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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

 恋人の条件             



―今日から15日間、貞操を守る事が出来たらあの方に会わせて
差し上げましょう…

 全力で走り続けている間、頭の中にMr.Rのその言葉が延々と
リフレインを続けていた。
 全身の筋肉がちぎれて、肺が軋みを上げるぐらいに必死になって
克哉は走り続けていく。
 何かから逃れるように、自分の中にある大切な想いを守る為に
身を切られそうな気持ちになりながら…それでも克哉は逃げ続けていった。

「はあ、はあ…はあっ…!」

 無意識の内に、濡れた唇を乱暴に手の甲で拭っていた。
 先程まで与えられた感覚を忘れる為に、頭の中から追い払う為に。
 けれど…克哉の意思と裏腹に、ついさっき起こった出来事が繰り返し
頭の中に浮かんで、混乱と自己嫌悪の感情が猛烈に浮かび上がって来た。

「どうして、あんな事を…。あの、カプセルのせいで…あんな風になって
しまったのかよ…。アレは、現実だったのかよ…」

 克哉の唇から嘆きの言葉が零れていった。
 それと同時に、目元から涙がポロポロと溢れ始めていった。

―行くなよ! 行かないでくれ…! 克哉…!

 こっちに必死に縋りながら引き留めようと…腕の中に閉じ込めようとした
本多の表情を思い出すと、胸が痛んだ。
 本気の想いがこもっているのを、あの眼から感じ取れてしまったから。

(これが…Mr.Rの言っていた薬の効果、なのか…?)

 15日間、操を守り通せばもう一人の自分に会わせてくれると言ったが、
潜在的にこちらを想っている人間の想いをあの薬は呼び覚ます効果が
あるとも言っていた。
 確かに本多は、以前にこっちに対して想いを寄せていた。
 その間に色々あったけれど、最終的に彼と自分の関係は「親友」で
収まった筈だ。
 けれどあんな風に一緒に帰宅している最中に、突然裏路地に
連れ込まれて…そのまま抱かれそうになるなんて。

(こんなの、あの眼鏡を渡された時に逆戻りをしてしまったみたいじゃないか…!)

 あの眼鏡を渡された事で、確かに本多との関係が一時…それまでと
大きく変わろうとしていた。
 けれどそれでも、自分は彼に恋愛感情は抱けないという結論で
落ち着いた筈ではないか。

(…だって、あの頃には無意識の領域では…オレは、あいつの事を想っていた。
今なら、それが判る…。なのに、どうして…)

 克哉は泣きそうな顔をしながら、人気のない夜道をいつしかトボトボと
歩いていた。
 身体がクタクタになるまで走り続けて、もう大丈夫だろうと判断して速度を
落として歩き続けていく。
 何もかもから逃げたかった。今は一人になりたかった。
 本多に迫られた時は空は見事な茜色に染まっていたのに…いつの間にか
夜の帳が下りて、辺りは藍色の闇に覆い尽くされてしまっていた。
 気を抜けば、『男』の顔になってしまった自分の友人の顔がすぐに
意識に浮かび上がっていってしまう。
 其れを振りほどくように、克哉は何度も頭を振っていった。
 
「…本多がいきなり、あんな事をするなんて…。あの薬を飲んでしまった以上、
これから何度も、こんなのが起こるのかよ…」

 力なく呟いていくと、それだけでメゲてしまいそうだった。
 凄く心細くて、切なくて…同時に寂しいから、縋れるものが欲しいと望む
心が生まれていった。
 こんな調子で15日間も、自分は一人ぼっちで耐えられるのかと自問自答を
していった。

(会いたい、よ…)

 なのに、さっきまで本多に情熱的に口づけられて…体中を弄られたと
いうのに、想い描くのはもう一人の自分の事ばかりだった。
 会いたいと望むからこそ、今の状況に流されてはいけないという感情も
また芽生えていった。
 歩いている内に、気づけば喫茶店ロイドがある界隈まで差し掛かっていた。
 太一に会って、暖かい珈琲の一つでも飲んでほっとしたいと思うと同時に…
彼まで本多のように、自分に迫るのではないかという恐れを抱いていく。

(今、気持ちがグチャグチャだから…太一が淹れてくれる珈琲を飲んで、
「大丈夫だよ克哉さん」と言って貰えれば気持ちも浮き上がると思うけど…。
この薬の効果が、太一にまで及んでいたらどうしよう…)

 潜在的に克哉を想っている、それに真っ先に該当するのは確かに本多だった。
 なら、太一は…? こちらに対して紛れもない好意を抱いてくれているのは
その笑顔と態度から充分に伝わって来ていた。
 其れがまた、さっきのように豹変してしまっていたら…そう考えたら、すでに
通い慣れた筈のロイドの扉すら潜れなくなってしまう。

(このまま真っすぐに帰った方が良いのかな…?)

