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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―雨の音を聞く度に思い出す
  あの日、窓の下で立ち尽くしていた君の姿を
  私を待っていた君の元に私が駆け寄っていたのならば
  …君との関係は、今とは大きく変わっていたのだろうか…?

 声を掛けようか迷っていた。
 そうして葛藤している間に、君の姿を見失った。
 あの日から消えない後悔の念
 それなのに途切れてしまった関係を取り戻したいと願う私は
 もしかしたら浅ましいのかも知れない―

 御堂孝典は、キクチ・マーケーティングのビルに一人、立ちながら…
1ヶ月前の出来事を反芻していた。
  11月の冷たい雨の日の記憶。
 それと同時に、いつの間にか消えてしまった佐伯克哉との関係。
 MGNを去ったのを機に、もう彼とは関わるまいと…一度は思った。
 忘れて、お互いに今までの日常に帰ろうと考えた。
 だが、雨が降る度に過ぎる…あの日の克哉の姿に、どうしても…
御堂は後ろ髪が引かれる想いがして、結局…こうして、今日は彼が今でも
勤めている会社の前まで足を向けてしまった。

「18時…か…」

 普通の会社なら、残業さえなければとっくの昔に退社していても
おかしくない時間だ。
 御堂が今勤めている会社でも、17時半が基本退社時間なので…アポなしで
この時間帯に訪れるのは、入れ違いになる可能性があるのは判っている。
 けれど仕事の関係上で、この近くに来た時に…知らない間に、この会社の
方へと足が向いてしまったのだ。

(今更…どんな顔して、君に逢えると言うんだ…?)

 かつて、彼に対して酷い振る舞いをしていたという自覚はある。
 あんな風に半ば脅迫じみた形で身体の関係を持って、犯して。
 何度も何度も、それを繰り返し続けていた。
 そんな男が、今更…逢いたい、などと言って再び顔を出したら
どんな顔をするのだろうか。

「今更…図々しいと思われるのがオチだな。彼の中ではきっと…私に対しての
印象は最悪、だろうからな…」

 自嘲的な笑みを浮かべていく。
 MGNを退職して、新しい職場に勤め始めてから…まだ日が浅いせいも
あるかも知れない。
 感傷的になっている自分に気づいて、苦笑したくなった。
 何故、もう一度…克哉に会いたいと願ってしまったのだろう。
 あの日に、どうして…声を掛けれなかったことをこんなに悔やんでいるのだろう。

 雨雫が、絶え間なく傘を伝って地面に落ちていく。
 自分がMGNを退社するキッカケが起こった日も、こんな風に大雨が降り注いで
いた夜だった。
 あの雨の中、どうして…君は、私を待っていたんだ?
 それともあれは他の誰かで…私は都合の良い解釈をしているだけの
話なのか?
 
 それをはっきりさせたくて…目立たない位置に立ちながら、ただ…玄関の
方へと目を向けていく。
 佐伯克哉は、もう帰ってしまったのだろうか?
 ここへは…無駄足を踏んだだけだったのだろうか?
 そんな事を考えて、この場からもう立ち去るか…否かを迷い始めていた
その時、待ち人の姿が現れていった。

「あっ…」

 思わず、声が漏れた。
 一ヶ月ぶりに、克哉の顔を見たせいだった。
 憂いを帯びた顔をしながら…キクチ・マーケーティングの玄関の処に
立って、傘を広げていく。
 容姿が整っているせいだろうか…そんな姿も様になっている気がしてつい
見惚れていく。
 久しぶりに見た克哉は…妙に色香が漂っているような気がした。
 気だるげな仕草に、伏せられた瞼。
 小さな動作の一つ一つにさえ…妙に目を奪われてしまった。

(…気のせいか? 酷く佐伯が…色っぽく見える気が…する…)

 つい、克哉を凝視してしまっていた。
 こちらの目線に気づいたのだろう。
 暫くすると…克哉がふと、こちらの方を振り向いて…瞳を大きく
見開いていった。

「…っ!」

 信じられないものを見たような、そんな顔をされて…御堂はすぐに
ハっとなっていった。
 彼を一目みたいという想いで…ここまで来てしまったが、彼と会話を
するまで心の準備が出来ていなかった。
 御堂自身も、どうしてここに足を向けてしまったのか…自分の本心が
判らない状態だったからだ。
 だから、逃げるように踵を返していく。

「待って下さいっ…!」

 背後から、克哉の呼び止める声が聞こえた。
 だが、それを振り切るように…背を向けたまま足を進めていく。

「御堂さん、でしょう…! 待って、下さい…!」

 そうして克哉が御堂を追いかけようと駆け出し始めたその時。

「御堂がどうしたんだ…?」

 大きな声を出しながら、克哉の肩を掴んで足を止める一人の
男がいた。
 克哉の大学時代からの友人であり、同僚でもある本多だった。

「えっ…いや、その…」

「あいつが、来ていたのか…?」

「う、うん…」

 克哉が、言いよどんでいる隙に…御堂は、その場を離れていく。
 だが、その心は落ち着かないままだった。
 ほんの少し、他の男が克哉と話している姿を見るだけでも…どうして
ここまで心が掻き乱されているのか、自分でも不思議だった。

 距離を置いたせいで、それ以上の彼らのやり取りが御堂の耳に
届くことはなかった。
 けれど胸の中にぽっかりと…空虚なものが広がっていく。

「克哉…」

 知らず、彼の名を呟いたが…その優しい呼びかけは、大きな雨音によって
掻き消されていってしまう。
 何故か、心が酷く切なかった。

 ―それから数日後、彼は…一通のメールを克哉に送信していく
 そうして再び、御堂と克哉の交流はゆっくりと再開していったのだった―

 

 
  
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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