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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 こんにちは香坂です。
  唐突ですが、本日は私のオリジナル作品を投下させて
頂きます。
 あ、鬼畜眼鏡の連載もちゃんと続けますからその点は
心配しないで下さいませ!(ちゃんとこれは宣言しておく)
 この話は六月末に出版社に持ち込んでみた作品で
先日、編集者の人から感想が戻って来たのですよ。

 その言葉を要約すると、「設定や話の組み立て、見せ方や描写は
光る処あるけど現時点では書籍化出来るレベルではない。
けど練りこんだり、磨きを掛けていけばもっと良くなると思います」
 みたいな評価でした。

 んで、この感想を聞いて…もうちょいこの話を練りこもうと思い…
もう一度見直し&修正していく過程を踏みたいと考えて
 此処で公開するのを踏み切らせて頂きます。
 ボリューム的にはワード文書で60P前後の話ですが、後半部分を
特に加筆修正していく予定なので、もう少しページ数的には多くなって
いくと思います。全部で6~10回の間ぐらいの掲載量になると思います。
 
 12年前と幾つか設定等は変わっていますが基本的な話の筋書きは、
高校生の時に文芸部の部誌で掲載したものをベースにしてあります。
  主人公とヒロインが出会う序章なんですが…何というか、ちょっと
男女の役割が反対になっている倒錯的な部分があるお話です。
 この作品が、香坂にとっては…生まれて初めて人に「君の話を読んでみたい
から書いてみそ」と友人に言われた事をキッカケに執筆して、人に「面白い!」と
言って貰えた思い入れのある原点の話なので、掲載に踏み切らせて頂きます。

 鬼畜眼鏡以外の話は興味ないよ~という方はどうぞ
スルーしてやって下さいませ。
 けど、もし感想等や意見がありましたら拍手やメールフォーム等で
伝えて頂ければ励みになります。
 …最近、オリジナルをせっせと水面下で書いていたんですが…一人で
やっていると励みにならないというか、やっぱり作品は人に見てもらって
ナンボだと思い知りました…。

 今書いている投稿を意識した話は流石に掲載出来ないけれど、
(未発表のものじゃないといけない規定があるから)こちらはまあ…
香坂はオリジナルだと、こんなものを書くんだ、というのが判ると思います。
 良ければ付き合ってやって下さいませ(ペコリ)

『碧の疾風』 
 
―渦巻くような大きな炎がここまで、恐ろしくて怖いものだと
感じた事は今までなかった
 
 あっという間に一軒の木造建ての小屋が燃え落ちていく様を
目の当たりにして…その衝撃が脳裏から離れてくれなかった。
 劫火と呼べる程の勢いある炎がまるで何かの生き物のようにうねり…
その存在感を示している。
 其処に存在していた全てのものをに無に帰そうと、飲み干していく様に…
戦慄すら覚えながら、彼はつい思い出して身を竦ませていると…。
 
「何をボウっとしている! 今は逃げろ! 逃げるんだ!」
 
 自分の手を引きながら全力疾走をする兄弟子の一喝で、現実に引き戻されていく。
 そうして…彼の速度に合わせるように、こちらも再び必死に走り続けていった。
 すでに夜遅い時間帯であるせいか、頭上に輝く月以外の光源は望めない。
 鬱蒼と生い茂る深い森、比較的整っている獣道を的確に選びながら先を進んでいく。
 
―はあ、はあ…はっ…はっ…!
 
 もうどれぐらいの時間、自分たちはこうして走り続けているのか判らなかった。
お互いに肺から全ての空気が絞り出されているぐらいに、息が苦しかった。
 けれど足を止めたら、確実に助からないと察していた。
 四肢の全てが棒のように重く感じられる、全身が鉛のようですらある。
 けれど二人は永い間、決して追手に捕まらないように逃避行を続けていた。
 炎以外に、多くの兵士達が自分たちを捕まえ…殺そうと追跡し続けている。
 中には馬に乗っている者すらいた。
 だから彼らはせめて、馬での追跡を撒く為に敢えて足場の悪い地帯を越えて、
山を共に越えていたのだった。
 苦しくなればなるだけ、気弱な気持ちが湧き上がってくる。
 言ってはいけないと判っていても、ふいに…青年の口から、悲痛な呟きが漏れていった。
 