 そうすればきっと、今日には何も起こらないで過ごせるかも知れない。
 太一が本多のようになってしまうのを目の当たりにしないで済むかも知れない。
 彼に励まして貰いたい気持ちと、薬の効果のせいで友人が変わる姿をもう
これ以上見たくないという感情が、グチャグチャに絡み合っていく。
 そうして考え込んでロイドの扉の前で考え込んでしまっていると…不意に
掃除用具を両手に持っている太一の姿が現れていった。

「あっ…」

「あっれ~克哉さん! 何そんな処でボーと突っ立っているんだよ! うちの
店の前に来たのならさっさと中に入ってくれないと俺が寂しくて
しょうがないじゃんか…! って…何かあったの? 何か衣服とか凄く
乱れているけど…?」

「えっ…あ、ちょっと其処で、転んじゃってね。それで…」

「ふ~ん…そうなんだ」

 その時、太一はこっちの言葉を疑うかのように目を細めていった。
 相手に衣服が乱れていると指摘されて、克哉はハっとなった。
 気分が最悪だったから自分の身だしなみまで今は気遣う余裕がなかったが
薄汚れた裏路地に連れ込まれて色々揉み合っていたのなら、着衣は乱れるのが
むしろ当然だった。
 その事に気が回らずにここまで歩いて来てしまった自分の迂闊さに頭を
抱えたくなったが、そんな克哉の自己嫌悪を吹き飛ばすように…太一が
朗らかな笑顔を浮かべていった。

「まあ、良いや。克哉さんがそういうのなら…そうなんだって納得しておく。
けど、せっかくだからうちには寄って行ってよ。あったかい珈琲を一杯、
克哉さんに御馳走するからさ」

「えっ…そんな、悪いよ。ちゃんと代金は支払うから…」

「いーの、いーの! 俺が克哉さんと一緒に過ごす時間を過ごしたいから
そうしたいってだけなんだから。さ、中に入ってよ。暖かい珈琲と冷たい奴、
克哉さんはどっちが良いの?」

 太一はあっという間に話を決めていくと掃除用具を扉の内側に置いて、
克哉の腕を掴んで強引に連れ込んでいった。
 
「た、太一! ちょっと強引じゃないのか…?」

「はは、それだけ俺が克哉さんに珈琲を振る舞いたくて仕方ないって事で…。
さ、どうぞどうぞ」

「もう、太一ったら…」

 と口で言いつつも、克哉はごく自然に笑っていた。
 少なくとも現段階で、太一の態度がいつもと違っているようには
見えなかったから。
 その事に心から安堵していきながら、カウンター席に腰を掛けて…少し経って
暖かい珈琲が一杯差し出されていく。

―それを一口、飲んだ時…ジワリ、と太一の優しさと暖かさが身体の奥に
染みいる感じがしていったのだった―

 
 
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はじめまして
つい数ヶ月前にキチメガに出会ってすっかりハマってしまい、いろいろサイト巡りをしていたらたどり着きました~。

素敵なお話と文章で見にくるのがとても楽しみです。
今連載中のお話の続きが気になります!w
たぶんこれから会う人会う人ノマに迫ってくるんでしょうね・・・うふふ。

またちょくちょく遊びにこさせていただきますので更新がんばってください~♪ 
snow 2010/08/06(Fri)18:38:48 編集
ありがとうございました!
 夏コミ準備や、体調を若干崩していたせいで若干返信が遅れてしまいましたが、コメントありがとうございました。
 非常に励みになりました。
 現在連載中の話は、恋人関係って何だろうと少し掘り下げた話になる予定です。
 結果的に現在、ノマが総モテ状態になっておりますが…多分、これから先も色んな人にチョッカイ掛けられて困惑していくこととなるでしょう(笑)
 更新ペースが若干落ちている状態ですが、書ける範囲で書いていくので良かったら最後まで付き合ってやって下さいませ。
 コメント、本当にありがとうございました!
香坂@管理人 2010/08/21(Sat)02:41:58 編集
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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