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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や 
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。

 桜の回想 
                

―心の世界で、もう一人の自分と対面した時…最後に見た
彼の切ない表情が克哉の心に焼き付いていった

「泣かないで…『俺』…」

 夢から醒める直前、克哉は無意識の内にそう呟いていく。
 どうしてあんなに悲しそうな、辛そうにしているのか理由を知りたかった。
 中学生より以前の事が殆ど思い出せなくても、今まで克哉は生きていくのに
まったく支障などなかった。
 だから思い出せなくても特に困らなかったし…その必要性も感じなかった。

(…けど、どうしてお前は…あんなに辛そうな顔を、しているんだ…?)

 桜が舞い散る中で見た、もう一人の自分の姿が…克哉の中に潜む
何かを引きずり出していく。
 だが思考をめぐらせ始めた途端に、御堂に肩を大きく揺さぶられて顔を
覗き込まれていく。
 恋人の端正な顔立ちがグイっと迫って来て、克哉は一瞬…心臓が止まりそうに
なってしまった。
 

「克哉…大丈夫か? ずっとうなされていたみたいだが…」

 心配そうな顔をして御堂が覗き込んでくる。
 夢の世界と、現実の境目があいまいになって…今、自分がどこにいるのか
判らなくなってくる。

「御堂、さん…?」

「…起きたか、克哉…?」

「えぇ…大丈夫です…」

 と答えたにも関わらず、御堂はこちらの身体をきつく抱きしめ続けていた。
 そういえばさっき、あの男性の事を思い出す糸口を掴むために…連想を
してみろと促された筈だった。
 その直後に自分は意識を失い、夢の世界に意識を引き込まれていた訳だが
御堂からしたら…気が気じゃなかっただろう。

「…克哉、無理強いさせて…すまなかった。そんなに…君にとって…
あの男との間にあったのは辛い事だったんだろうな…」

「…いえ、違うんです。…その、やっぱりあの人の事に関しては…
オレは何も思い出せないんです…」

「…ここまでやっても何も思い出せないのか…? それじゃあ…まるで
記憶喪失みたいだな。現実にそんなことがそうあるとは思えないが…」

「記憶、喪失…?」

 その一言がヤケに心に引っ掛かった。
 …そう、中学校以前の記憶がない。
 それは突き詰めていけば…それ以前の記憶が、今の自分の中から
欠損しているという事で。
 忘れているというよりも、ここまでしても何も思い出せないというのならば
其れは…もしかしたら、記憶喪失と呼ばれるものなのかも知れなかった。

―そう、貴方という存在は…全てを忘れた上で成り立っている

 不意にMr.Rの声が脳裏に鮮明に響き渡っていく。
 其れに克哉は目を見開いてしまい…更に眼前にいる御堂は
言葉を失っていく。

「今、何て…?」

「…克哉?」

―貴方は、あの方の願いによって生み出されたペルソナ。
耐え難い苦痛と葛藤を忘れて…眠る為に、その間…あの方の
心を守る為に私が作り出した…仮初の心に過ぎません…

「っ…!嘘、だ…」

 あまりに衝撃的な言葉をぶつけられて、目の前にいる筈の
御堂の叫びが再び克哉には届かなくなった。
 仮初、という言葉が彼の胸に深く突き刺さっていく。

―貴方は、ペルソナ。あの方が眠っている間にその肉体を
守る為の番人に過ぎない筈でした。…そして、全てのキッカケと
なったのが…貴方が先程、出会った人なのですよ。
 …彼の事を思い出したいのならば、満開の桜が咲き誇る時期に…
私と去年、再会した公園に来て下さいませ。
 その時、貴方が生まれるキッカケとなった出来事を…
思い出す手助けをして差し上げましょう…

 Mr・Rの声はどこまでも甘く、ねっとりと頭の中に響き渡る。

「…本当に、それで…オレは思い出せるんですか…? 満開の
桜の咲いている、中央公園に行けば…良い、んですか…?」

―えぇ、貴方にその勇気があれば…私は貴方の重く閉ざされた
記憶の扉を開く手助けをさせて頂きましょう。
 貴方の人格が生まれたキッカケを、あの方が貴方に隠そうと必死に
なっていたその出来事を…教えて差し上げましょう…

