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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 濃厚なミルクの匂いが鼻を突く中で…一旦、腕を引かれて
起こされた状態で浴室の壁に身体を押し付けられていく。
 背後から相手に抱きすくめられて、その淫らな指先がこちらの
胸元と下肢を怪しく蠢いている。
 
サァーザー…
 
 床にタイルが敷き詰められた浴室内に、シャワーの音と…自分達の荒い
息遣いだけが
響き渡っていく。
 
「あっ…んんっ…其処、ばかり…弄るな、よ…」
 
「何を言う…? お前のここはもっと強い刺激が欲しいって…俺の手の中で
訴えかけているみたいだがな…?」
 
「はっ…うんっ…」
 
 克哉が鼻に掛かったような甘い声を漏らしていくと、眼鏡はやんわりと
性器を握り締めて緩やかに扱き始めていく。
 シャワーの湯を浴びながらの愛撫のせいか、どこに触れられても克哉の肌は
肌に吸い付くように滑らかな手触りになっていた。
 
「ほう…? やはり風呂場でヤルと…趣がいつもと違って感じられるものだな。
お前の肌…どこも、俺の指に吸い付いて来ているぞ…? ほら、ここもな…」
 
「やっ…バカ…言わない、で…!」
 
 克哉が頭を振って必死に否定していくが、相手の攻勢は止まる気配を
見せていなかった。
 むしろどんどん巧みなものとなって、容赦なくこちらの欲情を煽り立てていく。
 眼鏡の指先が淫らにこちらの胸の突起を交互に攻め立て、右手で…
こちらの
ペニスを緩急を富みながら、執拗に弄り上げていく。
 交互に攻められるだけで…その先端からはいやらしく先走りが溢れて、
ヌチャネチャと
糸を引いているのが自覚させられた。
 それは溢れてはシャワーの湯にすぐ流されていくが…絶え間なく溢れ続けて
男の手を汚し続けていく。
 
「や、あっ…あんまり、弄るなよっ…。んっ…あっ…」
 
 シャワーを頭から浴びながら攻められているせいか、水蒸気が
立ち昇っているせいか少し息が苦しく感じられた。
 喘ぎながら、途切れ途切れにそう背後からこちらを攻め立てている
相手に訴えかけていくが…まったく聞き遂げられる気配はなかった。
 
「そうか…? こんなに淫らに腰をくねらせて喘いでいる姿は、俺には
『もっと…』と強請っているようにしか見えないがな…?」
 
「バッ…カァ…そんな、訳ない…ってば…ひゃう…!」
 
 そうしている間に、相手の昂ぶりがこちらの奥まった場所に宛がわれて
いるのに気づいて…高い声を上げていく。
 相手の剛直が、こちらの蕾に当たった状態で…ドクンドクンと荒く息づいて
いるのを自覚して、つい息を呑んでいった。
 
「あっ…んっ…」
 
 グイ、と先端が捻じ込まれている感覚がした瞬間…克哉はつい、
期待している
かのような甘い吐息を零していく。
 その隙を逃さず、眼鏡は一気に克哉の中に己を割り込ませていく。
 幾度繰り返されても、狭い隘路を割り開かれていく瞬間だけは
苦しくて息が詰まりそうになる。
 だが内部に納まった性器が、こちらの官能を駆り立てる部位を擦り上げた
瞬間…電流のような快楽が押し寄せて来た。
 
「あっ…あぁ―!」
 
 前立腺の部位を容赦なく擦り上げられて、克哉はただ…壁に対して
必死にすがり付いてその衝撃に耐えていった。
 だが眼鏡の追撃は一切、止まる気配を見せない。
 激しく腰を揺さぶり…相手を巧みに煽りながら、一層深い悦楽の海へと
容赦なく突き落としていく。
 相手の猛り切ったペニスがこちらの内部で暴れ回る度に、耐え切れないと
ばかりに
克哉の身体は小刻みな痙攣を繰り返していく。
 
「ん、あっ…やっ…もう、少し…加減して、くれよ…! こんなに…
激しく、されたら…息も、つけな…い…!」
 
「…そんな事を言っている割には、お前の中は痛いぐらいに
俺を締め付けて、放そうとしていないけどな…」
 
「だから、言わない、で…くれよっ…ひっ…あっ―!」

 後、もう少しで達する。
 性急に腰を突き上げられてそれぐらいギリギリの所まで追い上げられる。
 自分の内部で、相手の先走りがたっぷりと滲んで…ヒクヒクと蠢いている
様子すら感じられて、一層興奮を煽られていく。
 
(もう、イク…っ!)

 頭が真っ白になる感覚がして、息を詰めて身構えたその瞬間…相手の
突き上げが不意に止まっていった。

「えっ…あっ…?」

 達する寸前に、ふいに刺激が止まったので…怪訝そうに相手の
方を振り返った瞬間…胸元から下肢に掛けて、たっぷりと何か
トロリとした液体を掛けられていく。

「な、何…これ…?」

 突然感じた、ヌルリ…とした感覚に、克哉は途方に暮れていく。
 だが相手は…呼吸は若干乱れていたが、こちらの耳元で平然と
呟いていった。

「…ただのボディシャンプーだ。…せっかく風呂場でヤっているんだから
せっかくだから…お前を丁寧に洗ってやろうと思ってな…?」

「っ…! 余計な、お世話だよ…! やっ…まだ、敏感になって
いるんだから、そんなに…弄らないで、くれよ…!」

 さっきも散々弄られた胸の突起と性器を、今度は泡と一緒に
攻められ続けていく。
 さっきは滑らかな手触りだったが…ボディシャンプーが加わった
おかげでツルツルした感触になっている。
 シャワーの湯はいつの間にか止められ、相手の手が動く度に
たっぷりとした泡が立ち上がり…フワっとした雲のように克哉の
肌全体を覆っていく。

 胸元全体を、たっぷりと掌全体で撫ぜられ。
 淡い恥毛が覆われている部位を、指の腹全体で擽られていく。
 最初は間接的な刺激も時々加えられてじれったかったが、相手の
手がそれぞれ…再び胸の突起とペニスの先端に戻っていくと
嫌でも、克哉の吐息は乱され…忙しなく肩を上下させていく。

「やっ…だ…クチャクチュ…って、音…が…さっき、より…」

「…お前がいやらしくて、淫らな事なんて…俺は存分に知っている。
だから今更、だろう…?」

「意地、悪…! どうして、オレを…いつだって、こんな風に…!」

 眼鏡の手が、厭らしくこちらの先端の皮の部分を剥いて…露出した
亀頭全体を丹念に洗うように蠢いていく。
 その度に克哉の先端からはとめどなく蜜が溢れ出て、いつしか粘度を
増して…たっぷりと男の掌に伝い落ちていった。
 泡の力も手伝って、浴室中にグチャグチャ…と淫らな水音が響き渡って
聴覚すらも犯されているみたいだった。
 克哉が、とっさに漏らした一言。
 それを予想もつかない言葉で返されていった。

「…お前を愛しているからに、決まっているだろう…?」

「えっ…?」

 予想もつかなかった言葉を言われて、克哉がつい…相手の方を
振り返った瞬間、深く唇を重ねられた。
 そのキスは…若干、石鹸の味がして苦かったけれど…同時に
普段よりも甘く感じられた。
 相手の舌がクチュリ…とまた淫靡な音を立てて、こちらの口腔を
犯していく。
 それと同時に、暫く止められていた抽送が開始されていった。

「ひっ…ぅ…ん…!」

「だから、な…お前が乱れて、感じて…悶え狂う様を…俺は
たっぷりと…見たい…。だから、見せろ…もっと、俺だけにな…」

「あっ…はぁ…!」

 そのまま、手での愛撫と連動するように…的確に、腰を突き上げ
られていく。
 克哉の身体はその度に官能的にくねり、その強烈な感覚を
享受していくしか出来なくなっていた。
 相手の言葉にも凄く感じてしまっている克哉には、もう…己の
身体の奥から生まれた欲望を抑える術を失っていた。

―今はただ、相手の全てが欲しくて仕方なかった。

 ようやく羞恥という枷を外して、己の欲求に正直になった
克哉の姿に…眼鏡は満足げな笑みを刻んでいく。

「オレ、も…もっと、お前が…欲しい、から…だから…」

「あぁ、それで…良い。俺も、お前が欲しいから…な…」

「あっ…ん…」

 相手の一言一言に、内部で息づいている欲望の全てに感じて
ゾクゾクゾク…と悪寒にも似た強烈な快感が走り抜けていく。
 そこから先は無我夢中だった。
 喉が嗄れるぐらい克哉は激しく啼き続けて。
 そんな彼を煽るように、眼鏡もまた激しく腰を突き上げ続けた。
 そして、二人同時に達したその後…。

 克哉は半ば意識を失うように…その場に崩れ落ちて。
 そんな彼の身体をシャワーで清めて、泡を洗い落とした後…眼鏡は
沈まないように気をつけてやりながら…少し温くなっている泡風呂の
中へ一緒に入っていったのだった―


 
 
 
 
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 ※やっと贈呈主が読んで下さったのを確認出来ましたので26日分の
掲載作品…という形で正式に掲載させて頂きます。
 非常に掲載作品が前後しまくっていて判り辛くなってて本気で
すみませんです(ペコペコ)
 無駄に甘いので覚悟してお読み下さいませ(笑)

