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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※2001年の秋頃に書いた前ジャンルの作品です。
 三番目くらいに書いた話で、ドラグ温泉でともかく
バタバタしています。
  何て言うか全体的にギャグ風味な話になります。

  ドラグ温泉憂鬱帳   


 温泉の精霊である桜涯と、びばののが管理しているドラク温泉。
ここもまた封印獣を解放する冒険の途中で訪れたダンジョンの一つである。
 再びダンジョン閉鎖がされた今でも、ここだけは健康センターという
形で一般の人間でも気軽に足を踏み入れる事が許されている。
それでも地下のオクトマンの巣や、封印獣がいた辺りは立ち入り禁止に
されてはいるが…。
 それでも、二人にとっては思い出深い場所である事には変わりない。
  久方ぶりの外出にカナンは浮かれ巻くっていた。

「セレスト! 早く浴衣に着替えような!」

「はいはい…」

 脱衣所で、びばののに浴衣を手渡されてカナンははしゃいでいた。

「後、ここでの僕らの武器…石鹸ネットと…そしてへちまだ。これで
再びお前をへちま剣士の称号で呼べるな。嬉しいだろ? セレスト」

「嬉しい訳ないでしょう! 何度もその名で呼ぶのはお止め下さいと…」

「まあ細かい事は気にするな。それよりも着替えだ。僕らのせっかくの強化
された装備を温泉の成分で錆びさせる訳にはいかないからな」

「…はい」

 結局カナンには基本的に逆らえないセレストである。
  自分の装備を外し、着衣に手を掛ける。
  ふいに主の方を見やり…その手が止まった。
 すでにカナンは自分の服をあらかた脱いで、浴衣を纏おうとしている所だった。
晒された上半身の白い肌が…異常なまでに眩しく見える。

(ヤバい!)

 慌てて目を逸らし、自分の浴衣を着る事に集中する。
 そうだ…忘れていた。温泉に来るという事は…。
 嫌でもカナンと裸の付き合いをする事になる訳である。
 これでもセレストは正常な男である。以前来た時はまだそんなに
カナンの事を意識して
なかったので何とも思わなかったが…今は彼が愛しくて溜まらないのである。
 そして二週間カナンの側にいられなかったという事は…触れ合う
機会もなかったという事でもある。
  そんな時にこんな刺激の強いものを見せられたら…。

(俺…本当に大丈夫なんだろうか?)

 と、思った矢先。

 
コォォォン!

 小気味の良い音が、周囲に響いた。

「セ、セレスト! 大丈夫かっ?」

「うぅ…大丈夫です…これしきの事では…」

 どうやらセレストが悩んでいる隙に、カナンは浴衣を羽織り終わりその間暇なんで
石鹸ネットを振り回していたらしい。
 それがモノの見事に、セレストの側頭部に命中した訳である。

「す、すまない…! 久しぶりに石鹸ネットの扱い方を思い出そうとして、つい…」

「…カナン様、ここではもう敵は出ない筈なんですけど…」

「だからと言って、目的がないのもつまらないぞ。経験値を稼ぐのが駄目なら…
温泉タマゴを作るとか、卓球やマッサージを堪能するか…」

「あのー私の疲れを取りにきたのではないんですか?」

 その一言を言った途端、何故かカナンはセレストから目を逸らして赤くなった。

(えっ? 今の反応は…?)

 だがそれは一瞬の事で、すぐに平静に戻っていた。さらに青年には訳が判らなくなる。

「…そうだ! 良い事を思いついたぞ!」

「今度は何ですか?」

「…ビバノノと、お風呂に入るってのはどうだ? 題してホットビバノノ計画」

「…お聞きしますが、それ…何の意味があるんですか?」

「なっ? セレスト。お前はビバノノを見て何も感じてないのか? あのつぶらな瞳
にチョコチョコした動きに、特に僕が好きなあの腹の所の温泉マーク。あれだけ
可愛らしいものと一緒にゆったり温泉に浸かりたいと思う僕はそんなに変か?」

「はあ…」

 思わず生返事しか出てこない。
 だが考えようによっては、悪い提案ではないのかも知れない。
 はっきりいってカナンと二人っきりというのは、今は余り精神衛生的に
よろしくない気がする。
  確かに間にビバノノの一匹でもいた方が、その…変な展開になる事は
防げるような気がする。
 これでせめて、自分たち以外に客とかがいればまた話は別だろうが、ダンジョンで
なくなったドラク温泉には敵すらも出て来ない。
事実上自分達の貸し切り状態である。
 特に二週間の隔てがあるだけに…今は自分を抑える自信がなかった。

「まぁ…悪くないのかも知れませんね」

「だろ? だったらすぐにでもビバノノを捕獲に行くぞ!」

「ほ、捕獲って一体どんな手段を用いるつもりなんですか! 手荒な事だったら
断固として阻止させて貰いますよ!」

「心配するな。安全かつ、極めて合理的な方法だ」

 疑わしげな目でカナンを見るセレストの思惑とは裏腹に、丁度物陰からトコトコと
白いビバノノが現れ、二人の前を通り過ぎようとしていた。

「ちょっと待て。そこのビバノノ」

「ナンですノノー?」

「僕と、卓球をしないか?」

 何故ビバノノと一緒に温泉に入ろうというのに、卓球の話を持ち掛けるのか
セレストにはさっぱり判らなかったが、気のせいか話を持ち掛けられた
ビバノノは嬉しそうに目を輝かせているように見えた。

「卓球ですノノー?」

 興味深々といった様子で、カナンの言葉に返答する。我が意を得たりといった風で、
主は続きの話をビバノノに語った。

「そうだ、卓球だ。ここにいるセレストはコーナードラゴンという異名があるくらい
それに達者だからな。ほぼ素人に近い僕とは勝負にならない。ビバノノも
卓球をした事はないだろう?だから一緒に卓球をして貰いたいんだが、嫌か?」

「嫌ではないノノー。けど賞品がないですノノー」

「僕はただ卓球を一緒にやりたいだけなんだが…そうだな、強いていうなら僕が勝ったら
一緒に温泉に入ってくれるか?背中を流してもらうって事で…」

「それくらいなら、お安い御用ですノノー。ぜひやらせて貰いたいノノー」

「なら、僕らは卓球の間で待っている。仕事に一段落がついたら来てくれ」

「判りましたノノー。すぐに向かいますノノー」

 あれよこれよと言う内に、いつの間にかカナンとビバノノの間で話が
ついてしまっていた。
一人取り残されたセレストは、どうして良いのか判らなかった。

「あのー私にはどうしてビバノノ君を温泉に誘うのに、卓球の話を持ち掛けたのか
理由が見えて来ないんですが…」

「ん? 気づいていなかったのか? あの白鳳やナタブーム盗賊団と対決した時に、
ビバノノが自分もやりたそうにしてたのを…」

「そうなんですか?」

「実は僕も参加したかったんだぞ。あの時…けどお前の足を引っ張るだけだし、
代表は各チーム一名までだったからな…。僕が我を張って、ペナントを
取り逃す訳にはいかない状況だったしな…」