「みん、なが…」
 
 たったそれだけの言葉。
 けれど一言で、先を進む男には青年が何を呟いたかを理解してしまった。
 悲痛に歪む顔、そして…本当の悔しさを込めながら男は叫んでいった。
 
「…ああ、ちくしょう! 判っているよ! けどな! 死者は決して生き返らない!
 あいつらはもう助からない! なら…助からない人間を助けようとして、こっちまで
殺されるよりも…俺らはあいつらの分まで生きるしかないんだ! 
いい加減それを判れ!!」
 
「判っている、判っているよ…! ちくしょう!! けど…」
 
「来い! あいつらの無念を…俺達は生き伸びることで果たすんだ!!」
 
「う、ん…」
 
 泣きながら、見事な赤毛を襟足の処で括っている…精悍な容姿を
持った兄弟子―グレックリールに手を強く引かれ…彼は走り続けた。
 この手こそが、今の彼にとって…現実との唯一の接点だった。
 きっとこの兄弟子が自分を必死になって連れ出してくれなかったら…
目の前で起こった出来事に対応しきれず、呆然となった状態のまま…
あの兵士達の手に掛かって命を落としていた事だろう。
 後ろを振り返っても意味がない。それは頭では理解していた。
 けれど…彼は瞳に涙を浮かべながら、来た道をつい振り返ってしまった。
 遠くから、紅い火が立ち上がっていた。
 この一か月、自分たちにとっての仮の家だった。7人が身を寄せて
寝食を共にして…遠く離れた場所にいる他の仲間たちの為を養う為に
大きな仕事を請け負っている間の自分たちの仮初の家だった場所が燃え落ちていく。
 しかし、今はもう…煙に巻かれ、火に飲み込まれていた。
今はまだ、二階建ての木造の家はその原型を留めているが…そして、
この炎が収まる頃には、全てが灰燼に帰しているだろう。
 涙がとめどなく溢れてくる。
 自分の無力さが、悲しくて仕方なかった。
 守れなかった、大切な仲間たちを。自分をずっと可愛がってくれた兄貴分達を。
 
「チック、フラッガ…ニーナ…」
 
 突然やって来た兵士達に、皆…次々と殺されていった。
 陽気にいつものように食後に酒盛りをして、語りあっている最中の突然の強襲。
 剣を構えていた殺意を纏った集団に、誰もが隙を突かれる形になった。
 目の前で長年、苦楽を共にした仲間たちが殺されていく現実に…頭が真っ白に
なって何も出来なかった自分が憎かった。
 小柄な体格だが、陽気で手先が器用だったチック。
 今回の遠征メンバーの中では一番体格が立派で、力自慢だった癖に
気は優しい不器用な性格だったフラッガ。
 癖のある亜麻色の髪に、浅黒いしなやかな肌。素早い身のこなしで
隠密行動が得意のくせに明るく人懐こい性格をしていたニーナ。
 さっきまで…ここ数日、依頼主の処に行ったきり帰って来ない…自分たちが
所属している盗賊団を束ねている頭目、ハルバルトの身を案じながらも、
暗い空気にならないようにワイワイ騒ぎながら酒盛りをしていたのが、
酷く遠く感じられた。
 
「シャルス…あいつらの名前を…今は、口にしないでくれ…」
 
「あっ…ごめん、グッチ…」
 
 振り返って足を止めてしまった自分に向かって、グレックリールは短く呟く。
 こちらの方を彼は見なかった。けれど…何かを堪えているように背中を
小刻みに震わせている姿を見ているだけで…彼は耐えきれないほどの
悲しみを懸命に堪えているのだというのが判ってしまった。
 それを見て、ようやく相手を慮る気持ちが蘇って来た。
 辛いのは、悲しいのは自分だけではないのだ。兄弟子のその様子を見て、
やっとその事実を思い知っていく。
 
(…ごめん、グッチ…。悲しいのは、俺だけじゃなかったんだよね…)
 