―それは克哉が気付いたら眼鏡の奥さんという立場になってから
一ヶ月程経過した頃の話だった。

「本当にゴメン!オレが悪かったよ!」
 
 新居のマンションの整えられたリビング内。
 起き抜け早々、克哉は夫であるもう一人の自分に対して真剣に
謝っていた。
 だが冷蔵庫の前に立ち尽くしている眼鏡の表情は極めて厳しいものだった。
 
「…お前、仮にも俺の妻ならば…毎朝、こちらが朝食時に必要としている
物ぐらいは判るだろう?
 百歩譲って何か一つ足りないくらいならまだしも…俺が朝食に食べたいと
思う物が何一つない状態でどうしろと言うんだ?」
 
「だ、だからさっきからゴメンって…。けど昨日はオレも熱っぽくてダルくて…
家の事は辛うじてこなせたけど、買い出しまでする元気はなくて…」
 
「…ついでに言うと俺との愛情確認の時間もそれで初めて断ったよな…?」
 
「…しょうがないだろ? 本気で体調悪かったんだし…。そういう時ぐらい
キチンと睡眠は取らないと…」
 
 克哉がしどろもどろになりながらも説明していくが眼鏡の
表情は固いままだった。
 いつもなら克哉がここまで言えば彼も仕方ないな…と諦めてくれるのだが、
昨日の夜のセックスがなくて欲求不満なのか極めて不機嫌そうであった。
 …いつもより空気がピリピリしているのはきっと気のせいではない。
 
「…チッ、人間だから体調が悪い日はどうしても出るだろう。それを責める
気はない。だが冷蔵庫の食料に関しては毎日マメに買い出していれば
回避出来ないか…?」
 
 克哉は結婚以前、長年独り暮らしをしながら働いていたせいか毎日
こまめにスーパーに行って買い出しに行く習慣がなかった。
 独身時代は昼間は外食が多かったから週末に一週間分の食材を
買えば事足りた。
 結婚してからは二人分になったから週末の他に週の中頃にも、もう一回
行くようになったが…昨日は発熱のせいでそれを怠ってしまってこの
事態になったのだ。
 
「…うっ。それはそうだけど…」
 
「せめて今度から週三回程度に買い出しは増やせ。そうすればこのような
事態は回避出来る。まぁ…今朝はお前を朝食にする形で許してやろう」
 
「…はぁ?」
 
 あまりの唐突な申し出に克哉の頭は一瞬、真っ白になった。
 だがそんな克哉に一切お構いなく…眼鏡は問答無用でにじり寄っていく。
 
「…うわっ! ちょっと待ってくれ…」
 
 克哉も本能的な恐怖を感じて後ずさって逃げようと試みる。
 二人の睨みあいと攻防戦は暫く続いていく。
 だが眼鏡の方は克哉を逃がす気は一切ないらしく大きく立ち塞がる事に
よって、相手の逃走経路を確実に遮断していく。
 
(…どうしよう、逃げる隙がない…!)
 
 眼鏡の背中から何がなんでもこちらを逃すまいとする気迫が
ヒシヒシと伝わってくる。
 …つくづく、飢えた獣と欲求不満状態のもう一人の自分は敵に
回すものじゃないと思い知っていると…。
 
「…そこまで、だな」
 
「…あっ…」
 
 ついに窓際まで追い詰められてしまっていた。
 克哉にとってはまさに朝から絶対絶命の状態だった。
 後方に窓ガラス、前方に飢えきった夫。
 幾らあがこうともすでに克哉が逃げ切れる状況ではなくなっていた。
 徐々にその整った顔立ちが近付いてくる。
 互いの吐息が感じられる程の距離だ。
 
「ちょっ、と…待てよっ!こんな処で…」
 
 今、二人が立っているのはベランダに続く大きなガラス製の
引き戸の前だった。
 しかも擦りガラスや飾りガラス製の中の様子が見えないタイプの
物ではない。
 しっかりとカーテンを引かなければ中の様子が見えてしまう透明な物だ。
 
「…何をそんなに嫌がる? そんなに見られながらスルのは
抵抗があるか…?」
 
「…あ、当たり前だろ! こんな処でシて、誰かに見られでもしたら
一体、どうする…んぐっ!」
 
 克哉は必死になって反論の言葉を紡いでいくが、あっさりと相手に
キスされる形で唇を塞がれる事によって阻まれていった。
 クラクラと眩暈がする程の情熱的な口づけに思考が真っ白になりかけた。
 熱い舌先が縦横無尽にこちらの口腔内を擽り、性感を刺激していく。
 
クチュリ…グチャ、ヌチャ…
 
相手が舌を蠢かしていく度に背筋に甘い痺れが走り抜けていった。
 
「や…ぁ…」
 
唇がようやく解放されていくと、克哉の唇から悩ましい声がこぼれていった。
 
「…さっきまで嫌がっていた割には、随分キスかには乗り気だったみたいだな…」
 
「そ、そんな事は…んぅ…」
 
 抵抗の意思を示す言葉はあっさりと眼鏡の唇で塞がれて
封じ込められていく。
 ガシッとその腕の中に押さえつけられていくと…巧みな指先に、
腰から臀部に掛けてやんわりと撫ぜ擦られていった。
 間接的に蕾を刺激される形になって自然に克哉の吐息は
荒くなり始めていく。
 
「やだ…其処、ばかり弄るな、よぉ…」
 
―こんな処で抱かれてベランダの向こうから誰かに見られてしまったら…。
 
 その躊躇いから克哉は弱々しい抵抗を続けて首を振っていく。
 だが克哉は知らない。この新居のマンションは防音完備で、全ての窓が
外から見た場合は、一定以上の距離から離れて見た場合は全て光を
反射して室内の様子を見えなくする仕様である事を…。
 
「…口で嫌がっている割には、随分と腰をくねらせてねだっている
みたいな動きになっているみたいだぞ…?」
 
「あっ…はぁん…言うなぁ…言うなってばぁ…」
 
 尻肉を嫌って言う程揉みしだかれて克哉は甘い嬌声を漏らし続けていった。
 断続的に荒く乱れた呼吸を繰り返していきながら…肩を上下させていく。
 
「…そろそろ頃合いみたいだな…」
 
「ひゃっ…!」
 
 突然、窓ガラスに身体の前面を押し付けられるな格好になって
克哉は微かな悲鳴を出していった。
 そのまま背後から抱きすくめられ、臀部に熱い塊が押し当てられていく。
 互いの布地越しだから直接ではない。
 それでもすでに散々ソレに貫かれ続けている克哉には嫌でも判ってしまう。
 
(『俺』のが…こんなに、熱く…堅くなってる…)
 
 知らない間にゴクンと息を飲んでしまっていた。今、こうして背後から
自分を抱き締めている男が欲情してこちらを求めて来ている。
 そのあからさまな形を突きつけられて克哉は知らず、早鐘を打っていた。
 
「~~~~」
 
 もう何を言って良いのか軽くパニックに陥っていくと…耳元に口元を
押し付けられ、低い声音で囁かれていく。
 
―観念したか? それならお前を抱くぞ…
 
 そう言葉を落とされた瞬間、ゾクンと腰に甘い痺れが走っていく。
 眼鏡の手が巧みに克哉の衣類を脱がしに掛っていった。
  そのまま暖かい手のひらがくまなく克哉の全身を這い回っていく。
 こちらの両脇に腕を通す格好で、背後から敏感な場所ばかりを
攻め始めていった。
 
「んんっ…ぅ…」
 
 相手の指に触れられる度にどうしても声が出てしまっていた。
 両方の突起を抓まれ、こねくり回されながら耳の奥を舌先で犯されていけば
それだけで気が狂いそうになっていく。
 
「…ほら、俺にこうされるのが嫌なんじゃなかったのか…? その割には
お前の此処は堅く張りつめながらこちらの指に吸い付いて来ているがな…?」
 
「やぁ…お願い、だから…口に、出して…言う、なよ…! 恥ずかしく、て…
死にそう、になるから…」
 
 イヤイヤをするように頭を左右に振っていくが眼鏡の甘美な責めは一向に
収まる気配を見せなかった。
そうしている間に首筋に吸い付かれて何度も鋭い痛みが走っていった。
 
「っ…! あっ…!」
 
 反射的に身体を跳ねさせていくが痛み混じりの愛撫は暫く
絶え間なく続いていった。
 ようやく止んだ頃には…克哉の健康的な肌の上には、特に首筋から
肩口に掛けて赤い痕が散っていた。
 
(…また、痕が…一緒に暮らすようになってから…消えた、試しがないな…)
 
 式を挙げてからの変化の一つ。それは…眼鏡は抱く度に必ず克哉の身体に
所有の証を刻むようになった事だった。
 毎日抱かれ続けている訳だから行為の度にそれは上書きされている
形になっている。
 おかげで襟が開いて首元が見えてしまうデザインの服を着て外に
出れなくなってしまったくらいだ。
 