 まさかあの時、カナンがそんな事を考えていたとはまったく思いも寄らなかった。

「だからビバノノの態度に気づいたのかもな…ビバノノも、本当に自分も参加したそう
だったんだぞ」

「そんな事が…」

 当たり前のように自分が参加して戦いを繰り広げていた裏で、それを見ていた者たちが
そんな事を考えていた事などセレストは考えた事もなかった。

「と、いう訳でセレスト。僕に少しで良いから卓球を教えてくれ」

 しかしそんな想いなど存在しないかのように、明るく笑うカナンの言葉に、
青年は軽く微笑みながら答えた。

―えぇ…喜んで…

 と、珍しく穏やかに微笑みながらそう告げていったのだった―

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 これは2001年の秋ぐらいに書いた、王レベの
創作3本目に当たる話です。
  キリリクイラストを書いて貰ってそのお礼に…と書きあげた
話だったんですが、一枚の絵に対して19ページの小説を
仕上げて書いて来る一般人(当時、HPはまだ作ってなかったし
…サークル活動も開始してなかった)って良く考えたらどうなんだろうって…
当時の自分にすげーツッコミ入れたい…。
  今とパワーが違うよ、十年前の自分…。
  そして贈った人に、タイトルをどう読むか判らないと聞かれてしまった
切ない思い出のある話だったりします。
(一応、ゆううつちょう…と読む)
  とにかく、セレストが振りまわされる不憫な話ですが当時は非常に
楽しんで書いた記憶があります。
  良ければ読んでやって下さい。

『ドラグ温泉憂鬱帳』


 すでに秋も深くなり、冬へと移り変わろうとする時期。
 ルーキウス城の庭の全体が見渡せる位置にあるテラスで、
セレストは一人黄昏ていた。

(何たって最近はこんなに忙しいんだろうか…疲れた…)

 あのカナンとの冒険と、堕天使ウリネリスの一部である二人の策略に
巻き込まれている間に青年がこなさねばならぬ業務は溜まりに
溜まりまくっていた。
 あれから二週間が過ぎ、いつも通りの平穏な日々が戻ってきているが、
彼の仕事の方はようやく本日の午前中をもってようやく一段落がついたと
いう感じだった。

(冒険に出てる間は、新人の稽古にもロクにつきあってやれなかったから仕方ないと
いえば仕方ないのだが…)

 久方ぶりに自分が直接稽古をつけるようになった事で、新人や部下が皆張り切って
こちらに挑みかかってきたのだ。
 そのせいか、連日筋肉痛が抜けなかった。
 カナンの謀略のせいで呪いの足輪をつけられ、LV1になってから暫くの間は、はっきりいって
部下より弱くなってしまった為、稽古をする所じゃなくなっていた。
 今は辛うじてLV20前後はある為、どうにか取り繕っていられるが…それでも
以前の半分であり、実力も遠く及ばない。
この有様では新人や部下を相手にする時はともかく、自分の上司である騎士団隊長の隊長や、
父のアドルフと手合わせすれば一発でバレてしまうだろう。

(けれどそれよりも、問題はカナン様の方だよな…)

 最近業務に追われていたせいで、あまり彼の傍にいられなかった。あの戦いを
終えた直後、気持ちを確かめあった訳だが…。

(やっぱ可愛かったな…あの時のカナン様…)

 あの事があってから、主を意識している自分がいる事に気づいていた。出来るだけ
一緒にいる時間を大切にしたいのに、ここの所日中は殆ど側にもいれなかった。

(今日の午後は久しぶりに、二人で過ごせるな…)

 特に何かを考えている訳ではないが、カナンと一緒に過ごせるならただゆっくりと
くつろいでいるだけだって良い。

(どうしているかな…カナン様…)

「セーレースート!」

 いきなり背中に暖かな感触を感じ、セレストの背が強張った。
この声…聞き間違える筈が無い。今自分に抱き着いている存在は…。

「カナン様!」

 たった今、考えてた人が現れた事で青年の気は動転していた。

「今日の午後は久しぶりに一緒に過ごせるんだろう? そう騎士団の方から伝達が
来たのでずっと捜してたんだぞ」

「えっ、あ、そうですね…」

 暫く午後にずっと一緒にいられなくなったと言っても、毎日顔を合わせてはいる。
しかしこうして日の下にいるとカナンは本当に輝いて見える。
 満面の笑顔と、その鮮やかな黄金の髪が本当に眩しい。ガラにもなくセレストは
ドキドキしてきた。
顔まで真っ赤になっていくような気がする。

(こら…俺の鼓動静まれ。こんな所でカナン様を意識している所を誰かに
見られたらどう言い訳するんだ?)

 症状はさしずめ動悸、息切れ、眩暈といった所だろうか。

「セレスト…どうしたんだ? 具合が悪いのか…?」

「だ、大丈夫ですよ。ちょっと訓練の疲れが残っているだけですから…」

 そう言ってその真っ直ぐな碧い双眸をこちらに向けてくる。
セレストはこちらの内心の動揺を悟られるんじゃないかとひやり、となる。

「疲れているか…僕の目には憑かれているように映るぞ」

「は? つ、憑かれているって私が何にですかっ?」

「白鳳の生霊」


『……は?』

 予想もしてなかった答えに、セレストの頭は真っ白になる。

「あいつのお前に対する執着は半端じゃなかったからな…何というか、離れていたって
オーラか何かを残しているんじゃないのか?」
「カ、カナン様! 冗談はお止め下さい! そ、そんな非現実な事…」

 と、言いつつもあの男なら本当に自分にそれくらいのモノは残しそうである。

「いーや、判らんぞ。案外僕らが最近一緒にいられなかったのはそのせいじゃないのか?

 僕が最近目を通したJAPAN製の古典には、すでに妻帯している美男子に惚れ、
その細君を呪い殺す女の生霊が出てきたし…」
「やーめーてーくーだーさーい!」

 セレストが両手で耳を塞ぎながら、頭を振る。

「そんな事言ったら、まるでカナン様が白鳳さんに呪い殺されるみたいじゃないですか!」

「男の嫉妬は女の五万倍というからな。その可能性も在るかも知れんぞ」

 フフフフと言いながら、カナンはセレストで遊んでいた。しかし当の本人はまだ
その事実に気づいていなかった。

「じゃあ私はどうしたら良いんですか? お払いでもした方が良いんでしょうか…」

「いや、ようするにお前が不幸オーラといおうか、白鳳の奴が好みそうな心理状態で
さえなければ問題ないと思う…それで提案だが…」

「はい…」

 息を呑みながら、セレストは主の次の言葉を待った。

「息抜きとして…温泉にいくっていうのはどうだ? ダンジョンは閉鎖されてしまったが、
あそこは危険な区域に立ち入らなければ問題ないしな」

「温泉って…ドラク温泉にですか?」

「ちなみにすでにリグナム兄上から本日の外出許可を二人分貰って来ている。
お前の疲れを労う為にといったら快く承諾してくれたぞ」

「はあ…?」

「僕を白鳳の生霊の餌食になどしたくはないだろ? そう思うんだったら大人しく
承諾した方が賢明だぞ」

 …あまりに話の流れが、カナンにとって優位な方向に動いているような気がする。
 だが、自分が疲れているというのも確かで…。そして最近カナンの側にいられなかった
のもまた事実である。
 これはカナンなりの気遣いかも知れないと考え、セレストは抗う事を止めた。

「…そうですね。骨休めとしては丁度良いのかも知れません」

 カナンの策略に乗せられていると判っていたが、セレストは承諾した。

「ホントか! じゃあ早速支度だ! すぐに準備を終えて僕の部屋に来い!」

 命令口調でありながら、その声の調子は明らかに弾んでいた。
小躍りでもしそうな軽やかな足取りで自分の自室に戻る様子を見て、セレストは
微笑を浮かべた。

「まったく…あの人は…」

 あぁいった無邪気で年相応の少年っぽい顔を覗かせている時が…もしかしたら
自分は一番好きなのかも知れない。
 クスクスと笑いながら、セレストは自室に戻って支度を整えることにした。
 うららかな、秋の昼下がりの事だった。


