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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や 
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。

 桜の回想  
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心に不安が生じると、大きな空洞が生まれるような気分に
なることは誰にでもあるだろう。
 今の克哉がそうだった。
 あの男性の事を、思い出せない。
 けれど心は大きくざわめき続けて…心の中の世界で、もう一人の自分の
切ない顔まで見てしまった克哉の心は…酷く乱れてしまっていた。
 そういう時の愛しい人の抱擁が、熱がどれだけこちらの心を
満たしてくれるか。
 頼りなくなっていた自分に芯が与えられているような気分だった。
 
「はっ…ぁ…んんっ…熱、い…!」
 
 克哉は悩ましい声を挙げていきながら、御堂の熱を
全身で享受していく。
 自分の中のぽっかりとした何かが埋められていく。
 お互いの体温と吐息が重ねられていった。
 本来、男の身体はこうやって誰かを受け入れるようには
作られていない。
 数え切れないくらいに肉体を繋げても、挿入する段階には
どうしても多少の苦痛は伴う。
 だが、息が詰まるような思いを覚えた後の…強烈な快感を
すでに知ってしまっている。
 ひきつれるような感覚が、じきに収まり…慣れてくれば自ら蠕動を
繰り返して、相手を際奥に招き入れていくことだろう。
 
「克哉…今は、私だけを…感じろ…!」
 
「ふっ…あぁぁっ! はい、貴方を…オレに、下さい…!孝典さんの
事だけ、考えられるように…」
 
「そうだ…こうしている間だけは、他の事を考えることは…許さない。
私のこと以外は、一切考えるな…」
 
 静かな声で、鋭い眼差しをこちらに向けていきながら…御堂は
恋人にそう命じていく。
 それは厳しくも甘い命令であり、支配だった。
 御堂の怜悧な双眸に見つめられて、そう囁かれるだけで克哉の背筋に
甘い快感が走り抜けていく。
 身体が揺さぶられる度に、前立腺の部位を擦り上げられて抗いがたい
ぐらいの悦楽が全身に走り抜けていく。
 その度に、先程まで克哉の中を満たしていた暗澹とした気持ちが晴れて、
今…自分を組み敷いて抱いている愛しい人の事しか考えられなくなる。
 それが今の克哉には救いだった。
 
(今は、貴方だけを…感じて、いたい…!)
 
 現在の克哉は自分の足下がおぼつかなくなるような不安感を覚えていく。
 だが、こうしてこちらを抱いてくれる熱が…確かなものを与えてくれていた。
 この人はこれだけ自分を必要として、愛してくれている。例えこちらの心を、
痛みを完全に理解しえなくても…側にいて、助けようとしてくれている。
 それで、充分なのだ。
 根本的な救いはきっと、自分の手でしか成せない。
 どれだけ愛し合おうと、セックスをしようと…自分以外の他者の気持ちなど
完全には判らないし、理解出来ない。
 人が、本当の意味で把握する事が出来る心は唯一…自分のもの
しかないのである。
 
ーこの人を愛しているからこそ、甘えすぎてはダメなのだと克哉は思った
 
 ギチギチに張り詰めた熱い塊が、克哉の中で往復を繰り返して頭が
真っ白になるほどの悦楽を生んでいく。 
 身と心が、御堂に焼き尽くされていきそうだった。
 その熱さと感覚に、全てが飲み込まれて…流されていく。エクスタシーの
極地は、無我の極地にも等しいのかも知れない、
 頭の中が真っ白になり、御堂とのこの行為の事以外が考えられなくなり…
どうでも良くなっていく。
 いつの間にか受け入れている箇所が怪しくゼンドウして御堂のペニスを
強く締め付けていた。
 
「くっ…君の、中は相変わらず…良く、締まるな…」
 
「やっ…ぁ…言わない、でぇ…」
 
 克哉はこれ以上、羞恥を煽る言葉を言われたくなくてイヤイヤするように
首を振っていくが…御堂は容赦しない。
 更に深い快楽を与える為に克哉の性器を…抽送のリズムに
連動させるように扱き始めていく。
 
「ひっ…うぁ…! やぁ…孝典、さん…それ、は…!」
 
「…何がイヤ、なんだ…? こんなにグチャグチャに濡らして
震えている癖に…」
 
「それは、貴方に…抱かれて、触れられて…いる、からで…ああああっ!」
 
 亀頭と前立腺、それは男にとって最も脆弱な場所であり…強烈な
快楽を生み出す場所だ。
 それを愛しくて仕方ない男に同時に攻めたてられたら…抗える訳がない。
 まるで水から上げられた海老のように激しく仰け反りながら御堂の
腕の中で痙攣を繰り返していった。
 
「んんっ…も、う…うぁ…た、孝典…さん…あぁ…!」
 
 あまりの快楽に思考がすでにまとまらなくなって、まともな言葉が
紡げなくなってしまう。
 譫言のように甘ったるい言葉と、大切な恋人の名前だけを口に
上らせ続けていく。
 激しく突き上げられている内に、快楽がせり上がって頂点が迫って
来ているのを感じ取っていく。
 御堂の腕の下で、克哉は大きく見悶えて…喘ぎ続けていく。
 その瞬間、身体の中に納めているペニスが一際大きく膨れ上がり、
先走りがあふれてくるのが判った。
 
