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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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―永らく彼は深い眠りについていた。
 罪悪感の為に太一の言いなりになって現在の境遇を変えようともしない、
もう一人の自分の姿をこれ以上見ていたくなかったからだ。
 
―馬鹿が…
 
 それ以上、何も言えなかった。
 確かに自分がアイツを報復という名目で犯した事が太一の暗い側面を
目覚めさせたキッカケなのかも知れない。
 だがそれを全て克哉のせいにして、罪の意識を植え付けてあいつを
好き放題にしているのはどうなのか…という思いはあった。
 
 克哉は太一に、罪を償う為に己を差し出す決意をした。
 結果…彼は毎晩のように凌辱され、太一の実家に監禁されて自由に
外出することさえ許されない身の上になっていた。
 そんなもう一人の自分姿あまりに惨めで見てられなかった。
 太一にこちらを解放する鍵である例の眼鏡はすでに壊されていて、
彼はただ傍観者でいるしかない。
 
 彼にとってはただ彼等を眺める事しか出来ない状況は腹立たしく…
それはいつしか、大きな苛立ちの種に変わっていった。
 だから眼鏡は己を眠らせる形で目を閉ざす事に決めた。
 
―アイツに声が届くならともかく、もう届かないなら自分が
いてもどうしようもないからだ。
 
 こうあって欲しかったと…胸にかつての自分達の姿を抱き、それをどう
あがいても取り戻す事が出来ないとようやく悟った時。
 克哉は己の心を闇に閉ざしてしまった。
 
―お前はどうして嘆くだけで必死に考えない? 
 過去ばかり振り返って嘆いて、一体何が変わると言うんだ?
 
 彼は苛立っていた。
 今のあいつのふがいなさに。
 後ろばかり見て、これから先にある未来の事を考えようともしなくなった。
 そんなあいつに心底…眼鏡は呆れていたから。
 
―起きて下さい…
 
 だがそんな自分に何度も呼び掛けてくる声が聞こえてくる。
 最初は無視し続けていた。
 その呼び掛けは執拗で、何度も何度もしつこいくらいに続けられていった。
 平穏な眠りを妨げられて、眼鏡は憤り…最初の頃は絶対に応えてやるものか…
と思っていた。
 しかしある春の夜に、こう切り出された時…初めて眼鏡はその沈黙を破ったのだ。

―このまま、沈黙を守り続けていたら…貴方様の命もまた、克哉さんの
巻き添えになる形で共に失われますよ。
 それでも…答えて下さらないのですか?

 こう語りかけられた時、真偽を疑う心がその呼び掛けに応じるキッカケとなった。
 ゆっくりと心の奥底に存在する、深遠の淵から目覚めていく。
 彼が意識をはっきりとさせていくと…藍色の闇に覆われた空間に、黒衣の
男の姿がしっかりと浮かび上がり目の前に存在していた。

『やはりお前か。先程の物騒な会話の主は…。一体誰が、もう一人の
オレの事を殺そうっていうんだ…?』

―五十嵐様の実父ですよ。実の息子が…克哉さんに溺れて、その在り方を
大きく歪めてしまったことが原因で、その原因となる存在を排除すれば元通りに
なると…そう考えて、この数ヶ月間必死に殺害計画を練り上げていたようです。
 
『…そうか。で…その話が本当だとして、一体いつ…その殺害計画は
実行されると言うんだ?」

―明日の夜ですよ。明日…五十嵐様のいらっしゃるご本家の庭園にて、
大きな宴を催す予定のようです。
 その中に…克哉さんを始末する為の手段を幾重にも張り巡らされて
おられる模様です。
 正直…このまま放置しておけば、特に今の食事すらも自ら摂取することを
放棄してしまわれたあの方は死ぬしか道はなくなるでしょう…。
 ですから、貴方は…五十嵐様にその警告を促した上で、一時的に
克哉さんの身柄を引き受けて…事が収まるまで身を隠して下さい。
 嗚呼、当然の事ですが…潜伏先及び、逃亡生活中に掛かる費用の
一切はこちらが持ちます。引き受けて貰えるでしょうか…?

 男は歌うようにスラスラと言葉を紡ぎ、眼鏡に向かって腕を組みながら
そっと語りかけてくる。

『…俺が断った場合はどういう結果になるんだ…?』

―成す術もなく、克哉さんは殺されるでしょう…。そして貴方もまた
この世界に存在するに必要な接点を失い、共倒れになる事でしょう。
貴方と克哉さんはまさに一蓮托生ですから…。

『ちっ…それでは俺には、断る選択肢すらも存在しないという事だ。
…判った、お前に付き合ってやる。俺は…正直、負け犬のようになって
あいつに巻き込まれる感じで死に追いやられるなど正直…御免だからな』

―貴方様の英断に、感謝致します。私としても…貴方達二人は非常に興味深い
存在ですからね。失われてしまうことなど勿体無い、と…そう思っていますから。
 では…もう一人の克哉さんをどのように救うのか今からお話致しましょう―

 そうして…心の世界でも相変わらず、男は綺麗に妖しく微笑んで見せた。
 その間、眼鏡の表情は苦虫を噛み潰したような苦々しいものだった。
 だが…瞳に揺るぎない強い想いを宿らせながら、そっと…Mr.Rが
語る言葉に耳を傾けていった。

 そして翌日の夜も深まり、銀盤の月が鮮やかに空に輝いていた日。
 人形のように生気を失ってしまったもう一人の自分の救出激は
そっと幕が開けようとしていた。

 ―あのような結末が待っていたことなど、誰もがまったく予測もしていなかった
  
 そして彼は桜が舞い散る庭園にて、太一と克哉の前にそっと現れていく。
 その手には…護身用に持ち歩いている拳銃によって、しっかりと
塞がれてしまっていた。

 そして喜劇にも似た悲劇の舞台はその夜、幕を開けていく。
 …各人の胸の中に悲しくも切ない、強い想いを静かに宿していきながら…


 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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