鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。
残雪(改) 1 2 3 4 5
―ああ、貴方はどうやら…太一さんの贈った石がどうなったのか
気になって仕方ないみたいですしね。ふふ…良い感じにご子息と
気持ちが重なって来たみたいですね。
こういう余興も悪くはないでしょう…? どれだけ話しを聞いたとしても
こんな風に他者の体験を自分のもののように感じることは基本的には
人には不可能です。
別の人生を体験している気分になって、ワクワクしているんじゃないんですか…?
えっ、自分はそんなに不謹慎じゃないと? 失礼しました。
ですがあの石は太一さんの想いが強く込められている品。
確かに気がかりになるのは判ります…。
なら、その答えを貴方に断片的にお見せしましょう…。
次からは克哉さんの視点となります。
貴方にとっては気持ちの良いものではないのは判りますが真実というのは
両方の立場や考えを知った上でなければなかなか見えてくるものじゃありません。
では、次なる場面をお見せしましょう…。
太一さんの贈った石の、その行く末を…貴方に…
―そして再び視界が真っ白に染まり、別の場面が始まろうとしていた
男はこの奇妙な体験に確かに、指摘された通りに一種の興奮を覚えていた。
自分の知らなかった出来事を知ることで、ただ憎いだけだった克哉の存在が
別のものへと変わっていくようだったから。
自分の息子が、かつての人の良さそうな彼に対してはあんな風に幸せそうに
接しているのを知ってしまったから。
だから謎多き男に導かれるままに…男は真実を辿っていく。
―そしてゆっくりと、太一が救われる日に至るまでの道筋を辿っていった―
*
眼鏡を掛けた方の克哉は多くの人間が行き交う雑踏を、当てもなく
歩き続けていた。
目的地などなく、ただ気の赴くままに池袋の街を歩いていた。
この駅で降りたことに何の意味もない。
単なる気まぐれであり…深い意味もなかった。
都会の人間が行き交う光景は、無機質な波のようなものだ。
人間が個別の心を持った存在ではなく、ただの集合体のようにすら
感じられる瞬間がある。
(どうして…俺は今でも、こんな物を手放せないでいる…?)
太一が、太陽の石の存在を思い出したのとほぼ同時刻。
男は…自分が愛用しているスーツの中に偲び続けていたオレンジ色の
石の事を忌々しく感じ始めていた。
この石はもう一人の自分が、とても大切に思っていた品だった。
太一に『お守り』だと渡されて以来、肌身離さずに持ち歩いていた。
だから必然的に、男が持ち歩く形になってしまった。
(あいつが持っていた品など…俺には何の関係もない筈だ。こんなちっぽけな
石…その気になればいつだって捨てられる。なのに…どうして捨てられない?)
克哉は雑踏の中で立ち止まると、ふと胸ポケットの中を手で探って…
その明るい色合いの石を取り出していく。
まるで太一の髪の色のような鉱石だった。
「…そして、俺はどうして…虚しいと思いながら、あいつと一緒にいる…?」
太一の事を考えると、どうしてこんなに空虚なものを覚えるのだろう。
幸せだと思ったことも、満たされたことも無い。
自分達の間にあるのは、屈服や服従…そんな類の言葉しかない。
もう一人の自分の事ばかり求めている存在と一緒に暮らして、何の意味が
あるのだろうか?
何故、こちらの事を否定する男を自分は定期的に抱いているのか。
その奥に潜んでいる感情を、意図的に…眼鏡は見ないようにしていた。
「ちっ…」
小さく舌打ちをして、男は身を翻す。
もう戻ることなど出来ない。
もう一人の自分の意識は奥深くに眠ってしまっていて…どれだけ呼びかけようとも
応えることはない。
自分の意識が蓋となり、太一の求める存在を閉じ込めてしまっている。
それが…いつから自分にとって重石になり始めたのだろう。
(あいつの事を考えても何の救いもないのに…どうして、こんな想いが…
俺の中に存在する? これは…もう一人の『オレ』の感情の残滓が
作用しているのか…?)
