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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 これは2001年の秋ぐらいに書いた、王レベの
創作3本目に当たる話です。
  キリリクイラストを書いて貰ってそのお礼に…と書きあげた
話だったんですが、一枚の絵に対して19ページの小説を
仕上げて書いて来る一般人(当時、HPはまだ作ってなかったし
…サークル活動も開始してなかった)って良く考えたらどうなんだろうって…
当時の自分にすげーツッコミ入れたい…。
  今とパワーが違うよ、十年前の自分…。
  そして贈った人に、タイトルをどう読むか判らないと聞かれてしまった
切ない思い出のある話だったりします。
(一応、ゆううつちょう…と読む)
  とにかく、セレストが振りまわされる不憫な話ですが当時は非常に
楽しんで書いた記憶があります。
  良ければ読んでやって下さい。

『ドラグ温泉憂鬱帳』


 すでに秋も深くなり、冬へと移り変わろうとする時期。
 ルーキウス城の庭の全体が見渡せる位置にあるテラスで、
セレストは一人黄昏ていた。

(何たって最近はこんなに忙しいんだろうか…疲れた…)

 あのカナンとの冒険と、堕天使ウリネリスの一部である二人の策略に
巻き込まれている間に青年がこなさねばならぬ業務は溜まりに
溜まりまくっていた。
 あれから二週間が過ぎ、いつも通りの平穏な日々が戻ってきているが、
彼の仕事の方はようやく本日の午前中をもってようやく一段落がついたと
いう感じだった。

(冒険に出てる間は、新人の稽古にもロクにつきあってやれなかったから仕方ないと
いえば仕方ないのだが…)

 久方ぶりに自分が直接稽古をつけるようになった事で、新人や部下が皆張り切って
こちらに挑みかかってきたのだ。
 そのせいか、連日筋肉痛が抜けなかった。
 カナンの謀略のせいで呪いの足輪をつけられ、LV1になってから暫くの間は、はっきりいって
部下より弱くなってしまった為、稽古をする所じゃなくなっていた。
 今は辛うじてLV20前後はある為、どうにか取り繕っていられるが…それでも
以前の半分であり、実力も遠く及ばない。
この有様では新人や部下を相手にする時はともかく、自分の上司である騎士団隊長の隊長や、
父のアドルフと手合わせすれば一発でバレてしまうだろう。

(けれどそれよりも、問題はカナン様の方だよな…)

 最近業務に追われていたせいで、あまり彼の傍にいられなかった。あの戦いを
終えた直後、気持ちを確かめあった訳だが…。

(やっぱ可愛かったな…あの時のカナン様…)

 あの事があってから、主を意識している自分がいる事に気づいていた。出来るだけ
一緒にいる時間を大切にしたいのに、ここの所日中は殆ど側にもいれなかった。

(今日の午後は久しぶりに、二人で過ごせるな…)

 特に何かを考えている訳ではないが、カナンと一緒に過ごせるならただゆっくりと
くつろいでいるだけだって良い。

(どうしているかな…カナン様…)

「セーレースート!」

 いきなり背中に暖かな感触を感じ、セレストの背が強張った。
この声…聞き間違える筈が無い。今自分に抱き着いている存在は…。

「カナン様!」

 たった今、考えてた人が現れた事で青年の気は動転していた。

「今日の午後は久しぶりに一緒に過ごせるんだろう? そう騎士団の方から伝達が
来たのでずっと捜してたんだぞ」

「えっ、あ、そうですね…」

 暫く午後にずっと一緒にいられなくなったと言っても、毎日顔を合わせてはいる。
しかしこうして日の下にいるとカナンは本当に輝いて見える。
 満面の笑顔と、その鮮やかな黄金の髪が本当に眩しい。ガラにもなくセレストは
ドキドキしてきた。
顔まで真っ赤になっていくような気がする。

(こら…俺の鼓動静まれ。こんな所でカナン様を意識している所を誰かに
見られたらどう言い訳するんだ?)

 症状はさしずめ動悸、息切れ、眩暈といった所だろうか。

「セレスト…どうしたんだ? 具合が悪いのか…?」

「だ、大丈夫ですよ。ちょっと訓練の疲れが残っているだけですから…」

 そう言ってその真っ直ぐな碧い双眸をこちらに向けてくる。
セレストはこちらの内心の動揺を悟られるんじゃないかとひやり、となる。

「疲れているか…僕の目には憑かれているように映るぞ」

「は? つ、憑かれているって私が何にですかっ?」

「白鳳の生霊」


『……は?』

 予想もしてなかった答えに、セレストの頭は真っ白になる。

「あいつのお前に対する執着は半端じゃなかったからな…何というか、離れていたって
オーラか何かを残しているんじゃないのか?」
「カ、カナン様! 冗談はお止め下さい! そ、そんな非現実な事…」

 と、言いつつもあの男なら本当に自分にそれくらいのモノは残しそうである。

「いーや、判らんぞ。案外僕らが最近一緒にいられなかったのはそのせいじゃないのか?

 僕が最近目を通したJAPAN製の古典には、すでに妻帯している美男子に惚れ、
その細君を呪い殺す女の生霊が出てきたし…」
「やーめーてーくーだーさーい!」

 セレストが両手で耳を塞ぎながら、頭を振る。

「そんな事言ったら、まるでカナン様が白鳳さんに呪い殺されるみたいじゃないですか!」

「男の嫉妬は女の五万倍というからな。その可能性も在るかも知れんぞ」

 フフフフと言いながら、カナンはセレストで遊んでいた。しかし当の本人はまだ
その事実に気づいていなかった。

「じゃあ私はどうしたら良いんですか? お払いでもした方が良いんでしょうか…」

「いや、ようするにお前が不幸オーラといおうか、白鳳の奴が好みそうな心理状態で
さえなければ問題ないと思う…それで提案だが…」

「はい…」

 息を呑みながら、セレストは主の次の言葉を待った。

「息抜きとして…温泉にいくっていうのはどうだ? ダンジョンは閉鎖されてしまったが、
あそこは危険な区域に立ち入らなければ問題ないしな」

「温泉って…ドラク温泉にですか?」

「ちなみにすでにリグナム兄上から本日の外出許可を二人分貰って来ている。
お前の疲れを労う為にといったら快く承諾してくれたぞ」

「はあ…?」

「僕を白鳳の生霊の餌食になどしたくはないだろ? そう思うんだったら大人しく
承諾した方が賢明だぞ」

 …あまりに話の流れが、カナンにとって優位な方向に動いているような気がする。
 だが、自分が疲れているというのも確かで…。そして最近カナンの側にいられなかった
のもまた事実である。
 これはカナンなりの気遣いかも知れないと考え、セレストは抗う事を止めた。

「…そうですね。骨休めとしては丁度良いのかも知れません」

 カナンの策略に乗せられていると判っていたが、セレストは承諾した。

「ホントか! じゃあ早速支度だ! すぐに準備を終えて僕の部屋に来い!」

 命令口調でありながら、その声の調子は明らかに弾んでいた。
小躍りでもしそうな軽やかな足取りで自分の自室に戻る様子を見て、セレストは
微笑を浮かべた。

「まったく…あの人は…」

 あぁいった無邪気で年相応の少年っぽい顔を覗かせている時が…もしかしたら
自分は一番好きなのかも知れない。
 クスクスと笑いながら、セレストは自室に戻って支度を整えることにした。
 うららかな、秋の昼下がりの事だった。


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プロフィール
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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