 自分はせいぜい、盗賊団に身を置いてから八年ぐらいだが…兄弟子の
グッチと、サリックの二人は生まれた頃から…32年前からここに
在籍していたと聞いている。
 だからたった今、亡くなったメンバーとの付き合いだって、自分よりも
深かった筈なのだ。
そんな彼が…仲間の亡骸を放って、生き延びる為に置き去りにしなければ
ならなかった事に胸を痛めていない筈がないのに…。
 
「…ごめん、後ろを振り返って…。グッチがさっき、言った通りだよな。
…俺達まで殺される訳にいかない。逃げて、そして必ず…俺達のアジトまで…
一緒に帰ろう。サリックと親方も一緒に…」
 
 もう一人の兄弟子、サリックと頭目であるハルバルトの二人は…
依頼主の元に行ったきりここ数日…この仮の拠点に戻らないままだった。
 彼らの死を目の当たりにしている訳ではない。なら…生きていると信じたかった。
 あの三人の命を奪われてしまった事実は変わらない。なら生きている
人間だけでも自分たちの故郷に帰るのだ。
 
「あぁ、そうだな…」
 
 そうして、二人は走り続けていった。
 だがどれだけ全力疾走をし続けても、生身の人間である為に…
肉体の限界はあった。
 同時に、彼らの予想以上に置かれている状況は最悪だった。
 百人単位の追手が、この近隣に配置されていて…包囲網を敷かれている
現実を彼らはまだ知ることなかった。
 だからこそ希望を持って、駆けられた。もし…その事実を知っていたならば、
彼らはきっと絶望を味わうことになっていただろう。
 一時間以上、焼け落ちたアジトから離れて駆け続けていたが…ついに
二人とも全身汗だくになって、これ以上走ることは叶わなくなった。
 
「はっ…っ…ぁ…」
 
 そしてついに、金髪の青年は…足をもつれさせて転倒仕掛けた。
 
「おい…立ち止っている暇はないぞ!」
 
 グレックリールが激励の言葉を投げかける。だが…もうこれ
以上は、限界だった。
 
「ごめ、ん…もう、ダメだ…息が…」
 
「おいおい! お前まだ18だろ! 30超えている俺が…これだけ
頑張っているんだから、良い若いもんがそんな弱音を平気で吐くな!
 何が何でも生き延びるんだろ!」
 
「判って、る…だから、息が整ったら、また…走る、から…」
 
「そんな事を言っている間に…追いつかれたら…!」
 
 と言い掛けた瞬間、幾つもの蹄の音が近づいてくるのが聞こえた。
 そして何本もの松明の炎が、揺らめきながら集団となって迫って来る。
 
「ちっ…! もう追いつかれたのか! くそっ! シャルス、あれを…」
 
「待って…アレは、落ち着いた処でやらないと…出来ない! それに今夜は
風がまったくない…! こんな状況じゃ無理だよ!」
 
「だが…走るのはもう無理だ!なら…どうにかやるんだ! 俺は死にたくないし、
その場合お前も一緒じゃなきゃ意味がない! だから…!」
 
 そうして、グレックリールはシャルスに奥の手を使うように促していく。
 だがこの夜の彼はあまりのショックな出来事が立て続けに起こったせいか、
とても集中出来るコンディションではなかった。
 風を操り、一体となる事で高速で飛ぶことが出来る術。
 シャルスは確かにそれを使うことが出来る。
 この状況下で馬に乗っている相手達から逃れる唯一の手段は
確かにそれしかなかった。
 だが、歯の音すらまともに合わないぐらいに恐怖を感じている状況で…
そんな高度な術を使う精神的な余裕はすでに失われていた。
 
「無理だよ!」
 
 つい、パニックに陥って彼が叫んだ瞬間…鋭く何かが空を切る音がした。
 
「危ない!!」
 
 何が起こったのか、理解出来なかった。
 認識する前に、青年の身体は強く跳ね飛ばされていった。
 
―そして、頭が真っ白になっていくような光景が展開されていった
 
 これが現実だなんて、信じたくなかった。
 ほんの少し前に立て続けに三人もの命が散らされるのを目の当たりにして…
また一人、自分の前で奪われていくなど、考えたくもなかった。
 だがどれだけ彼が認めたくないと思っても、非情な現実は決して変わらない。
 大きな手槍だった。それが…自分を庇ったグレックリールの胸元を貫通して…
彼を無残な姿に変えていった。
 
