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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  たった今、眼鏡から聞かされた内容を太一は認めたくなかった。
  だが…真偽がはっきりしない状況でも、自分の父親が…克哉を
殺そうとしている。
 どれだけ裏の世界を身近に見て育ってきたとしても…太一はまだ22歳と
いう若さの青年でしかない。
 唇を大きく震わせながらも必死に平静を取り繕おうとしていた。

―あんたさぁ、デタラメを言うのも大概にしろよ…! どうして親父が、
克哉さんを殺すなんて…そんな事が…。

『お前の父親は、音楽を愛して…必死になってヤクザという家業から
逃れて夢を追いかけていたバカ息子を応援していたんだ。
 だが、こいつの人生を独占する為に夢を捨てて…五十嵐の家を
継ぐ事を選択したお前を見ていられなくなったんじゃないのか?
 事実…今のお前の事を、人が変わってしまった…と評する配下も
随分いる事だしな。…知っているか?

 お前がコイツを恥ずかしがらせる為に、部下に見せ付けるような
セックスを散々してきたおかげで…今のお前の評価というのは
ボロクソになっているという事をな。
 親の立場としては…息子の評価をどん底にまで下げた元凶を
排除したくなるのは極めて自然な感情ではないのか…?』

 今、眼鏡が言った内容は事実…だった。
 事実、この一年…彼は家業を継ぐと決めてから克哉を監禁し続けて
嗜虐的なセックスをこの本家の家の中で飽く事なく繰り返していた。
 最初の頃は、克哉が恥ずかしがって激しく啼く姿が可愛くて…もっと
見たくなって、自分の部下にその現場を立ち合わせて散々犯すような
真似を繰り返していた。

―何で、あんたが…そんな事まで、知っているんだよ…!

『俺とそいつは、同一存在だからな。ある程度はこの一年間…
お前が『オレ』にどんな行為をしてきたかは知っているさ。
 …まあそういう訳でな、お前が周りの人間の目や面子、立場を
考えずに跡取りという身分を乱用して…好き放題してきた結果、こいつは
命を狙われることになった。だから一時的に…避難させて貰うだけだ。
 …今のお前に、こいつを手元に留めておく権利はない。

 いつまで…俺が犯して、お前を傷つけた。その事に引け目を持っているこいつの
罪悪感に付け入って、『オレ』の人生を全てを奪い続けているんだ…?
 たった一度犯した罪の為に、お前は…こいつの持っている全てを奪って…
閉じ込めて。そこまでする権利が…お前に果たしてあるのか?』

―…っ!!

 その事を指摘された時、太一は何も言い返せなかった。
 それは…彼がずっと目を瞑り続けていたことだったからだ。
 あの一件で、彼は確かに深く傷ついた。
 克哉を愛していたから、大好きだったから…だからあんな事をされたのが
本当に辛くて、憎くて…ショックで、当時はグチャグチャだった。
 けれど…同じ事を克哉にする。そういう回答を得た時、彼は一時の救いを
見出せた気がした。
 だから…彼は克哉を監禁して、欲望のままに犯し続けた。
 彼が泣き叫ぼうとも、嫌だと懇願しようとも…容赦しなかった。
 
―あんたが、俺を傷つけたんだろ…? だから償ってよ。克哉さん…

 けれどその言葉を繰り返す度に、大人しくなった。
 それが克哉を逃がさない為の魔法の言葉だと思った。
 だから繰り返し繰り返し、言い続けた。
 …自分は克哉を離すつもりなどなかったから。
 彼を自らの手元に留める為なら、卑怯者になろうとも構わなかったのだ。
 いつしか…克哉は逃げようとする意思も、抵抗も見せなくなった。
 それを見て…やっと克哉を手に入れられたと思った。
 だが…克哉は気づけば、少しずつ飲食をしなくなっていった。
 気づいた時にはすでに遅く…今では彼は、ここ一ヶ月は点滴をする事で
命を繋いでいる有様だった。

『どうした…図星を突かれて苦しいか? だが…それが事実だ。
お前がやっている事は子供の我侭と一緒だ。相手に罪悪感を抱かせて
それで無理難題を突きつけて操作しようと言う…な。
 そんな真似をしているから、こいつは自分の意思を殺す事を選択した。
 …そして、お前の父もそんなお前の目を覚ます為に…こいつを殺すという
選択肢を選ぼうとしている。それでも…お前はこいつを、手放さないと…
そんな我侭を言うのか…っ?』

 眼鏡の口調は、荒げたものだった。
 これだけ内容が容赦なく、きついものになっているのは…彼は、太一の中に
自分と同じようなものを見ているからだ。
 人間は…誰かを強烈に嫌悪する時、その人間の中に己の中の見たくない一面を
見出している場合が多い。
 それは投影と呼ばれる心理現象だ。
 眼鏡の中にも、恐らく太一が今やっているような真似をしでかしかねない…暗い
欲望が心の其処に潜んでいる。
 だから言う、容赦ない現実を…真実を。

―黙れっ! それ以上言うのなら…俺はあんたに対して容赦しない…!

