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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 先日、グッコミで発行した無料配布本…イベント自体に
来られた方が少なかったみたいなので、今回はサイトの方にも
掲載させて頂きます。
 無料配布本の方は、GO! GO! HEAVEN!5の方にも
受かっていたら持っていってこっそり残りを配布させて貰おうかな、と。
 とりあえず克克の縁日絡みの話というか、無駄にバカでエロいというか
眼鏡が微妙に策略家というかそんな感じの話です。
 投稿する際に文字数が多すぎます、とエラーが発生して
しまったので二回に分けて掲載させて頂きます。
(こちらは前編に当たります)
 興味ある方だけ、「つづきはこちら」をクリックして続きを読んで
やって下さいませ(ペコリ)

『スイート☆バナナ』

 

                              

 八月の初旬、佐伯克哉が住んでいるマンションの周辺では
縁日が開かれていた。

 お盆を間際に控えていて、今夜は珍しく残業もなく定時で
帰路についていた。

 シャワーを浴び終えて洗面所で身体を拭いて、シャツと
薄手のパジャマズボンだけという格好になっていきながら…
しみじみと呟いていった。

 窓の向こうから、微かに喧騒と太鼓と笛の音が届いてくる。

 

「祭り囃子だ…もう、お盆も近いんだな~」

 

 人気のない住宅路を歩いている最中、賑やかな夏祭り
特有の囃子が耳に届いて、
克哉はしみじみと呟いていく。

 湯上りで身体は火照り、窓から吹き込んでくる風が
酷く心地よかった。

 

「祭りか、音からしてこの近くでやっているんだろうけど…
もうお風呂に入っちゃったし…今から行くのもなぁ…」

 

 これだけ近くでお祭りをやっていると、ふと顔を出したいと
いう気持ちが湧き上がってくる。

 久しく縁日など行っていなかったからかも知れない。

 少しだけ焼き鳥とかお好み焼き、焼きそば等を食べたいと
いう欲求が生まれたが…せっかくシャワーを浴びて着替えた
ばかりなのだ。

 さすがに改めて着替えてまで外出するのは面倒すぎる。

 そう考えて、洗面所の扉を開いていったら…。

 

「…随分と出てくるのが遅かったな。待ちくたびれたぞ」

 

 と、ベッドの上に当たり前のような顔をしながら焼きイカを
齧っているもう一人の自分にばったり遭遇した。

 

「はあ?」

 

 まったく予想もしていなかった光景に出くわして、克哉の
頭は真っ白に染まりかけた。

 だが相手は平然とした様子で焼きイカをモグモグと
食べ進めていた。

 びっしり決まったスーツ姿。怜悧な印象を与える眼鏡を
掛けたもう一人の自分の姿を見ると、ほんのりと美味しそうな
芳香を漂わせているイカ焼きを食べているその姿が酷く滑稽に見えた。

 

「なっ…どうしてお前、こんなところにいるんだよ! しかも
人のベッドの上で当たり前のような顔してイカ焼きを食べているし! 
一体いつの間に部屋の中に入ったんだよ!」

 

「お前がシャワーを浴びている間に、ちゃんと堂々と
玄関から入ったぞ?」

 

「…って、オレはちゃんと鍵を掛けた筈なのにどうやって
入ったんだよ!」

 

「…お前はバカか? 俺はお前と同一人物なんだぞ? 
自宅の鍵ぐらい持っているのが当然だろうが」

 

「そ、そうだけど…いつの間に合鍵まで…」

 

 確かに相手が言っている言葉は正論だ。 自分たちは
確かに同一人物同士なのだから相手が自分の分の鍵を
いつの間にか確保していたって何の不思議ではない。

 

(その理屈は判るんだけどな…やっぱり納得がいかないって
いうか。つか、どうしていつも前触れもなくオレの部屋に
いるんだよ~!)

 

「…まあ、あまりグチャグチャ言うな。せっかくこの近くで
縁日が開かれているんだ。…という訳で今夜はお前にぴったりの
縁日ならではの食べ物を土産に持ってきてやった訳だから…機嫌を直せ」

 

「えっ…お前、何か買って来て持ってきてくれたのか…?」

 

「あぁ、お前に相応しい品をちゃ~んと調達してきてやったぞ…?」

 

 その一言を聞いた途端に、克哉の機嫌は一気に直っていく。

 この傲慢で、自分勝手を絵に描いたような正確のもう一人の
自分がこちらに対してわざわざ土産を買って来てくれた。

 その事実だけで、妙にくすぐったくて嬉しくて…拗ねていた
気持ちが一気に回復していく。

 

(…一体何を買って来てくれたんだろう…? お好み焼きとか、
焼きソバ…あ、焼き鳥辺りなんかだったら凄く嬉しいよな…)

 

 元々甘いものが得意な方ではない克哉は、祭り囃子を聴いて
つい、お祭りならではの食べ物に心を馳せていく。

 だが、次の瞬間に相手が袋から取り出した品を見て克哉は
硬直していった。

 

「ほら、これだ」

 

