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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  こんにちは、香坂です! 今週は、ぶっちゃけ…掲載遅くなりがちで
すみませんです…(汗)
 大阪帰って来てから執筆リズムが崩れてしまっているのでその日の更新分が
日付代わってから掲載…って感じになっています。
 いつもなら寝て起きて、早朝に書き上げて…また翌日の執筆に備えて
日付代わる頃には眠るってペースなんですけどね。
 本来なら寝ているべき時間に執筆しているので、眠くて頭が働かなくて
執筆時間がまた延びる~って悪循環に入っています(シクシクシク)

 …とりあえず拍手返信とか、メール返信とか、執筆リズムを元通りに
戻せる余裕が出来るの週末に入ってからになりそうです。
 掲載遅れがちですが、一応…一日一話ペースを極力守って
もうちょいやっていく予定なので宜しくです。
 んで!  本日も日付越えます!(きっぱり)

 …今回は三角関係(四角関係?)ものを行きます。
 んっと…本来ならサイト開いて四話目の連載になる予定だった話です。
 頭の中で運よくサルベージ出来たので…17日分はそれの第一話に
なる予定ですが…掲載遅れました(というか翌朝になった)
 18日分は夜、書けたら書きますが…体力と気力に余裕がない場合は
一回休んで、ちょっとグダグダになっているペースを修正する事にします(汗)
 いきなり今回はエロから始めてみました(笑)
 途中経過はかなりのシリアスになる予定。
 それを覚悟の上でお読み下さい(なむ~)
 
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 この話は鬼畜眼鏡とセーラームーンをミックスさせたパロディものです。
 登場人物が女装するわ、必殺技をかまして怪しい奴らと戦い捲くります。
 無駄にお色気要素満載です。1話&2話目まではギャグ要素に溢れています。
 そういうのに不快になられる方はどうぞ回れ右をお願いしますです(ふかぶか~)

 克哉たちがMGNから、キクチ・マーケーティングに戻った頃にはすっかり日が暮れて

しまっていた。
 全員が戦いでヘロヘロになっている事もあったので本日は片桐が通常業務は
明日以降に回して、本多と片桐は帰って良いと命じてくれていた。
 本多と一緒に帰ろうかとも、チラリと考えたが変身を解いた途端、全身筋肉痛に
襲われた彼が身動きが取れるようになるには後、一晩は掛かるだろう。
 慣れないハイヒールを履いて戦う羽目になった上に、一人でビルを支えるような真似を
したのだから、ある意味当然の結果である。
 一旦、自分の家に帰りたい気持ちもあったので医務室で寝ている本多の全身に
ベタベタベタと湿布だけ貼り付けて克哉は一人、帰路についていた。

(本多にムーン・ヒーリング・エスカレーションをやってやるべきだったかな…)

 ふと、会社の外に出た瞬間…そんな考えが脳裏を過ぎっていく。
 しかしあの技を発動させるには、また変身しなくてはならない…と思うと少し
躊躇が生まれていく。
 すでに本多とて、自分の仲間の一人だ。
 あの例の恥ずかしいスカートヒラヒラの格好を見られるのもお互い様な部分が
あるが…どうしても、一旦…いつもの服に戻ってしまうと、あのコスチュームを
身に纏うのには抵抗があった。

「どうしようかな…」

 長年の付き合いの相手でもあるし、ここは一旦…恥ずかしさを堪えてでも
戻って回復させてやろうかな…と思った瞬間、声を掛けられた。

「克哉さん! お疲れ様…! ずっとここで待っていたんだけど…出て来るの
遅かったね」

 玄関付近に立って待っていたのは…太一だった。
 いつもの普段着に杏色のエプロンを身に纏って…人懐こく笑いながらこちらに
歩み寄ってくる。

「…太一。もしかして、ずっと待っていたのか…?」

「うんっ! 出来れば克哉さんと途中まででも一緒に帰りたいと思ったからね…。
駄目だった?」

「いや、そんな事ないよ…歓迎するよ。オレも…ちょっとまだ、事態についていけて
なくて混乱している部分あるし。太一なら…事情に通じているし、話しやすいからね。
…オレで良かったら、幾らでも一緒に帰るよ?」

「やりぃ! 良かった…ちょっと寒かったけど、ここで待っていた甲斐があって良かった!
という訳で決まったのなら…ささ、早く帰ろうって。行こ! 克哉さん!」

 そのまま無邪気な顔を浮かべていきながら…克哉の手をぎゅっと握り締めて
先導していった。
 秋の穏やかな夜に…二人はフラリと公園に立ち寄っていく。
 空には綺麗な円を描いた銀色の月が浮かんでいた。

「…ここは…」

「うん。昨日の公園…ここで俺、克哉さんと知り合ったんだな~と思ったら
ちょっと寄りたくなってね…?」

「…そういえばそうだよね。あれは…昨日の晩の話だったんだよね。
何か凄い…遠い日のような印象を感じる…」

 それは誇張でも何でもなく、克哉の本心からの言葉だった。
 この二日間があまりに密度が濃かったせいだろう。
 もっと長い時間が経過しているような錯覚すら感じていた。
 公園の噴水の前に足を踏み入れていくと、ふいに太一の指先が
離れて…軽やかな動作で噴水の周りを囲んでいる石の処に足を
乗せて、登り始めていく。

「太一っ! 危ないよっ?」

「もう、平気だってこれくらい…。怪我したりする程、鈍くないから…さ?」

 淡い月の光が、噴水の水を静かに照らし出し…酷く幻想的な雰囲気を
醸していく。
 そんな中で水か静かに落ちていく音だけが辺りに響き渡っていった。
 月を背にして…噴水の縁に立つ太一は、神々しさと…子供っぽさを両方
併せ持っていた。

「…克哉さんもおいでよ? 意外に視点が高くなってて気持ち良いよ…?」

 あんまりにもあっさりとした口調で無邪気に言うものだから…少し考えたが
突っぱねられず、もう…と呟きながら、克哉は差し伸べられた腕を取っていく。
 ほんの数十センチ程度、いつもよりも高い視点は…見慣れた公園をいつもよりも
違っているように感じさせてくれていた。

「…本当だ、夜風が…凄く、気持ち良い…」

 大人になれば、噴水の縁を歩く事もそんなになくなる。
 大抵、この公園に寄ってもお世話になるのは水のみ場か…ベンチ程度だったから
新鮮な気分だった。
 手を繋ぎながら大の男が、噴水の周りに乗り上げている姿を第三者が見たら
どんな風に思うのだろうか? 
 ふとそんな事を考えたが…繋がれている手の暖かさに、次第にどうでも良くなって…
二人で一緒に、暫く月を仰いでいった。

「ねえ…克哉さん。少しだけ…話聞いて貰って良い?」

「…何、かな…? オレ良ければ…聞くけど…?」

 まだ自分達は知り合って間もない間柄だ。
 それで一体…会社の前で待ち伏せしてまで…彼は自分に何を話したかったのだろうか?
 そんな事を考えながら…太一の次の言葉を待っていった。

「あのね…こんな事を言ったら、克哉さんを困らせてしまうかも知れないけど…
俺、貴方と一緒に戦う事になって良かったとおもっているよ? これは本心だから…」

「えっ…う、そ…だろ?」

 一瞬、太一の言った言葉が信じられなくて目を瞠っていく。
 しかし…相手の顔を凝視しても、その顔には穏やかな笑みだけしか見つけられず…
本心を読み取る事は困難だった。

「ううん、本当。だって…俺、初めて貴方を見かけた時から…こうやって話せたら
良いなってずっと思っていたから。確かにあの格好はちょっと…と思う部分もあるけどさ、
そのおかげでこうやって克哉さんと俺…知り合えた訳だし。
 だから…俺は逆に感謝していたりするんだ…」

「そう、なんだ…」

 太一の言葉は静かで、暖かくて嘘は感じられない。
 最初は信じられなかったけど、その顔と口調で…本心で言ってくれていると判って
少しして…克哉は柔らかく微笑んでいった。

「…ん、オレも…あんな格好するのは恥ずかしいけれど…太一と出会えて
良かったと思っている。昨日だって…今日だって、君がいなかったら…オレはどうなって
いたか判らないし…。今日、オレが敵に捕まっていた時に来てくれた時は、本当に
涙が出るくらいに嬉しかったから…」

 そう、自分一人だったら…昨日も今日も、恐らくどうにもならなかった。
 それを思えば…彼に幾ら感謝してもこちらは足りないくらいなのだ。
 克哉の言葉を聞いて、みるみる内に…太一の顔に喜びの色が満ちていった。

「そう、貴方の役に立てたなら…本当に、良かった。これからも宜しくっ!
克哉さんっ!」

 ぎゅっと手を握られながら、嬉しそうな顔をして…宜しくなどと言われたら
こちらも少し恥ずかしくて仕方なかったけれど…ジィンと何か、暖かいものが
胸の中に満ちていった。

(何か太一の傍にいると…励まされる気がするな。こんな事態に巻き込まれて
どうしよう…って思っていたのが、どうでも良くなってくる…)

「こちらこそ…宜しく、太一。…君がいてくれて、本当に…良かった…」

 はにかみながら、本心からそう気持ちを告げていくと…次の瞬間、太一の顔が
真っ赤に染まっていった。

「…っ! 克哉さん、それ…反則過ぎる! うっわっ…俺の方まで恥ずかしく
なってきたかもっ!」

「…っ! そんな事、言われても…! そんなに恥ずかしがられると…こっちまで
恥ずかしくなるじゃないかっ!」

 お互いに口を手で覆いながらも…繋いだ手の方は離す気配はなかった。
 どうして手を離す気になれないのか…自分でも不思議だったけれど、繋がれた手から
太一の温もりと手の感触が伝わってきて、酷く落ち着いていたにもまた事実だったからだ。

「…と、もかく…! うんっ! これだけ言っておくよっ! 貴方は絶対に…俺が
守るからっ! それは俺の中で決定事項だから…忘れないでっ!克哉さん…!」

「守るって…? えっ…!」

 顔を真っ赤にしながら、太一がふいに顔をこちらの方に急接近させていくと…
いきなり、頬に柔らかい感触を感じた。
 一瞬何か…と思ってその場に凍り付いていくが…少しして、頬にキスを落とされた
事に気づいていくと…克哉も耳まで火照っていく感じがした。

「えっ…! えっ…! 今の、何っ…!? 太一…?」

「…俺からの、気持ちだよっ! …それじゃ、今夜はそろそろ行くから! 
またねっ! 克哉さんっ!」

 お互いに顔を真っ赤にしながら…太一はパっと手を離して…その場から
物凄い勢いで立ち去っていく。
 突然の事態に、克哉は呆然とするしかない。
 一体今、何が起こったのか…と状況判断が出来ずに、つい頬を押さえて
立ち尽くす事しか出来ないでいた。