「グレックリール…?」
 
 兄弟子の名前を、力なく呼んでいく。
 いつもは陽気な人柄を示す、明るいオレンジの瞳が…硝子玉のように虚ろになっている。
 まるで糸が切れる寸前の、作り物の人形のような眼差し。
 
「シャルス…逃げ、ろ…お前、だけ…でも…」
 
 即死しても、おかしくない傷だった。
 けれどそれでも兄弟子は最後の願いを込めて…弟分に向かって
己の気持ちを伝えていく。
 長い間、苦楽を共にして来た仲間だった。だからもう自分がこの傷では
助からないことを悟って、懸命にそう言葉を紡ぎだしていった。
 けれど…まだ18歳の青年には、身近な人間が立て続けに奪われていく
状況に適応など出来なかった。
 その死を認めたくなかった。この惨劇の結果を…覆したかった。
 
「嘘、だ…グレックリール…嘘だぁぁ!!!」
 
 そうしている間にも無常に、追手達の蹄は近づいて来る。
 
「逃げて、くれぇ―!!」
 
 そして、最後の祈りと願いを込めながら…グレックリールは
断末魔の叫びを発していく。
 あまりにも苦悶に満ちた、苦しげな叫び。けれど…心から、弟分が
助かる事を願った悲痛なる魂の声だった。
 そして次の瞬間…グレックリールの命の灯は途絶えていった。
 再び、思考停止状態になる。何も考えられなくなる。
 この状況でそうなってしまう事は大きな隙であり…死に繋がり
かねない行動でもあった。
 しかし長年、心から慕って後を追いかけ続けて来た大切な二人の
兄弟子の内の一人の死を目の当たりにして…今度こそ、ショックのあまりに…
言葉を失い…走る気力も何もかもが根こそぎ奪われていった。
 僅かな隙だった。けれど…二人の命を狩ろうとしていた追手達にとっては…
それは命取りとなりかねない間でもあった。
 再び鋭く風を切る音が耳に届いていく。
 
「くっ…あっ!」
 
 とっさに正気になって飛びのいても、反応するのが遅かった。
 彼は…左腕を貫かれていった。鋭い歯が自分の身体を貫通する激痛に、
その部位から焼け落ちていきそうだった。
 
「うわぁぁぁー!」
 
 耳をつんざくような悲鳴が、彼の唇から零れていく。
 だがこの状況では、その行為は敵に自分の居場所を教えているだけの
愚行に過ぎなかった。瞬く間に手槍の嵐が降り注ぐ。
 本能的に避けたが、それでも次々に手傷を負い…そして…今度は右足を
刺し貫かれる。
 
「ひぁ!!」
 
 二度目の苦悶の声が…喉の奥から絞り出されると同時に、一人の馬に
乗った兵士が間近に迫っていた。
 
「…どうやら、逃がした獲物…二人とも捕獲したみたいだな。…まったく、決して逃がすなと上から命じられていたからな。ヒヤヒヤしたぜ…。しかし、こいつは…男にしておくのは勿体ない美形だな…。へへ、女だったら存分に俺達で可愛がってやったのによ…」
 
「言う、な…」
 
 自分の顔は、世間一般的に見れば相当に整っている方だという自覚はあった。
 けれど…もう少し身体が育つ前までは女扱いされることが多く、本人もそれを嫌がっていた為…こんな事を初対面の相手に言われるのは本当に不快だった。
 けれどどれだけ怒ろうとも何をしようと…もう、左手と右足を貫かれてしまっては逃げることも出来ない。
 自分の迂闊さを、呪いたくなった。グレックリールを守ることが出来なかった事実を本当に悔んでいた。
 
(このまま…こいつらに、俺は殺されるだけなのか…! 誰も助けることも出来ないまま…嬲り殺されるのを、待つだけなのか…!)
 