「やぁ…また、痕…が…」
 
「お前は、俺のものだからな…」
 
「あっ…」
 
 なのにこうゆう風に熱っぽく囁かれれば、肉体的な快楽とは
別の悦びが背筋を走り抜けていく。
 そうしている間に、臀部に押し当てられた相手の剛直はドクンドクンと
脈打っていて…激しく自己主張を繰り返していた。
 
(もう…『俺』の…こんなに堅く熱くなっている…)
 
 知らない内に期待するように身体を震わせて…ゴクン、と
息を飲み込んでいた。
 
「あ…あっ…んぅ…」
 
 ただ胸をイジられているだけの愛撫に焦れて、無意識の内に強請るように
腰を蠢めかしていた。
  ジーンズの生地の下で知らない間にペニスが張りつめて、痛いぐらいに
なっていた。
 
―胸の刺激だけではすでに物足りなくなっていた。
 
「んぁ…其処、だけじゃ…足り、な…」
 
 身体の前面を窓ガラスに押し付けられた状態でのセックス。
 そんな真似したら誰に見られてしまうか判らないのに…とんでもない事だって
考えているのに、すでに肉体に火が点いてしまって止められそうになかった。
 
(…外が、見える…のに…)
 
 すでにぼんやりとした頭でそんな事を考えていきながら…つい瞼を開けて
 外の風景を眺めてしまっていた。
 ベランダの向こうには幾つもの植え込みと町並みが広がっている。
 遠方には沢山の家やビルが立ち並んでいるのを見て強烈に
恥ずかしくなっていく。
 
―あの建物の中にいる誰かに見られてしまったら…
 
 とんでもない事にそう考えが過った瞬間、妖しいうねりが身体の奥から
生まれ始めていった。
 
「…あの建物の向こうから、お前の乱れている姿を誰かに見られて
しまうかもな…?」
 
「…嫌、だ…そんな、事を…耳元で、なんか…言わない、でくれ…」
 
 懇願をするように克哉は訴えかけるが、その願いが聞き遂げられる
事はなかった。
 
「…途中で止めたら、お前こそ困るんじゃないのか…さっきからおねだりする
みたいにお前の腰は揺れ続けているぞ…?」
 
「…バカァ…」
 
 すでに相手にぶつける文句の言葉すら甘くなる程に克哉は
追い詰められていた。
 
(どうしよう…こんな場所なのに…欲しくなって…堪らなくなっている…)
 
 こんな所で抱かれるなんて恥ずかし過ぎて嫌な筈なのに、すでに抗えない
処まで来てしまっていた。
そんな克哉の思考を読んでいるかのように、眼鏡は克哉のジーンズを
下着ごと一気に引き下ろして、腰から臀部に掛けてを露にしていった。
 
「ひぃ…あっ…」
 
 すでに堅く張り詰めていたペニスがその衝撃で表に飛び出して、
つい声が零れてしまった。
 その隙に眼鏡は克哉の蕾に己自身を当てがい、一気に際奥まで貫いていった。
 
「うあっ…」
 
 克哉の唇から耐えきれないとばかりに声が絞り出されていく。
 毎晩のように抱かれていたとしても…本来、男の肉体は同性を
受け入れるようには出来ていない。
 性急な挿入は受け入れる側にかなりの負担を強いる。
 最初は引き攣れるような鈍い痛みを覚えたが…背後から濃厚な口付けを
施されると徐々に緩和していった。
 
「あっ…はぁ…」
 
 ようやくキスが解かれる頃には克哉は甘く締くようになっていた。
 その頃を見計らって眼鏡は抽送を開始していく。
 腰を動かしていく度にガタガタと音を立てながら窓ガラスが揺れていった。
 それが余計に克哉の羞恥と快楽を高めていく。
 
「ひっ…あっ…! やだっ…『俺』…! こんな処、誰かに…
見られたら…!」
 
「見られたなら、そいつに見せつけてやれば良いだけだ…。俺たちは
こんなに、朝から愛し合うぐらいに円満な関係だとな…」
 
「やっ…バカ…。本気で、お前…信じ、られない…」
 
 克哉は必死に頭を振っいきながら一方的に与えられる強烈な感覚に
耐えていった。
 己の内部で相手の一部が熱く息づいているのが嫌でも伝わってくる。
 
(…俺の中で…ドクドク言ってる…。凄く…熱い…)
 
 そう自覚した瞬間、その熱い塊は克哉の内部を強烈に
往復し始めていった。
 腰を突き入れられる度に克哉の脆弱な場所が擦られて鋭い快楽が
生み出されていく。
 窓の向こうには鮮烈なまでに青い空が広がっているのに…自分達は
朝から何て不健全な事をしているのだろうと、頭の隅で考えていった。
 
「ん…あっ…。やっ…凄く、恥ずかしい…から、もう…」
 
 この場所で自分を抱き続けるのは止めて欲しい…そう懇願
するつもりだった。
 だが深い場所を強くえぐられていけば、そんな言葉もあっと言う間に
掻き消されていく。
 
「何を今更…お前の中はこんなに俺を求めてヒクついているぞ…?」
 
「んっ…ふっ…。バカァ‥そんな事、言うなよぉ…」
 
 克哉は激しくあえぎながら訴えるが聞き遂げられる事はなかった。
 そしてそのまま眼鏡の腰の動きは熱烈なものへと変わっていき…
克哉は一層翻弄されるしか出来なくなっていった。
 
―激しい律動が刻まれる
 
 その度に克哉の喉の奥から余裕ない声が紡がれていく。
 強烈な快楽は時に苦痛にも繋がる。
 相手に揺さぶられて背筋に電流のように快感が走り抜けていく度に
息を詰めてしまうから、さっきから息が苦しくて仕方なかった。
 
「やっ…息、苦し、い…はぁ…んっ…」
 
 崩れそうになる身体をどうにかガラスに手を付く事で支えて
いきながら克哉は訴えていく。
 だが眼鏡は抽送を一切弱める気配を見せず、むしろその力強い
動きは勢いを増すばかりだった。
 
「良い味だ…これなら、充分に俺の朝食代わりになる…」
 
「んぅ…こんな、風に体力使ったら…余計、お腹空いちゃうだろ…
何を、言って…」
 
「…空腹など、その辺で買ったバランス系の食料で満たせるが…俺の
飢えを満たせるのはお前だけ、だからな…」
 
「…えっ…?」
 
 今、とんでもない事を耳元で囁かれたような気がしてカァーと
 克哉の顔が赤く染まっていった。
 
「…聞こえなかったのなら、もう一度言ってやろうか…?」
 
「良いっ! 言わなくて…!」
 
 そんな言葉をもう一度囁かれたりなんかしたら自分は恥ずかしくて
仕方なくなってしまうだろう。
 必死に頭を振りながら断っていくと、その様子を眺めて眼鏡は…
喉の奥で笑っていった。
 
「くくっ…。お前のそういう処は、可愛いな…」
 
「なん、か…凄い…バカに、んんっ…され、ているよう…な、
気が…する…」
 
「…心外だな。俺は褒めているつもりなんだが…」
 
「どこ、が…だよ…ふっ…ううぅ…」
 
 反論しようとした唇は、背後から顎を捉えられての苦しい体制からの
キスによって塞がれてしまっていた。
 
「んっ…あっ…」
 
 さっきまで克哉の頭の中に渦巻いていたものも甘く情熱的なキスを
施された事によって、どうでも良くなってきた。
 ようやく口付けが解かれていくと…再び激しい腰使いによって
翻弄されていった。
 
グチャグチュ…ヌチャネチャ…。
 
 眼鏡が動く度に接合部から厭らしい水音が響き続けていく。
 それが恥ずかしくていたたまれないくらいなのに凄く気持ち良くて…
頭の芯からジィンと痺れるような思いがした。
 
「…はっ、うっ…イイっ…おかしく、なるっ…」
 
眼鏡の動きは激しくなるばかりでまともに息を付く暇すらなかった。
互いの全身から玉のような汗が滲み出てくる。
あまりに激しく追い立てられて満足に呼吸すら出来なかった。
眼鏡が、いる。
自分の中で強く脈動を繰り返しながら、克哉の中で確かな自己主張をしていた。
 
「あっ…あぁ…! お前の、凄く…熱くて、イイっ…」
 
「くっ…お前の中だってキツく絞まって…焼けるように、熱いぞ…」
 
「やっ…バカァ…言う、なよぉ…」
 
 泣き声混じりに克哉は甘く懇願していくが、眼鏡は意地悪げに
微笑みながら言い放った。
 
「ふっ…くぅ…聞く気は、ないな…」
 
 そう呟きながらも、眼鏡の方も余裕を無くしていた。
 コイツの内部は凄く熱くてキツくて…気持ち良い。
 だからあまりの快楽に彼の方もまた夢中で突き上げて…
快楽を追う方に集中していった。
 
 ガタガタガタ…。
 
 身体を揺すり上げられる度に窓ガラスが大きな音を立てていった。
 
 そのまま互いを揺すりあげる度に脊髄から脳髄に掛けて強烈な
悦楽が駆け抜けていった。
 
「…やっ…ダメっ…だ…! もうっ…」
 
 ついに克哉の方にも限界が訪れて、眼鏡よりも
一足先に達していく。
 窓ガラスに熱い白濁を飛び散らしていくのと同時に、内部の男の性器を
キツく締め付けていった。
 
「くぅ…!」
 
 かなり余裕なさげに唇を噛み締めながら眼鏡の方も勢い良く、
熱い精を解放していった。
 
「ん…ハァ…」
 
 克哉は悩ましげな声を漏らしていきながら、相手の欲望を享受していく。
 
 ドクドクドクドク…。
 
 繋がっている場所と肌が重なりあっている部位からお互いの
忙しない鼓動が伝わってきて妙に一体感を覚えていった。
 
(…この瞬間は…好き、だな…)
 