※この話は過去に書いた王レベの話を
改めて大雑把に編集してこのブログに掲載
させて貰ったものです。
 興味ある方だけどうぞ~。

 セレストH LV1      



その翌日、朝からカナンは原因不明の発熱と筋肉痛を起こしていた。
 無事にレイブンとユーリの謀略を跳ね除けた程の実力を持った二人だったが、
これだけはどうしようも無かったようだ。
 カナンの私室で、すでに日が傾いて夜が訪れても甲斐甲斐しくセレストは
カナンの看病を続けていた。
ベッドに横たわる主の顔は、今もなお熱で真っ赤に染まっていた。

「うー…こんなにHが身体に負担掛かるものだなんて知らなかったぞ。
これなら白色破壊光線を立て続けに放った方がまだマシかも…」

「城内ではなさらないでくださいね。危険ですから…」

 泣きそうな顔になりながら、セレストが諌める言葉を吐いた。
  明らかにカナンはムッとしたようだった。

「お前、僕を何だと思っているんだ? そのくらいの思慮分別くらいは僕にだってあるぞ」

「判っていますよ…」

 ニコリと優しく微笑みながら、セレストはカナンの為にリンゴの皮を剥き始めた。
リンゴを皿の上に並べられて、手渡される。キレイに八等分に切り分けられていた。
 熱はあるが、食欲までなくなった訳ではない。
  一つを手にとって食べ始めた。

 カナンの体調が悪くなると、いつもこうしてセレストは側にいてくれた。
けれど…昨日の事があってから、変に意識をしてしまっている。
 それは目の前の青年も同様のようだ。
 カナンがリンゴを食べている間、沈黙が訪れる。
 心なしか重い雰囲気だった。
 その何とも言えない空気が、余計にカナンの気に触った。

「セレスト、もっと近くに寄ってくれ」

「えっ…近くに、ですか?」

「そうだ、早くしろ」

 すでにカナンのベッドに腰を掛けているのに、これ以上近くにと言われれば、
密着せざるを得ない。
 しかしカナンの言葉には逆らえない。
 セレストは少しだけカナンに近づいた。

「っ!」

 次の瞬間、柔らかな感触が自分の唇に触れる。
そしてカナンの舌が、セレストの舌を捕らえていた。

「んー! んー!」

 突然の状況に、セレストの頭は混乱を起こしていた。
昨日自分との行為のせいでカナンが体調を崩したというのに、
このまま続けられたらまた歯止めが効かなくなってしまう。

「な、何をなさるんですか! カナン様!」

 どうにかカナンを引き剥がし、セレストは目の前の少年に訴えた。

「お前こそ! 何をそんなに気にしているんだ!」

 カナンはそう叫びながら、セレストの胸に顔を埋めた。

「…お前の態度を見てれば判る…昨日の事を気にしているって事はな…。
けど、まだ判らないのか、セレスト」

「な、何がですか…?」

「僕はそうやってお前に気を使われる事の方がイヤだって事…」

「カナン様…」

 胸元を掴む少年の手の力は思いのほか強くて、その気持ちを青年に伝える。

「もう…キスもしてくれないのか…ただの従者でいるつもりなのか…」

「そんな事…」

 出来る訳がない。
 こうして触れ合っているだけで、抑えが効かなくなりそうなのに…。

「昨日言っただろう? 僕はお前が初めてで嬉しかったって…。お前が下手でも良い。
冒険を始めた頃のように、これから二人で経験値を稼いでいけば良いんだから…」

 下手でも、という言葉にセレストは多いに傷ついていたが、カナンの
その気持ちは凄く嬉しかった。
腕の中にいるカナンの背中をそっと撫ぜながら、問い掛けた。

「私で…本当に良いんですか?」

「お前じゃなきゃ…イヤなんだ…」

 二人は、相手の目を逸らさずに見つめる。
昨日何度も、気持ちを確かめる為にした行為。

「私も…カナン様じゃなきゃ駄目です…」

 そうして二人は抱き合いながら、口付けを交わした。
ベッドに横たわり、セレストに包み込まれるような体勢になる。

「側にいてくれるか…セレスト」

「…はい、いくらでも…」

 優しく微笑みながら、セレストは答えた。
 その後セレストはカナンの体調を慮って、今日はその先の行動には進めなかった。
 しかしその腕の中にいるカナンに幾度もキスを繰り返し、その金色の髪を撫ぜ、
自分の温もりを大事な人に分け与えた。
 カナンの気持ちもそうされる事で、次第に落ち着いていく。

「大好きだぞ…セレスト」

 眠りに落ちる寸前、カナンはポツリと呟いた。
「私もですよ…」

 その言葉が耳に届いたのか、届かないのか…。
 すぐに安らかな寝息が聞こえ始めた。
 その穏かで幸せそうな寝顔を見ている内に、セレストの決意は次第に強まっていく。

(俺は…この人を守っていきたい)

 そして、こうしてずっと二人で歩んでいきたい…。
 昨日の事を、なかった事になど出来ない。自分はこの人が愛おしい。

「カナン様…俺はずっと、貴方の側にいますから…」

 そうして、唇に一つキスを落とす。

「ずっと…」

 カナンの手をそっと掴んで、その寝顔を見ている内に自分にも睡魔が襲ってきた。
 セレストはその衝動に逆らわずに、身を委ねた。
 大事な存在をいま、一人になどしたくはないから…。
間もなく眠りの淵にセレストの意識は落ちて行った…。
 こうしてこの夜、二人の優しい時間は紡がれたのだった。


※この話は過去に書いた王レベの話を
改めて大雑把に編集してこのブログに掲載
させて貰ったものです。
 興味ある方だけどうぞ~。

 セレストH LV1   

カナンの望み通り、幾度も触れるだけの口付けを繰り返した。
 しかし二人とも唇が触れ合う度に、相手に触れ、慈しみたいという気持ちは
収まるどころかどんどん強まっていくのを感じていた。

 五回目のキスで、初めてセレストはカナンの口腔に舌を忍び込ませた。
少年は一瞬身体を強張らせたが、やがてぎこちなく応え始めた。
 互いの舌を貪る、湿った音が嫌でも耳に届く。
カナンの背筋には電撃でも浴びせられたような衝撃が走っていた。
 好きな相手とするキスが、こんなに気持ち良いとは考えた事もなかった。

 セレストも同様で、ただ夢中に深い口付けを二人は交わし続けていた。
 しかしカナンの身体に手を滑らし始めようとするセレストの手が、一瞬止まった。

(どうしよう…)

 完全に自分は今、歯止めが効かなくなってしまっていた。
 いや、もう自分もカナンの心も決まっている。
彼が心配していたのはもっと別の事だった。そう根本的な問題…。

(俺も…初めてなんだよな…)

 まさか年上の自分がカナンに組み敷かれるのもどうかと思うし、一応自分にだって
そういった知識の類はある。
リードは…出来ない訳じゃないと思う。

 おまけに不本意ながら白鳳に言い寄られて以来、男同士は一体どうやるのだろうかと
好奇心を出してしまったせいでやり方も知ってしまっている。

(あぁ確か男同士って、男女以上に上手いか下手かが重要になるんだよな…
俺に果たして上手く出来るのだろうか…)

 一応キスくらいは経験していたが、それ以上の展開はセレストにとっても
未知の世界である。
このまま続ければ、カナンを傷つけてしまうかも知れない。それでも…。

「あの…本当によろしいのですか?」

 そっと愛しい人に耳元で伺いを立ててみた。

「…当たり前だ。却ってここで止めるといったら、僕は怒るからな…」

 カナンはその深い碧の瞳で、こちらを見据えていた。
例えキスの余韻で顔が上気していても、どんな事があっても退かない
強い意思が感じられた。

「判りました…」

 セレストは溜め息一つ突くと、止めていた手をカナンの身体に滑らせた。
そして、装備を外しに掛かった。
お互い自分の分の装備だけを外し、残りの部分は相手の手によって次第に
脱がされていく。