「い、今のって…一体、どういう…意味、だったんだ…?」

 何となく察してはいたが、まさか…という想いもあって、混乱するしかなかった。

「…まさか太一が…オレの事を…?」

 信じられない思いがいっぱいだった。
 自分達は昨日初めて知り合ったばかりで…男同士で。
 それなのに…太一からあんな事を言われて、頬にキスされていて。
 変身させられて戦う羽目になっただけでもとんでもないと思うのに…一日の終わりに
またこんな事が起こって、つい克哉は…その場にへたり込みそうになった。

「…どうしよう。展開速すぎて頭がついていかない…っていうか、次に会った時に
オレ…太一にどんな顔して会えば良いのか…判らない、かも…」

 噴水の縁に腰を掛けながら、深々と溜息を突いてうなだれていく。
 ふと…空に浮かぶ月を眺めていく。
 自分がこれだけグルグルしていても…月光だけは酷く澄み切っていて
清浄な空気が辺りを支配していく。
 白く煌々と光る月の姿は懐かしくて…同時に切なくて。
 全てのことをはっきりと思い出せる訳ではなかったけれど…ふと、一瞬の映像が
脳裏を過ぎっていく。

 月を見ると、今は何故か―涙が出るくらいに、懐かしい気持ちだけが溢れていた。

「えっ…何で、オレ…涙、が…?」

 自分でも、どうして泣いているのか…判らなかった。
 記憶は全て戻っている訳ではない。
 けれど…自分の心の奥深くで、紛れもなく…強い想いが湧き上がって来ていた。

―もう一度、君に会えて…本当に、良かった…!

「…オレ、太一とも…昔、何か…あったのか? だからこんなに…懐かしい
気持ちになっているの、かな…?」

 瞳からは透明な涙が溢れて、溢れて。
 水晶のような雫がポロポロと輝きながら地面に落ちていく。

「…前世で、オレ達に何があったの…? 誰か…教えて…」

 無意識の内に月に手を伸ばしながら、ただ…祈っていく。
 胸の中に溢れる感情は…喜び、だった。
 それを自覚して…ただ、白い月の元…克哉は一人、立ち尽くしていく。

(あぁ…オレにとって、太一は…遠い昔に…大切な人、だったのかも知れないな…)

 それがどういう類のものか、判らない。
 はっきりとした回答はまだ自分の中には存在していなかった。
 けれど…これだけは言える。
 自分は…太一にこうして会えて良かったと、心から思っている事を…。

 永劫とも言える長い時間が月と地上の間に流れていても
 降り注ぐ光だけはあの頃と何一つ変わらなかった。
 克哉がどれだけ心の中で問いかけても今は月は何の回答も齎さず
 どこまでも澄んだ光を讃えて、空に浮かび上がっているだけだ。

 ―俺、貴方に会えて本当に…感謝しているよ。カイヤさん…

 必死になって思い出そうとして、拾えたカケラはただ一つだけ。
 それは…遠い昔、花畑で…自分に向かって、笑顔でそう言ってくれた
かつての彼の…言葉だけ、だった―

(あぁ…そう、か…オレ、たちは…)

 以前に、うんと昔にも…一緒に、いたんだ。
 それを思い出して…克哉は静かに微笑んでいく。
 他の事はまだ思い出せないけれど…断片だけでも深遠から
拾う事が出来て、少しだけ克哉は嬉しい気持ちになっていった。
 
 そうして…彼らが再会して二日目の夜は更けていく。
 止まっていた彼らの運命の輪が緩やかに回っていた。
 その時計の針が指し示す未来に何が待ち望んでいるのか…
彼らは未だ、知らない。

 大切な記憶の断片を胸に抱き、克哉は月を仰ぐ。
 其処には何百年の月日を得ても変わる事がない…悠久の
月の姿だけが、紺碧の闇の中に静かに浮かんでいた―



  




 
  15日中に完結させるつもりでしたが、トータルで三時間打っても
いまだに終わりません(現在午前二時)
 16日分は自宅に帰って来てからの掲載になります。
 うわ~ん! 人数多い話って本気で長くなる~!!(涙)
 という訳で…すみません、ここで本日は区切らせて貰いますね。

 セーラーロイド…マジで魔物だ。
 2話終了の時点でP数が…え~と…多分70~80P行きます。
 という訳で新しい連載は17日からになります。
 まあ期間一日延びたから…その間、アイディア煮つめておきますです。
 さ~てと、明日日中に自分の頭の中で何のアイディアが出るかな?(ドキドキドキ)
 んじゃこれから寝てきます…。おやすみなさいませ(ペコリ)
 この話は鬼畜眼鏡とセーラームーンをミックスさせたパロディものです。
 登場人物が女装するわ、必殺技をかまして怪しい奴らと戦い捲くります。
 無駄にお色気要素満載です。1話&2話目まではギャグ要素に溢れています。
 そういうのに不快になられる方はどうぞ回れ右をお願いしますです(ふかぶか~)

 その場にいた3人が、一時の勝利の余韻に浸っていると…下の階からやっと
本多と片桐の姿が見えていた。
 片桐がほんのりと照れくさそうに…変身した後のコスチュームのまま、眼鏡に
笑いかけて報告を口にしていった。

「セレニティ様。とりあえず…命じられていた通り、下の階の…ビルの柱の
舗装と修理、完了しましたよ。これで…この本社ビルが倒壊する事はなくなったと
思います」

『ご苦労だった…お前達も、初めて変身した割には案外良く頑張ってくれたな。
そこにいる一回目は役立たずだった奴とは大違いだな…』

(…それってオレの事、だよな…)

 眼鏡の言い分に、思いっきり克哉は心の中で泣いていた。

「おう! とりあえず…俺の方もどうにか片桐さんが修理を完了させるまで
言っていた通り、ビルを持ち上げて支え続けていたぞ。いや~この格好…最初
させられた時はふざけて過ぎているぞ! って思ったけど…とんでもない
力を出せるもんなんだな。まさかビルを支えるなんて芸当が出来るまでとは
思ってもみなかったぞ」

『『『えぇぇぇぇッ!』』』

 流石に本多の話には、克哉、太一、御堂の三人もびっくりしたようだった。
 皆、似たような叫び声を上げて反応していた。

『…まあ、今も昔も…お前は力だけが誇れる奴だったからな。その点に
関してもご苦労様だった。お前達のおかげで…敵は退けられたぞ…。
そこら辺に関しては胸を張って誇っても構わないがな…』

 相変わらずやる気はないのに、態度だけは物凄く偉そうだった。
 それでも勝利した、という結果の為か…その場にいた全員の顔に
安堵の表情が浮かんでいた。
 最初、眼鏡に強制的に変身させられた時には一体どうなってしまうのだろうと
思ったが、実際に黒い妙な影とかとワラワラ戦わせられて…全員がどうやら
戦う為にはこの妙な格好をしなきゃどうしようもないらしい、という現実を
受け入れ始めているようだった。
 相変わらず、太一を除いた全員が…どこか恥ずかしそうな顔をしていたが…
最初に変身した直後よりも少しは落ち着き始めていた。

「セレニティ様~」

 一時の安息が訪れたその時、可愛らしい声を挙げて白い猫が…眼鏡の元へと
トコトコトコ…と歩いてくる。
 それに付き従うように…Mr.Rも共にやってきて…自分達の主の前に
跪いて、報告を始めていった。

「セレニティ・眼鏡様。ご申しつけの通り…このビルの中にいた人達全員への
暗示、及び記憶操作作業…完了致しました。これでこの件の事が、必要以上に
騒がれたり問題になる事もないでしょう…」

「僕も言われた通り、この近隣にシールド貼って…外部の人が迷い込んだり
このビルを覗いたり出来ないようにしておきました。これで…この人達も
安心だよね?」

 白い猫が長い尻尾をフリフリさせながら、クルリと回って…5人の女装する
羽目になったいい年した男性を愛らしく見遣っていった。

「ね、猫がしゃべっている!」

「しゃべっていますねぇ…どうしてでしょうか…」

「嘘だろ…何で猫がしゃべっているんだよ…一体どんな仕掛けなんだ…?」

「うっわ…相変わらずアキちゃん、可愛いなぁ。抱っこしたい…」

「…情報操作とか、そういう事…出来たんだ…」

 御堂が驚き、片桐は純粋にのんびりと不思議がり、本多は現実かどうか疑い
太一は白い猫の愛らしさに瞳を細めて、克哉は冷静な一言を呟いていた。

『あぁ…一応、アキには…俺の力が及ぶ効果範囲を広めたり、戦っている現場に
外部の人間が不用意に迷い込んだりしない為のシールドを貼ったり…霧を使って
大気中の水分を上手く屈折させて…幻を見せる能力ぐらいは備わっている。
 これは元々…王家に代々仕える守護猫だからな。それくらいのことは朝飯前だ』

「…もう何が何だか、訳が判らないがな…。しかし今、この怪しそうな男が
情報操作と暗示を完了させた…と言っていたが現実にそんな真似が可能なもの
なのか…?」

 Mr.Rを指差しながら、御堂がその場にいた全員の疑問を代わりに口にしていく。

『…あぁ、それくらい簡単だ。一応…今、月に残っているホストコンピューター
でも…この狭い島国の中くらいだったら充分に情報を把握して…操作する事は
容易いしな。他人に暗示掛ける事はこいつにとっては十八番だからな。
だから安心しろ…一応、妙な格好をして外で戦う羽目になっても…その格好が
一般人の目に必要以上に触れたり、メディアに流されるような事はないように
しておいてやる。それくらいは保証しておいてやろう…』

 眼鏡のその言葉を聞いた時、その場にいた5人は心から安堵していた。
 限りなく胡散臭い話ではあるが、このスカートヒラヒラな格好が…メディアに
よってお茶の間に全国展開などされたら、全員の社会生活など抹殺される事
請け合いだったからだ。

『…お前達、ご苦労だった。お前たちが俺の指示を守って…それぞれの
役割を全うしてくれたおかげで予想外にスムーズに事が片付いてくれた。
それで…一応、いつまでも本名で呼び合うのもどうかと思うので…
戦いの最中のお前達の別の名、コードネームをつけておいてやろう…』

「…あの、コードネームって…何で…?」

 克哉が不思議そうに問いかけていくと、眼鏡は思いっきり呆れた表情を
見せていく。

『…あのなぁ、一応情報操作や暗示を掛けたからと言っても…お互いの
名前の呼びかけとか、ささいな事は…一般人の記憶に残る可能性がある。
だから正体を外部の人間に知られたくなかったら…変身中はそっちの名前で
呼び合った方が良いだろう…という俺の判断なんだが…いらないのか?』