 抱かれている間は時に息が苦しくて辛い時もあるけれど…そういう時の
事後ほど、終わった後の余韻が満たされていて、心地好くて…。
 
(…悔しいけど、すでに癖になっているもんな…)
 
 はあ、と深い溜め息を突いていきながらガラスに戸に体重を預けていくと
克哉はその場に崩れ落ちていった。
 腰から下がまったく力が入らない。
 そのおかげでみっともなく尻餅を突いていくと眼鏡はそっと呟いていった。
 
「時間があれば介抱してやっても良かったが…残念ながら、時間だ。
だが…充分に充たされたぞ。やはりお前は美味しいな…」
 
「バ…カ! 朝から一体何を言い出すんだよ! 本当に、お前…信じられない!」
 
「だが、こんな男と挙式して一緒に暮らす事を受け入れたのは…お前だろう?」
 
「うっ…それは、そうだけど…」
 
 克哉が困って言葉に詰まっていくと同時に眼鏡は傍らに跪き、その唇に
触れるだけのキスを落としていった。
 
「じゃあ…そろそろ俺は行くぞ。帰って来るまで良い子で待っているんだぞ…?」
 
「…うん」
 
 そうして克哉が小さく頷き返していくと…眼鏡は満足そうに
微笑みながら立ち上がっていく。
 
 本音ならお互いもう少し一緒に甘く過ごしたい。
 けれど自分達はこうして結婚して共に生活している。
  働きに出て日々の糧を稼ぎに出るのは夫としては当然の事だ。
 
(…名残惜しい気持ちはあるがな…)
 
 そんな事を考えながら、眼鏡は相手の瞳を覗き込み、
小声で尋ねていった。
 
「いってらっしゃいは…言ってくれないのか…?」
 
「えっ…あっ…うん…」
 
 そういわれると克哉はハッとなって相手の首元に両腕を回して
恥ずかしそうに告げていく。
 
―いってらっしゃい、『俺』…
 
 克哉は照れくさそうな様子で…毎朝の儀式をそっと本日も行っていく。
 そうして自分の可愛い奥さんに見送りのキスを贈られた眼鏡は…
その一日をとても充実した気持ちで過ごしたのであった―
 
   ―あんな奴なんて、知らない!

 克哉は、期待した分だけ怒りを覚えてしまっていた。
 感情に任せて、外に飛び出そうと玄関を目指していたその時、
濃厚なミルクの香りが不意に鼻に付いていく。

(ミルクの香り…?)

 その疑問が、克哉の足を止めさせていく。
 どうやらその香りの元は、バスルームからのようだった。
 
「何でこんな匂いが…?」

 本当は一旦、頭を冷やすために外に向かいたかったが…好奇心に
駆られて克哉はつい、洗面所を通って浴室へと足を向けてしまっていた。
 その時、目の前に広がっている光景につい呆気に取られてしまった。

「うわっ! これは一体…!」

 大きめに作られた浴槽には、溢れんばかりの真っ白な泡が
モコモコと湧き上がっていた。
 基本的に克哉も、夫となる眼鏡もシャワー党で…普段はバスタブに
お湯を張る事すら殆どないから、目の前の光景が信じられなかった。
 何故、いつの間にお湯が張られて…しかもこんな泡ばかりの状態になって
いるのか心当たりがまったくなかっただけに、克哉はその場に立ち止まって
混乱していた。

(何でこんな泡風呂が…? 午前中に掃除した時にはこんなのは
絶対になかった筈だぞ…?)

 しかも湯気の立ち昇り具合から見て、用意されてから一時間も
立っていなさそうな感じだった。
 その時、さっき夕食の準備をしていた時…もう一人の自分が先に
シャワーを浴びた事を思い出した。

「まさか…? うわわっ…!」

 克哉がその場に立ち止まって、考え込んでいた間に…気づかない内に
後ろに眼鏡が立っていたらしい。
 背後からすっぽりと包み込まれるような体制で抱きすくめられて、一瞬
克哉は身体を硬くしていった。

「そんな大声で騒ぐな。風呂場中に響くだろうが…」

「無茶、言うなよ…。いきなり浴槽がこんな事になっていたら…
驚いたって当然だろう?」

「…そんなに、俺がこれを用意しておいた事が驚く事か?」

「うん、かなり…。だってオレもお前も…シャワー党で、滅多に湯船なんて
入らないじゃないか…」

 だんだんと声が小さく、ボソボソという感じで答えていくと…ふいに首筋に
熱い舌先を這わされて、ゾワっとした感覚が走り抜けていった。

「ひゃう…!」

「たまには…お前と一緒に風呂に入るのも悪くないと思ってな…用意しておいた。
あの男がどうぞ~と寄越して来た代物だ…試してみるか?」

「えっ…? あの男って誰、だよ…?」

「…俺達の結婚式に立ち会った奴だ」

 即答されて、脳裏に浮かんだのはMr.Rだった。
 確かにその条件に該当するのは…彼しか存在しない。
 あの運命の日、問答無用で拉致されて…連れていかれた教会で自分達は…
その狂乱的な、淫靡な一夜の記憶が蘇ると同時に…嫌でも自分の肌がゾワゾワと
粟立つのが判った。

(…あの日を、思い出したせいで…身体、が…熱くなっている…)

 湯気が立ち昇っている浴槽にいるだけでもじっとりと身体が汗ばんでくるのに、
頭の中に…余りに乱されまくった夜の記憶が再生されて、身体の奥から
ジワリ…と熱が競り上がって来ていた。
 あの夜に、自分は儀式をした。
 …そして、もう一人の自分の情熱を身の奥に受けて…交わって、そして…。

「…ねえ、『俺』…一つ、聞いて良いかな…?」

「…何だ?」

 相手の腕の中に抱きしめられて、背を向けた状態で…問いかけていく。
 今の自分達は、結ばれ…挙式して、こうして一緒に暮らしている。
 けれど、結婚している間柄ならばどうして…自分達には、その証を
身に着ける事がないままなのだろう。
 その疑問が…膨れ上がって、克哉を突き動かしていく。

「…オレ達、結婚したんだよね…? それならどうして、指輪がオレ達には
ないのかな…?」

 あんな風に、自分を抱いて刻み付けた癖に。
 あの夜から、一夜も欠かさずに自分の最奥に…想いの証を注ぎ込み続けて
いる癖に…所有の痕を必ずつけて、痕跡を残しまくっている癖に…。
 自分達は、婚約指輪も結婚指輪もつけていなかった。
 一瞬だけ、誓いの言葉を交し合って深く口付けた記憶が蘇っていく。
 あの時から、不思議だった。
 あんな儀式をした癖に…どうして、指輪が用意されていなかったのだろうかと―

「それについての答えは、俺達の初夜の時に説明した筈だ…。最初の三ヶ月が
過ぎる日まで…お前には選択の余地が残されていると。
 お前が代価を払って、俺と生きる道を選択するか…この生活を終わらせて
元の生活に戻るか。いわば今は…お試し期間に過ぎない。
 お前が…三ヶ月後に、それでも代価を払って…俺と生きる事を選択したなら
その時は…必ず、贈ってやるさ…」

「…本当、に…」

「あぁ、俺を…信じろ」

 その声は力強くて、頼もしくて…聞いているだけでほっと出来た。
 相手の手が、こちらの顎に伸ばされていく。
 静かな仕草で、後ろに振り向くように促されて…克哉は素直にそれに
応えていった。

「うん…信じる、よ…」

 嬉しそうな、そんな表情を浮かべてそっと目を伏せていく。
 そして唇がそっと重ねられて、啄ばむように口付けを落とされる。
 幸せ、という感情が…緩やかに克哉の胸を満たしていった。
 そして…ようやく克哉が瞳を開いていくと、さっき割った筈の眼鏡を
平然と掛けて微笑んでいるもう一人の自分の顔があった。

(あれ…?)