「セレスト…もうちょっと丁寧に脱がせてくれ…ちょっと痛いぞ」

「も、申し訳ございません! カナン様」

 二人とも緊張していたが、より緊張していたのはセレストの方だった。
けれどたまに引っ掛かっていたが、こうして相手の服を脱がすのは意外に
楽しい行為だった。

「たまにお前に服を着るのを手伝ってもらうが、脱がされたり、お前を脱がす日が
来るなんて考えた事もなかったな…」

「それは私も同感です…」

 自分だってこんな展開、まったく予想していなかった。
 そうやって言葉を交わしながら、二人はお互いを全裸にした。
相手に肌を晒した事くらい温泉や風呂とかで何度かあるが、こういった形では
初めてだった。
 否応無しに、特に組み敷かれているカナンは激しい羞恥を感じていた。

「…あまり見るな…恥ずかしい…」

 自分だって、今カナンの前で全てを晒している。恥ずかしいのは同じだ。

「心配しなくても、カナン様はどこもキレイですよ…」

 それは本心からの言葉だった。
今自分の下に在るカナンの身体は、まるで若木のようにしなやかで均整の取れた
ラインを描いていた。

「お前だって…その…しっかりした筋肉とか…キレイだと思う…」

 セレストの身体は細身ながら全身に筋肉がキチンとついて、こちらも均整の取れた
健康そうな裸体をしていた。
 しかしカナンが少年のラインなら、彼の方は青年…大人の男の身体だ。

 普段の態度や優しげな顔立ちからは想像出来ないくらい、しっかりとした体格だった。
 二人とも相手の顔と身体を交互に見比べながら、少し硬直していた。
  お互いに羞恥心で何とも言いがたい気持ちを感じていた。
 しかしこのまま先に進まぬ訳にもいかない。

「あの…失礼致します…」

「う…ん…」

 セレストがカナンの首筋に唇を這わせながら、胸の頂きに触れる。

「痛っ!」

 カナンの顔が、苦痛に歪んだ。どうやら指先に少し力を入れすぎたらしい。

「セレスト…もう少し優しく…してくれ…痛い」

「す、すいません…」

 そう言いながら、今度は壊れ物に触れるように愛撫を始めた。
こんな微妙な触れ方で感じるのだろうか疑問があったが、全身敏感になってる
カナンにはこっちの方が感じるらしかった。
 今度は、触れるごとにカナンの身体が反応を返し始める。
 首筋から鎖骨、そして胸の頂きの片方を口に含み、もう片方は手で愛撫を続けた。
すでにツンと尖っていて、コリッとしたそこを弄ぶのはかなり興奮した。

「やっ…一緒にするな…ヘンな気持ちになる…」

「ヘンな気持ちになっているんじゃないですか、今…」

 確かにその通りなのだが、他者から与えられる刺激に慣れていないカナンには、
快楽は心地よいものというより、未知の恐怖を伴うものだった。
 セレストが相手じゃなければ…多分、怖くて逃げ出したいくらいだ。

「あっ…ふっ…」

 喘ぎ声が思わず洩れた次の瞬間、空いていたセレストの手が下肢に伸びて
いくのを感じた。
思わず、叫び声を上げてしまった。

「お前! どこを触って…うっ…」

 カナンの口からうめき声が零れる。

セレストはカナンのモノに触れ、そして自身の身体も少しカナンの下肢の方にズラした。

「私にお任せ下さい」

 とリードしたのは良いが、はっきり言ってどうすれば良いのだろうか…。
 試しに自分で行うように、まず余った皮の部分を上下に動かす。
 するとカナンの顔の赤らみが一層濃くなる。
 どうやら感じるポイントは誰でもそうは変わらぬものらしい。

「…やっ…」

 微かに洩れる、カナンの少し鼻に掛かった声が余計にセレストを興奮させていく。

「お目を…閉じて下さい…」

 そうして、カナンのモノを口に含んだ。
 不思議と嫌悪感はまったくなかった。
 相手がカナンでなければ、そうはいかなかっただろうが…。

「お前…どこを…」

 カナンが慌てて引き剥がそうとするが、力で彼がセレストに敵う訳が無い。
 唇と舌で嬲られる度に、弓なりにカナンの背が反り返った。
 今までとは比較にならない感覚だ。
 だがどんなに恥ずかしくても、セレストの言う通りに目を瞑るのは何か癪だった。

「僕は…見てるぞ。最後まで見てるからな…」

「どうぞいくらでも…」

 唇を外し、セレストが応える。
 こんな所がカナンらしいとセレストは思った。
頬を赤らめる彼も可愛いと思うが、こうした気丈な所も青年は好ましく思っていた。
 引き剥がそうと力を込めていた手が、セレストの青い髪を優しく撫ぜるように
動作を変えていた。
強い、碧の双眸が自分の方に向けられているのが判る。

「アァァァ!」

そして間もなく少年はセレストの手で絶頂を迎えさせられていた。
 カナンは顔を真っ赤にしながら、セレストに対して膨大な文句をぶつけていた。
絶対に仕返ししてやるという言葉は青年の背筋をひやりとさせていたが…。

(この人なら…カナン様なら絶対にやる…)

 そんな刺激が強すぎる現実は、出来れば遠慮したい…と言い切れない自分が悲しい。

「勘弁して下さい…刺激が強すぎます…」

 その言葉に、少年の顔は複雑そうな色を称えていた。

「けれど…これで刺激が強いなら、この先はどうするんだ?」
 
 その言葉に、セレストは迷いを隠せなかった。
 確かにカナンを抱きたいという気持ちは自分の中にはある。
 だが、まだ主を傷つけるかも知れない…その恐れも同時に感じていた。

「この先があるんだろう。僕を最後まで抱かないつもりか?」

 あまりにストレートな言葉に、セレストの方が恥ずかしくなる。

「本当によろしいんですか?」

「僕はLV18の冒険者だぞ」

「なら私は、この件に関してはLV1も同然ですよ。それでも構いませんか?」

 その言葉に、カナンの目が大きく見開かれた。予想もしてなかった返答らしい。

「LV1って…セレスト、もしかして今まで誰とも…」

「23にもなって恥ずかしながら…今回が初めてです…」

 カナン以上に顔を真紅に染めながら、セレストはその事実を告白した。
 一応恋人が今までにいなかった訳ではなかったが、彼女とキスをして間もなく、
彼女と約束してた日にカナンが風邪で熱を出してしまった。
 風邪ひいて辛そうで、自分に側にいて欲しいとぐずる主を置いていく事など
当然彼には出来ず、カナンを優先した結果、振られてしまったのだ。

「それじゃ本当に…あのキス以外に白鳳とは何もなかったんだな…」

「する訳がないでしょう。カナン様がいるのに…」

 セレストがこんな事で嘘をつく人間じゃない事を、カナンは良く知っている。
彼は青年のその言葉に安堵と喜びを覚えていた。
 カナンにとってセレストは一番側にいながら、どこか遠くにいる存在だった。

 実力も国で二番目と言われて自分よりずっと強くて、年も結構離れていて…
年齢の分だけ積まれた経験だけはどうやっても自分に追いつく事は出来なかった。
 だから一緒に冒険にしようと思いついた時、あの呪いの足輪をつけたのだ。

