鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。
残雪(改) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
―太一の目の前に一瞬だけ儚い笑顔が浮かび、消えていく
言葉を失いながら…青年は憎いはずの男の顔を見つめていく。
愛情のカケラもない蹂躙するだけのセックスが終わり、決別の時が
訪れた時に…そんな顔を見るなんて反則以外の何物でもなかった。
(今の、顔…克哉さん、だよな…どうして、今…何だよ! こいつが
俺の目の前から消える直前に…何で!)
それでも一瞬だけでも、あの人の声を聞けた。
その顔を垣間見ることが出来たことで…太一の目に涙が
浮かんでいく。
(克哉さん…克哉さん…克哉さん…!)
今のキスは、きっと自分が求めている方の克哉からのものだと
確信した瞬間…滂沱のように涙が溢れていく。
涙腺が壊れてしまったかのように、太一は泣き続けた。
そして確かに…それは、もう一人の克哉からのメッセージであり、
想いでもあった。
たった一瞬だけでも、会えたならば…。
あの人からこうして口付けを与えられたならば…この長い年月、
この男に蹂躙され続けても、何でも傍にいた甲斐があった。
そう思おうとした。だが…次に相手の顔を見たその時には…
いつもの眼鏡を掛けた方の克哉が存在していた。
―たったそれだけの事に、太一は再び打ちのめされていく
何も、言えなかった。
あの人から言葉を貰えたなら、自分も届けたかったのに…その暇すら
与えられず、束の間の逢瀬は終わりを迎えた。
お互いの間に重苦しい、沈黙の時間が流れていく。
一瞬だけ見えた優しい瞳は、今は見る影もない。
たった一言で良い。この気持ちを…想いをあの人に伝えたかった。
その一瞬の為に、憎い男の傍に居続けた。
けれど相手からボールは渡されたけれど、こちらから返すことが
出来ないようなものだった。
一方通行のキャッチボール。それでは、太一の心を満たすには
充分ではなかったのだ。
「ど、う…し、て…」
太一が呟いた言葉は精彩もなく、掠れたものだった。
「一言で、良いのに…あの人に、俺…伝えたかったのに…」
「………」
冷たい目で眼鏡が睨みつけてくる。
それでも壊れたスピーカーのように、途切れ途切れに言葉を続けていく。
「…一言で、良いから…あの、人に…好き、だって…ちゃんと…言いたかった。
そうしなきゃ…俺は、この…気持ちに決着を、つけられない…。いつまでも
燻って…克哉さんに、囚われ続ける。そうしなきゃ…諦めることすら、
出来ないんだよ…!」
涙が、ポロポロと溢れていく。
それはこの男の傍にいる間…ずっと心の奥底に秘められていた
克哉への強く熱い想い。
決してこの男に知られたくなかった。意地を張って隠していた本音。
けれど…あの人の面影を一瞬でも見てしまったら、押し殺すことすら
出来なくなって…零れ続けていく。
「…それで、お前は俺を引きとめたつもりか…?」
「…別にお前になんて言ってない…! ただの独り言みたいなもんだって!」
「…なら、お前は俺が目の前にいても…最後まで素通りして、俺自身を
見ないまま…終わりにするというんだな…?」
「へっ…?」
その瞬間、太一は言葉を失った。
相手の顔に浮かんでいる切なげな…今にも泣きそうな顔に、完全に
面食らってしまったからだ。
一年以上一緒にいたが、こんな顔を見たのは初めてでアッケに取られていく。
だが…すぐにいつもの冷徹な表情に戻って、己の銀縁眼鏡を押し上げる
仕草をしていった。
「…俺も独り言を言っただけだ。さっさと忘れろ…。今日は、雪が降ると言う。
せいぜい…身体を冷やさないように気をつけろ…」
「えっ…?」
それは、今まで太一が聞いたことがない類の発言だった。
こちらを気遣う言葉などこの男から一度だって聞いたことはなかった。
なのに…もう、これで最後だというのに…その間際にこんな情を見せるなど
卑怯ではないだろうか。
太一だって、心のどこかで愛している人間と同じ顔をしている存在から
少しぐらい優しくされたいという想いを抱いていた。
なのに、どうしてそれを見せるのが今なのか…本気で文句を言って
やりたかった。
「じゃあな…」
「…待て、よ…!」
男が身支度を整えて、この部屋を出て行こうとする間際…太一は
ベッドから起き上がり、相手にそう呼びかけていく。
だが…相手は振り返ることも、足を止めることもなかった。
「…これ以上、お前に振り回されるのは御免だ…。俺は俺の好きなように
生きる。だからお前も…もう一人の『オレ』に縛られずに生きろ…」
「待てよ! 待てったら!! 克哉! 待てよ!」
初めて、相手を「克哉」と認めて呼びかけていく。
だがそれでも男は振り返らず…部屋を出ていった。
追いかけたかった。だが身体が軋んで、思うように動かなかったので
それは叶わなかった。
部屋のカーペットに這いずり回る格好になって相手を追いかけたが、
結局、間に合わず…太一はその場に崩れていく。
「ちく、しょう…! 何で、最後に…あんな…!」
そう呟きながら、太一はむせび泣いていく。
そしてそれと同じ頃…外には、白い雪がゆっくりと降り始めようと
していたのだった―
したお話。太一×克哉の悲恋です。
1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。
残雪(改) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
―太一の目の前に一瞬だけ儚い笑顔が浮かび、消えていく
言葉を失いながら…青年は憎いはずの男の顔を見つめていく。
愛情のカケラもない蹂躙するだけのセックスが終わり、決別の時が
訪れた時に…そんな顔を見るなんて反則以外の何物でもなかった。
(今の、顔…克哉さん、だよな…どうして、今…何だよ! こいつが
俺の目の前から消える直前に…何で!)