 その瞬間、心底疑問を覚えていく。
 …さっき、パリィィィィンと盛大な音を立ててこの銀縁眼鏡は割れて
いた筈ではなかっただろうか?
 もう一人の自分のこんな顔を見れるのは純粋に嬉しい。
 優しい穏やかな表情を浮かべているのはレアな事態だから、本当なら
喜ぶべき事なのに…どうしてもムクムクと湧き上がってくる疑問に、
克哉は抗えなかった。

「…あの、眼鏡…大丈夫だったの…?」

「あぁ、これか? さっきお前が俺のプレゼントを顔面に勢い良く投げつけてくれた
おかげで見事にひび割れたぞ。すぐに復元したが」

「…はぁ?」

 今、サラリととんでもない発言が飛び出したような気がして…克哉が
瞠目していくと…更にありえない説明が続いていった。

「…流石あの男がくれた眼鏡だな。手元から離しても自動的に戻ってくるだけじゃ
なくて勝手に再生する能力まであるとは…。俺も目の前で、ひび割れた眼鏡が
勝手に再生する現場を見た時は本気で驚いたものだぞ。まあ…あの男に
絡んでいるのなら、何が起こっても不思議ではないがな…」

「はぁぁぁ~?」

 一体、それはどんな怪奇現象だというのだろうか?
 とんでもない説明を受けて、克哉がアタフタしていくと…いつの間にか
眼鏡の手が克哉の着衣を脱がすように蠢き始めていた。

「って…何をどさくさに紛れて脱がしているんだよ!」

「…せっかくこんな見事な泡風呂を用意したんだ。一緒に堪能しようじゃ
ないか…たまにはベッド以外の所で楽しむのもオツだからな…」

「…っ! お前、ここでエッチな事するの前提の言い回しをしてないか…?」

「…何を今更…。当然の事だろうが。自分の伴侶と二人で一緒に風呂に
入っていて手を出さないでいるなんて真似を、俺がやると思うか?」

「そういう事を堂々と言い放つなよっ! 聞いているこっちが心底恥ずかしく
なるだろー!」

 浴室中に、克哉の盛大な叫び声が響き渡り続けていたが…眼鏡の手は
一層大胆さを増すばかりで、こちらが必死にもがいて抵抗しているにも関わらず
スルスルと器用に衣服を脱がされていってしまう。
 その手腕の見事さは一体、何だというのだろうか?

「うわっ…! や、待って…!」

 完全に衣類を脱がされて、覆うものが全て取り払われる。
 その状態でいやらしく相手の掌が、こちらの敏感な場所ばかりに這わされるのを
感じて、克哉の胸の突起はすでに硬く反応し始めていた。

「…待つ気は、ないな…。俺はずっと…愉しみに待っていたんだからな…?」

 そうして、眼鏡は強気に微笑みながら…シャワーのコックを回して、克哉の
頭の方からお湯を被せていく。

「わわっ…!」

 こちらが驚いて身を竦ませている間に、軽く突き飛ばされてタイルの上に尻餅を
ついていく格好にさせられた。
 その間に、眼鏡は目の前で衣類を脱ぎ去って…洗面所の方へと勢い良く自らの
衣類を放っていく。
 目の前の相手の性器は、すでに臨戦態勢で…思わず、それが視界に飛び込んできて
怯みそうになった。
 なのに、目を逸らすことが出来ない。
 食い入るように…つい、その猛り切ったものを見つめてしまい…その間に
相手は高らかに宣言していく。

「お前を、抱くぞ…」

「あっ…」

 その声が、浴槽中に響き渡って妙に甘く耳に届いていった。
 同時に、ゴクンと息を呑んで…顔を真っ赤に染め上げながら…克哉は
頷いてしまった。

「…判った…」

 そう、観念して克哉が呟いた瞬間…心底愉しそうに、眼鏡は笑みを
刻んでみせたのだった―

 
 もう一人の自分がシャワーを浴びている十分程度の時間に
克哉は夕飯の支度を全部整えてた。
 眼鏡が出てきた頃にはホカホカと暖かそうな湯気が立っている
食卓が用意されていた。
 他愛ない会話をしながら夕食を終えていく。
 そして後片付けをしてから克哉もまたリビングに移動していった。
 革製のソファの上に腰を掛けているもう一人の自分の髪が濡れているのを見て、
克哉はふと気付いていく。
 
(…そういえば今日は、日中にシャワーを浴び忘れたな…)
 
 …結婚してから克哉は朝と夕方近く、一日二回シャワーを浴びるのが
習慣になっていた。
 毎晩抱かれているのでお互いの汗と体液でベタベタになっているので朝、
眼鏡が出勤した後のシャワーは必須だ。
 けれど夕方のシャワーの方は日中、家事や買い物で動き回っていると何となく
汗ばむ時もあるので、こちらは克哉の任意で入っていた。
 
(…こいつはまず、毎日のようにオレを抱くからな…)
 
 一緒に暮らすようになって一ヶ月程度が経過しているが、今の所その間に…
眼鏡に克哉が抱かれなかった日は一日もなかった。
 人の身体の事を見飽きているとか昔、言っていた癖に毎晩飽きもせずに
相手に仕掛けられて…翻弄され続けている。
 TVを見ているもう一人の自分の横顔をチラリ、と眺めていくと自然に
鼓動は忙しいものへと変わっていく。
 
―ドキドキしているのが自分でも判ってしまっていたたまれない
気分になっていた
 
(…うわっ! 静まれ、オレの心臓…!)
 
真っ赤になりながらとっさに自らの心臓を片手で押さえる仕草を
していきながら、克哉はそっと相手の隣に腰を掛けて行った。
 
「…やっと来たか」
 
「わわっ…!」
 
 すると、すぐにさも当然とばかりに眼鏡の腕が克哉の背中に回されて、
強い力で引き寄せられていった。
 相手の身体に密着する体制になって余計に克哉の心臓の音は
激しくなっていく。
もう一人の自分にそれを悟られてしまうのは恥ずかしくて仕方がないのに、
克哉の意思に反して胸元から早鐘は刻まれていた。
どうにか相手から意識を逸らそうと、TVから流れているニュースに
視線を向けていく。
 
「…明日は雨みたいだね。傘を忘れないでね」
 
「あぁ、当然だ。そんなヘマをしない為に…今、こうして天気予報を
見ているんだからな…」
 
それがさも当然だと言わんばかりの自信に満ち溢れた口調で
眼鏡は答えていく。
 
「…ん、そうだよね」
 
はにかむように微笑みながら、克哉は頷いていく。
そうしている間に眼鏡の手は頭の方に伸ばされて穏やかな仕草で、
そっと髪をなぜられていった。
その手付きから、ジワリと優しさが伝わってくるようで心地が良い。
ついうっとりとなりながらそれを受け入れて、克哉の方から静かに…
相手の方ヘともたれ掛かっていった。
 
(…あったかいな…『俺』の身体…)
 
そんな事をしみじみと実感しながら目を伏せていくと、唐突にもう一人の
自分から声をかけられていく。
 
「…さっきも言ったと思うが、今日はお前に贈り物がある。…これだ、受け取れ」
 
「…あ、ありがとう。開けても良いかな…?」
 
「…当然だ。開けないでしまい込まれても意味がないからな…」
 
こんな時でも、もう一人の自分の物言いは相変わらず横柄そのものだ。
だが今の克哉はその瞳の奥に優しいものを感じとっているから、相手の偉そうな
態度にも昔のようにムッとすることはなかった。
 
(…何だろう…? 箱の大きさからして、オレが期待していた物では
なさそうな感じだけど…)
 
…本当は贈り物を貰ったのなら、少しぐらいは嬉しそうな顔を浮かべた方が
良い事ぐらい判っていた。
けれどあの日から克哉が心の奥底で求めていた物じゃないと…箱のサイズの
時点で明らかだったので、克哉はつい失望してしまっていた。
大きさ的に、ハンカチやネクタイなどが収まっている大きさぐらいた。
ゆっくりと包装紙を解いて、箱の蓋を開けていく。
 
―その中身を確認した途端…、克哉はその場で硬直していった。
 
「こ、これって…?」
 
その品はあまりに克哉の予想の範疇を越えていたので、まともな
リアクションがとれなかった。
見ているだけで恥ずかしくていたたまれなくなるような品だった。
だが人間、一定の感情以上を越えると赤くなるよりも蒼白に近くなるらしい。
今の克哉はまさにその状態だった。
…こんなマグマが煮えたぎっているような激情を覚えたのは久しぶりだった。
 
「気にいったか…?」
 
それなのに目の前のこの男は平然と笑みを浮かべながら問いかけてきた。
克哉にはその神経が信じられなかった。
…男がこんな物を貰っても、いや…女性相手だったとしても絶対に
喜ぶ事はないだろう代物だ。
 
「お、お前って…」
 
一瞬でもこの男相手に期待した自分こそ馬鹿だったのだろう。
そう自覚した瞬間、克哉の身体はワナワナと大きく震えて…絶叫していった。
 
「…ほんっとその神経が信じられない! こんな物を貰って喜べる筈が
ないだろ~!バカ!」
 
そう叫ぶと同時に箱ごと勢い良く眼鏡の顔面に投げつけていった。
 
パリィィィン!
 