「あっ…そういえば、そう…だよね…そこら辺、まったく失念してた…」

 そう、変身してからも…思いっきりお互いの名前で呼び合っていた。
 あれだけ大声で名前を連呼していたら…確かに誰かに名前を知られたり、
覚えられてしまってもおかしくはなかった。
 眼鏡に呆れられて…やっとそこら辺の事を自覚した。

「…で、お前は私達にどんなコードネームとやらをつけるつもりなんだ…?」

 険を含みながら御堂が問いかけていくと…不敵な笑みを浮かべながら、
眼鏡は答えていく。

『そうだな…こいつは最初から自分の事を『セーラーロイド』とか名乗っている
からな。それを踏んで…御堂、お前はさしずめ『セーラーワイン』だな。
片桐は…『セーラーインコ』本多は『セーラーカレー』…と言った感じだな。
一応、お前達が好きなものや愛してやまない物から取ってやったんだが…
それぞれの個性が出て悪くないだろ…』

「あの…オレのは?」

 自分だけつけられなかった事に…克哉は問いかけていくが、眼鏡は少し
考え込んで…はあ、と溜息を突いていく。

『…お前は『セーラーノーマル』とでも名乗っておけ。あまりに平凡過ぎて
お前だけどうつければ良いか思いつかなかったからな…』

「そ、そんな…」

 眼鏡のあまりの適当な名づけっぷりに克哉は少しだけ傷ついていく。

「さ、佐伯…いや、ノーマル君。大丈夫ですよ…それだって呼んでいれば
その内…愛着が湧いてくるでしょうから…」

 この異常な状況でも、片桐の柔らかい笑いは健在である事がほんの少しだけ
嬉しかった。
 けれど何の特徴もない、という理由で自分だけいい加減な名前をつけられた
ような気がしてならなかった。
 …まあ他の人間も納得しているかどうかは微妙だったが…本名を公に知られる
よりはマシ、みたいな感じで一応受け入れたようだった。

『さて…お前達。この度の戦いは本当にご苦労だった。今回は誰も大きな
負傷なく戦いを終えられた事は僥倖だった。
 四天王と言われる敵の配下も残り3体、それと黒幕となる…『ダーク・
エンディミオン』との戦いは残っているが…今日の処はこれで解散して
戦いの疲れを各自、取って貰いたい…」

「あの…『ダーク・エンディミオン』って…?」

「…人間の中の悪意と悲しみ、嘆き、憎悪から生まれたものだ。まだ…新たに
目覚めたばかりでモヤ状態になっているが…奴らが人の生命力…エナジーを採取
するのもその為だ。奴はまだ完全に復活しておらず、形を保つ事も出来ない。
…人の中の『憎悪』が形になったもの…と解釈しておけ。奴の仮の名が今は…
『ダーク・エンディミオン』…そういう訳だ」

「そう、なんだ…」

(これは偶然…なのか…?)

 眼鏡の返答を聞きながら、克哉は釈然としない気持ちになった。
 昔から…幼い頃から繰り返し見る夢。
 その夢の中でいつも自分は最後に、目の前で倒れた人を「エンディミオン」と
呟いていた。
 そして…これから自分達が戦う敵の名前が『ダーク・エンディミオン』
 これが意味する事は何だろうか…と克哉は本当に不思議に思った。
 この偶然の一致が何を指しているのだろうか…と。
 
「何? どうしたの…克哉さん? 何か浮かない顔しているみたいだけど…?
そのダークなんとか…っていうのが、そんなに気に掛かるの?」

 克哉の反応に、太一は本当に不思議そうになっていく。
 しかし…敵の名前を聞いて、御堂は本気で青ざめていた。

「…エンディミオン、だと…?」

 本気で肩と唇を震わせながら…呟いている様は鬼気迫る様子があった。

「…知っているんですか?」

「…いや、私もはっきりとは思い出せないが…な。嫌なものを感じた。
ただそれだけだ…」

 そうして御堂が押し黙っていったのを見て、
更に判らなくなっていく。
 あの夢の中で…目の前で散って行った人の顔がどうだったのか…
どんな人物だったのか、克哉の中には一切記憶が残っていない。
 ただ繰り返し繰り返し…悲劇とも見れる、悲しげなやり取りだけが
印象に残る。そんな夢だったから―

「しかし…本当に私は、これからもこんな格好を続けて…戦い
続けなければならないのか…」

 御堂がコメカミを抑えながら、深い溜息を突いていく。
 それに克哉も思いっきり同調してしまった。

(心中お察しします…御堂さん…)

「ん? 別に拒否しても構わないぞ? その場合は…今は保護して漏洩しないように
守ってやっているお前の変身シーンとか、戦っているシーンの映像をあちこちに
流れるかも知れないがな…?」

「えぇ、貴方様の雄姿は監視カメラの類とかに沢山残されておりましたからね。
一応データーのバックアップとかは取ってありますから…いつでも閲覧可能ですよ?」

「うわぁぁぁぁ!」

 ニッコリと心から楽しそうに笑いながら、眼鏡とMr.Rが恐ろしい発言を口の上に
載せたので…御堂は叫び声を上げるしかなかった。
 傍から聞いていても、これは二人からの遠まわしな脅迫だという事は丸判りだ。
 …断ればどういう事態になるのか、それは言わずとも予想がつきそうな事だった。

「…判ったから、それだけは止めてくれ。…こんな格好をしているのがアチコチに
ばら撒かれたら…私の社会生命はそれだけで終わりそうだからな。
 …その代わり、協力している限りは…漏洩する事はない。それは誓って貰える
のだろうな?」

『あぁ…当然だ。こちらに従って戦って貰う以上、俺達もそこら辺の事ぐらいは
配慮するさ。…で、今回はたまたま…敵の方が先走って、宝石に操られている奴が
直々に仕掛けて来たが…次からは向こうも警戒して長期戦になると思う。
その為に…これを至急しておく。各自一本ずつ持っておけ…』

「はい…皆様。どうぞこれを…」

 眼鏡が指示すると同時に…Mr.Rが全員に透明なキラキラ光るペンを渡していった。

「これは…何ですか?」

 克哉が聞くと、Mr.Rは悠然と微笑みながら答えていく。

「…このペンは幻の銀縁眼鏡の力を一部、受け継いで作られております。
現状では克哉さん、貴方が例の眼鏡を掛けて傍にいない限りは誰も変身が出来ません
でしたが…このペンを携帯して、手に握りながら変身の言葉を唱えればいつでも
戦いの装束を纏うことが可能になります。戻りたい場合は握った状態で『武装解除』と
唱えれば…ご自分の格好に戻られる事も出来ます。
 これから先は…いつ、変身する事態に陥るか判りませんから…どうぞこれを各自
一本ずつお持ち下さいませ…」

「へえ…随分と綺麗なペンだな。かっわいい!」

「う、む…しかし、このデザインは…」

「…うわっ…! これ少し、少女趣味過ぎないか…?」

「…これは、私が持つには…少し、可愛らしすぎますね…」

「……もうどうにでもして下さい」

 太一は意外とあっさり受け取っていったが…残りのメンバーは少しだけ難色を
示していく。克哉に至ってはやや自暴自棄気味になりつつあった。
 幼少の頃、男の子なら誰でも変身ヒーローには憧れるものだ。
 しかし…実際に変身して戦う事態に巻き込まれても…いい年した成年男子が
ヒーロー物ではなくセーラー服っぽい装いを着て戦う羽目になっているのだ。
 その現実をあっさりと受け入れろと言われても到底無理だろう。

「…どうした? 持たないのか? 恐らくこれから…この都内ではエナジーを
搾取しようと…奴らが暗躍し始めるだろう。
 もしお前達が戦う術も持たずに奴らに遭遇したら…そこに倒れている一般人と
同じような末路を辿るだけだぞ?」

 そうして…克哉に癒されはしたが…まだ部屋の隅で意識を失ったままぐったり
しているMGN社員達に目を向けていく。
 …自分達が駆けつけるまで、彼らはミイラのように干からびるまで生命力を
奴らに奪い取られていた。
 それを見て…一番最初に克哉が覚悟して、手に取っていく。

(あんな奴らを…許しておける筈がない…っ!)

 こんな格好をしながら戦うのは死ぬ程、恥ずかしい。
 しかしそれ以上に、あんな真似を平気でしでかす奴らを許すことが出来なかった。
 克哉が険しい顔をして手に取ったのを見て…残りのメンバーも何かを感じたらしい。
 太一、本多、御堂…片桐の順にペンを手に取って、しっかりと握り締めていった。

『…お前達、腹は決まったらしいな。最初の頃より…随分と良い顔になったぞ?
それじゃあ…言うべき事を終えたから、そろそろ消えるが…御堂…』

「何だ?」

『今晩、お前の夢枕に立たせて貰うから覚悟しておけよ?』

「っ…! 二度と来るなっ! この変態がっ!」

 眼鏡がその一言を放った瞬間、御堂は高速で相手に拳を繰り広げていく。
 しかし…あれだけの存在感があるのですっかり失念していたが、眼鏡は所詮…
思念体なのである。
 どれだけ痛烈な一撃であろうとも、実体のないものには当たる訳がない。
 盛大な空振りをして、御堂の身体はつんのめっていった。

「危ないっ!」

 咄嗟に転びそうな身体を本多と片桐は支えていったが…御堂は、顔を真っ赤に
しながら…眼鏡だけを思いっきり睨んでいた。
 しかし…殴れない相手に拳を握り続けてもしょうがないと悟ったのだろう。
 暫くすると…平静の顔と態度に戻っていった。

「すまない…取り乱した。支えてくれて感謝する…」

「いや、これくらい何てことないっすけどね…。大丈夫ですか?」

 本多が御堂に気遣う発言をするが、そんな態度も今の御堂を苛立たせるもので
しかない。短く「大丈夫だ」とだけ告げると…それきり、口を閉ざしていった。

『気は済んだか? それなら…俺はもう行くぞ。お前達の活躍…期待しているぞ…』

 そうして、強気に微笑んでいきながら…セレニティ・眼鏡の姿は消えていった。
 残ったメンバー全員が…まるで信じられないものを見たような、どこか呆けた
力のない表情を浮かべていた。
 一番最初に、元に戻ったのは御堂だった。
 どうやら眼鏡の顔が目の前からいなくなったので…通常の自分のペースを
取り戻せたらしい。
 そこにいるのは眼鏡に弄られて顔を真っ赤にしていた面影など微塵もない
出来るエリートそのものの…御堂孝典の姿だった。

「今のが夢だったらな…まあそんな事を考えても仕方がない。…とりあえず、君たち
には世話になった。釈然としないが…とりあえず例のプロトファイバーの営業権を
三ヶ月だけ、君たちに委任しよう…約束だからな…」

