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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
 1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
 書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。

 残雪(改) 
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11   12   13  14
 

―その日は都内にフワフワといた柔らかい雪が舞い散っていた
 
 東京という土地柄で、ボタ雪ではないものが降ることは極めて珍しかったが
この日は滅多にない例外が起こっていた。
 五十嵐太一は白い雪が静かに降り積もる中、必死な様子で佐伯克哉の
姿を探していった。

「ちくしょう…あいつは一体、どこに行ったんだよ…。親父や五十嵐組の
人間にも協力を仰いだっていうのに全く連絡がないままだし。俺一人じゃあ…
見つける事なんて、出来っこないよな…」

 白い息を吐いていきながら、太一はそれでも近所を彷徨い歩いていた。
 雪が降っているせいで電車の各線が運転見合わせになっていたり遅れての
発車になっていたから、自分の住んでいるアパートの周辺を捜すのが一番
可能性が高いと思って二時間余りくまなく探索したが、成果は全く
出ないままだった。
 つい先程まで一方的な行為によって痛めつけられていた身体が軋んで
悲鳴を上げていたけれど…それを押して、太一は探し続けた。

―今日、会えないままだったら…二度とあいつにも、克哉さんにも会えない…

 そんな強烈な予感が、彼の中であったから。
 だから今日は足掻くだけ足掻かなければならない、と本能で悟っていた。
 
「どこに、行ったんだよ…! あいつ…そんなに遠くには行っていない筈なのに…」

 太一は、知らない。
 先程自分が掛けた電話が、佐伯克哉の命を奪ったトリガーにも等しかった事を。
 自分の父に眼鏡が出て行った事を告げて、探すように協力を要請した事が…
密かに進められていた計画を実行に移すキッカケになった事を。
 この時点で、すでに佐伯克哉はここから一駅離れた小さな公園の近くで
父と五十嵐組の手に掛かってこの世の人間でなくなっている事など全く
予想する事なく、太一はそれでももう一度会えると信じて探し続けていた。

「あいつ、でも良い…。このまま、中途半端に終わるよりも…もう一度で良いから
探したいんだ…!」

 そして太一は、歩き回った末に小さな公園に辿り着いていった。
 ジャングルジムと、ブランコ。シーソーに何種類かの動物のモニュメント、
それと片隅に公衆便所と、天井が覆われた作りのベンチが設置されて
いる規模の公園だった。
 その頃には雪は2センチ余り周囲に積り始めて、静かに白く覆い始めていた。
 身を切られそうな寒さの中、無駄だと判っても彼は克哉の姿を追い求め
続けていた。
 
「…あれ? ここの周辺だけ…何で雪が無くなっているんだ…?」

 そして公園の外れ、ふと太一はその道路の一角だけ雪がごっそりと
無くなっている事に気づいて違和感を覚えていく。
 この日、彼は知らぬ間に導かれていた。
 黒衣の男…Mr.Rの見えざる手に…意識する事なく、太一は自然と
「克哉が命を落とした場所」へと招かれていたのだ。
 その周辺の雪が無くなっているのは、克哉の遺体と共に飛び散った血を
隠す為のものだった。
 その事に違和感を覚えていきながら太一は…ついに一時間程前まで
亡骸があった場所へと辿りついていった。
 
―その瞬間、眩い光が周囲を包み込んでいった

 それは目を焼くぐらいに鮮烈な輝きだった。
 思わず瞼を閉じて、その光をやり過ごしていくと…太一は、信じられないものを見た。

「嘘、だろ…?」

 たった今まで、何もなかった。
 人の気配すら感じられなかった。
 なのに其処に一人の人物が立っていた。

「夢、じゃないよな…これ、現実なのかよ…?」

 その顔を見て、太一は声が震えた。
 涙腺が緩んでしまいそうだった。
 否、そう思った時にはすでに自分は泣いてしまっていたのかも知れない。
 それぐらいの衝撃と喜びを彼はこの瞬間…覚えていた。
 身体が震えて、様々な想いがこみ上げてくる。
 ずっとこの日を待ち望んでいた。
 もう一度会える日を夢見て…それだけが彼の支えだった。
 なのに実際にその瞬間を迎えると…これが夢か幻ではないかと疑う気持ちが
強くて、実感出来なかった。

「夢じゃないよ…。今、確かにオレは…太一の傍にいるよ…」

 目の前の人物は見慣れたスーツ姿に、純白の白い長いフワフワの材質の
コートをまとって目の前に立っていた。
 それが今のこの人には凄く似合っていて目を奪われていた。
 儚い綺麗な微笑み、ずっと見たくて…会いたくて仕方なかった人。

「克哉、さん…!」

 太一は叫びながら相手の方に駆け出していき、愛しくて会いたくて
堪らなかったもう一人の佐伯克哉を、自分の腕の中に強い力で
抱き込んでいったのだった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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