 次々に追手の男たちが自分の周りを取り囲んでいく。
 四面楚歌とはまさにこの事だ。敵に囲まれ、逃げることも敵わない。
 全力で、回復呪文を使って足の治療を施していく。だが…到底、走れる程度に
回復するまでには間に合いそうになかった。
 男たちの瞳に、残酷な色が宿る。獲物を嬲り殺す暗い歓び。そして…
他ならぬ、その獲物は自分自身だ。
 その事実に気づいて、彼は歯噛みしたくなった。悔しくて涙すら浮かべていった。
 
(ちくしょう…! 俺にもっと力があったら、グレックリールの足手まといに
ならなかったのに…! このまま殺されるだけなのかよ! 本当に
それだけしかないのかよ! せめて…グレックリールだけでも、生き返らせる
事が出来れば…! 俺はどうなっても構わないのに…!)
 
 心からそう願った。祈った処でどうにかなるなど甘い考えは持てなかった。
 けど…それでも、たった今失われてしまった大切な兄弟子が生き返って
欲しいと思った。
 
―なら、解放しなさい。貴方にはその力がある…
 
「えっ…?」
 
 ふいに頭の中に、鈴がなるような美しい少女の声が響いていった。
 一瞬どこからそれが聞こえたのか判らなかった。だが…それは自分を
包囲している男たちの耳にも届いたらしい。
 周囲がざわめき始めていく。一体今の美声はどこから聞こえたものなのか…
その場にいる誰もが疑問を抱き、周囲に視線を巡らせていった。
 
―祈りなさい。心からこの人が蘇ることを…貴方には、それが出来るから…
 
 そして、いきなり…自分の両手が光り輝いていく。
 信じられなかった、認めたくなかった。だが…確かに闇の中でも
はっきりと浮かび上がるぐらいに強い光が…自分の掌から生まれていく。
 
「これ、は…?」
 
 誰もが、驚きを隠せなかった。場が瞬く間に乱れていく。
 そうしている間に自分の身体が眩いばかりの光に包まれていった。
 
―祈りなさい
 
 命じるように、美しい声音が草原中に響き渡る。それは抗いがたい
ぐらいに威厳に満ち溢れている口調だった。
 
「生き返ってくれぇ! グレックリール!!」
 
 そして、青年は叫んでいく! 心からの祈りを込めて!
 10歳の時に盗賊団に身を寄せた当初から今まで、同じ屋根の下で
過ごしていた尊敬するべきする人…この人だけでも戻って来てくれる事を強く願っていった。
 目を焼くぐらいに鮮烈な光が周囲に走り抜けていく。その瞬間、鋭い風の刃が
同時に駆け抜けていった。
 そしてその風が、激しく渦巻いて猛烈な風が吹き抜けていく。
 今夜はまったく風がなかった筈なのに、この周辺だけにまるで嵐が巻き起こって
いるような感じだった。
 その風が、まるで魔法のように…シャルスの右足と左腕を貫いていた手槍を
引き抜いていく。

「何だ、これ…!」

 自分の身体が光り始めた瞬間、見る見る内に高速でその傷が塞がっていく…と
同時にまるで時間を逆行しているかのように…自分の手が子供の時の状態へと
変化し始めていく。
 
「うがっ…あっ!」
 
「ぎゃぁぁぁ!!」
 
「うぉぉぉぉ!!!」
 
「ぐっ…がっ…!
 
 四人の追跡者が次々と、断末魔の悲鳴を挙げていく。
 その光が放たれた瞬間、狩られるべき者であった筈のこちらの立場は
逆転していった。
 男たちの喉元に、鋭い傷跡が一斉に走って…一瞬で、絶命させていく。
 
「何、が…起こった、んだ…?」
 
 その瞬間、頭が朦朧として…満足に視界が利かなくなった。
 意識が闇に落ちていく感覚がする。
 こんな処で、倒れる訳にはいかないのに。自分はまだ逃げなくては
ならないのに…なのに、全力で光を放ったら…もう身体の自由は
利かなくなっていた。
 その時、意識が遠ざかる瞬間…闇の中に一人の少女が浮かんでいた。
 
「誰、だ…?」
 
 少女は美しかった。長い金髪に…スラリとしなやかな体躯を持っていた。
 純白のシンプルなデザインのドレスに身を包んだその姿は眩いばかりに
輝いていて…思わず目を奪われる程だ。
 
(…5年ぐらい前の、俺に…似ている…?)
 
