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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス                      

 そうして克哉は胸を高鳴らせ続けていると…十数分後、車はようやく
止まりエンジン音も聞こえなくなった。

(目的地に着いたんだな…一体ここはどこなんだろう…?)

 期待と不安が、競り上がって嫌にドキドキしていた。
 ギアを動かす音、キ―を回転させて抜く音、運転席の方からシートベルトを
外す音、こちら側のドアのロックを外す音、そしてドアが開いて御堂が車の外に
出る音が鮮明に耳に入って来る。
 視界を奪われているせいか、普段よりも異様に音をはっきりと感じて
意識する事になっていた。
 そして…御堂は助手席側のドアの前に立ち、外から開いてこちらに
手を差し伸べ始めていった。

「佐伯君…ここからは私がエスコートをする。この手を取ってついて
来て欲しい…」

「は、はい…判りました…」

 声がした方に向かって克哉は手を差し出していく。
 見えないせいか、最初はその手は空を切るだけだった。
 しかしすぐに御堂の手が握り返されて…ドキっとすると同時に強烈な安堵も
覚え始めていったのだった。

(見えないせいか…今は、御堂さんの手が凄く頼りに思えてくる…)

 御堂の手の温もりが、克哉を安堵させる。
 この人がしっかりと手を引いて自分を導いてくれるのだと…そう信じる事が
出来るような気がした。
 そうしてこちらもシートベルトを外して、手を引かれながら慎重に車の
外に出ていった。 
 見せないせいか、足元すら覚束ない気分になる。
 地面の感触からして…コンクリートの舗装された床を歩いているの
だけは判った。

(ここは一体…何処何だろう…?)

 目隠しされている状態が恨めしい。
 けれど目的地に到着したにも関わらず、御堂がこちらの視界を奪ったままで
いる事は恐らく意味があるのだろう。
 そうして手を引かれながら一歩一歩、ゆっくりと歩き始めていく。

「佐伯君…足元には気をつけるんだ…」

「はい、気をつけますね…」

 此処は何処ですか、という言葉を必死に抑え込みながら克哉は御堂と
手を繋いで歩き始めていく。
 こうしていると普段、視界というのはどれだけ重要な役割を果たしてくれて
いるのかをしみじみ実感していった。
 こうして導いてくれている御堂は今、どんな顔をしているのかすら
今の克哉には判らない。
 それがどうしようもない高揚感を生んでいき、さっきから本当にこのまま
心臓は破れてしまうのではないかと思った。
 目隠しされているせいで、克哉は瞼の裏に万華鏡のように様々な
模様が浮かび始めて形を変え続けていく。
 そのせいで、異世界に迷い込んだような錯覚すら覚えていった。

「…足元に不安はあるだろうが、ゆっくり歩けば大丈夫だ。この辺りの道は
舗装されているからな…。私を信じて、ついて来てくれ…」

「はい、信じます。今の貴方が…オレに害を与えるような事をする事は
ないでしょうから…」

「ああ、そうだ。もう私は…無用に君を傷つけるような真似はするつもりはない…」

「ええ、判っています…」

 そう、自分達は恋人同士になったのだ。
 つい先月までのように…お互いを傷つけあい、相手がどう思っているのかを
知らないままの間柄ではない。
 両者とも同じ気持ちであった事を今では知り…同性同士であるにも関わらず
一緒にいる事を選択したのだから。
 だから…克哉は御堂を信じていく。
 そして一歩一歩歩いていき、そうして…どうやらエレベーターに乗せられていった。
 扉が緩やかにしまっていく気配を感じる。
 そしてエレベーター特有の、フワっとした浮遊感と微かな機械音が耳に
届いていった。

(これは間違いなくエレベーターに乗せられているってことだよな…。という事は
此処はホテルか、展望台なのかな…?)

 エレベーターに乗っている時間は案外長かった。
 その事実から、高い階に向かって移動している事実が浮かび上がっていく。
 そうして無事に目的のフロアについていくとまた御堂にしっかりと手を引かれながら
暫く歩く事になった。
 そしてようやく御堂は立ち止まり、こうこちらに告げていった。

「着いたぞ…。さあ、目隠しを外すぞ…」

「は、はい…」

 期待と緊張が入り混じりながら、克哉はその言葉に頷いていく。
 御堂の両手がこちらの後頭部の方に回され、身近に相手の息遣いを感じながら
目隠しは外されていった。
 布が取られていったからと言って、すぐに視界が回復する訳ではない。
 少しの間だけそのまま目を瞑り続けて…深呼吸を一つしていってから
ようやく瞼を開いていった。

「うわぁ…!」

 そして、克哉は感嘆の声を漏らしながら…目の前に広がる光景に
釘づけになっていったのだった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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