そうしなければ自分はただ彼に守られるだけになってしまう事は、
容易に予測出来たから。
 今回こうやって肌を重ねた時も、以前にもこうやってセレストが
触れた人間がいるのだろうか…そんな不安がカナンの中にあった。
 けれど、今の言葉でそんな事はどうでも良くなった。

「僕は…嬉しいぞ、セレスト…」

「えっ…! カナン、様…?」

 主のこの言葉もまた、彼にとって予想外の言葉だった。

「僕だって初めてなんだ…あの時みたいに無理やりじゃなくて… お前にも
LV1同然の事があって…それで共に歩んでいける事があるんだ…嬉しくない訳ないだろう」

 その言葉に、セレストの胸が熱くなる。
両手でカナンの顔を包み込んで、互いの瞳を覗き込んだ。
 迷いのない、毅然とした眼差しだった。

「カナン様…出来る限り、貴方に負担を掛けないように致します。だから…
先に進んで宜しいですか?」

「うん…いいぞ」

 そして、再び深い口付けを交わし始めた。
 少しでもカナンの不安を取り除くように、自分の心が彼に伝わるように…。
 キスを続けながら、カナンの双丘に手を伸ばして手探りで後口を解し始める。
やはりセレストにそこを触られると、少年の身体は強張りを隠せなかった。

「怖いですか…?」

「僕は大丈夫だからな…」

「はい…」

 強がりを言いながらも、傍から見て判るくらいにガチガチになっている。
しかし一つになる為にも、少しでもカナンの負担を減らす為にも解さない
訳にはいかないだろう。

「うー…。何かヘンな感じだ。ゾワゾワしてきた…」

 やはりあまり愛撫が上手くないセレストの手では、感じるまではいかないようだ。
セレストだって未経験なのだから、どこに触れれば感じるか何か判らない。

「あの…苦しいですか?」

「セレスト…もう良いから、その…最後まで…」

 カナンの大胆な発言に、セレストは一瞬頭が真っ白になった。

「このまんまそこを触られ続けても…何か覚悟が鈍ってくるような気がするから…
頼むから最後までやってくれ…」

 青年は主を諌めようとしたが、相変らずその眼光は揺らぐ気配がない。
こうなった時のカナンは絶対に退かない。
今日何度も思い知らされているが、改めて思った。

 とことんこの少年の強情は、筋金入りなのだと…。

 セレストもまた覚悟を決めた。
カナンの上に覆い被さり、自分のモノをカナンの後口にあてがった。

「いきますよ…力を抜いていて下さい…」

「わかった」

 セレストの言葉に、唾をゴクリと呑んでカナンは挿入を待ち構えた。
少しずつまだ堅い、カナンの入り口に自分のモノを押し進めていく。

「……っ!」

 押し込められた瞬間、セレストの熱い鼓動が嫌でも伝わってくる。
 先っぽが引っ掛かっただけで、入り口が裂けてしまいそうだった。

「カナン様! 大丈夫ですか」

 一旦押し進めるのを中断して、セレストが声を掛ける。

「良いから早く! ここで止めたら許さないからな!」

 身体を退こうとするセレストの背を、両腕でしっかり捕まえていた。
これでは止める事など出来はしない。
 自分も快感を感じる所ではない。
キツいカナンの中では、まだ痛みを伴うだけだった。
やはり慣らしが足りなかったようだ。しかしカナンが自分を放す気配はない。

「判りました…」

 セレストは観念して、カナンの最奥まで自分のモノを侵入させる。
すると、どこか出血したらしく最初は乾いていた中が、湿り気を帯びたようになっていた。

「痛…痛い…」

 涙目になりながら、カナンが自分にしがみ付いてくる。
「なら…」

「絶対に嫌だ!」

 セレストが提案をする前に、カナンは叫んだ。

「カナン様!」

 けれどセレストも簡単に譲る事は出来ない。
カナンが大切だからこそ、傷つけたくなどないのだ。
これ以上進めれば、彼に苦痛を与えてしまうだろう。

 だが、涙で濡れた目でカナンはこちらを捕らえる。逸らす事など許されない光だった。

「…嫌だぞ。ここで止めたら、お前はもう二度と僕を気遣って触れない気がする…
そんなのは嫌だ…」

「………」

 そうかも知れない。
こんなに痛々しげなカナンを見てまで、自分の欲望を優先させる事など
セレストに出来はしない。

「僕はお前をもっと感じたい…僕だけ気持ち良くして終わるなんて…
そんなのは不公平だ。痛くったって良いんだ。最後までしてくれなきゃ…駄目だ」

「ですが…」

「僕はお前を好きだ。お前もそうじゃないのか?ただ僕を弄んでるだけなのか!」

「そんな事、ある訳ないでしょう!」

 セレストもまた、叫んだ。
こんな事…中途半端な気持ちで何かで出来やしない。特に大事過ぎる相手に…。
 それ以上の言葉を塞ぐように、唇でカナンの口を封じた。

「私はカナン様を愛しています…それだけは信じて下さい…」

「判ってる…」

 苦痛を与えられる事よりも、カナンにとって一番怖い事は、このまま
二度とセレストと触れ合えなくなる事だ。
それがようやく理解出来た青年は、覚悟を決めた。

 カナンの両手に自分の手を重ねて、セレストは律動を開始させた。
そしてカナンの瞼や額、頬や鼻筋にキスの雨を降らせていく。
 少しでも自分の想いが伝わるように…カナンの心を解すように…。

 セレストが中で動く度に、快楽ではない感覚で少年の身体は激しく反応していた。
 しかし何度か律動を繰り返すと、最初よりかはスムーズに出し入れが
出来るようになった。
リズムも、少しずつだが一致していくようになる。

「アッ…」

 初めて、苦痛以外の色が込もった声がカナンの口から漏れた。

「カナン様…」

 痛みに耐えてでも自分を受け入れようとしてくれてるカナンが、
どうしようもなく愛しい。
少しでも苦痛が和らぐように、キスと胸の頂きの愛撫を繰り返す。

「好きです…お慕いしています…」

「…セレスト…僕だって…」

 その相手の言葉に、二人は至上の喜びを感じていた。
  今はただお互いに、相手を想うしかなかった。
 その気持ちが、最初は苦痛しか齎さなかった行為を変えていく。
 初めはただキツく痛みしか感じなかったカナンの中が、しっとりとその熱で
セレスト自身を包み込んでいく。
 カナンもまた、少しずつだが痛み以外の感覚を感じ始めていた。

「何か…お前が僕の中にいるのって…悪くないな…」

 ポツリと呟いた言葉は、セレストには届いたのだろうか…。
 セレストもまた、限界を感じていた。セレストの動きも鼓動も息も激しさを増し、
頂点を目指して動き続ける。

『愛してます…』

『僕も…』

 そうその耳元で囁いたのと同時に、カナンは小さく応えた。
 そしてその直後、セレストはカナンの中で果てたのだった…。


 ※これは二本目に書いた王レベ話になります。
 書いたのは2001年の頃だった事は辛うじて記憶に
あります。
 最初に書いた五本は何となく覚えていますが、それ以後は
順番とかは細かく覚えていません(汗)
 ただハマりたてで、勢いで書いてしまった…そういう
懐かしい思い出が伴う作品でございます。

 セレストが初体験だったら、という今思い返すとちょっと
酷い設定の話だなって我ながら思いますけど(笑)

 地上から僅かに指し込んでいる光が、揺れる水面に反射していた。
ここは古き時代の遺跡の跡地。
 六百年もの昔に堕天使ウルネリスを封印した英雄、
ルーシャスが使役した聖幻獣が眠る場所。