「判り、ました…行きます…桜が、咲き誇る時期に…必ず…!」

 其れは、Mr.Rの声が聞こえていない御堂からすれば…克哉が
独り言をぶつぶつ言っているだけに過ぎない情景だった。
 けれどしっかりした意思を持って克哉が答えると同時に、謎の男は
穏やかに微笑んで…ゆっくりとその気配を消していく。
 そうしてようやく…愛しい人が心配そうにこちらを眺めている
その現実に気づいていった。

「…克哉? さっきから君はどうしたんだ…? 気を失ったり…
独り言を延々と呟いていたり。どう見ても…今の君は…おかしいぞ?」

 恋人関係になって一年以上が経過しているが、その間…
克哉がここまで奇妙な反応を繰り返しているのは…関係が
安定してから暫くなかったので、御堂は大きく狼狽していた。

「…御免なさい。孝典さんに…心配を掛けさせてしまいましたね…。
けど、大丈夫です。貴方が言ったように…どうやら、桜がキーワードに
なっているようですから…。来週か再来週ぐらいには桜が満開の頃を
迎えますから…その時期が来ればきっとあの人の事を思い出す
糸口を掴めると思いますから…」

 克哉はとっさに…夢の中で逢ったもう一人の自分のことや
鮮明に脳裏に響き渡ったMr.Rの事を話すべきかどうか
大きく迷った。
 だが…現実主義である御堂に話しても、きっと信じては
貰えないだろうと判断して…要点だけ、相手に伝えていく。
 御堂が目の前にいたというのに、意識が浚われ続けていた自分を
見て相手は果たしてどう思っていたのだろうか?
 そのことに猛烈に不安を感じつつも、本当の事をありのままに
話せないでいる自分に苛立っていった。

(…仕事上の事とかそういうことだったら孝典さんに幾らでも気兼ねせずに
話したり相談出来る。けど…『俺』の事や、Mr.Rの事はあまりに非現実
過ぎて、御堂さんに話しても信じてもらえるかどうか判らない…)

 その事にチクチクと後ろめたさを感じつつも、詳しく話すことが
出来ないでいた。
 きっとこれでは納得して貰えない。言及されることは必死だろうと
覚悟の上でそう克哉は言ったのだが…御堂は暫く考えた後、
思ってもみなかった発言を口にしていった。

「…満開の桜を見れば、思い出すというのか…。なら、それに
私も同行しよう…」

「えっ…?」

 怪訝そうな顔をして、信じて貰えない。
 その反応が絶対返ってくると予想していただけに…御堂のこの
一言は予想外だった。
 慌てて相手の顔を見ていくと、眉間にシワが寄っていて非常に
納得していないというか…苦虫を噛み潰したよな微妙な表情を
浮かべていた。

「…本当にそれで思い出せるのかどうか、信じがたい気持ちが
あるが…桜の事で連想させた途端にさっき意識を失ったことを
思えば…君の中に、桜が深く関わっていることは事実だろう。
 …また、失神をしたら大変だからな。…君を支えられるように
私も同行する。満開の頃に、どうにかスケジュールを調整して
出掛けることにしよう…」

「えっ…? えっ…?」

 御堂の口から、考えてもいなかった言葉ばかりが零れて
克哉は動揺を隠せなくなっていく。
 だが…深い溜息を吐きながら、御堂はそっと呟いていった。

「…私には、あの男の事で…今の君は凄く不安定になって
いるように思う。不可解な行動や言動が見えるが…迷っていたり
悩んでいる時の人間はそんなものだ。…君が弱っているなら
私は手助けしたい。…ただそれだけの事だ。他意はない」

「あっ…はい! ありがとうございます…孝典、さん…」

 御堂が、ぶっきらぼうに頬を染めながらそう告げてくるのを聞いて
克哉はびっくりしながらも…礼を告げていく。
 そう告げた瞬間…克哉は、痛いぐらいの力を込めて…
御堂の腕の中に抱き込まれていったのだった―

 
 
 
 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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