「本当っすかっ! 御堂さんっ!」

 その言葉に一番喜んだのは、本多だった。
 彼のその表情を見て、片桐と克哉もまた嬉しそうな顔を浮かべていく。
 こんな事態に巻き込まれたのは災難だったが、おかげで…この魅力的な商品を
扱う事が出来るようになったのは大きな僥倖だった。

「詳しい話はまた後日にさせて貰う。本日は…これで失礼させて貰おう。
まだ社内は混乱していると思われるし…誰か指揮を取らなければいつまで経っても
事態は収まらないからな…」

 そうして、踵を返して…御堂は最上階のフロアから立ち去っていく。

「おいっ! 克哉…良かったなっ! 俺達…営業権をもぎ取れたぞ!」

「まさか…本当に、取れるとは思ってもみませんでした…やりましたね、本多君、
佐伯君っ!」

「はいっ…! まさか…取れる、何て…」

 その喜びに、克哉は少しだけ瞳を潤ませていた。
 三年も所属している、愛着のある自分の課が…このまま黙ってリストラされる
結果にならなくて本当に良かった…と安堵したからだ。
 太一だけは途中で参入したから、話しの全てを把握出来ず…遠くから
見ているだけしか出来なかったけれど。
 …この人がこんな風に嬉しそうに笑ってくれている顔が見れて良かったと
考えて、穏やかな顔をして…他三人を見守っていく。

(…話、判らないけれど…克哉さんがあんな嬉しそうな顔しているのなら…
凄く良い話だったんだろうな。あの御堂って人がした話は…)

 その中に入れない事を少しだけ寂しく。
 けれど…同時に、今まで見る事が出来なかった色んな顔を見る事が
出来た喜びもまた、太一の中に同時に芽生えていって。

(…ヤバイ、な…。本当にあの人に…ハマり、そうだ…)

 自分の仲間達に小突かれて、嬉しそうに笑う克哉の顔は本当に愛らしくて。
 その顔を見て、余計に自分はあの人に惹かれていく。

(良かったね…克哉さん)

 自分の仲間達と肩を組んで喜び合う克哉の顔を見て、祝福の笑みを浮かべていく。
 太一にとってその顔は…とても、眩しいくらいに輝いて…綺麗に、映っていた―
  こんにちは~香坂です。
  さっきから頑張って本日分打ち込んでおりますが…えぇ、正直言います。

  今日、掲載日付越えます(にっこり)

  …え~と、とりあえず朝五時から起きて…帰って来てからも打ち込んで~と
すでに打ち込み二時間経過しているんですが、まだもう少し掛かりそうです(汗)
 もう無理に間に合わすよりも一言断っておいた方が良いや~って感じで
第二話の完結編打ち込んでいます。
  本日分の掲載及び、先週頂いた拍手返信等はもう少し待ってやって下さい。
(あうあうあう)

 明日から、新しい連載始めますが…この調子だと、明日も夜遅くになります。
 何のCPが連載来るのか…う~んと…私にも予想つかない(マテ)
 幾つかの話のストックがあるんですが…明日、家に帰って来て一番自分の中に
ビジョンが鮮明に浮かび上がった話が次の連載作になります。
 
 いっつもバタバタしてて…不義理をかましまくっている管理人ですが、
拍手やメッセージを下さっている方、読んで下さっている方…どうもありがとう
ございます。
 閲覧者の人がいるから…自分も頑張ろうって奮起出来ますので(^^)

 とりあえず当面の目標である三ヶ月は毎日出来るだけ書いてみる…は、
後半月程で達成出来そうです。
 書いた作品数も…オン、オフ合わせて二ヵ月半で20本越えました。
 これだけハイペースで作品を書いたのはこのジャンルが初めてですv
 …これからも出来るだけ、話のストックが頭に浮かぶ限りは続けて
いきますので…今後とも宜しくお願いします。
 ではでは! もう少しだけ待ってやって下さいませv
太一が現場に駆けつけるのと同時に…ようやくセレニティ・眼鏡との交信が
出来るようになった。
 暫く音沙汰がなかった彼の姿が突然…目の前に現れて、その場にいた全員が
ぎょっとする羽目になった。

「うわっ! 貴様! やっとか…!」

「わわっ! えっと…やっと片付いたの?」

「うへぇ~また、あんたかよ…」

 御堂、克哉、太一がそれぞれ似たような反応をしつつも…セレニティ・眼鏡を
出迎えていった。相変わらず偉そうに胸の前で両腕を組んで、やる気なさそうに
全員を一瞥していく。

「…どうにか持ちこたえていたか。まあそれなりに及第点だな…。
とりあえずこちらの方は本多と片桐に頑張ってもらったおかげで…ビルの
倒壊の危険性は回避出来た。後はあの二人でもどうにかなると思うので
遅くなったが…こちらの指揮を取らせてもらうぞ」

「…あんたの指示なんて貰わなくても、俺は充分やれるけどな」

「あぁ、俺もお前に対しては細かい指示を出すつもりはない。太一、お前は
自分の判断で戦っていろ。残り二名は…これが初めての実戦経験だからな。
ちゃんとこちらの指示に従って戦って貰うぞ?」

 眼鏡が、残り二名をざっと見つめていくと…御堂の方は限りなく屈辱そうな
表情を浮かべていた。

「…お前の指示に従うなど、平素なら冗談じゃないんだがな…今は、仕方ない。
頼むから戦い方を教えて貰いたい…」

「…良く、良い子で待っていた。俺もお前に一つの必殺技も持たせないで
現場に向かわせたのはすまなかったと思っている。が…じっと良く耐えて
傷を広げないでくれたのは有難かった。
 今から全力でお前をサポートしてやるから…な?」

「なっ…誰が、良い子だっ! 私の方がお前より年上の筈だっ!」

 相手の言い草に顔を真っ赤にしながら反論していくが、眼鏡の方はどこ吹く
風といった感じだった。

「御堂…今からお前に奮発して三つ、戦う手段を与えてやろう。
一つはムーン・ティアラ・アクション。額にあるティアラを外して、円盤を投げるような
要領で飛ばせば…敵に攻撃が出来る。
ウィーター・スプラッシャー…は両手を交差させて
そう叫べば、水の刃が一斉に
敵に向かっていき…水圧で鋭くきりつけていくぞ。

三つ目がシャイン・アクア・イリュージョン…光と霧の技だ。これを使えば周辺に
眩い光が放たれ、敵の網膜を焼いて…光の霧が一斉に敵を切り裂いていく。
他二つに比べて、三つ目のは威力も高いが…同時に消耗するものも多い。
ついでに残り二名は、こいつがこれを唱えたら即座に目を瞑っておけ。
そうしなければ…目が瞑れるから気をつけるように! もう敵も体制を
立て直したようだっ! 全員、行け!」

 大隈の方も、突如現れた眼鏡を見て…暫く様子を見て、攻撃を仕掛けないで
おいたが…必殺技を伝授されている姿を見て…慌てて黒い影を数十体生み出し…
それをこちらに仕向けていく!

「ちっ! …余計な時間を与えすぎたかっ! お前たち! 掛かれっ!」

 大隈が命ずると同時に、ユラユラと暗い光を揺らめかせながら…黒い影が
一斉に彼らを襲い掛かった。

「へへっ! こんな雑魚に負ける気はしないねっ! エアロ・ハリケーン!」

 太一が弾んだ調子で、必殺技を唱えて…敵を撃退していく。
 その間、攻撃を仕掛けられても…まるで円舞を踊るかのような優雅さで
軽やかに敵の攻撃をかわし続けていた。

「私だって…もう足手まといでいるつもりはない! ウォータースプラッシャー!」

 大きく足を開いて、両手を交差させて…御堂が高らかに必殺技を唱えていく。
 鋭い水の刃が一斉に敵を切り裂き、黒い影を無に戻していく。
 …しかし太一に比べて、かなりその動作には羞恥と照れがあり…まさに茹でダコ
のように耳まで顔を赤く染めていた。

「ムーン・ティアラ・アクション!」

 克哉は派手な行動はせずに…再び捕まらないようにどうにか攻撃をかわし続けて
地道にティアラを使って、襲い掛かってくる敵を確実に倒していった。
 そこら辺の処は、堅実な彼の性格が良く現れていた。
 
「へえ…このティアラを使って、攻撃も出来るんだ…少し試してみよっかな?」

 今の御堂への説明を聞いたのと、克哉が何対もその必殺技を使用している姿を見て
太一は興味を覚えたらしい。
 自分の額のティアラを外していくと、克哉がやっていた動作を見よう見真似で
やっていく。

「とりゃ! これも食らえっ! ムーン・ティアラ・アクション!」

 どこか楽しそうに弾んだ声で、敵をフリスビーで薙ぎ払っていく。
 そこら辺の戦いのセンスに関しては、残り二名も目を瞠るしかなかった。
 そうやって三人で戦っている内に…その場にいた黒い影の殆どは蹴散らし終えた。
 …三人の前には、禍々しい色のジェダイトを額に抱いた…MGN社専務、
大隈だけが立ち塞がっていた。

『貴様ら…良くもわしの可愛いしもべ達を…!』

「大隈専務、まだ…目を覚まして下さらないんですね…」

『当然だ。額にあの石がある限りは、乗っ取られた人間は決して
正気に戻る事はない。ようするに…お前の上司を助け出したかったら
お前の手で、額の石を砕くか…その男の命を奪うかの二つの方法しか
ないという事だ。それ以外の解放の手段はない」

「…私を守り立ててくれた恩のある上司を、殺すなんて手段を取れると
思うか! ふざけるなっ! こうなれば…意地でも私の手で額の
石を砕いてみせる! 佐伯君と…太一君、と言ったかな? 正直
君たちの詳しい素性は良く知らないが…ここは君らの協力が必要なんだ。
すまないが…私に、手を貸して欲しい」

 御堂の顔には、激しい怒りと決意が生まれていた。
 そして…彼にしては珍しく、物言いこそはどこか偉そうな態度が残って
いたがどうにか二人に頭を下げて、協力を仰いでいく。
 正直、この事態そのものが冗談みたいにふざけていて…とんでもなかったが
やはりこれは現実なのである。
 それなら…この会社の責任者として、少しでも良い方に持って行くしかない。
 その為には…得体が知れなくても、今はこの二人の協力が不可欠だ、と。
 冷静な判断でその現実を受け入れて…御堂は頭を下げて頼み込んでいった。

「当然です。…誰かが死んだり、傷ついたりする場面はもうオレも
見たくないですから。オレでよかったら幾らでも協力しますよ…
御堂さん」

「…ちぇ…。あんた、すっごく偉そうだから…正直、気は進まないけどね。
けどそんな風に頭下げられたら…断れないなぁ。判った…仕方ないけど、
俺も全力で手助けさせて貰うよっ!」

 そうして、二人の同意を得て…御堂が満足げな笑みを浮かべていった。

「良しっ! 頼んだぞ…二人ともっ!」

 そして三人は…大隈に、対峙していった。

『…ぬぐぐっ! 貴様達ごときに…この私がここまで追い詰められるとは…!』

 その瞬間、大隈の容姿が別人のように変貌していく。
 瞳は真紅に禍々しく輝き、唇はそこから顔が裂けてしまうかも知れないくらいに
釣り上がり恐ろしい形相へと変化していく。
 手は異様に大きく腫れ上がり、爪はまるで野生の動物のように鋭さを帯びていく。

『掛かってくるが良いっ! 貴様達をこの手で引き裂いてくれるわぁ!!』

『御堂、とりあえず…あいつの目が光った瞬間に先程教えた三つ目の
呪文を唱えろっ!』

 大隈の変貌が終わると同時に、眼鏡の声が…御堂の脳裏にだけ
はっきりと聞こえていく。

(三つ目の呪文…例の大技、か? あいつの目が光った瞬間に…かっ!)