 辺りには、八翼の一人フォンテーヌとの激戦の跡が色濃く残されている。
そしてカナンの命で聖幻獣が再び眠りについたその場は、凛とした清浄な空気
が支配していた。
 そこでセレストとカナンは、互いを決して離さぬように抱きあっていた。
 先程カナンに自分はお前にとってどうゆう存在だという問いに対して、
セレストは正直に己の想いを相手に告げた。

 それだけで終われば、主従の心温まるやりとりで済んでいるのだが今もなお、
二人は相手の身体を離そうとはしなかった。
心臓の音が、体温がいやでも伝わるくらいに密着していた。
今までそんな事をカナン相手に意識した事など…伝説の滝で一回あったが、
それ以外はまったくなかったのでこの時セレストは混乱していた。

「見てろよ…すぐに弟のようになんかでなくなってやるからな…」

 気のせいか、すぐ側にあるカナンの顔まで真っ赤になっている気がする。
どうしよう、何故かもの凄く可愛く見える。
 いや、前からカナンが自分の前で素直に感情を出す様は可愛らしいと口には
出さなかったが常々思っていた事だ。
 しかし…この反応は、自分が今感じている衝動は…。

(どうして俺は、カナン様にキスしたいなどと…)

 その薄い形の整った唇に触れたら、どんな感触がするのだろうか…。
 そんな事を考えている自分が恐ろしくなった。
カナンは仮にも主君だ。
そして自分はそんな彼を守ることを何より優先せねばならぬ従者の身だ。
 そんな恐れ多い事をする訳にはいかないのに、自分の理性とは関係無く
言葉は紡がれていく。
どんどんヤバい雰囲気になっていく。

「いえ…弟のようなというのも例えで…なんというか、本当に大切で…」

どうやって今カナンに感じている気持ちを表現すれば良いのか判らなかった。
自分の頬もまた赤く染まっていくのを感じる。

「本当に…大事な方で…ずっと近くにいて…御側で…」

 けれど、これは本当の気持ちで…。

幼い頃、まだ本当にカナンが当時の自分の腰くらいの背丈しかなかった時から、
ずっと自分にとってカナンはかけがえの無い人だ。
 そんなセレストの言葉に、カナンはどんどん真っ赤になっていく。
どう見ても照れてる事は一目瞭然だった。

「近くって、どれくらい近くだ」

 その問いに、セレストの方がぎょっとなった。

「近くって、これくらい近くか?」

「き、聞かないで下さい。何だかヤバいです」

「それを言うなら、僕の方だってヤバい」

 その言葉を吐いた後、カナンは顔を赤らめながら溜め息をついた。

「まいったな…人肌のせいか…離れたい気がしない…」

 ただでさえ密着してたのに、更に顔が寄せられる。
綺麗な造りの顔に、滑らかな肌。伏せられた睫毛は意外な程に長かった。

「だから…」

 時間が止まるような、張り詰めた空気が訪れる。
何が起こるかは予想はついていた。そして今なら、まだ引き返せるとも思っていた。

 だが触れ合ってる部分のカナンの体温がたまらなく愛しくて…。
 自分の中の衝動がまるで激しい奔流のように勢いを増していく。
  カナンの吐息がどんどん近づいて来る。
 そして自分は…迷った末に瞳を閉じて、その行為を受け入れていた。

「んっ…」

 初めて触れたカナンの唇は乾いていて、けれどほんのりと自分に温もりを伝えていた。

「そうゆう場合、離れたくないとおっしゃられる方が正しいです。文法的に…」

「うるさい」

 唇を離し、カナンの肩の付近にセレストは顔を埋めていた。

「私達。白鳳さんに毒されましたかね…?」

「知らん」

「それとも伝説の滝がまずかったんでしょうかね…」

「外部に要因を見つけるのは止めろ」

 そこで、こちらの心を射貫くように、自分の瞳をその青い瞳が覗き込んでくる。

「僕達二人の…気持ちの問題だろうが…」

 その言葉に、セレストは自分の心に嘘をつく事を止めた。
 先程のキスで、カナンもまた同じ気持ちである事はすでに察していた。
そして自分もまた、この先を望んでいた。
 今時分は堪らなく、カナンに触れたいと思っていた。
 だから勇気を振り絞って、目の前の愛しい金髪の少年にこう答えた。

 そうですね…と。


※前ジャンルの友達もこのブログをちょこちょこ覗いている
みたいなので、週1~2回程度の頻度で過去作品を掲載
していく事にしました。
 
 この作品は私が一番最初に書いた王レベ小説になります。
 今読み返すとやや文章が拙い感じが残っていますが…誤字脱字等
以外はほぼ修正せずにそのまま掲載してあります。
 少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

『優しい夜』               

 
あれは月の明かりが鮮やかな夜だった。
 何となくセレストの顔が見たくなって抜け出したのに、騎士団の宿舎には
彼がいなくて…そういう時は実家に戻っているか、同僚と飲みにいっている
かのどちらかだと体験的に知っていたカナンは町にまで足を運んだ。

(今日は顔を見せてやろうかな…)

 多分、自分がこんな時間に外をうろついている事を知れば、
あの真面目な男の事だ。
 またお説教を始めるに違いない。
 けれどお説教を食らうと判っていても、今夜は何となくセレストの
驚く顔が見たい気分だった。
 だが彼の実家に立ち寄って暫く家人の会話に耳を澄ませてみたが、セレストの声
らしきものは聞こえない。 次は酒場の並ぶ街道に足を運んだ。
 しかし、中まで入って確認する訳にはいかなかった。
 一応王族である自分が、迂闊に入ってはいけない場所である事は
何となく判っていたからだ。
 だから全部の酒場の入り口が把握出来る位置で、カナンは待つことにした。
 あの男の事だ。朝まで飲み明かすという事はまずない筈だ。
相手を慮って程々の所で切り上げる筈である。
 そう踏んで月が少し下降し始めだした頃、酒場からようやくセレストの姿が現れた。
やはり、自分の読みは正しかったとカナンは自慢げな気持ちになった。
 さぁどうやって姿を現して、あいつを驚かしてやろうかと目論んで…その思考は
すぐに中断する羽目になった。

(何故…白鳳が?)

 そのすぐ後に現れたのは、自分達の天敵である男の子
モンスターハンターの白鳳だった。 
 初対面の時からセレストを気に入り、彼にとって何度か危険な目に
遭わされた筈の相手である。
 何か、セレストの隠された部分を覗いているような気分だった。
 いや裏切られたような、そんな気持ちだった。
 今までの態度から、絶対に彼はあの危ない男を嫌ってるとカナンは
思っていたからだ。 だが現実はこうして二人は飲みにいく程親しくなっている。
あの態度はもしかしたら自分を欺く為…彼がそんな事出来る性格では
無い事は判りきっている筈なのについそう考えてしまう。
 更にカナンの気持ちをモヤモヤさせたのが、白鳳が妙にセレストに
ぴったりくっついて見えた事だ。

(セレスト! 何している。そんなぴったりくっついているのを何故そんな奴に
許している! 僕にだってそんな近くにいてくれない癖に!)

