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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※ 今回は途中、かなり間が開いてしまったので過去のログのリンクも話のトップに
繋げる形で読み返しがしやすいようにしておきますね。
   
    バーニングクリスマス!                     
 
    お待たせしてしまって本気で申し訳ないです。
    これから、一月末までには終わらせるぐらいの気持ちで頑張ります(ペコリ)



 ―12月のある日の夜の事だった。

 御堂孝典は…友人達と一杯飲む為に行きつけのワインバーへと
向かう途中に…以前から気になって仕方なかった存在に電話して
色好い返事をもらえた事に、口元を綻ばせていた。
 現在の時刻は19時。
 街中の街路樹には眩いばかりのイルミネーションが飾り付けられている。
 この時期を迎える頃にはかなり風は冷たくなっているが…代わりに人工の
光が、華やかに街をライトアップしていく。
 今夜はワインを飲む予定の為に愛車は使用せずに、御堂は真っ直ぐに
電車と徒歩を今夜は利用していた。

「…やっと、私の誘いに乗ってくれたか…。随分と長く待たされたものだな…」

 そう言いつつも、御堂は本当に嬉しそうに笑っていた。
 佐伯克哉。いつから…彼のことが気になり始めたのか、御堂自身にも
判らなかった。
 だがあの挑発的な言動でプロトファイバーの営業権を勝ち取り、本来なら
ありえない数字にまで引き上げた売り上げ目標値まで達成させ、あまつの
果てに…バイヤーズと契約を勝ち取り、新規販売経路まで開拓した時点で…
御堂の中で、彼は一目置く存在になった。

 最初の頃はこちらの妨害をものともせずに、目標を次々と達成していく
彼の存在に苛立ったし、ついでに言うと…目障りだった。
 だが、彼とあの身体の大きな本多とか言う男がやり遂げたことは…
偉業に他ならなかった。
 あの新製品の成功は…悔しいが、彼らの力なしでは決して達成される
事はなかっただろう。
 営業期間が終わり、新しい商品のプロジェクトを立ち上げる時…御堂は
彼の実力を認めて、プライドを捨てて協力を仰いだ。
 …小さなことに拘って、大局を見誤ることなど愚の骨頂だとその時点で
察したからだ。

―そして、御堂は…いつしか佐伯克哉に惹かれてしまったのだ

 それで…彼と過ごす時間が長くなればなるだけ、気づけば…当たり前の
ように御堂は佐伯克哉のことを気になり始めて来た。
 それは…ごく自然に、御堂の中で育まれていき…気づけば大きくなって
いてもたってもいられなくなった。
 最近はふとした瞬間に…強烈な色気を感じて、穏やかではない気持ちに
させられる事も多くなった。
 そして先月、御堂は食事に誘い…彼にモーションを初めて掛けた。
 本気の想いと、挑発を込めた深い口付け。
 それから…克哉は時折、こちらを意識したような仕草や態度を取るように
なった。何度も…二人きりの時に、自分の私室で抱こうか…そんな
凶暴な気持ちに陥った事も沢山あった。
 だが、それ以後…意味深にこちらを見つめてくる以上に、克哉の方から
リアクションがなかったから…御堂は正直、焦れ始めていた。
 だからこそ余計に…先程電話して克哉がこちらの誘いを承諾した時、
男は満たされた気持ちになった。

「…ようやく、あの日の私の行動の意味を理解してくれたか…」

 そうして、心から愉快そうに笑みを刻んだ瞬間…御堂はその場に
凍り付いていった。

「な、に…?」

 たった今、彼に電話していた筈だった。
 そして電話している最中…間違いなく、自分の部屋にいると答えていた。
 この場所から彼の自宅まで、最低30分以上は掛かる距離の筈だった。
 通話を完了して…まだ十分も経過していない。
 なのに…どうして、ここに彼がいるのか…御堂は驚愕に目を見開かせていた。

「どうして、君が…ここにいる? さっき…私に、自宅にいると言った
あの言葉自体が…嘘だったと、言うのか…?」

 御堂がたまたま通りかかったジュエリーショップの前に、上質の
黒いコートとスーツに身を包んだ…一人の男が現れていった。
 一瞬、良く似た赤の他人か…別人かと思った。
 だが…顔の造作は紛れもなくさっき電話を掛けていた筈の
佐伯克哉のものであった。
 ただ、一つだけ異なる点があるとすれば、眼鏡を掛けているという事ぐらいだ。
 鋭く冷たい眼差しを浮かべながら、何か掌に乗っている小さなケースを
眺めている姿に…御堂は強烈な違和感を覚えていく。

(どうして…ジュエリーショップになど、君がいるんだ…?)

 しかも手に持っているケースは…指輪かカフス、ピアスなど小物のアクセサリーを
収めるのに丁度良いぐらいのサイズだった。
 目の前にいる長身の男は…かなり不機嫌そうな様子で、手の中に持っている
ケースを睨み付けている。
 その様子にどこか…鬼気迫るものすら感じて、御堂はその場に凍り付いていった。

(…そのケースの中に、何が入っているんだ…?)

 猛烈な好奇心が刺激していく。
 だが…男が纏っている剣呑過ぎる空気のせいで、御堂は今の彼に
声を掛けることは憚られてしまった。
 しかしどうしても御堂は気になって…斜め後ろの位置から、気づかれないように
慎重に彼の傍へと歩み寄っていく。

「…あのバカが。暫く構わない間に…他の男に尻尾を振るような真似を
するとはな…」

(…何故だ…? 君の言っているバカとは…誰を指しているんだ…?)

 その一言を聞いた瞬間、何故か…自分にその敵意が向けられているような
そんな気がしてしまった。
 そんな筈はない。さっき…佐伯克哉は、躊躇いがちとはいえ…こちらの誘いを
承諾した筈だ。
 なのに、それとまったく同じ顔をした男が…苦々しげにその内容を呟いているのを
聞いて…御堂は、背筋に寒いものを覚えた
 殺意にも似た、冷たい空気が男の背中から立ち昇っているのが判る。
 声を、掛けようとした。そして問おうと思った…が、御堂にはどうしても
それが出来なかった。
 その場に両足が縫い付けられたかのように…それ以上、近づくことが
出来なくなる。
 瞬間…佐伯克哉は一瞬だけ、こちらに視線を向けた。

「っ…!」

 御堂は、その冷たい双眸を目の当たりにして…心臓が凍るかと思った。
 あまりに冷たい空気を纏う今の克哉の眼差しは、まるで鋭い刃のように
凶悪な美しさを秘めていた。
 何も、言葉を紡げない。ただ、冷や汗が背筋にツウっと伝っていった。

「…あんたか。じゃあな…」

 そしてさっきまで丁寧に電話口で応対していたのが嘘のように感じられる
ぐらいに、ざっくばらんな様子で…そう言い捨てて男はその場を後にしていった。
 御堂は、暫く戦慄のあまりに身動きを取ることすら出来なかった。

「…佐伯克哉。君は、一体…?」

 御堂は、本気で疑問に思いながらそう呟き…暫くその場に立ち尽くしていく。
 瞬く間に眼鏡を掛けた佐伯克哉の姿は消えて、御堂だけが取り残されていった。
 あまりに深い謎を残して…彼は立ち去っていく。
 その日、御堂の中に…更に強い佐伯克哉への興味と、疑念がその一件を機に
生まれていったのだった―
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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