「佐伯っ! 太一君っ! 私はいつでも…技を発動出来るような状態に
しておく! 君たち二人で応戦して…活路を見出してくれっ!」

「はいっ! 判りました御堂さん!」

「うぉっしゃ、任せておいてっ! 俺の活躍ぶりを、よ~く眺めておいてよっ!」

 二人が快く承諾すれば、克哉はムーン・ティアラ・アクションで…
太一はエアロ=ハリケーンとムーン・ティアラ・アクションを交互に駆使して
敵の爪の間合いに入らない距離を保ちながら、遠隔で攻撃を繰り返していく。
 
 技を放つ度に二人のスカートがヒラヒラヒラと華麗に舞い上がり、
敵の攻撃をかわしながら、軽やかなステップを踏んで技を繰り出す様はまるで
ダンスを踊っているかのようだ。

 そう指示を出して、三つ目の技を発動出来るように意識を集中していく。
 シャイン・アクア・イリュージョンは…御堂が現在使える技の中では
もっとも派手で威力が高い必殺技である。
 タイミングさえ見極めれば戦況を逆転出来るが、同時に気力の
消耗も激しいので…2度、3度と連続して放てない欠点がある。
 御堂は残り二名が戦っている場面を目を凝らして見守っていく。

『ぐぉぉ!! 小癪なっ! 遠くの方からチマチマとした攻撃を繰り返しおってっ!
このままじゃ埒が明かぬ! 喰らえ…我が暗黒の炎を!! 
ダーク・エクスプローション!!!」

 大隈が技を放つ為に両手を大きく広げて、大声で吠えていった。
 その轟音が辺り一面に響き渡り、その赤い目が…まるで宝石のように
美しくも恐ろしい光を浮かべて輝いていく。
 その瞬間を、御堂は決して見逃さなかった。

「今だっ! シャイン・アクア・イリュージョンっ!!」

 敵の全身から爆音と共に燃え盛る黒い炎が湧き起こると同時に
その炎を全て飲み込んで相殺する力を持つ、七色に輝く霧が辺り一面に
立ち込めて物凄い音を立てながらぶつかりあっていく!!

 太一も克哉も、その瞬間には目を瞑って…どうにかやり過ごしていく。
 光が消え去ると同時に、真っ先に敵の懐に飛び込んでいたのは…
御堂、だった!

「大隈専務っ! 今…貴方を解放するっ!」

 絶対的な強い意志を宿しながら、御堂は敵の額に渾身の力を込めて
盛大な飛び蹴りを繰り広げていった。
 スカートが舞って、足を晒す羽目になっていたが…今はそんな事に
かまっている暇はない!
 御堂のつま先が額の石にめり込み、それを粉砕していくっ!

『ぐぅ…おおおぉぉぉっ!!!!!』

 その瞬間、大隈が吠えて…辺りに爆煙が湧き起こってた!
 御堂は空中に大気していたせいで、盛大に吹き飛ばされて…今にも
壁に叩きつけられそうになっていく。

「危ないっ!」

 大急ぎで太一は、風を巻き起こし…少しでも御堂が叩きつけられる
勢いを相殺しようとしていった。
 その風のおかげでかなり勢いは弱まり、壁にぶつかる形になっても…
軽い打ち身をあちこち作るくらいで済んでいた。

 克哉は倒れた大隈の元に駆け寄り、命に別状がないか…
ざっと確認していく。

「克哉さん! 何をしているんだよっ! さっきまで敵に操られていた
人の処に駆け寄ったりなんかして捕まったらどうするんだよっ!」

「大丈夫…この人からはさっきのような禍々しい気配を感じられない。
少し消耗をしているだけだ…。行くよ…! 
『ムーン・ヒーリング・エスカレーション!』」

 克哉がその技を発動させると同時に…室内に眩いばかりの
光が満ちていく。
 その光を受けて…倒れている大隈も、今…激しい戦闘を繰り広げて
消耗している御堂と太一の二人の体力と気力が一気に回復していく。
 それはまさに…癒しの光。
 神々しく光輝いて…その場にいる人間を労わる克哉の姿は…
慈愛に満ち溢れていた。

「克哉さん…」

 その姿を見て、太一は更に惚れ直していく。

(本当に…この人ってバカ、だよな…。けど、うん…俺、こういう
バカな人って好きだ。本気で、放っておけないよな…この人は…)

 そう思いながら、太一は荒い呼吸を整えて…微笑んでいった。
 御堂もまた…自力で起き上がる体力を取り戻して…パンパンと
アチコチを払って、その場から立ち上がっていく。

 そうして…彼らにとって二度目の大きな戦いは…誰の
犠牲も出る事もなく、完全勝利で終わったのだった―。

 
 本日は皆様、インテ参加お疲れ様でした~v
  とりあえず狙っていた本は無事にゲット出来てホンマに良かったですv
  うちの本もとりあえず完売しました。マジで勢い凄いよ…キチメガ(汗)

 …昨日、両面印刷しようとしたら…疲れ溜まっていたせいでコンビニのコピー機を
二件連続で停止させてしまい。
 今の自分に両面印刷作業は無理だ! 頭がパーすぎる! と諦めた結果…
中綴じ諦めて普通の閉じ方の本になってしまいました。
 製本、荒い作りに仕上がって申し訳ない…(T○T)
 それでも買ってくださった方、どうもありがとうございました…。
 値段分くらいの価値がある作品になっているか、凄いびくびくものです。

 これから御堂と太一が活躍するのに! という場面で12、13日と連続で
セーラーロイドをお休みして申し訳ないです。
 14日から残りの話を書き始めますので…もうちょいお付き合い下さいv
  委託先様、オフ会に参加した方々、こちらを構って下さってありがとうございました。
 本日は疲れの為、連載の方はお休みします(連作は家帰って腰据えてやりたい)
 …が、一人を覗いて皆、遠方からはるばる~という感じだったのでお開き早かったのと
太一に対しての熱い思いと語りに触れまくったので、一本ここにSS書いておきます。
 短めですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いv

『ずっと貴方を見ていた…』   BY 香坂 幸緒


 
 殆ど着の身着のままでアメリカに渡り、外国での暮らしに慣れてきたある晴れた日の午後。
 ようやくしばらく定住するアパートが決まり、久しぶりに部屋の片付けをしていた。
 こちらに渡ってから、当面の生活を維持する為のバイトと…音楽活動に明け暮れ。、
ゆっくりと部屋を掃除する暇すら取れなかった。
 久しぶりの休日、溜まりに溜まった洗濯物を全て片してしまおう! と克哉は朝から
気合を入れて…洗濯に精を出して、一段落がついた頃の話…だった。

「よしっ! これであらかた片付いたなっ!」

 アパートのベランダには壮観な程、沢山の洗濯物が干されていた。
 それが微風によって靡く度に…克哉は、気がかりになっていた事が片付いたような
満足げな笑顔を浮かべていた。
 時計の針を見れば、朝の十時半を指している。
 この時間になっても、太一が起きて来ないので…少しだけ不満げな顔になった。

「…ったく、幾ら今日がオフの日だって…こんな時間まで寝ていたら、生活ペースが
崩れてしまうのに…。まあ、昨日は久しぶりだったから仕方ないんだけど…ね…」

 忙殺される日々が続く中の、本当に久しぶりの二人一緒の休みだ。
 昨日は…かなり夜遅くまでお互いの愛情を確かめ合ったから、寝たのは遅かったけれど…
自分は9時には起きてこうやって…家事をやっているのに、と。
 そういう小さな不満が、チリリと克哉の中に芽生えていく。

(ま、太一が…オレ以上に大変だっていうのは判っているけどね。もう少しゆっくりと
寝かせておいてあげたい…けど…)

 けれどせっかくの、二人一緒の休日だ。
 どうせならば、少しでも長く…一緒に過ごしたいと思う。
 太一のマネージャーみたいな感じで、音楽活動をしている時はいつも自分は
彼に傍らに立っている。
 だが、そういう公の場と…プライベートで一緒に過ごすのはまた違うのだ。

(寝顔くらい、見に行こうかな…。それなら起こさないで済むし…)

 ふっとそんな思いが脳裏をよぎって、克哉は自分たちの寝室に足を向けていく。
 寝室に立ち入ると、自分たち用のダブルベッドの上に…太一が本当に心から
気持ちよさそうに眠りこけていた。
 すでに窓から朝日が差し込んでいるような時間帯になっても、部屋が明るくなっているにも
関わらず、太一は子供のように眠りこけていた。

(太一…本当に、子供みたい…だよな…)

 どんな克哉さんでも、丸ごと受け止めたい、という包容力に溢れる発言をするかと
思えば…子供のようないたずらっ子の表情を浮かべて。
 太一は本当に感情表現が豊かで、見ているだけで飽きなかった。
 ベッドの傍らに座って、微笑ましい気持ちになりながら…大事な恋人の寝顔を
見つめていった。
 起こさないようにそっと、慎重に髪を優しく梳いていく。
 …こういう他愛ない時間さえも、ジィンと胸が温かくなっていくような気がした。

(ふふ…太一、本当に可愛いな…)

 幸せそうに笑いながら、飽く事なく太一の顔を見つめ続けていた。
 その瞬間、窓の隙間から風が吹き込み…窓際の木机の上に置いてあるノートが
パラパラパラと…ページが捲くれていった。

「あれ…? ノートが…?」

 ふと、紙が捲くれる音のおかげで…そのノートの存在に気づいていく。
 気になって近づいていくと…そこには何やら字がびっしりと書き記されていた。
 
(太一の新しい創作ノートかな…?)