 いつもセレストは、自分より一歩下がった位置にいる。
 パートナーでいる時でさえその態度は崩れない。
 二人がイヤに親しそうに見えて、悔しかった。 
 もう我慢が出来なかった。二人の前に出てって驚かせてやる。
そう覚悟を決めた次の瞬間、カナンの頭は真っ白になった。

 二人は、月明かりが浩々と照らす中で口付けていた。

 信じられないものを見た気分だった。やはり二人は…自分の知らない所でいつの
間にかくっついていたのだ。
 もう当初のセレストを驚かしてやろうという気持ちは完全に吹っ飛んでいた。
 その後どうやって自分の部屋に戻ったのかも…カナンは思い出す事が出来なかった。

                    *

「カナン様! どうなさったのですかっ?」

 激しく肩を揺さぶられながら、聞き慣れた声が耳に飛び込んでくる。
 過去の情景に心を置いていたカナンには、すぐに状況が把握出来なかった。
 目の前に、綺麗な青い髪と心配げに揺れている緑の瞳がある。
 自分の側にずっといた従者でありパートナーであり…そして…。

「う…ん…」

 身体が重い。思考に霞が掛かっているようだ。
 それでようやく自分が今まで寝ていたという理解する。
 肩を揺さぶられる度に、ベッドが軋む。今、自分が彼に覆い被されるような
体勢になっていた事を自覚し、途端に顔が真っ赤になった。

「わわわわっ! カナン様!」

 こちらの顔が赤く染まっている事に気づくと、相手も意識し始めたらしい。
 慌てて飛びのこうとするが、カナンはその腕をガシッと掴んだ。

「カナン様…?」

 主の不可解な態度に、セレストは固唾を呑んで見守る。
 上気した顔がこちらを真っ直ぐ見据える様が…何とも色っぽくて
セレストの心を煽る。
 そして、カナンの唇と手がゆっくりと動き始め…。

ドガァ!

 いきなり会心の一撃がセレストの頬に命中した。

「な…何をするんですかぁ! カナン様ー」

「うるさい黙れ! 一度くらい黙って殴られろ!」

 相変らず、ご無体全開の王子である。訳も判らず殴られても、やっぱりさっきまで
物凄いうなされ方をしていたカナンを放り出すという事は、彼の頭にはなく…。

「あの…私、カナン様を怒らすような事を何かなさいましたか?」

「したんじゃなくて、されたんだろう、馬鹿者」

 何の事を言われているのかさっぱり判らない。

「お前が…白鳳に…」

「はぁ?」

  最初は何を言われているか把握出来なかったが、それが以前白鳳に
不意にされたキスの事を指していた事を少し経ってから理解した。

「あの時の…夢を見てたんだ。それで…」

「それで?」

「うなされてた。情けない話だ…あれから随分と経つのに、まだ僕は拘っていたようだ。
もうお前は…僕の恋人なのにな…」

「カナン様…」

 どうやらカナンが嫉妬していたらしいという事が判って、セレストの方が照れ始めた。
だが、それは目の前の主も同様だった。
 顔の赤みは引く事無く、今度は顔を俯かせた。
 けれど耳まで赤いのでまるで隠していないのに等しい。
 その姿勢のまま、カナンの細い指先がセレストの頤に触れる。
 そして言葉も無く頬を、唇をゆっくりと辿っていく。
 特に唇を重点的になぞっていた。それだけで、ゾクリとしたモノが背筋を走って行く。

 ヤバい、限りなくヤバい。

 あの日以来カナンに触れていないセレストには、それだけで理性が
焼き切れてしまいそうな誘い方だ。 しかも今は夕食が終わって、
そろそろ就寝の時刻だ。
 この時間帯にはまず自分以外の人間がカナンの自室に訪れる事もない。
 状況は揃いすぎている。
 急いで身体を離そうとする前に、瞳を覗き込まれた。その青い双眸が
自分の身も心も捕らえていく。

「セレスト…」

 消え入りそうな声で自分の名を呼ぶ。もう、抗えない。

「ん…」

 久しぶりに触れたカナンの唇は、途方もなく甘く感じる。
カッと熱いモノが背筋を駆け上って行く。
 その柔らかさが、温もりがたまらなく愛おしかった。
 気がつくとその身体を抱きすくめ、唇を貪っていた。
 セレストの舌が歯列を割り、その舌を絡めとっていく。
 時折角度を変え、息を吹き込んだり、上顎の所をそっと優しく舐めるとその度に
カナンの身体がビクリと反応する。

「相変らず、敏感ですね…」

「ば…か…」

 唇を離して、耳元でそっと囁く。
 ついでに息を吹きかけながら、耳たぶや耳の後ろまで、丹念にキスしていく。
 セレストの手が首筋をそっと撫で、ようやくカナンの着衣に手を掛けていく。

「待て…お前も…」

「はい。それではお互いに…」

 あの湖のダンジョンの時のように、二人はお互いを愛撫しながら着衣を
脱がしっこした。 カナンはセレストの頬や髪に触れながら、セレストは
胸や首筋のラインをなぞり、口付けながら服を取り去っていく。
 鎧等の装備のない分だけ、あの時より脱がせるのは楽だった。
 セレストの方は腰に下げた剣だけ自分で外して、ベッドの脇に
静かに横たえる。
 何かあった時はすぐ手に取れる位置だ。こんな時でも彼の職務に忠実な
性格が良く現れていた。 
 二人は一糸纏わぬ姿になると、ベッドに倒れ込みもう一度抱き合い
ながら深く口付け合う。
その間セレストの指は上半身を忙しなく蠢き…胸の頂きで止まった。
 ツンとすでに反応しているそこを、両手で優しく触れ…時に抓りながら
同時に責め続けた。カナンの唇から、熱い吐息が洩れる。

「ン…ハァ…」

 キスの合間に、すぐ側にあるセレストの唇に吐息が掛かる。
 それだけで、更に彼の欲情を煽って行く。 反応する身体が堪らなく愛しい。
 この顔も、この行為も全て自分だけに許された特権だ。
 それが、更にセレストを熱くさせた。 カナンのモノに触れようと
身体をずらし始めた矢先。

「うりゃ!」

「どわっ!」

 先手必勝。カナンが思いっきりセレストをひっくり返した。

「カ、カカカカナン様っ?」

「…今、何度カを繰り返した?」

「そ、それよりも…うっ!」

 カナンはいきなり、セレストのモノを咥え始めた。
 突然のカナンの行動に、彼の状況判断能力はついていけないようだった。
 いつの間にかカナンはセレストの脚の間にいた。
まだセレストが反撃出来ない内にカナンの舌と唇が、彼の一番
敏感な部分を攻める。

「だ、駄目です! カナン様…」

 セレストの泣き言に、カナンは一旦唇を離して答えた。

「うるさい! いつか仕返しするって前から宣言してただろう! 
大人しく僕の手でイッてしまえ!」

「カナン様―!」

 先程までのセレストの優位はどこへやら。
 引き剥がそうにも、すでに感じ始めている彼の身体は、すでに力が入らない。

(この人だってあんなに感じてたのに…良くこんな事を…)

 それはカナンの強靭な精神力の賜物である。
 まさかあの瞬間に反撃をされるとはセレストだって思っていなかった。
 しかも拙いながらもオズオズと咥えているのが、皮肉にもセレストの
一番敏感な先端を丹念に刺激する結果になった。
しかも、ビジュアル的にも途方もなくクる光景である。
 あの時のカナンのように、セレストも目を逸らす事など出来ない。
それが余計に青年を追い込んで行く。

(駄目だ…! もう…!)