「……っ! ってどうしてよりにもよってそれを
買ってくるんだよー!」

 

 そうしてビニール袋から堂々とした態度で取り出した品を
見て克哉は絶叫せざる得なかった。

 そう、もう一人の自分が取り出した品は克哉が心に描いた
類の物ではなかった。

 むしろ克哉にとっては嫌がらせの類にしかならない物を
よりにもよって持って来ていたのだ。

 

「な、何でオレへのお土産がチョコバナナなんだよ! 
オレがバナナを好きじゃないって事は…同一人物なんだから
お前も知っているだろー!」

 

 そう、克哉が元来甘いものも、バナナもそんなに
好きではない。

 どちらかといえば辛党だし、酒だって甘いものよりも
辛口のものを好む。

 其れにバナナはそんなに好きじゃなかった上に過去に一度…
ろくでもない状況でもう一人の自分に食べさせられたものだから、
余計にトラウマになりつつあった。

 

「…ほう、お前がそんなにバナナを毛嫌いするとは意外だったな。
てっきりこれを見ただけで欲情して反応を示すと予想していたんだが…」

 

「なっ…! 何を言っているんだよ!」

 

 いきなり図星を突かれて克哉の顔が瞬時に真っ赤に
染まっていく。

 バナナから彼がどうしても連想してしまう出来事を、
その事実を恐らくもう一人の自分はとっくの昔にお見通しなのだ。

 

(ちくしょう…!こいつ絶対に、オレを恥ずかしがらせる為に
これを買って来たんだな…!)

 

 相手の不適な笑みを眺めていきながら、克哉はその体験を
改めて思い出してしまう。

 大きなケーキの上に生クリームでデコレーションをされた上に
口の中にバナナを突っ込まれながらもう一人の自分に好き放題
されるという異常過ぎる体験。

 なのに、チョコでコーティングされているとはいえバナナを
見るとどうしてもあの日の奇妙な興奮とか、強烈な快感が脳裏に
蘇ってしまって、身体が妙に熱くなっていく。

 

(あの日、あいつにバナナを食べさせられながら…あんな風に、
メチャクチャに、されて…)

 

 そう、だからあの日から克哉はバナナを直視することすら
無意識の内に避けるようになってしまっていた。

 見ているだけで、連想して喚起されてしまう。

 欲情して、嫌でも肉体が反応する。

 

「早く、それ…しまえよ! オレはそんなの、絶対に
食べないからな!」

 

「ほう…俺がわざわざ持ってきた土産の品を、お前は
拒絶するというのか?」

 

「あぁ、オレは絶対にいらない! バナナは嫌いだって
知っている上でそんなの買ってくるなんて嫌がらせ以外の
何物でもないだろ!」

 

「仕方ないな…なら、フランクフルトときゅうりのぬか漬け
スティックとどっちが良い? お前が望むならそちらに交換して
やっても良いが…そのままじゃつまらないから、俺のモノを
愛すように目一杯淫らに目の前で食べるというのならそれでも良いぞ」

 

「…は? って…一体お前の頭の中はどんな構造しているんだー!
 どうしてそんな事しかお前は考えられないんだよ! バカバカ!
 マジでお前って…信じられない!」

 

「………」

 

 あまりにもとんでもない発言をさらりと言い切られてしまって、
克哉は耳まで真紅に染まってしまっていた。

 俺のモノを愛するように、という発言で嫌でも自覚せざる
得なかったがフランクフルトも、きゅうりも…細長くてある
程度の深さがあって、男性器に形状が似ている品の代表だ。

 そして、バナナもその条件に当てはまる事に気づいて克哉は
相手の意図が嫌でも分かってしまった。

 

(こ、こいつって絶対に信じられない! 絶対にこちらを
恥ずかしがらせる為だけにそれを選んだんだな…!)

 

 この男にまともな神経とか、気遣いとか優しさとかを
期待した自分がきっと恐らくバカだったのだろう。

 何て言うか、頭痛と目眩を同時に覚えてしまっていた。

 だが克哉が顔を真っ赤にするぐらいに力説していっても、
もう一人の自分は顔色一つ変えずに平然とした態度を

続けていく。

 無言のまま、暫くお互いに見つめあう。

 静かに火花を散らして睨みあっていくと…。

 

「…お前の言いたい事はそれだけか?」

 

「あぁ、お前の今夜の土産はいらない。拒否させて
もらうからな!」

 

「そうか…なら、今夜はこれで帰らせてもらうか。
俺の気持ちをそんな風にお前に突っぱねられたのならば
仕方ないからな…」

 

「えっ…?」

 

 思ってもみなかった発言をされて、克哉は呆然となっていく。

 もう一人の自分の来訪や、遭遇はいつだって予告なく突然だった。

 そして毎回のようにこちらの意志などお構いなく、無理矢理
セックスに持ち込まれて好きなようにされ続けた。

 だから今夜も恐らく、こちらの気持ちなど関係なくいつもと
同じ展開に持ち込まれるものだと予想していた克哉にとって、
相手のこの反応は意外すぎるものだった―

 

                 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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