その瞬間、部屋中にガラスが割れた音が響き渡る。
だが今の克哉には知った事ではなかった。
 
「オレは絶対にそんなのは身につけないし、いらないからな!」
 
そう威勢良く言い放っていくと克哉は駆け足でその場から
立ち去っていく。
リビングのソファの上には克哉の強烈な一撃を受けてうつ伏せに
突っ伏した眼鏡とプレゼントが残されていく。
 
―克哉をそこまで怒らせた贈り物の中身…それは真っ黒な大胆なデザインの
Tバックの下着だった―
 
 ※リセット、次の話から救いになりますが…現在の自分の心境がそこから
離れまくっているので、一旦リハビリに2~4話ぐらいの長さでエロを書かせて
頂きます。欲望に正直になっておきます(自分のテンション上げの為)
 …ついでに29、30は長くなりそうなので週末に回させて頂きますね。
 その点ご了承下さい(ペコリ)
 おバカ&激アマな話ですのでその点を踏まえた上で続きをクリック宜しく(笑)

―はぁ…ん

 まどろみに落ちて、体中の皮膚が粟立つような感覚を覚えて、
悩ましいを出しながらゆっくりと克哉は意識を覚醒させていく。
 うっすらと目を開いていくと、見慣れたシンプルな内装の寝室が
広がっている。
 そして、意識を覚醒していくと…裸のまま、ベッドの柵の部分に
両手首を拘束された状態で、もう一人の自分に組み敷かれているという
異常なシチュエーションに出くわしていた。

「…やっと起きたか。…頭ははっきりとしているか、『オレ』…?」

「えっ…何だよ。こ、れ…?」

 目覚める早々、とんでもない状況に陥っていて克哉は狼狽したような
表情を浮かべていく。
 しかも起きたばかりで全然頭が働いていなくて、何故こんな状況に
陥ったのかまったく繋がらない。

「…お前が今夜は、夕食も風呂の支度も何もしないで…眠りこけて
いた事に対するお仕置きだな…。まあ、毎晩遅くまで抱いているから
日中に疲れて眠ってしまうのは仕方ないと割り切ってやるが…妻の
立場として、夫が帰って来るまで昼寝をしてしまうのはどうかと思うぞ…?」

 眼鏡の口調は、どこか優しいが…口元に湛えている笑みがあまりに
怪しすぎた。
 はっきりいうと、口調が優しい分だけ余計に怖いものを感じる。
 それでようやく、克哉は思い出していく。
 問答無用で挙式してこのマンションで一緒に暮らすようになってから
すでに二ヶ月余りが経過していた。
 そして本日の日中は…そろそろ、家中の細かい部分の汚れが目立って
来た事に気づいて、はりきって大掃除をしたのだ。

 真面目な性分の為か、一度こだわって掃除をし始めると夢中に
なってしまい朝十時から三時ぐらいまでぶっ続けで作業を続けて。
 一区切りつけて終わった頃に…疲れてしまったので、ついリビングの
ソファで横になったら…。

「あっ…」

 チラリ、と寝室の壁に掛けられている時計を眺めていくと…時刻は
すでに午後八時を回っていた。
 眼鏡が帰宅する時刻は、19時…今から一時間近く前だ。
 夜遅くまで激しく抱かれて、日中大掃除なんてしたら4~5時間ぐらい
爆睡してしまうのは仕方ないかも知れない。
 けれど、あまり口に出して褒めてはくれないけれど…眼鏡はこちらが
暖かい夕食を毎日用意して待っている事を喜んでくれているのは確かだった。

「あ、あの…御免。今日はちょっと本腰を入れて大掃除をしていたら
夢中になっちゃって…その…」

「言い訳は良い。夕食も簡単なものを自力で作って満たしておいたからな…。
代わりに、今夜はお仕置きという名目をつけていつもと違った趣向で楽しませて
貰おうか…」

「えっ…何を、あっ…」

 眼鏡が強気に微笑むと同時に深く唇を塞がれて、同時に胸の突起を
両手で執拗に弄られていった。
 熱い舌先がこちらの口腔全体を撫でくり回すように蠢き、こちらの舌を
甘く激しく絡ませていく。

 クチュ…グチュ。ピチャ…ヌチャ…

 互いの唾液が混ざり合ういやらしい水音が頭の芯に響き渡りながら
早くも硬くしこり始めた突起を執拗に責められていく。
 たったそれだけの刺激で…克哉の下肢は早くも反応し始めて…ゆっくりと
性器が勃ち上がり始める。
 唇が離れると、ツウっと糸が伝い始める。
 眼鏡が舌先でそれを切る仕草をしているのが、妙に艶かしく感じられた。

「くくっ…相変わらずイイ感度をしているな…。もうこんなに元気に、硬く
張り詰めているみたいじゃないか…」

「や、だ…バカ、言うなよ…」

 相手は服をしっかりと着込んでいる状態で、自分だけが全裸で拘束されて
一方的に快楽を与えられているなんて、恥ずかしくて仕方がない。
 なのに…幾らもがいて解こうと試みても、白い布での戒めからは
解放される事はなかった。

「あ、んっ…」

 眼鏡の唇がゆっくりと降下してきて、胸の突起をそっと口に含んでいく。
 コロコロと巧みに舌先で転がされていくとそれだけで気が狂いそうになる程の
快楽が走っていく。
 その度に克哉のペニスは痛いぐらいに張り詰めて、先走りを滲ませていく。
 
「…随分と元気になっているじゃないか。もう先の方から…いやらしい汁が
溢れ始めているぞ…?」

「言う、なよ…はっ…あ…や、見るな…」

 いきり立ったペニスは触れられる事なく、代わりに熱い眼差しを浴びせられる。
 触れられていない筈なのに、それで一層興奮が高まって収集がつかない程の
甘い痺れが背筋を走り抜けていった。

「…これは、お仕置きだと言っただろう…? これぐらいで止めてやる程…
俺は甘くはないぞ…?」

(うわ~! もう一人の『俺』…心底楽しそうだ…!)

 その瞬間の眼鏡の心底愉しそうな笑みを見て、克哉は心の中で叫んでいった。
 胸全体に赤いキスマークをつけられながら、時折…尖りきった突起を歯でカリっと
甘噛みされて、耐えられないとばかりに克哉が腰をくねらせていく。
 いつの間にか相手の身体が、こちらの足を割って覆い被さる体制に変えられた
おかげで…相手の腹部が、ペニスに当たって身動きする度に擦られていく。
 それが余計にじれったくて、もどかしくて…もっと強い刺激を求めるように
克哉は何度も腰を捩じらせていった。

「やっ…そんな、焦らすような真似…しないで、くれよ…」
 
 胸の突起と、ペニスへの刺激だけで…自分の蕾はいやらしく
収縮を繰り返して息づき始めている。
 二ヶ月間、散々抱かれ続けて快楽を覚えこまされた身体は…相手に
少し触れられるだけで反応するぐらいに淫らなものへと変わっていた。
 それなのに、こんな風に焦らすような行為を続けられるのは一種の
拷問に近かった。

(あぁ…だから、お仕置きなんだろうけど…)

 半ば諦めながら、潤んだ瞳で克哉は眼鏡を見つめていく。

「そんな目をしても駄目だ…もっと、お前を焦らしてトコトンまで
おかしくさせてやる…」

「ひゃう…!」

 キュっとペニスを握りこまれる程度の刺激だけで、もう気が狂いそうに
なっている。
 早く相手の熱いのが欲しくて堪らない。
 そう熱望しているにも関わらず、もっとも求めているものが与えられない状況を
打破すべく、上目遣いで相手を見つめて訴えていった。
 それから、荒く忙しい呼吸を繰り返していきながら…懸命に相手の耳元に
唇を寄せて、殺し文句を囁いていった。

「やっ…これ、以上…焦らさない、で…! お前が、欲しくて…堪らない、
のに…意地悪、するなよぉ…!」

「っ…!」

 その時、相手を煽るべく…克哉は懸命に、相手の耳穴に舌を差し入れて
クチュリ…と水音を立ててから、その耳朶を甘噛みしていった。
 
―お前が、一刻も早く…欲しいんだ…

 確かに、夕食の準備も何もしないで昼寝して眠りこけた自分も悪かった
かも知れない。
 だからこんな風に「お仕置き」という名目の意地悪をされてしまったというのは
克哉も充分に自覚していた。
 だが、もう…そんなのどうでも良くなるぐらいに、身体が熱くなって堪らなく
なってしまっていた。
 早く、この男の熱いモノが欲しくて身体の奥が疼いている。
 だから余裕がない声で、克哉はただ…求める言葉を紡いでいった。

「くっ…お前、煽るのが上手くなったものだな…」

 その一言で、眼鏡もまた…余裕なさそうな表情を浮かべていく。
 まだまだ焦らして、相手を追い詰めるつもりだったのに…今の殺し文句を
囁かれたせいで…服の下で己の欲望が痛いぐらいに張り詰め始めていった。
 余裕しゃくしゃくだった眼鏡の表情も、切羽詰ったものとなり…荒い呼吸を
繰り返しながら、ズボンのフロント部分を下ろして、熱い性器を露出させていく。
 そのまま、トロリ…と先端部分にたっぷりとローションを落として滑りを
良くしていくと…相手の蕾に宛がい、一気に貫き始めていった。

「そん、なの…知らない…! オレはただ、本心を…言った、だけだよ…」

「だから、それが…俺を煽っているんだと、自覚しろ…バカが…」

 熱っぽい眼差しで、顔を真っ赤に火照らせて淫蕩な表情を浮かべている
克哉を見つめていくと…噛み付くようなキスを落としていく。
 その時、スルリ…と両手を戒めていた白い布を解いて、克哉の両腕を
解放していった。
 
「あぁっ…」

 克哉はすかさず、相手の背中に腕を回してしがみついていく。
 眼鏡のモノを深く受け入れながら…強くしがみつくことで、克哉は
満たされたような笑みを浮かべていった。
 ただ、自分の中に存在しているというだけで満たされて、感じていく。
 その表情を見て…苦笑めいた笑みを浮かべながら眼鏡は呟いていった。