 ついに耐えられず、カナンの口内に精を放つ結果になった。

「僕の気持ちが…判ったか?」

 受け切れず、唇の端に伝う白濁の液が、何とも卑猥に映った。
 セレストは慌てて手の甲でそこを拭い、清めた。

「十分過ぎる程…けど、もう止めてくださいね…」

 泣きそうになりながら、セレストが哀願する。
 あんなのはもう視覚の暴力以外の何物でもない。
 本当に頭の芯が焼き切れてしまいそうな快楽ではあったが…。

「どうしてだ?」

「どうしてもです」

 とんでもない事をしでかしたばかりなのに、問い掛けてくる少年の目は無邪気で…。
 これ以上の言葉を封じるように、セレストは有無を言わさずカナンの唇を塞いだ。

「うっ…ン!」

「カナン様…」

 セレストの舌が、容赦無く相手の舌を絡め取り、きつく吸い上げる。
 唇を離すと、性急にカナンの全身を満遍なく愛撫していく。
 先程のゆったりした感じはなく、動作もどこか荒っぽさがあった。

「ちょと。あっ…セレスト?」

「貴方が…悪いんですよ…」

 カナンのモノを、セレストの手が捕まえる。
 すでに怒張しているそれを、青年は容赦なく追い込んで行く。
 左手を胸の頂きに添えながら、右手と口で愛撫を始める。
やや痛みすら伴うそれも、身体に火がついた今では快楽を与える結果になる。

「バカ! お前僕の気持ちが判ったばかりで…こんな…アッ」

「ですが…貴方には私の気持ちは判らないでしょう?」

 カナンはきっと知らない。
 あんな事をされたら、カナンを欲しくて堪らなくなるという、この狂暴な
感情の存在の事は。 先端を弄られる度に、湿った音がイヤらしく響く。
 敏感な部分に唇を添え、余った皮を上下に的確に動かしていく。
 瞬く間に、カナンは絶頂を迎えさせられる。
 そして自らの放った精を、手で後ろの口に塗り付けられて、
更に少年は顔を赤らめた。

「アッ…ヤダ…」

「カナン様…力を抜いて…」

 耳元で囁きながら、何度もセレストはその場所を解し始めた。
 少しでもカナンの負担を減らしたかったからだ。

「そんなトコ…じっくり触るな…うっ」

 カナンの感じるポイントに辿りついたらしく、大きく身体が跳ねる。
爪の先まで浮いてしまいそうな感覚が、大きな奔流のように襲ってくる。
 何度も拒絶の言葉を吐いていたが身体に力が入らないらしく、その抵抗は
微々たるものであった。
 一度放ったばかりのモノが、再び硬度を取り戻した頃を見計らってセレストは
カナンの上に覆い被さった。

「もう…大丈夫そうですね」

「来るなら…早く…しろっ」

 こんな時でも気丈なカナンの態度にセレストは微笑みながら
指を引き抜き、代わりに
自分のモノを当てがう。そしてじっくりとカナンの最奥まで進んでいく。
きつくて熱い、愛しい人の熱が青年を包んだ。

「大丈夫ですか? カナン様…」

「ン…平気だ。けど、もう少し…」

 顔を真っ赤にして、それ以上の言葉の言えない主の意思を、青年はすぐに察した。
 軽く微笑んで額に口付け、そっとその黄金の髪を撫ぜた。

「判りました…それでは暫くこうしていましょう」

 暫しの間、セレストはカナンの中で殆ど動かずに収まっていた。
 それだけでも放ってしまいそうなくらいの締め付けであったが、
彼は懸命に耐える。
 そうこうしている内に、カナンの表情に余裕が生まれてくる。
 少しだが、慣れて来たらしい。そろそろ大丈夫だろうと、セレストは伺いを立ててみた。

 「あの…そろそろ、動き始めてよろしいでしょうか…?」

「うん…」

 珍しく主の甘えたような声に、更にセレストの心が熱くなる。
 普段のカナンなら絶対にうんなど言ってくれない。だからこそ
余計に可愛く感じる。
 最初は緩やかだった律動も、カナンの口から甘い嬌声が零れる度に
激しくなっていく。
 特にその声が一際大きくなる、さっき見つけたばかりのカナンの感じる
場所をセレストは重点的に擦り、攻めていった。

「アッアッ!…ウゥ!」

 声を殺す事も忘れ、カナンはその熱に翻弄される。
 初めてした時は、圧迫感と苦しさが伴っていたが、今セレストの
動きから齎されるものは純粋な快楽だった。
 頬や額、そして唇に口付けを繰り返し、セレストはその間も胸の
頂きや脇のラインへの愛撫を忘れなかった。

「カナン様…可愛い…」

「バカ…言うな」

「ですが…本当のことですよ…」

 そういってこめかみに優しくキスすると、うーと言いながらカナンは黙った。
 こんな状態では拳を振るう事も出来ないと悟ったらしい。
 そんな彼をセレストは緑の瞳を優しく細めながら、見つめていた。
 どこに触れても、反応を返すカナンが愛おしい。
 そうしている内に二人のリズムが重なる。
 鼓動が、吐息が、動きが…そして心の全てが頂点に向かう為に一つに重なって行く。

「セレスト…セレストッ…」

「カナン様…!」

 二人とも、互いの名を必死に呼び合い…。

「アァァァァ!」

 カナンの一際高い声が室内に響くと同時に、セレストは愛しい
人の中に精を放ったのだった…。

                  *

 すでに冷たくなった風が、窓から緩やかに吹き込んで来る。
 カーテンが風に靡き、冴え渡る月明かりが静かに射し込んでくる。
 もう空気も澄んで来ている季節だ。
 窓を開けて眠るにはきつい季節だが、今カナンは寒さなど感じていなかった…
自分のすぐ側に、大事な人間の温もりがあるから…。

「もう安心しましたか…?」

「あぁ…」

 ベッドの上でセレストに腕枕をしてもらいながら、カナンが頷く。
 二人はすでに服を着ていた。
 流石に朝まで一緒にいる訳にも、ここで夜を明かす事までは
二人には許されていなかった。 それでも、セレストはギリギリまで
カナンの側にいるつもりだった。

「私はもう、カナン様しか見えませんから…今度白鳳さんにあぁやって
誘われても絶対に断りますから…」

「そうしろ。あいつは隙を見せると、ロクな事にならないからな…」

 不意チュー然り、伝説の滝然り、そして最後のダンジョン然り…。
 確かに散々、彼には苦渋を舐めさせられた。けれども…。

「けど、一つだけ良かった事もありますけどね…」

「在るのか? そんな事が?」

 物凄い言われようだが、彼の所業を考えるとまあ仕方が無い事かも知れない。

「カナン様への気持ちに、気づけた事です」

 予想もしてなかった答えに、カナンの目が見開かれる。

 「多分白鳳さんが現れなかったら、きっとこの気持ちに気づくことはなかった
と思います…それだけは、実は感謝しているんですよ」

「本当にか?」

「嘘言って何になるんですか? そりゃ確かに可愛い妻を貰って
幸せな家庭を築くという夢にまったく未練がないとは言えませんけれど…」

「…後悔してるんじゃないか」

「…人の事まったく信じてませんねカナン様…けど、それよりも貴方のお側にこうして
いられる事の方が私には大事ですよ…」

 その言葉に、カナンの不安は取り払われていく。

「僕だって…お前の事」

「判っていますよ…」

 クスクス笑いながら、二人の唇が自然に重なる。本当は
もっと一緒にいたいけれど…。
 カナンはセレストの立場を考え、その甘えを噛み殺して呟いた。

「セレスト…もう戻っていいぞ」

「…判りました」

 二人は名残惜しげに、身体を離した。
 セレストの温もりが離れていくのは寂しいが、カナンの胸には
先程の不安はなかった。
 自分は彼に誰よりも愛されているから。
 それを信じる事が出来るから。

「おやすみなさい…カナン様」

「あぁ…おやすみセレスト」

 最後にそっとカナンの黄金の髪を撫ぜながら、セレストは立ち去った。
 優しい気持ちが、彼を満たす。
 きっと夜を共に過ごすことは出来なくても。
 朝になれば、絶対に彼と会えるから…。 
 そう考え、眠りに落ちたカナンの表情は、どこまでも安らかで
満たされたものだった…。

                                                       

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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