知りたくも、気づきたくもない真実。
今でもその石を捨てられない意味。
薄々とは気づいている。
けれど、敢えて目を背けている。
恐らく、消えてしまった自分の影響。
―男もまた、どこかで太一を想っている
だが、その真実から目を逸らす為に紫煙をくゆらせながら…男は
当てもなく雑踏の中を歩き続けていく。
真実から、目を背けるように…。
したお話。太一×克哉の悲恋です。
1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。
残雪(改) 1 2 3 4 5
―ああ、貴方はどうやら…太一さんの贈った石がどうなったのか
気になって仕方ないみたいですしね。ふふ…良い感じにご子息と
気持ちが重なって来たみたいですね。
こういう余興も悪くはないでしょう…? どれだけ話しを聞いたとしても
こんな風に他者の体験を自分のもののように感じることは基本的には
人には不可能です。
別の人生を体験している気分になって、ワクワクしているんじゃないんですか…?
えっ、自分はそんなに不謹慎じゃないと? 失礼しました。
ですがあの石は太一さんの想いが強く込められている品。
確かに気がかりになるのは判ります…。
なら、その答えを貴方に断片的にお見せしましょう…。
次からは克哉さんの視点となります。
貴方にとっては気持ちの良いものではないのは判りますが真実というのは
両方の立場や考えを知った上でなければなかなか見えてくるものじゃありません。
では、次なる場面をお見せしましょう…。
太一さんの贈った石の、その行く末を…貴方に…
―そして再び視界が真っ白に染まり、別の場面が始まろうとしていた
男はこの奇妙な体験に確かに、指摘された通りに一種の興奮を覚えていた。
自分の知らなかった出来事を知ることで、ただ憎いだけだった克哉の存在が
別のものへと変わっていくようだったから。
自分の息子が、かつての人の良さそうな彼に対してはあんな風に幸せそうに
接しているのを知ってしまったから。
だから謎多き男に導かれるままに…男は真実を辿っていく。
―そしてゆっくりと、太一が救われる日に至るまでの道筋を辿っていった―
*
眼鏡を掛けた方の克哉は多くの人間が行き交う雑踏を、当てもなく
歩き続けていた。
目的地などなく、ただ気の赴くままに池袋の街を歩いていた。
この駅で降りたことに何の意味もない。
単なる気まぐれであり…深い意味もなかった。
都会の人間が行き交う光景は、無機質な波のようなものだ。
人間が個別の心を持った存在ではなく、ただの集合体のようにすら
感じられる瞬間がある。
(どうして…俺は今でも、こんな物を手放せないでいる…?)
太一が、太陽の石の存在を思い出したのとほぼ同時刻。
男は…自分が愛用しているスーツの中に偲び続けていたオレンジ色の
石の事を忌々しく感じ始めていた。
この石はもう一人の自分が、とても大切に思っていた品だった。
太一に『お守り』だと渡されて以来、肌身離さずに持ち歩いていた。
だから必然的に、男が持ち歩く形になってしまった。
(あいつが持っていた品など…俺には何の関係もない筈だ。こんなちっぽけな
石…その気になればいつだって捨てられる。なのに…どうして捨てられない?)
克哉は雑踏の中で立ち止まると、ふと胸ポケットの中を手で探って…
その明るい色合いの石を取り出していく。
まるで太一の髪の色のような鉱石だった。
「…そして、俺はどうして…虚しいと思いながら、あいつと一緒にいる…?」
太一の事を考えると、どうしてこんなに空虚なものを覚えるのだろう。
幸せだと思ったことも、満たされたことも無い。
自分達の間にあるのは、屈服や服従…そんな類の言葉しかない。
もう一人の自分の事ばかり求めている存在と一緒に暮らして、何の意味が
あるのだろうか?
何故、こちらの事を否定する男を自分は定期的に抱いているのか。
その奥に潜んでいる感情を、意図的に…眼鏡は見ないようにしていた。
「ちっ…」
小さく舌打ちをして、男は身を翻す。
もう戻ることなど出来ない。
もう一人の自分の意識は奥深くに眠ってしまっていて…どれだけ呼びかけようとも
応えることはない。
自分の意識が蓋となり、太一の求める存在を閉じ込めてしまっている。
それが…いつから自分にとって重石になり始めたのだろう。
(あいつの事を考えても何の救いもないのに…どうして、こんな想いが…
俺の中に存在する? これは…もう一人の『オレ』の感情の残滓が
作用しているのか…?)
知りたくも、気づきたくもない真実。
今でもその石を捨てられない意味。
薄々とは気づいている。
けれど、敢えて目を背けている。
恐らく、消えてしまった自分の影響。
―男もまた、どこかで太一を想っている
だが、その真実から目を逸らす為に紫煙をくゆらせながら…男は
当てもなく雑踏の中を歩き続けていく。
真実から、目を背けるように…。
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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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