「…まったく、これではこれ以上はお仕置きにならないな…」

「ん、凄く…気持ち良い…だけだね、これだと…」

 甘い睦言を紡ぎながら、克哉の方から相手の方へと顔を寄せて
何度も啄ばむようなキスを繰り返していく。
 それで機嫌が直ったのか…柔らかく微笑みながら、眼鏡はそっと
告げていった。

「…まあ、良い。今夜はこの程度で止めておいてやる…後は、ただ
俺だけを感じ続けろ…」

 そう告げて、激しい抽送が開始されて…克哉は翻弄されていった。
 そして、克哉が意識を失うまで眼鏡は夢中で彼を突き上げ、抱き続けて
いったのだった―



 

 
 

 本日はオンリーの日ですね!! 
 今回の置き土産は、克克新婚ネタ7 ミラープレイ編です。
 克克が大丈夫!という方だけ続きを…をクリックして読んで
下さるようにお願い致します。
 では、本日はオンリー当日です。
 皆様、どうか楽しい一日を過ごして下さい。
 
 行けない方は…置き土産を見て、少しでも楽しんで
頂けば幸いですv

  本日はリセット22の予定でしたが…どうも最初に書いたのが
しっくりとこなかったので一日時間貰います。
 代わりに即興で書いた克克新婚ネタを掲載しておきます。 
 ご了承下さいませ(ペコリ)

 興味がある、読みたいという方だけ「つづきを読む」をクリックして
お読み下さいませ~。
  ―それは挙式してから一ヶ月半が経過した頃の話だった。

  本日も克哉は、もうじき帰って来る眼鏡の為に…夕食を作ろうと
台所に立っていた。
 白いYシャツに青いジーンズに緑のエプロンを纏っているだけの
姿だったが、今では立派に新妻らしい雰囲気を醸すようになってきた。
 出来るだけ暖かい状態で食べて貰おうと午後七時前後に合わせて
完成するようにしていたのだが、その日は…午後六時を少し過ぎた
ぐらいの時間で玄関のドアが開いたので少し驚いてしまった。

「今、帰ったぞ」

「あ、うん。おかえり…。けど今日はいつもよりも帰って来る時間が
随分と早いね…」

「…本日、やるべき事がまだあったならいつもの時間まで残って
仕事をしていたが…今日は日中にあらかた片づけてしまったからな。
時間の無駄だから帰って来た」

「あ、そうなんだ。…確かにやる事がないなら、残業しても仕方ないしね…」

 強引な挙式後から、もう一人の自分が克哉の代わりにキクチ・マーケーティングに
勤務することになったのだが…話を聞く限りではバリバリと働いて今では営業
第八課は社内でも花形の部署になっているらしかった。
 そこら辺は流石、有能なもう一人の自分というか…克哉としてはそういう話を聞くと
誇らしい気分になるのだが、気恥ずかしくて面向かって褒めた事はなかった。
 大抵彼は定時より30分から一時間前後残って、翌日の準備を完璧に
こなしてから退社する。
 だから規則正しく、19時ぴったりには帰って来ていたのだが…。

(まあ、確かにそういう日もあるよな…)

 そう納得していきながら、再びキッチンに意識を戻して夕食作成作業に
戻ろうとしていった。
 今夜のメインであるシチューの作成にそろそろ掛からないと、19時まで
には間に合わない。
 すでに材料の下ごしらえは出来ている。
 鶏肉とニンジン、タマネギ、ジャガイモなどの野菜は一口大に切って炒めた
後にコンソメを入れて煮込んである。
 それにこれからホワイトソースを自家製で作って、合わせれば美味しい
シチューが完成する筈…だった。

「あ、もうちょっと待ってて…今から急いで夕食の準備をするから」

「別に急がなくて良いぞ。いつもの時間帯でな」

「ありがとう。…その言葉に甘えさせて貰うね」

 ニッコリと笑いながら、克哉は小鍋にバターを落として…熱しに
掛かっていく。
 そしてバターが溶けていくと同時に振るいに掛けながら小麦粉を
入れて、牛乳を少しずつ入れて延ばしていく。
 これを7~8回繰り返して、塩、胡椒などを入れて味を整えて下準備した
材料に混ぜ合わせて10~20分ほど煮れば完成する筈、だった。

「よし…ここがシチューの要だな」

 ホワイトルーは焦げやすく、注意しないとすぐに焦げた色がルーに
ついてしまう。
 だから出来る限り丁寧に手早くやらないといけなかった。
 ルー作りに意識を集中し、その動作を3~4回行った時点で…すぐ
傍らで克哉の動作を見守っていた眼鏡がいきなり、背後に立って…
背後から抱き締めて来た。

「うわっ…! 俺っ…?」

「…今日、早く帰って来たのは気まぐれだったが悪くなかったな。
必死になって俺の為に夕食を作っている姿は…なかなか色っぽくて
そそるぞ?」

「な、何言っているんだよ! そそるとかそそらないとか…そういう
問題じゃないだろっ! 今、ルー作りしているんだからこんな時に
チョッカイ掛けてくるなよ!」

 必死になって克哉が訴えていくが、眼鏡の方はどこ吹く風と言った
風であった。
 そうしている間に…男の手は克哉の前面部に伸びて来て、胸と
腹部の辺りを彷徨い始めていく。

「うわっ…! ちょっと待ってってば! 今、オレ…火を使っている
んだから、危ないってば…!」

 克哉は相手をとっさに振り払おうとしたが、小鍋に火を使っている
状態で迂闊に動いたら、相手も傷つけてしまうかも知れない。
 そう思って、抵抗を出来なかった。

「…意識を集中すれば、それぐらいはどうにかなるだろう…? お前の
俺への愛情が確認出来る瞬間だな…今は…?」

 クク、と喉の奥で笑いながら…いきなり胸の突起を両手で摘まれて、
ビクリ…と身体が震えていった。

「わっ…! やだっ…! 本気でこんな時にオレに触るな~! バカ~!」

 こんな状況でルー作りになんて集中出来る訳がない!
 そう思って必死になって叫んでいくが、そんな姿も眼鏡の嗜虐心を
刺激していくだけだった。 
 そうしている間に眼鏡の手は執拗さを増して、更に大胆になっていく。
片手を克哉の下肢に延ばして、直接握り込んで来る。

「ひゃっ…!」

 もうそんな事をされたら、ルー作りに集中出来る訳がない。
 相手の方を振り返ろうとした瞬間、背後から唇を塞がれていった。

「んっ…うっ…!」

 強引な舌先が克哉の口腔を強引に犯し、グチャグチャと淫靡な水音を
脳裏に響かせていく。
 そうしている間に…ルーから、焦げた匂いが…。

「…焦げたな」

 唇を解放された瞬間、眼鏡がボソリと呟いていくと…克哉はつい眼鏡を
思いっきり突き飛ばしながら叫んでいった。

「あぁぁぁっ~! 人がせっかく作っていたのにぃ~!」

「修行が足らないな。これしきのことで集中出来なくなるとは…」

 そう眼鏡がのたまった瞬間、克哉の右ストレートが炸裂していった。

 ドカッ!

 その瞬間、眼鏡のみぞおちに思いっきり克哉の拳がめり込んでいった。
 珍しく、克哉の攻撃がクリーンヒットした状態だった。

「ぐはっ!」

「…本気で、お前は~! 一体何考えているんだよ! 材料が無駄に
なったじゃないか!」

「…お前がそんなに魅力的だから悪い。台所でエプロンしていて動き回って
いる姿を見たら、何もしないでいられる訳がないだろう?」

「どうせ夜にオレに絶対にチョッカイ掛けてくるんだから、その間ぐらい
大人しくしておけよ! もう…本当に、バカッ!」

 そう言いながらうっすらと涙を浮かべている姿はかなりの色気が
漂っているのだが…そんな事をまともに口にしたら、もう一撃ぐらい
確実に喰らいそうな気配であった。

(そういう姿も非常にそそるんだがな…)

 本音言うとこのままキッチンで押し倒して犯してやろうと思ったが…
そうすれば今夜はまともな夕食を喰いっぱぐれる恐れがある。
 何だかんだ言いつつ、帰宅後に暖かい克哉の手料理を食べるのは
眼鏡のささやかな幸せな瞬間でもある訳で。
 その瞬間、克哉はこちらに対して最大の殺し文句を言ってきた。

「…あんまり邪魔されると、その…お前にあったかくて、美味しい内に…
ご飯、食べて貰えなくなるから…」

 頬を赤く染めながら、そんな言葉を弱々しく呟かれたら…これ以上
邪魔をするのが忍びなくなってしまう。
 今度は、眼鏡が降参をする番だった。

「…仕方ないな。俺も…お前の料理を暖かいうちに食べたい。だから…
これ以上のチョッカイは、止めておいてやる…」

「…そうしてくれると、助かる。…その間、シャワーでも浴びていて。
その間に、用意しておくから…」

 そう言いながら、克哉が再びホワイトルー作りに取り掛かろうとした瞬間、
背後から、頬に小さくキスを落とされて囁かれていった。

―あぁ、お前の今夜の料理…とても楽しみにしているぞ。俺の可愛い…
奥さんのな…?