 本気の憤りを瞳に宿しながら、太一は…藍色の絣の着物の懐から長ドスを
取り出してその鞘を抜いていく。
 その視線には本気の殺意が篭っていた。

『ほう…本気で聞き分けのない子供のようだな。お前は…。事実を直視
したくない余りに刃物まで取り出すとは…身体の成りは大きくても、まったく…
精神的には成長していないみたいだな…』

―ふざけるなぁぁぁ!!

 今まで、決して渡すまいと片腕で抱えていた克哉を放り出して…太一は
鞘を放り投げて、ベレッタM92の銃口を突きつけている眼鏡に向かって
突進していった。
 
 彼が言った発言の殆どは、決して見ないようにしていた彼の弱さを
そのまま突きつけている内容ばかりだった。
 だからこそ、許せなかった。頭に血が昇ってしまっていた。

『坊ちゃん! 冷静になって下さいっ! そんな野郎の挑発に乗っちゃ
あきませんっ!』

 配下の誰かが、どこかの県の訛りが色濃く残っている口調で嗜める
言葉を吐いていく。
 だがそんな忠告すらも、今の太一には耳に届かなかった。
 
 太一は本気で、眼鏡を殺そうと襲い掛かってくる。
 その勢いに押されて、彼は…脅す以上に使う予定のなかった
拳銃のトリガーをついに、引いてしまった。
 咄嗟に、照準を合わせそうになったが…辛うじて、致命傷にならない
方角に逸らして一発…眼鏡は放ってしまった。

―うぁぁぁぁぁ!!!

 一発目が放たれると同時に、迸る絶叫。
 スレスレになるように逸らした筈の弾が、誰かに命中したのだ。
 その苦悶の叫び声に…誰もが騒然となった。
 何故なら、その弾は…その場に立っていた人間の誰にも当たらず
桜の花と葉の間に…消えた筈の一発だったからだ。

 そう、偶然だった。
 威嚇の為に太一の肩口のスレスレになるように放った一発は…克哉を
殺そうと潜んでいたスナイパーに偶然、命中してしまったのだ。
 誰も其処に人が潜んでいる事など判らないくらいに巧妙に隠れていた刺客に
何の運命の悪戯か、眼鏡が放った流れ弾が命中してしまったのだ。

―な、何が…起こった、んだ…?

 たった今、至近距離で銃弾を放たれて…断末魔の叫びに近いものを
聞かされた太一は、目を大きく見開いたまま呆然としていた。
 次の瞬間、桜の木の下から…一人の黒い影が落下していく。
 闇に紛れ込むように、全身黒いボディスーツに身を包んだ男は
口元から血を吐きながらも、ヨロヨロとどうにか立ち上がっていった。
 …流れ弾は運悪く、致命傷を男に与えていたのだ。

 突然の闖入者に、その場にいた人間の全てが騒然となった。
 この男をどうするべきか、取り押さえるべきか…その判断を誰も
出来ないままに…男が最後の力を振り絞って、克哉の方へと
標準を合わせていく。

―それはプロの暗殺者である男の、最後の意地だった。

 不運な偶然で、巧妙に隠れていた筈が流れ弾に当たり…無様に
その姿を晒す羽目になってしまった。
 それでも…激痛によって意識を失いそうになっても、己の受けた
依頼を果たそうと…絶命寸前の状態でも、男は最後の力を振り絞って
克哉に銃口を向けて、引き金に指を当てていき―

『しまった…!』

 余りの事態に、眼鏡も反応が遅れてしまった。
 だが、もう間に合わなかった。
 彼が拳銃を構えて男に標準を合わせる前に…男の指はトリガーを
引いてしまい…。

 パァン!!

 桜の花が鮮やかに浮かび上がる中、その華やかな五十嵐本家の庭園内に
一発の銃声が響き渡っていった―
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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