 彼は新しいメロディや、フレーズ。曲のイメージに合う風景や演出、そして旋律やら…何か
思いついたものがあると片っ端から書き残していく。
 以前にもそれを見せて貰った事があるので、興味を覚えて…そのノートをパラパラと
巻くって、内容を眺めていった。

「…こ、れ…何だよ…」

 読んでいる内に、恥ずかしくなって…克哉は顔を真っ赤に染めていった。
 あまりの予想外の内容に、みるみるうちに照れくさくなって…つい、相手に一言言いたい
心境になっていった。

「…こんな前から、あいつがオレの事を見ていたなんて…まったく、知らなかったぞ…」

 ノートの一番古い日付は、一年前だった。
 自分と太一が出会って、駆け落ちまでした期間が三ヶ月。
 アメリカで生活を始めてから、更に三ヶ月が経過していた。
 だから自分達の思い出というものは、半年前から始まっていると…克哉の中では
そう考えれていた。
 だが、違った。太一の中では…少なくとも、自分の存在はそれよりもずっと前に
心の中にあったんだ、と。
 その事実を…まざまざと突きつけられた。

 ×月  ×日

  この間、パンを咥えて全力疾走をしていた人があまりに面白かったので、今日から
観察日記を始めてみる。
 今日は普段より遅い時間帯に出勤しているみたいだった。
 額から汗を浮かべて、息を切らせながらウチの店の前を横切っていった。
 …話しかける隙もないよな。本当に残念…。

 ×月 ×日

 ここ最近は見かけてないので、ちょっと不満に思っていたらひょっこりと夜、
バンドの帰り道に遭遇した。何か身体が大きい人に肩を貸してもらってどうにか
家に向かっている感じだった。ストレスでも溜まっているのかもね?

 ×月 ××日

 今日は何かうれしい事でもあったのかな? 夕方頃にちょこっとだけ
顔を見れたんんだけど、ウキウキした様子で店の前を通り過ぎていった。
一体、どんな事があったんだろう? 凄く気になる…。

 ×月 ××日  初めてあの人がこの店に来てくれた! 念願の日がやっと
来てくれて本当に嬉しかった! しかも話していて結構楽しかった上に、予想通り凄く
良い人だったみたいで…知り合えて本当に良かった! 克哉さんって名前も
改めて聞けたし…今度からは少しずつ仲良くなっていけると良いな…。

 ざっとページを捲って、内容を目を追っていくだけでも…自分とこうなる前から
どれだけ太一がこちらに関心を払ってくれていたか。
 短く纏められた日記の一文に、その気持ちが込められているような気がして…
恥ずかしかったけれど、本当に嬉しかった。

「…太一、ずっと前から…本当にオレの事を気にかけてくれていたんだな…」

 この日記は、その証みたいな物だった。
 関心も、愛情もない人間のことをこれだけ観察したりしないだろう。
 それが判ったからこそ…嬉しくて、つい…涙腺すら緩みそうになってしまう。

「あれ? 克哉…さん? 其処に…いてくれたんだ?」

 こちらが日記の前で立ち尽くしている内に、太一の意識も覚醒していったらしい。
 まだ夢の中にまどろんでいるような、そんなトロンとした眼差しで…優しくこちらを
見つめてくれていた。

「あ…うん。おはよう…太一…」

 こちらが顔を赤らめながら答えていくと、最初は嬉しそうな顔をしていたが…すぐに
今、克哉が立っている机の上に何があったかを思い出したらしい。
 瞬く間に太一の表情も真っ赤に染まり、あわてて叫んでいく。

「…っ! って克哉さん! もしかして…そのノートの内容…見た?」

「えっ…それは、その…! 御免! 太一の創作ノートだと思ったから、気軽な気持ちで
覗いちゃったんだ…」

「…う~~! マジ? それ、ずっとこっそりとつけていたのに! 本人に見られちゃうと
すっごく恥ずかしいんだけど…」

「オ、オレだって恥ずかしいよっ! だって…その、こんな前から…太一がオレの事を
見ていてくれたなんて…知らなかったし…」

「…ん、まあね。俺も改めて克哉さんに言うつもりなかったけどね。けど…初めて
意識した時から、何か克哉さんって気になったっていうか…忘れられなかったんだよね。
 だからつい観察して、記録に残してしまったというか…」

「そう、だったんだ…けど、何か文面にこっちへの気持ちが溢れている気が
したから…オレは、嬉しかったよ。太一…」

 照れくさそうな顔を浮かべながら、克哉はゆっくりと太一の方へと間合いを
詰めていく。
 朝日が差し込む狭いアパートの一室で…二人は暫し、見詰め合う。
 そのまま克哉がダブルベッドの上に体重を掛けて、四つんばいになりながら
太一の方へと、顔を寄せていった。
 その後は恋人特有の甘く優しい雰囲気。
 何を言わなくても、合図しなくても…お互いに目を伏せて、ゆっくりと唇を
近づけていった。

「ん、だって俺は…ずっと貴方を見ていたから、克哉さん…」

 こちらを幸福で満たしてくれる、魔法の言葉を寸前で聞きながら…
二人の唇はそっと重なっていく。

 その瞬間、克哉は心から感謝していた。
 こうして今、この時…二人で寄り添っていられる事を―
 ※本日は管理人がイベント遠征の為に連載は一日、お休みです。
 その代わりに以前に某企画サイトに参加した際に執筆したSSを一本置き土産に
掲載しておきます。メガミドものです。
 『乳首責め』というお題に添って書いたものなのでそれを了承の上でお読みくださいv

 最初は仕事上がりの週末に、いつものように克哉の部屋で貪るようなキスを
繰り返し続けていた。
 抱き合って、熱い肌を重ねて。
 荒い心臓の鼓動がどちらのものか判らないぐらいに密着しあって…
ベッドに組み敷かれる。
 
 いつものように手早い手つきで、あっという間にこちらの衣服は剥ぎ取られていく。
 ここら辺の手際の良さは、毎度の事ながら感心したくなった。一体どこでこの熟練の技を
身につけれるくらいに経験を積んだのか、思わず聞きたくなるくらいだ…。
 
(いつもいつも…こいつは放っておくと私ばかりを脱がして…)
 
 しかも今夜も、明かりを点けたままでこちらを抱くつもりらしい。
 最近の克哉はかなり意地悪だ。明かりを消して欲しいと強請っても、まったく消してくれる
気配すら見せなくなった。
 本人曰く、「あんたの感じる顔は絶品なんだから見れないのは勿体無いだろ?」と
いう事らしい。
 
 今夜はまだ…上半身の衣類を脱がされただけだが、キスだけでプクリと膨れ上がった
突起を…熱い眼差しで見つめられるだけで…言いようのない痺れが全身を走り抜けていく。
 
「…相変わらずあんたの胸の尖りは…良い色をしているな。まるで…何かの果実のように、
甘く熟れているように見える…」
 
「馬鹿…そんな、恥ずかしい事を…言う、な…!」
 
 顔を真っ赤にしながら、反論するが…しっかりと肩を掴まれて押さえ込まれているので…
暴れようとも相手の腕からは簡単に逃れられない。
 そのまま…顔を寄せる事もせず、ただ…真摯な表情で胸の突起を見つめていく。
 
(な、んで…今夜は触りもせずに…見るだけ…何だ…?)
 
 さっきのキスで、自分の身体の芯には欲望が灯ってしまっている。
 それをどうにかして欲しくて…克哉の瞳を睨むように見つめ返していくが…男は不敵に
微笑むのみだ。いきなり、少しだけ顔を寄せられて…熱い吐息を吹きかけられていく。
 
「ひぃ…ぅ…!」
 
 焦らされて、昂ぶった身体は…普段なら気にしない些細な刺激にさえも派手に
反応していってしまう。
 それでも触れられない事に…いい加減、御堂も訝しげになっていく。
 
「佐伯…その、何で…これ以上、私に触れない…ん、だ…?」
 
「…判らないのか? あんたに俺をメチャクチャに欲しがって貰いたいからだ…。
いつも俺ばかりがあんたを欲しがって、がっついてばかりいるからな…だから、
今夜はあんたから俺を欲しがって貰いたい。それだけの話だ…」
 
「…っ! そん、な…確かに、私は…その、口に出してはあまり…言わないかも、
知れない…けど…。見れば…判る、だろ…!」
 
 顔を真っ赤にしながら反論していくが…克哉の方はどこ吹く風、という感じだった。
 しかし…その瞳の奥だけは酷く熱くて…欲情で蒼い双眸がうっすらと濡れて
輝いているのが判った。
 
「そ、んな目で…私を、見るなぁ…!」
 
 その眼差しに見つめられて、スーツズボンの下の性器も…胸の尖りも、どうしようもなく
充血して堅く張り詰めていった。
 次第にもう触れて欲しくて仕方なくて…どんどん呼吸と、鼓動が荒く早いものになっていく。
 思わず…じれったくて、自らの手で弄って慰めようと無意識の内に手が伸びていたが…
それを意地悪下な笑顔を浮かべながら、阻まれていく。
 
「…駄目ですよ、御堂さん。まだ俺におねだりをちゃんとしていないのに…自分一人で
気持ちよくなろうとするなんて…ルール違反じゃないんですか? 俺に思う存分、
弄って欲しいなら…どう言えば良いのか…判るだろう?」
 
 こんなに獣のように瞳をギラギラとさせている癖に、その表情は酷くストイックで…
冷淡さすら感じられて。
 相手の顔と、瞳の色のあまりの落差に…眩暈すらしてくる。
 
「き、みは…本当に、意地悪…過ぎる、ぞ…!」
 
 うっすらと涙すら浮かべながら反論し…相手の唇に噛みつくように口付けていく。
 それでも…熱い舌を唇に這わせるだけで、今度は貪ったりもせずに顔をさりげなく外していく。
 
「…たった一言…俺に正直になっておねだりすれば…お前をとてつもなく悦くしてやるぞ?
 孝典…?」
 
 耳元で、悪魔のように甘美な誘惑の言葉が囁かれていく。
 その低く掠れた声音だけで…ゾクゾクして、背中に悪寒に似た感覚が走り抜けていった。
 その声を聞いて、ぎゅっと瞼を閉じていく。
 まだ身体を弄られていない…正気が残っている状態で、相手に対して触れて欲しいと
おねだりするなんて…屈辱以外の何物でもない。
 けれどあまりに甘すぎる誘惑に…もう抗う気力すら残されていなかった。
 
「…っ! お前に…いっぱい、胸を…触って貰いたい…ん、だ…!」
 
 憤死するんじゃないかってぐらいに顔を真紅に染め上げながら、半ばヤケクソ気味に
御堂は克哉に訴えていく。
 その反応と言葉を聞いて、克哉は満足げな笑みを浮かべていった。
 
