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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―彼の瞳は、どこまでも虚ろだった。

 桜が舞い散る中、縁側に腰を掛けていた太一に強引に貫かれていても
その反応は殆どなく、人形のように無反応のままだった。
 ずっと監禁されて、ここ数日はロクに食事も摂取しなくなっていたせいで
肌は抜けるように白くなり、血が通っているとは信じられないくらいに
なってしまっていた。

 風は強く、吹き抜けていく度に鮮やかに淡い色合いの花弁が風に舞っていく。
 春の…酷く肌寒い一夜だった。
 桜吹雪と共に、闇の中から現れた眼鏡の姿を見て…その場に立っていた
者は皆、騒然となっていた。
 一年前に実家に戻り、その家業を継ぐ事となった若頭が異常に執着している
若い男と…眼鏡はまったく同じ顔の造作をしていたからだ。

―なんで、あんたがここにいるんだ…!

 信じられないものを見るような眼差しを向けながら太一が叫ぶ。
 たった一年で、彼は酷く大人びた雰囲気の男になっていた。
 以前は明るく、人懐こい印象の青年だったのが…瞳に暗い色を宿し
鮮やかなオレンジの髪を括らずに下ろしている。
 
―さあな。それを俺が答えてやる義理はない…。とりあえずそいつを
回収させて貰うぞ

 そういって、眼鏡は太一に向かって銃口を向けていった。
 Mr.Rに護身用にと渡された銃は…多少の訓練はしたが、まだ
動き回る的や20メートル以上離れてしまうと命中率は著しく下がった。
 だから脅す意味合いで、彼はベレッタM92を向けていく。
 その場に緊迫感が瞬く間に広がっていく。

―あんた、正気かよ? …俺から克哉さんを奪うつもりだなんて…
まともな考えとは思えないね。…そんな事やったら、俺はあんたを…
遠慮なく消させて貰うよ? それくらいの覚悟はあるんだろうね…?

 物騒な笑みを刻みながら、太一が眼鏡をねめつけていく。
 克哉を独占したい、閉じ込めたい…その暗い欲望を満たす為に
彼は実家の家業を継ぐ道を選択した。
 長年、裏家業に手を染めていた家族に囲まれて育ったという下地が
あったせいか…まだ正式な跡継ぎ候補になってから一年くらいしか
経過していないというのに…太一にはすでに貫禄が生まれ始めていた。
 本気の殺気を込めながら、傲岸不遜な事をいう…愛しい人と同じ顔をした
男を睨みつけていく。

―ちっ…わざわざそんな面倒くさい事をする趣味はない。俺は別に
こいつに執着している訳でも、お前から奪うつもりもない。
 だが…このままにしておいたら、こいつは命を奪われて俺も一緒に
消えてしまうからな…。だから一時避難の意味でそいつを預かりに
来ただけの話だ…。

―な、んだと…。克哉さんの命が奪われてって、どういう意味だ…?

 眼鏡がそう言った直後、いきなり太一の態度が急変した。
 まるで…後ろめたいことを指摘されたような、そんな顔だった。

―どうした? お前…顔色が酷く悪いぞ…?

―茶化すな。キチンと答えろ…。克哉さんは、命を狙われていると…
お前は言いたいのかよ…!

―ああ、そういう意味だ。厄介な事に俺とそいつは…繋がっている。
そいつが死ねば、俺も一緒になって消えるしかない。だから…一時的に
避難させる為に回収しに来ただけの話だ。
 何…心配するな、お前がその問題を片付けたらきちんとこいつはお前に
返してやるよ…だからそいつを、俺に渡すんだ。
 …もう一人の『オレ』を…お前は永遠に失いたくないんだろう…?

 悠然と微笑みながら、眼鏡は告げていく。
 それと対照的に…太一の表情は青ざめたものになっていった。
 そして…この後に及んでも、克哉は何も反応していなかった。

―誰が、克哉さんの命を狙っているっていうんだよ…。
デタラメを言うのもいい加減にしたら…どう?

 それでも人一倍負けん気の強い太一は、動揺を必死になって噛み殺して
不適な笑顔を浮かべながら問いかけていく。
 眼鏡はそれを見て、嘲るように微笑み…銃を構えた状態のまま一歩…一歩と
彼らと間合いを詰めていく。

―近づくなよっ! あんた…自分がどんな状態か判っているのかよっ!
 ここは五十嵐組の本家だぜ? 確かに最小限の人間しか今夜は配備していない
けれど…十人近い人間があんたの周りに存在しているんだぜ?
 俺がその気になったら…どうなるか、それくらいは予測つかないのかよ…?

―やりたいなら、やってみれば良い。ただ…さっきも言った通り、俺と…
お前の腕の中にいる奴は同一人物。いわば一蓮托生な存在だ。
 お前が俺を殺したいのなら好きにすれば良い。だが…その場合、もう一人の
オレにもどのような影響が出るかは…正直、判らないがな…?

―くっ…!

 太一の言葉にまったく怯む様子すら見せず、ついにその間近まで接近
していった。
 今の眼鏡の発言は、太一にとってはアキレス腱に等しいものだ。
 彼は克哉を深く愛している。
 だから…眼鏡を疎ましく思っても、今のような事を言われてしまえば…
安易には手を出せなくなってしまう。
 必死になって歯噛みしていきながら、懸命にこちらを睨みつけてくる。
 視線だけでも抵抗しようとする相手の姿が滑稽だった。

―心配するな。危害は加えるつもりはない…大人しくそいつを保護すれば
俺は大人しくこの場から去るさ…。ああ、そうだ…。お前に一つ良い事を
教えてやろう…耳を貸せ。

―何を吹き込むつもりだよ…!

―お前に、もう一人の『オレ』の命を狙っている奴の事を教えてやろうと
思ってな…。興味ないのなら別に話さなくても良いが…。

 そういって、克哉の肩にそっと手を触れさせようとする眼鏡の手を…
全力で太一は叩き落としていった。

 バシッ!

 克哉に他の男が触れることが、どうしても許せなかったのだ。

―…この人に触わるな…! 

 真偽が判らない戯言ごときで、愛しい人をみすみす他の男に手渡せる
筈がなかった。
 コイツと克哉さんは同一人物だというが、それでも…冗談じゃないと
思った。それくらい…太一は、佐伯克哉という存在に執着して強い
独占欲を抱いていた。

―…なかなか、イキが良いな。その強がりが…狙っている奴の事を
聞かされても続くかどうか…見ものだがな。

―もう戯言は良い! とっとと消えろよ…! あんたの言葉を真に受けて克哉さんを
手放すなんて冗談じゃない!

―ほう、今…この瞬間にアイツに銃口が向けられていても…か?

 そう眼鏡が呟いた瞬間、その場は騒然となった。
 沈黙を守り続けていた太一直属の配下達すらも動揺を隠しきれずにザワザワと
騒ぎ始めていく。

―何をデタラメ言っているんだよっ…!

―ああ、良い事を教えてやろう…。その狙っている奴は…今夜を決行日に
選んできた。だからこの庭の中で…あいつを狙っているスナイパーは
すでに待機している。そして…。

 そういいながら、眼鏡は跪いて…太一の耳元で衝撃的な内容を
告げていってやる。

―こいつの命を奪うように指示を出したのは…紛れもなくお前の実父だぞ…

 そう彼が残酷な真実を突きつけたその瞬間、太一は信じられないとばかりに
瞳を大きく見開かせていったのだった―

 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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