂は先に入っていく。

「わわっ…! 待って下さい御堂さん…!」

 御堂が通り抜けた瞬間、自動ドアがすぐに閉まりそうになって慌てて
克哉が駆けこんでいく。
 その様子を御堂は鉱石のように感情のない眼差しで眺めていた。
 克哉はそれを見て…この世界の御堂の中には、こちらに対して何の
恋愛感情は存在していないという…その歴然とした事実を思い知る。

(やっぱり…この御堂さんは…どちらのオレ『俺』も…そんなに親しく
ないんだな…。凄く冷たい目をしている…)

 それに人間、好意がある人間なら歩調を合わせようとするものだ。
 先程の御堂の歩く速度から見ても…冷たい拒絶のようなものが
はっきりと感じられた。
 人間は嫌でも態度や行動に、その思惑や感情がにじむものだ。
 きっと御堂はどうして、そんなに親しくもない人間を自分の自宅に招いて
面倒を見なくてはいけないんだ…という苛立ちを感じているに違いない。
 そう思ったら、克哉は申し訳なくて泣きそうになってしまう。
 自動ドアをくぐった瞬間…ブワっと涙が浮かび始めていった。

「わっ…」

「…なっ?」

 御堂は、突然克哉が泣きだした事に驚いていく。
 二人して…エントランスの処に立ち止まって、気まずい空気が流れる中…
顔を見合わせていった。

「…どうして、泣いている…?」

「あ、その…すみません…。何でも、ないんです…」

 そうしてはにかむように笑いながら克哉はさっさとその話題を切り上げようとした。
 だが御堂はキっと睨みつけて阻んでいく。

「…まったく、君ははっきりしない男だな! これから私の家に厄介になろうというのに…
その動機も語らず、メソメソと泣いて…その理由を何も話さずに曖昧にして…
これから一つ屋根の下で暮らそうというのか! 人を馬鹿にするにも程がある!」

「えっ…ああっ! す、すみません! その…突然一緒に暮らしたいとか願って…
貴方の処に転がり込んだ訳ですけど…迷惑だと思われているのかと思ったら…
それと、貴方の冷たい目を見たら…その、申し訳ない気持ちになってしまって…!」

「なら、金ぐらいは工面してやる。出来たら返せば良い…! 迷惑だと思うなら…
今からでも近所のホテルでも手配するんだな! そんなに辛気臭い男と
一緒に暮らす義理は私にはないんだからな…!」

「そ、それが出来るなら…ああっ…!」

「なっ…!」

 御堂が拒絶の言葉を吐いた瞬間、また例の現象が起こった。
 突然克哉の身体がホログラフィが何かのように透け始めていく。
 さっきもこんな奇妙な事が起こった事を思い出して御堂が硬直していくと…
克哉はまるでその身体にすがりつくように強く抱きつき始めていった。

「…御堂さん! お願いですから…拒絶する言葉は、吐かないで下さい…! 
貴方に拒絶されたら、オレは…消えるしか、ないんですから…!」

「な、んだと…!」

 その言葉に驚愕を覚えていきながら、つい相手の身体を突き飛ばす事も
忘れてなすがままになっていく。
 そうして十秒もすれば…先程まで透明になりつつあった克哉の身体は
再び実体を持って、はっきりしたものへと戻っていく。

「佐伯君…一体、君は…何なんだ…?」

 現実では到底ありえない光景を真の当たりにして…御堂が困惑した
表情を浮かべていく。
 そんな彼に向かって、克哉は自嘲気味に笑いながら…こう
告げていった。

―今のオレは亡霊みたいなものですよ…貴方の傍に置いて貰わなければ…
儚く消えてしまうぐらいにね…

 そうして儚く佐伯克哉は笑っていく。
 かつて御堂の知っていた傲岸不遜な男とはまったく違う顔を見せていきながら。
 御堂はそれを見て、更に困惑が強くなっていくのを実感していった。
 だが…自分が拒絶すれば相手の存在は跡形もなく消えてしまう。
 それが事実だと薄々感じた御堂は…一言だけこう告げた。

「そうか、なら…来い。このまま君に消えられたら…後味が悪そうだしな…」

「…ありがとうございます。感謝します…」

 ぶっきらぼうな言い方の中に、御堂なりの情けを感じて克哉は頭を
下げていく。
 それが今の二人の距離。
 どこまでもよそよそしく…暖かい心の交流など何もない関係。

(けれど…この人に傍にいる事を許されただけまだマシだ…)

 そう克哉は自分に言い聞かせて…御堂の背中を追いかけて、彼の
部屋へと一緒に向かっていったのだった―
 

 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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