「やっと…自分の欲望に正直になったな…それじゃあ、良い子の孝典に…
ご褒美を上げないとな…?」
 
 クスクスクスと笑いながら、ようやく克哉が胸の突起に触れてくる。
 まだ自分はスーツも眼鏡もきっちりと身につけた状態で…右の突起に唇を寄せ、
熱い舌先と唇で丹念に刺激を始めていく。
 その動きに連動させていくように…左の突起も指先で摘んだり捏ねたりして、左右で
異なる刺激を同時に与えていった。
 
「ひぃ…ぁ…!」
 
 同時に弄られるだけで、散々…焦らされた身体には強烈なのに、ふいにその突起を
強めに歯で噛まれたのだから堪らない。
 全身に電流が走り抜けていったかのような衝撃を覚えていきながら…ふいに股間の
モノも、克哉の膝でゆっくりと擦り上げられていった。
 
「ぃ…ぁ…っ!」
 
 もう御堂は、声にならない悲鳴を上げながら身体を必死に悶えさせる事しか
出来なくなっていた。
 
「だ、め…だっ! 克哉…それ、駄目…!」
 
 焦らされて欲望を限界まで高められた身体は…胸の刺激だけで
おかしくなりそうだった。
 その上で間接的にとは言え…もっとも敏感なペニスも刺激されているのだから、
堪ったものではない。
 
 克哉の舌が、突起を舐り…唾液でたっぷりとテラテラに濡らしていきながら…
丹念に愛撫を施していく。
 
ピチャ…チュパ…クチュ…チュク…
 
 わざと大きな水音が立つように吸い上げて、唇の中で転がして、甘く食んで…
軽く歯を立てていく。
 片方の刺激だけで充分なくらいなのに、それで左の突起まで指先で微妙な強弱を
つけられながら…延々と弄られ続けているのだ。
 最早、正気でなどいられる訳がなかった。
 
「んっ! ふぁ…あ!! や、やだ…! 止めて…くれって、ば…! かつ、やぁ…!」
 
 焦らされた身体が灼けて、理性も何もかもを破壊していく。
 克哉の愛撫が施される度に身体はもっと強い刺激を求めて震えているのに…いつもよりも
遥かに強い快楽に、恐ろしくなっていく。
 引き離そうという手も弱々しくなり、御堂に出来る事などか細げな声で、否定の声を
漏らしながら喘ぐ事ぐらいだった。
 
「駄目だ…今夜のあんたの此処は、酷く甘くて美味しいからな…もっと堪能
させて貰う、ぞ…?」
 
「やっ…其処だけ、は…もうっ! 嫌だ…! もっと…他の場所、も…
弄って…く、れ…!」
 
「良い反応だな…今夜のこの様子だったら、胸だけでもイケるんじゃないのか…?
 試してみるのも一興かもな…」
 
「なっ! 佐伯…! 馬鹿な、事を…言うなっ! 胸だけで…なんて、イケる、
訳が…っっっ!!!」
 
 克哉の身体の下で必死になりながら御堂が暴れていくが…克哉の様子は
まったく動じる気配すらなかった。
 淫蕩な笑みを口元に讃え、充血しきった突起を指先でグニグニ、と強く摘んだり
押し潰したりしていきながら…痛いぐらいに強く、強く唇で吸い上げて…舌で先端の
くぼんでいる部分を執拗に舐め上げられていく。
 痛みと、快楽が織り交ぜられた強烈な感覚が胸を発信地に全身へと
さざ波のように広がっていく。
 
「ふっ…ぁ!! も、ダメ…だぁ! い、や…だ…さ、えき…! も、う…おかしくなる、
から…やめ、ろ…やめ…!」
 
 全身を綺麗な桜色に染めていきながら、必死の様子で御堂は克哉に哀願していく。
 相手の膝の下にあるペニスを弄ったり、奥まった場所で相手の熱を感じ取って、
おかしくなるぐらいに擦り上げて欲しいのに…その欲求はまったく満たされずに胸だけを
弄られ続けるので…本気で御堂は涙を浮かべ始めていった。
 
「…どうせ、なら…今夜は、胸だけで…イク処を俺に見せて、みろ…孝典…」
 
 掠れた熱っぽい声で、克哉が上目遣いに…御堂の顔を見つめながら…囁いて。
 それに連動させるように、血が滲むぐらいに胸の突起を強く噛み、爪の先を突起に
深く突き刺していった。
 相手の瞳の熱さと…滾るような欲情の色と…あまりに鋭い痛みを伴った快楽に
こちらも最早、逆らう事など出来ない。
 ゾクゾクゾクと…嗜虐めいた快楽が全身を走り抜けて、そのまま…御堂は
首を大きく仰け反らせて…胸だけで達してしまっていた。
 
「あぁ―っ!」
 
 部屋中に大きな啼き声を響かせていきながら…御堂の身体から一気に
力が抜けていった。
 
「…本当に胸だけでイケるとはな…あんたの感度、日増しに開発されて…
良くなって来ているんじゃないのか…?」
 
「はっ…ぁ…! だれ、が…私を、こんな…身体にした、と…思っている、んだっ! 
バカ佐伯!」
 
 本気で恥ずかしくて、そのまま死にたいぐらいの気持ちに陥っている時に
追い討ちを掛けられるような発言を言われてしまったので…御堂は渾身の力を
込めて、克哉に鉄拳をかましていった。
 
「ぐはっ!」
 
 流石にこれは克哉にとっても効いたらしい。
 頬に思いっきり、クリーンヒットして…グラリとその身体が揺らめいていった。
 
「…思いがけず、良いパンチだったぞ…孝典…」
 
「…き、君があんまりにも…意地悪だから、じゃないか…! 胸だけ何て、
恥ずかしすぎるだろ! バカが…!」
 
「…あんたが反則級に可愛すぎるから、だろ…。あんな風によがられたら、
俺が止められる訳が…!がはっ!」
 
「ほんっきで…殴るぞ!」
 
 あまりに恥ずかしすぎて、もう一度渾身の力を込めて御堂の右手が唸りを上げていく!
 しかし…克哉はしっかりと…それを受け止めて、逆に御堂を押さえ込みに掛かっていく。
 
「…ったく、本当にあんたはイキが良いな。そういうじゃじゃ馬な処に…俺も
惚れたんだがな…」
 
「誰がじゃじゃ馬だっ!」
 
「…あんた以外にいる訳ないだろ? …俺は今はあんた一筋なんだからな…?」
 
「っ…!!」
 
 いきなり、耳元でそんな事を囁かれながら…ベッドの上に改めて組み敷かれて
いったら…反論などこれ以上言える筈がない。
 こちらが口を開く前に…むしろ、強引に唇を塞がれて…言葉を封じられていく。
 身体の力が抜けるぐらいに激しく口腔を貪られて…犯され尽くして。
 やっと解放された頃には…御堂の身体はぐったりとした状態になっていた…。
 
「…機嫌直ったか? これからは…あんたをトコトン、満足させるから…
許して貰えると、嬉しいんだがな…」
 
「…その言葉に、嘘があったら…承知しない。せいぜい身体で…君の誠意と
やらを…見せてもらおうじゃないか…?」
 
 妖艶な笑みを刻みながら、克哉の頬をそっと撫ぜて…その瞳を覗き込んでいく。
 御堂のその表情に…支配欲が湧き上がっていくのを感じていた。
 
「あぁ…精一杯、頑張らせて貰おう。あんたのイイ顔を…沢山今夜は見せて
もらったからな…?」
 
「…それくらいして貰わなければ、割りに合わないがな…克哉…早く…」
 
 そう強請りながら、御堂がぎゅっと克哉の身体に縋り付いていく。
 彼もまた、愛しい恋人の身体を抱く腕に力を込めて…意思を伝えていった。
 
(こうなれば…今夜はとことん、御堂を悦くしてやるしかないな…)
 
 楽しげに微笑みながら、もう一度深く口付けて…自分の気持ちをたっぷりと
伝えていってやる。
 その後、夜明け近くまで…御堂の機嫌を直す為に克哉は激しく、愛しい恋人を
掻き抱いていったのだった―
 
 
この話は鬼畜眼鏡とセーラームーンをミックスさせたパロディものです。
 登場人物が女装するわ、必殺技をかまして怪しい奴らと戦い捲くります。
 無駄にお色気要素満載です。1話&2話目まではギャグ要素に溢れています。
 そういうのに不快になられる方はどうぞ回れ右をお願いしますです(ふかぶか~)

 御堂と共にエレベーターに乗って、最上階のエントランスに辿り着いた頃には
そこは一種の地獄と化していた。
 黒い影で覆われたMGNの社員と、エナジーを吸い取られてミイラのように
干からびてしまった人間が大量にそのフロアに溢れていた。

「これ、は…本当に、現実の光景なのか…?」

 自分が女装して戦う羽目になるよりも、凄惨な現実が確かにここにあった。

「…オレも、本格的な敵と戦うのは今回が初めてですけど、酷い…ですね。
こんな奴らを見過ごしておけない…!」

 さっきまではこんな格好で戦う羽目になるなんて、という思いが強くあった。
 しかし…このミイラのようになった人間は、そのまま放置しておけば確実に
命を落としていくだろう。
 こんな真似をしでかす輩を、到底許す訳にはいかなかった。
 彼らを救う為に、克哉は…両手を掲げて…高らかに叫んでいった。

「ムーン・ヒーリング…エスカレーション!」

 先程、セレニティ・眼鏡に指示された通り…回復呪文を唱えていく。
 その瞬間…克哉の身体は光り輝き、その場で萎れた花のようになっていた
人たちの肌に生気が戻り始めていく。

「やった…! オレの力でも、人を助けられるんだ…!」

 前回、戦った時は自分は結局…殆ど何も出来ないままだった。
 だが…今回は初めて、何か出来たという手応えを感じる事が出来た。
 しかし目の前で起こった奇跡のような出来事に、御堂は思いっきり目を
瞠っていた。

「驚いたな…君には、そんな事が出来るのか…」

 先程までの御堂にとって、この男はただ気弱そうな…平凡な男という
歯牙にも掛けない存在に過ぎなかった。
 しかし今の能力は…正直、驚いたし凄いと思った。
 あの憎たらしい男はこいつには戦う力がない、と言い張っていたが…
ミイラのように干からびている人間を、瞬く間に元通りに戻せる能力というのは
戦闘できるよりも凄いのではないか。正直にそう思った。

『誰だっ! ワシの邪魔をする奴は―!』

 しかし次の瞬間、額に真っ黒に染まった宝石を嵌めた壮年の男が…
恐ろしい形相をしながら、こちらにゆっくりと近づいてきた。
 今は魔石に支配されている…MGN専務、大隈氏である。
 御堂が入社した時より、目に掛けてくれて…現在の部長という地位を得たのも
大隈に引き立てられたから、という部分が大きかった。
 だが今はその眼差しは真っ赤に染まり…一目で、尋常じゃない状況である事が
伝わってくる。
 それを見て…悔しい事だが、やっと眼鏡が言っていた発言がどれも事実を
告げていた事を実感した。
 黒い影を何体も引き連れながら、こちらに歩み寄ってくる大隈の姿はかなり
威圧感を伴っていて、二人は固唾を飲んで見守っていく。

『行け! わがしもべ達よ!』

 大隈が命じるのと同時に、黒い影がいきなり…ぐにゃりと歪んで、まるで巨大な
スライムのように形をウネウネと変えながら襲い掛かってくる。

「うわっ! 何だこれはっ…!」

 御堂がとっさに反応して、素早く遠くに飛んで逃れていく。
 克哉の方もそれに習って、彼と反対方向に転がっていったが…キチンと足で
着地している御堂に比べ、克哉は転がって逃れた分…時間的ロスや、次の移動までに
掛かる時間が余分に掛かってしまう状況だった。

『おおっ…! 貴様から、凄いエナジーが伝わってくるぞ…これは是非、
我が主…ダーク・エンディミオン様に捧げねば…!』

 その名を聞いた瞬間、克哉は…その場に固まった。

(ダーク…エンディミオン…だって…?)

