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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―眼鏡が一日だけ、人気のない別荘地を離れた日。
  あの日は本当に、色々な意味で全てが動き始めた日であった。
  その事をつくづく実感していきながら、自室に使っている部屋の
カーテンの隙間から望遠鏡で眼鏡は周辺をさりげなく見回していた。

(ちっ…日増しに、監視されている目は増えているみたいだな…)

 苦々しく舌打ちをしながら、自分達を見張っている男達を凝視
していく。
 目立たないように…一日だけのさりげない下山のつもりだった。
 元々、辺鄙な所である。
 だからここから、一番近くの繁華街に短い時間行くだけならば…
見つかることはないだろう、とタカを括っていた部分があった。

(伊達に…関西方面のヤクザを統べる立場ではない、という事か…)

 良く任侠物などで、ヤクザの親分や幹部の顔に泥を塗ったり、
その命を狙ったりすれば地の果てまでも追っ手が追いかけて来て…と
いう場面や記述があるが、今…自分達が立たされているのはまさに
そんな立場であった。

 あの日から、三日。
 自分が留守にしている間に…何となく克哉の態度もそれまでとは
若干異なったものになっていた。
 帰って来た日に、克哉の姿がなくて焦燥に駆られた日。
 泣き腫らした顔をしながら、何かを覚悟した彼は…それまでよりも
芯の強さのようなものが、戻って来ているようだった。
 今だって、朝食の準備は彼の方がしてくれている。
 だからこうして…眼鏡の方は、この屋敷の周辺に現在、どれだけの
人間が監視という名目で張り付けられているか、気を回す事が出来た。

(常時…3人から4人ぐらいが、この屋敷の周辺に配備されているって
いう感じだな…。恐らく、ここだとはっきりとは確証は持たれていないが…。
この近隣に俺たちが潜伏している、という目星ぐらいはつけられているな…)

 ここ数日、さりげなくこの付近に建てられている別荘地を歩いているだけでも
以前と違って、「見られている」ような感じが強くなっていた。
 眼鏡は素人なので、どこに人が隠れているかまでははっきりと判らない。
 けれど、「人の目」や「常に見られている」ような奇妙な感覚が…三日前を
境に増えているのは確かだった。

 こうなると、今は人の気配がない時期である事がむしろ…マイナスに
なっていた。 
 自分達の使っている屋敷を含めて、シーズンオフであるこの時期に
明かりが灯っているのはそんなに多くない筈だ。
  逆に夏休みに入って、多くの人間が出入りするようになれば…もう少し
隠れている事も出来たかも知れない。
 だが、もう…この屋敷に自分達がいる事は恐らくバレてしまっている。
 もう、ここで過ごしていられる時間は…後僅かである事を、彼は覚悟
するしかなかった。

(…次にどこに逃げれば良いのか、俺には見当がつかないな…)

 此処ほど、潜伏するのに良い条件を満たしている場所は他になかった。
 Mr.Rから提供されたこの別荘を出た後、自分達が隠れる条件を満たした
場所は果たしてすぐに見つかるだろうか。
 そして…彼を連れて、どこまで自分は逃げ続けていられるのだろうか?
 同時に、いつまでこちらは…この世界に存在していられるのか?
 一度考え始めていくと…不安のタネは尽きなかった。

(…チッ、酷くネガティブな思考回路だな…俺らしくもなく…)

 こうなると、克哉の身体がせめて以前と同じように動かせるようになっている
事だけでも在り難く思う事にした。
 正直、目覚めた直後の身体の自由の効かない彼を連れてだったら…
眼鏡も守り切れるかどうか自信はなかった。
 ふと、自分の胸ポケットに常に収めてある…一丁の拳銃。
 使い方を謝れば、あの桜の日のような悲劇を起こしかねない武器。
 その硬い手触りを服の上から確認していくと、瞼をぎゅっと閉じていく。

―本当に俺は、あいつを守り切れるのか…?

 一対一であるなら、負ける気はない。
 この二ヶ月、毎日のように訓練を重ねて…命中率の精度は上げて来た。
 だが、多人数を相手にした場合は…予想外の事が起こる可能性はグンと
跳ね上がっていく。
 監視の状態でも、常に3~4人。
 後、何日かすれば…じきじきに太一も、克哉を取り戻す為に
訪れるかも知れない状況。

(あいつを、俺は…手放したく、ない…)

 克哉の心が、こちらに向けられているというのならば…絶対にもう
その手を離したくなかった。
 結ばれてから、二週間足らずの間に沢山触れてきた克哉の笑顔。
 それを脳裏に思い描いて、彼はそっと覚悟していく。

「…悩んでいても仕方ないな。そろそろ朝食が出来る頃だろう…」

 昨晩は、遅くまでベッドの上で睦み合っていた為に…今朝は
朝食と言っても普段より遅い時間帯になってしまっていた。
 セックスしている最中に踏み込まれたら、一溜まりもない事は
自覚しているので…お互いに完全に衣服を脱ぎ切らず、周囲に
常にアンテナを張り巡らせながら克哉を抱くのは、同時に酷く
スリリングで…彼の血を沸き立たせていた。

―ドクン

 その興奮を思い出して、武者震いのようなものを感じていく。
 この状況は、他の人間からすれば…絶望的な状況だろう。
 周囲に頼る人間は誰もおらず、大勢の舎弟を抱えている相手と
戦っていくのだから。
 だが、彼は同時に…それに酷く闘争本能を刺激されているのも
事実だった。

(やってやるさ…少なくとも、この状況は…退屈する暇なんて、ないからな…)

―それでこそ、我が主と成りうる資格を持っておられる方です…

 そう、決心してキッチンの方へと向かおうとして…窓から背を背けた
瞬間、歌うような声が聞こえていった。

「っ…!」

 あまりに突然の事に、とっさに振り返っていくと…。

―お久しぶりですね、佐伯様。今現在、貴方は佳境に立たされている
ようですから…ほんの少し、助言しに伺いました…

 と、ニッコリと黒衣の男は…悠然と微笑み、眼鏡の元へと歩み寄っていく。

 ―その姿が、眼鏡にとっては…何故か、良く神話か言い伝えで語られている
死神のようにすら感じられたのだった―


 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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