「くっ…もう、イクぞ…克哉…!」
 
「はい…貴方を、オレの中に…下さいっ!」
 
 お互いの身体を強く抱きしめあいながら、ほぼ同時に
絶頂の瞬間を迎えていった。
 熱い精が際奥にそそぎ込まれるのを感じていって克哉はビクビクと
大きく肩を震わせていく。
 自分の中に、御堂の想いと熱が注がれる。
 その瞬間だけでも、愛しい人と一つになれた一体感と幸福感が溢れてくる。
 この時、克哉は自分は生きてて良かったと…この人と出会えて、
結ばれて良かったと心の底から思える。
 御堂と出会う以前の克哉は、自己主張もせず…人との衝突と摩擦を
避けるばかりで、何の目的もなく生きているだけの存在だった。
 そんな自分が、御堂と出会い…あの不思議な眼鏡を掛けたことに
よってそれ以前とは大きく変われた。
 
(この人がいなかったら…オレはきっと人の顔色ばかりを伺って、ビクビクと
生きていた時のまま…変わることがなかった。こんなに幸せなのも、仕事が
充実して毎日が輝いて感じられるのも…オレの傍には、孝典さんが
いてくれるからだ…。オレを必要としてくれているからだ…)
 
 荒い息を吐きながら、ギュウっと目を閉じて克哉は今の
幸せを噛みしめていく。
 その瞬間、天啓のように何かが閃いていく。
 もしかしたら其れは、この深いモヤのように心にのし掛かっている
疑問を晴らす為の糸口だったのかも知れない。
 
ー俺には、大切な人っていたのかな…? そうだ…あの人、俺に対して
自分は親友だって言っていたけど…其れはもしかして『もう一人の俺』の
昔の親友だったのか…?
 
 克哉は、先程みた夢をぼんやりと思い出していく。
 つい数年前まで人との関わりを避けて生きてきた克哉には親しいと言える
友人は殆ど存在しなかった。
 たった一人…いるすれば大学時代からの友人でもあり、キチク時代の
同僚だった本多くらいだ。
 彼以外に、今の克哉には親友と呼べる存在はいない筈だ。
 だが、それ以前だったら?
 
(もしかして…中学に入る以前の、思い出せない記憶の中に
全ての答えがあるのか…? もう一人の俺を知れば、全て判るのかな…?)
 
 御堂の身体の重さを感じていきながら、克哉は必死に逡巡していく。
 それは長く広大な思考の迷路を抜け出す為の手段を模索している
ようなものかも知れない。
 だが、そこまで考え至った時…御堂の不機嫌そうな声が耳元に響いていった。
 
「克哉…こういう時は私以外の男のことは決して考えるな…と、
さっき言った筈だぞ…?」
 
「っ…! い、いいえ! 孝典さん以外の男のことなんて、
考えていませんか…!!」
 
 思いっきり拗ねた表情を浮かべている御堂に向かって克哉は
恐縮した様子で首を振っていく。 
 
「…ほう、それなら何を考えていたんだ…?」
 
「そ、その…昔の、自分のこと…です…」
 
 そう、今の克哉は『もう一人の自分』の事と『中学入学以前の出来事』の
二つに心を馳せていたのだから決して嘘は言っていない筈だ。 
 正直、御堂に間近で見つめられて心臓はバクバク言って緊張していたが…
真っ直ぐに見つめ返して応戦していく。
 
「…嘘は言っていないみたいだな。ふっ…それなら、君をこれ以上
お仕置きする訳にはいかないようだ。確かに『他の男のことは考えるな』という
約束は守っていた訳だからな」
 
「は、はい…」
 
 そのもう一人の自分に、過去に対面した時に好き放題された事があるのは
決して御堂に言わない方が良いだろう。
 現実に到底有り得る訳がない光景だし、正直に話したってまず正気を
疑われるのがオチだ。
 少しして、機嫌を直した御堂がそっとこちらを腕枕して眠る体制を整えてくれた。
 この瞬間が、克哉は好きだ。
 御堂と一緒にいてあっさり眠ってしまうのはもったいないと思う反面…
愛しい人の体温に包み込まれる幸せを同時に覚えていくからだ。
 
「…今夜は色々あったが、もう随分と遅い時間だ。君と一緒に過ごす時は
貴重だが…明日の為にそろそろ寝よう」
 
「はい…」
 
 思いもよらない週末になったけれど、抱き合っているうちに次第に
細かいことはどうでも良い心境になっていった。
 瞼を閉じると、一気に心地よい気怠さと…疲労感が襲いかかってくる。
 
―なあ、「俺」…お前には…大切な人はいたのかな…? オレにとって
御堂さんのように…? さっきのあの人が…そうだったのか…?
 
 眠りに落ちる寸前、もう一人の自分に問いかけていく。
 だが、返答はないままだった。
 
「おやすみ…克哉」
 
「…はい、おやすみなさい…孝典、さん…」
 
 小さく就寝前のやりとりを交わしていきながら、二人とも
寝やすい体制を整えていく。
 そして御堂のことと、もう一人の自分の事を交互に頭に思い浮かべていきながら…
克哉はその夜、深い眠りへと落ちていったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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