 それは昔から見る、例の夢に出て来る存在の名前…。
 子供の頃から繰り返し繰り返し、何かの時に見る夢。
 切なくて、悲しくて…最後に自分が「エンディミオン…」と呟いて、覚める―。

「君っ! ぼうっとするなっ! 危ないっ!」

「えっ…!」

 その思考に一瞬、囚われた時…克哉には大きな隙が生じてしまっていた。
 こちらのエナジーを狙って襲い掛かって来ている敵が、そんな絶好の機会を
逃すはずがない。
 先程まではどうにか紙一重でかわせていた攻撃に、ついに捕まり…克哉は
黒い巨大なスライム状の物体に、四肢を拘束されていった。

「くっ…ぅ…!」

 ベタベタする不快な感触のものが両手足に絡み付いて…そこから克哉の
生命エネルギーを吸い上げ始めていく。

『おおっ! 思った通り…こやつ、何と極上のエナジーを持っているんだ…。
吸い上げれば吸い上げる程…こちらに力が漲ってくるわ…!』
 
 大隈が、邪悪な笑顔を浮かべて…己の拳を握り締めていた。
 事実…生気を吸い取られた人間を回復させる能力を持つ克哉の生体エネルギーは
常人の何十倍という膨大なものだった。

『しもべ達よっ! そやつを昂ぶらせて…もっと純粋なエネルギーを搾り出せ!』

 そう命じた瞬間、四肢に絡み付いていた黒い粘性のものが…ジワリジワリと胴体の
方に近づいて来て…ゆっくりと克哉の太股や、脇の辺りを撫ぜ擦っていく。
 その不気味な感覚に、克哉は悪寒にも似たものを感じて…逃れようと必死に
もがき始めていった。

「彼を放すんだっ! …くっ…どうやって戦え、ば…!」

 先程、眼鏡から指令が出た時…本多と克哉の二人は、その場で戦う為の
必殺技を授けられていたが…御堂には与えられていなかった。
 その為に…目の前で克哉が襲われて危険な目に遭おうとしているのに…御堂には
戦う術を持っていない。
 それで無闇に突っ込んでいっても、自分も囚われるだけだ。
 冷静な判断で、とりあえず…様子見しているが、御堂は正直…唇が切れるぐらいに
強く噛み締めて、悔しさに耐えていたのだ。
 ただ…黒い不気味な存在に、彼が弄られている様を眺めているしか出来なかった。

「や、だっ…! あぁ…やめ、ろ…! 気持ち、悪い…から…はっ…!」

 ついに黒い触手が…克哉のスカートの中や、胸元にまで及んで…全身を容赦なく
締め付けていきながら…不気味に性感帯を刺激していった。
 苦痛と、くすぐったさと…妙な疼きが入り混じった感覚に…克哉は嫌がりながら
耐えていく。
 それは無理やり、レイプされているような感覚に近かった。
 克哉の身体を無理やり押し開かせ、無理に昂ぶらせて…強引に生命力を搾り出そうと
試みる、暴力にも等しき行為だ。
 とりあえず…間接的に戦闘服が守ってくれているから、局部はギリギリ守られて
いたが…それもこのままでは時間の問題、だった。

(ちく、しょう…! この間も真っ先に捕まって…今回も、また…
足手まといにしか、ならないのか…っ! オレは…!)

 克哉は悔し涙を浮かべながら、前回の事を思い出していった。
 あの時は…迷わず変身する事を選んだ太一が自分を助けてくれた。
 けれど…アキが呼びに行ってくれているという彼の姿はまだここにない。
 目の前で、本気で悔しそうな顔をして…傍観を貫いている御堂の顔が
視界に飛び込んでくる。
 現在、指令を出すべきセレニティ・眼鏡が…本多と片桐への指令の方を優先していて
御堂の方まで手が回っていない状態だった。
 だから…たった一言「今は耐えろ」という言葉に従って、敵の攻撃から
逃げ続けている。

(太一…! お願いだから、早く…来て、くれっ…! オレと御堂さんだけじゃ、
とてもじゃないけど…まだっ…!)

 必死の想いで、ただ…もう一人の仲間の事だけを考えていく。
 助けて欲しい、と願うのはみっともないと思うけれど…それ以上に、今
太一の顔が見たいと思った。
 その必死の祈りが通じたのだろうか。
 次の瞬間、最上階の壁にいきなり…鋭い雷の一閃が振り下ろされた!

 ピカッ! ガラガラガラっ!

 轟音を立てながら、最上階の壁に大きな風穴が空いていく。
 爆煙と共に一人のシルエットが…其処に現れて、高らかに宣言していく。

「じゃじゃ~じゃ~ん! お待たせっ! 克哉さん! ピンチの時にささっと
登場! セーラーロイド、ここに見参したよ!」

 その場の暗い空気を全て吹き飛ばすくらいに、底抜けに明るい声が
フロア中に響き渡っていく。

「な、何だ…こいつは…?」

 いきなり現れて、あまりのテンションの高さに…御堂の方が思いっきり
引いていく。

「…あ~あ、克哉さんってば…また敵に捕まっちゃって…! これだから
貴方は放っておけないんだ…! エアロ=ハリケーン!!」

 克哉が黒い影に捕まって、良いようにされているのを目撃した時…
太一の目には明らかに強い怒りの感情が宿っていた。
 それを態度には御くびにも出さずに、華麗に風の刃を巻き起こして…
克哉の救出を試みていく。

「助かった! ありがとう…! 太一!」

 ようやく、あの厭らしい責め苦から解放されて…克哉は満面の笑みを
浮かべて、太一の方へと駆け寄っていく。

(本当に、来てくれた…! 凄く、嬉しい…!)

「克哉さん! 良かった…まだ、無事で。来るのが遅くなって
大変な目に遭っていたらどうしようって…本当に気が気じゃなかったけど…
無事で、良かった…」

「太一…」

 そうして、緑の襟とスカートの戦闘服に身を包みながら、太一は
ピシっと指を立てて…大隈へと向かい合っていった。

「…おい! どこのオッサンだか知らないけど…克哉さんをこんな
目に合わせた落とし前は絶対につけさせてもらうかんね!」

「…一応、我が社の専務なんだがな…」

 口ではそう反論するが、御堂の表情も先程よりはずっと明るく
なっていた。
 太一の登場は今の御堂と克哉にとって…まさに闇を払う一筋の光明
そのもののように…感じられていたからだ。

「克哉さん、下がっていてね! 俺が絶対に…貴方を守ってみせるから。
その為に今日、ここに駆けつけたんだからね!」

 そういって、明るく笑いながらこちらを励ましてくれる。
 その優しさに涙がうっすらと滲みそうだった。

「ありがとう…ありがとう、太一…!」

 心からの感謝を込めながら、この日…初めて、克哉は嬉しそうな
笑みを浮かべていったのだった― 
 

 

           


  1月13日発行の克克本、太克本表紙(鉛筆画です)
  今回本文よりも表紙の方が先に仕上がっているので、とりあえず表紙だけ
先に印刷しておきました…(製本作業の時に少しでも自分を楽にする為)
 ほんっとうに珍しく、絵の調子が良い日が来てくれたので(あんまりデッサンに狂いがない)
今回は自力で表紙描いてみました。(普段は文字入れだけだったり、人に依頼する事多い)
 色々と眼鏡の頭がでっかいよ、とか…太一の方が身長低い筈なのに…っていう突っ込みは
あるでしょうが、自分的に攻めを受けよりも小さく描くの許せなかったり、眼鏡の髪型は
どうしても自分描くとボリュームが出過ぎるんだぁぁぁ! という魂の雄叫びとか存在
しますので、見逃してやって下さい。
 製本バージョンだと、色紙や遊び紙を使ったり、トレーシングペーパーの方に色文字
印刷したり、キラキラシール貼ったりしてもう少し豪勢にする予定ですv

 委託先は…東6号館Dゾーン れ07a  「Glasses.co」様ですv
 その2席隣のれ06aの普段仲良くさせて貰っているchie子さんの処にもせっかくなので
各10部ずつお任せしました。(ご近所さんだったので…)

  …委託先様が、先週のBLオンリーの件でバタバタしていたり、少し体調を
崩されていたらしいので、確認等が少し遅れがちになりました。
 
 現在の本の制作状況。太克本は本文完了。
 今日一日掛けて克克本の本文製作に入ります。

 セーラーロイド、掲載遅れがちになっててすみません。
 とりあえずやらなきゃいけない雑務等は昨日の時点で大体終わらせたので
本日は執筆&本制作作業に専念します。

 本の取り置きを頼まれた方は、当日は「Glasses.co」様の方に11半時以降から
私が売り子している(予定)なので…11時半以降をメドにお立ち寄りして、名乗って下さい。
 取り置き分をお渡し致します(ペコリ)
   拍手での取り置き希望は、明日の夕方くらいまでで締め切ります。
 夜行バスで現地に向かうので…12日の18~19時くらいまでしか拍手メッセージの
確認取れないと思うので。
 会場入りが遅くなってしまったり、確実に欲しい方はどうぞ。
 名前はこちらで控えて、ちゃんと取っておきます。

 んじゃ作業に戻ります。
 ちょっと色々と立て込んでいてギリギリになるかもですが、頑張ります。
 ではん!(脱走)

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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