それでも一瞬だけでも、あの人の声を聞けた。
その顔を垣間見ることが出来たことで…太一の目に涙が
浮かんでいく。
(克哉さん…克哉さん…克哉さん…!)
今のキスは、きっと自分が求めている方の克哉からのものだと
確信した瞬間…滂沱のように涙が溢れていく。
涙腺が壊れてしまったかのように、太一は泣き続けた。
そして確かに…それは、もう一人の克哉からのメッセージであり、
想いでもあった。
たった一瞬だけでも、会えたならば…。
あの人からこうして口付けを与えられたならば…この長い年月、
この男に蹂躙され続けても、何でも傍にいた甲斐があった。
そう思おうとした。だが…次に相手の顔を見たその時には…
いつもの眼鏡を掛けた方の克哉が存在していた。
―たったそれだけの事に、太一は再び打ちのめされていく
何も、言えなかった。
あの人から言葉を貰えたなら、自分も届けたかったのに…その暇すら
与えられず、束の間の逢瀬は終わりを迎えた。
お互いの間に重苦しい、沈黙の時間が流れていく。
一瞬だけ見えた優しい瞳は、今は見る影もない。
たった一言で良い。この気持ちを…想いをあの人に伝えたかった。
その一瞬の為に、憎い男の傍に居続けた。
けれど相手からボールは渡されたけれど、こちらから返すことが
出来ないようなものだった。
一方通行のキャッチボール。それでは、太一の心を満たすには
充分ではなかったのだ。
「ど、う…し、て…」
太一が呟いた言葉は精彩もなく、掠れたものだった。
「一言で、良いのに…あの人に、俺…伝えたかったのに…」
「………」
冷たい目で眼鏡が睨みつけてくる。
それでも壊れたスピーカーのように、途切れ途切れに言葉を続けていく。
「…一言で、良いから…あの、人に…好き、だって…ちゃんと…言いたかった。
そうしなきゃ…俺は、この…気持ちに決着を、つけられない…。いつまでも
燻って…克哉さんに、囚われ続ける。そうしなきゃ…諦めることすら、
出来ないんだよ…!」
涙が、ポロポロと溢れていく。
それはこの男の傍にいる間…ずっと心の奥底に秘められていた
克哉への強く熱い想い。
決してこの男に知られたくなかった。意地を張って隠していた本音。
けれど…あの人の面影を一瞬でも見てしまったら、押し殺すことすら
出来なくなって…零れ続けていく。
「…それで、お前は俺を引きとめたつもりか…?」
「…別にお前になんて言ってない…! ただの独り言みたいなもんだって!」
「…なら、お前は俺が目の前にいても…最後まで素通りして、俺自身を
見ないまま…終わりにするというんだな…?」
「へっ…?」
その瞬間、太一は言葉を失った。
相手の顔に浮かんでいる切なげな…今にも泣きそうな顔に、完全に
面食らってしまったからだ。
一年以上一緒にいたが、こんな顔を見たのは初めてでアッケに取られていく。
だが…すぐにいつもの冷徹な表情に戻って、己の銀縁眼鏡を押し上げる
仕草をしていった。
「…俺も独り言を言っただけだ。さっさと忘れろ…。今日は、雪が降ると言う。
せいぜい…身体を冷やさないように気をつけろ…」
「えっ…?」
それは、今まで太一が聞いたことがない類の発言だった。
こちらを気遣う言葉などこの男から一度だって聞いたことはなかった。
なのに…もう、これで最後だというのに…その間際にこんな情を見せるなど
卑怯ではないだろうか。
太一だって、心のどこかで愛している人間と同じ顔をしている存在から
少しぐらい優しくされたいという想いを抱いていた。
なのに、どうしてそれを見せるのが今なのか…本気で文句を言って
やりたかった。
「じゃあな…」
「…待て、よ…!」
男が身支度を整えて、この部屋を出て行こうとする間際…太一は
ベッドから起き上がり、相手にそう呼びかけていく。
だが…相手は振り返ることも、足を止めることもなかった。
「…これ以上、お前に振り回されるのは御免だ…。俺は俺の好きなように
生きる。だからお前も…もう一人の『オレ』に縛られずに生きろ…」
「待てよ! 待てったら!! 克哉! 待てよ!」
初めて、相手を「克哉」と認めて呼びかけていく。
だがそれでも男は振り返らず…部屋を出ていった。
追いかけたかった。だが身体が軋んで、思うように動かなかったので
それは叶わなかった。
部屋のカーペットに這いずり回る格好になって相手を追いかけたが、
結局、間に合わず…太一はその場に崩れていく。
「ちく、しょう…! 何で、最後に…あんな…!」
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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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