 そう告げられて、耳朶にもキスを落とされた瞬間…克哉の顔が火が
灯ったように真っ赤に染め上げられていく。

「ば、バカ…! お前って本当に、信じられないっ!」

 克哉が反撃をしようとした時にはヒラリと眼鏡の姿は離れて、
バスルームの方へと向かってしまっていた。
 その背中を見送りながら、克哉は小さくぼやいていく。

「…もう、本当にあいつは…どこまで、オレを驚かせて…振り回して
いけば気が済むんだろう…」

 困ったように微笑みながらも、克哉は目の前の事に改めて取り掛かり
始めていく。
 
―今夜、あいつに美味しいシチューを食べて喜んで貰いたいから

 そう気持ちを込めながら、再び夕食作りに取り掛かっていく。
 その克哉の姿は…少し楽しげで、嬉しそうでもあった―
※ 某克克チャット行ってから、どうも新婚ネタが幾つも浮かんでいて
勿体無いので週に一回ぐらいのペースで連載の合間に挟んでいくと
思います。
 どうぞご了承下さい。
 明日は普通に通常の連載物を書きます(ペコリ)

 克克新婚ネタ3 爪切り編 『…バカ』

 ある日曜日の昼下がり。
 新居のマンション内での話だった。
 克哉が昼食の片付けと、洗濯物を干し終えるともう一人の自分が
リビングのソファに腰を掛けながら爪を切っている姿に遭遇していった。

 パチン、パチン…パチン。

 小気味の良い音が、規則正しく聞こえてくる。
 新聞の中に折り込まれているスーパーの特売のチラシを広げながら
爪を切る姿は妙に生活感があって新鮮に感じられた。
 強引な挙式から、一緒に暮らすようになってすでに一ヶ月以上の月日が
経過していた。
 最初の頃は躊躇いや困惑を感じていたが、これだけの時間が流れれば
どれだけ異常な状況でも適応してくるものだ。
 こうやって平和な昼下がりを過ごしていると、何となくほのぼのした
気分になってきた。

パチン、パチン…パチン。

 合理的な性格の眼鏡が、どうしてここまで時間を掛けて爪を切って
いるのが少し不思議で、つい気になって克哉はソファの隣のスペースに
腰を掛けながら問いかけていく。

「…ねえ、『俺』。何で爪切り一つにそんなに丁寧に時間掛けているの?」

 ちなみに克哉の爪きりは、伸びてきたなと思ったら一週間から十日に
一回程度実行に移す程度だ。
 ついでにいうと、あまり時間を掛けず1分前後で終えてしまう。
 だがもう一人の自分はこの時点で5分以上の時間を掛けて実に
丁寧にやっている。
 それが単純に疑問だった。

「…それが夫のたしなみという奴だろう?」

「…どういう事?」

 相手が何故、そんな発言を言い出したのか判らずにキョトンと
していくと…眼鏡はふいに何かを企んでいるような、どこか意地悪い
表情を浮かべていった。

「…判らないか?」

「だから、爪切りがどうして夫のたしなみに繋がるんだよ…?」

 本当に判らないから聞いているのに、相手の含みのある言い方と
笑い方に少しイラっとしていった。
 克哉の様子を見て喉の奥で笑っている様子を見て、ついムっと
なってしまう。
 こちらが拗ねた顔を浮かべていくと…いきなり、耳元に唇を
寄せられて囁かれた。

―キチンと爪の処置をしておかないと…指でお前の中を掻き回したり
する時に、不必要に傷つけてしまうだろう…?

 その一言を聞いた瞬間、カッと克哉は耳まで真っ赤に染めていった。
 生々しく、行為の記憶が頭の中を過ぎって…口をパクパクさせて
いった。
 思いっきり反論したい。
 なのに、あまりの動揺っぷりに克哉はまともな単語を口にする事が
出来なかった。


「な、ななななななっ…」

 昨晩のセックスで、相手の指がこちらの内部を探って…嫌っていう程、
焦らされて煽られた記憶が鮮明に蘇ってしまう。
 こんな真昼間から、Hしている時の事なんて思い出したくないのに…
克哉のそんな意思とは裏腹に、営みの記憶は津波のように押し寄せて来ていた。

「バカッ! どうして耳元でそんな事を囁くんだよ! 死ぬほど…恥ずかしく
なるだろっ!」

 照れ隠しについ手近にあった黄色の中心が軽くくぼんでいるデザインのクッションを
投げつけていったが、それを眼鏡は胸元で受け止めていった。
 それが机の上に置いてあった灰皿なら、それなりのダメージに繋がっていたかも
知れないが基本的に克哉は気弱な生活が災いして、強気の態度に出れない。

「…相変わらず鈍い行動だな。そんなノロノロした動作で投げつけられても…
俺が喰らうと思うか?」

「悪かったな動作がノロくて! ほんっと…お前、信じられない…っ!」

「…そんな顔して、信じられないとか…バカとか言っても、こちらを誘っている
ようにしか見えないぞ?」

「だ、誰がっ…! むぐっ…!」

 気恥ずかしくて一瞬だけ相手の前で俯いていた隙に素早く間合いを詰められて、
強引に顎を捕まれて上を向かされていく。
 そのまま問答無用で唇をキスで塞がれて、ねっとりと時間を掛けながら熱い舌先が
口腔を辿り始めていった。
 最初はジタバタと抵抗の意志を示したが…的確に口腔内の脆弱な場所を
舐め上げられて刺激されていくと…腰が砕けて、力が徐々に入らなくなっていった。

「ん…ふぁ…」

 5分もたっぷりと濃密なキスを施されていくと、もうマトモな思考回路は蕩かされて
崩壊寸前になっていった。
 いつだってこの男はそうだ。
 克哉が幾ら抵抗しようとも、反論しようとも…こうやって快楽で強引にこちらの意思を
封じて思い通りにしてしまう。
 それが少し…悔しかった。

「さて…こちらの爪切りは終わった。次はお前の番だな…」

「えっ…?」

 いきなり、ソファの上に押し倒されて覆い被さられる格好になって呆けた
表情を浮かべていった。
 だがそのままスルリと克哉の腕を掬い取っていくと…その指先に口付けながら
再びとんでもない発言をぶつけられていった。

「…行為の最中、爪が伸びていると…お前が夢中になって俺にしがみついている時に
痛いんだぞ。…まあ、男の勲章と思って黙って大概は受けているがな…」

「っ…!」

 そ、そういえば…確かに快楽に翻弄されて無我夢中になっている時は、相手の
背中に縋り付いてしまっている事が多々あるけれど。
 だ、だからってこんな組み敷かれている状態で…面を向かって言う台詞じゃない
事も確かだった。

「そ、そんなに…痛く…していた、のかな…?」

「あぁ、痛い。ま…こちらも愉しんでいる最中だからその時は特に気にしていないがな。
終わった後は数日痛む時があるぞ…」

「ご、御免…」

 相手にそう言われてしまうと、思わず抵抗の意思が削がれてしまう。
 そんなやりとりをしている間に…眼鏡は爪切りを片手に、パチンパチン…と
丁寧に克哉の爪の手入れを始めていった。

「丁寧に、やってやろう…愛情を込めながら、な…?」

「あっ…んっ…」

 指と指の間を、スルっと撫ぜられていくだけで鈍い快感が走り抜けていく。
 その状態で真摯な表情を浮かべながら、こちらの爪を切っている姿は不覚にも
格好良く映って…不覚にもドキドキした。
 爪を切られている時間は一瞬のようにも、凄く永いようにも感じられていった。
 
「ほら…両手の処置は終わったぞ。さっさと足を出せ…」

「んっ…あっ…」

 カプっと指先を咥えられながらそんな発言をされると、ビクリ…と克哉の肩が
震えていった。
 キスされて、指先とかそういう場所に触れているだけなのに全身が性感帯に
なってしまったかのように過敏に反応していってしまう。

「こら…そんな声を出すな。俺には誘っているようにしか聞こえないぞ…?」

「誘って、いる訳…あっ…」

 そうしている間に体制を変えられていて、眼鏡は少し後方に下がって…ソファの
上に横を向いて足を延ばしている格好の克哉の足先をそっと掬い取っていった。
 そのまま…恭しく足先に口付けられていくと、ペロリと舐め上げられていく。
 その表情も、癪に障ることに非常に様になっていて…ドキドキドキ、と心臓の
鼓動が止まらないままだった。
 眼鏡はその体制のまま、高らかに告げていった。

―ここの処置が終わったら、たっぷりと可愛がってやるよ。楽しみにしていろ…

 強気な笑みを浮かべながら告げられていく。
 素直に頷くのは少し悔しかったけれど…火照り始めた身体は確かにもう一人の
自分を求めていて。
 …とても夜が来るまで我慢出来そうになかった。
 まったく、この男と一緒に暮らすまで自分がこんなに快楽に弱い性質であった
事を自覚した事はなかったのに…。
 他愛無い日常の中でさえも、ドキドキハラハラさせられて。
 おかげで一ヶ月以上、顔を突き合わせて暮らしているにも関わらず一向に
相手に飽きる暇がなかった。

―バカ…

 そう、克哉は短く答えながら…爪切りが終わって再び圧し掛かって来たもう一人の
首元へと両腕を回していったのだった―


 

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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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