 彼女は12、3の頃の自分に瓜二つだった。まるで双子のように…数年前の
自分が少女の姿を象って表れたかのような錯覚を覚えていく。
 彼女の残影が、自分に重なっていく。その瞬間…自分と彼女は一体に
なったようなそんな気がした。
 瞬く間に…傷が癒え、自分の身体が変化していく。
 その美しい少女を受け入れるのに相応しい器に、肉体が作り変えられ
ていくようだった。
 
―瞬間、甘美な陶酔が青年を包み込んでいった
 
 そして気づくと彼の目の前には、魂すらも魅了する美しい存在が佇んでいた。
 
「…誰、だ…?」
 
 まったく見覚えのない顔をした一人の男だった。
 だが、不思議と初めて出会った感じがしない…どこか懐かしささえ覚えてしまった。
 
―大丈夫か?
 
 この世のものとは思えない、透明で美しい声だった。この声で華やかな詩や
歌を歌ったならきっと聞き惚れてしまう事だろう。
 緑の腰まである長い髪に…翠玉石のような澄みきった透明な翠の瞳。
 大理石の彫像で作られたかのような完成されたバランスの体躯を持った
その存在は灰色の簡素なローブを纏っているだけの簡素な格好でも…
あまりに、綺麗過ぎてこちらの視線を釘付けにしていく。
 
―まさか、貴方が来てくれるなんて…!
 
 頭の中で、先程の少女が歓喜の声を挙げていく。
 
―君は、まさか…! そんな…どうして…これは、現実か…?
 
―えぇ、私は今…貴方の目の前にいるわ…! 逢いたかった…ラ……!
 
 少女が心から愛しげに、男の名前を呼んでいく。
 その瞬間、青年の意識は遠ざかり…一時、少女に肉体の主導権が移っていく。
 
―リーダロア…!
 
 緑の髪をした男は、心から愛しげに…こちらの身体を見つめて抱きしめていく。
 そして相手の顔がゆっくりと迫って来て…。
 
(ちょっと待て…人の身体を使って…ラブシーンを…する、な…よ…)
 
―ごめんなさい…一時で良い…この身体を、私に貸して…
 
 懇願するように、少女が訴えかけていく。
 その声に、彼は結局…折れるしかなかった。
 
(キス、以上は…嫌だからな…)
 
 精一杯の妥協点を口にして…青年は、目を伏せて意識を失っていく。
 
 ―ありがとう…
 
 その瞬間…彼の脳裏の中で、自分にそっくりな顔をした少女が…長い間、
引き裂かれていた恋人とやっと再会出来たような…そんな歓喜の表情を浮かべていった。
緑の髪をした男はこちらを強く抱きしめているのが、判った。
 其処から生命力が伝わってくる。暖かくて…とても懐かしい温もりが感じられた。
 
(暖かい…)
 
 その温もりを感じた瞬間、ここは身体の力を抜いて良い場所だと
本能的に察していく。
 この腕は、決して危害を加えない。それが…少女を通して、こちらにも
確かに伝わって来た。立て続けに信じられないことばかり起こって…
頭の中はグチャグチャで。
 だからこそ、彼の身体は紛れもなく休息を欲していた。
 
―眠ると良い…俺がずっと、傍にいるから…
 
 それはまるで、自分の兄や父から掛けられた言葉のように
青年の耳に届いていった。
 そして、そっと口付けられていく。
 心からの愛しさと、そしてこちらに生命を…吐息を分け与えているような、
そんな口付けを落とされるが、何故かそんなに不快ではなかった。
 瞬間、張りつめていたものがプツっと切れて…彼は意識を閉ざしていったのだった―

 
 こそっと後書き

 出版社に持ち込んだバージョンではラストのラブシーンは抱き合うだけに
留めて、詳しく書きませんでした(マテ)
 いや、男性の編集者相手に読まれることを考慮したらちょっとねぇ…。
 こちらではちょっとその辺を加筆修正して掲載しておきます。
 主人公、最初から受難すぎる…そして次回はもっと哀れな事になって
いますので宜しく(ニッコリ)
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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