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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス                    
                    10   11  

 御堂が自分のガーヴから、このクリスマスの夜に相応しい一本を
選び出している十数分の間、克哉の脳裏には自分達が最初に過ごした
聖夜の出来事が走馬灯のように勢い良く再生されていった。
 様々な色合いを放つ光ファイバー製のクリスマスツリーは一時、
克哉を幻想の世界へと誘っていたようだった。
 ボウっと記憶の中に意識が没頭し、長い夢を見ていたような
気分になっていく。
 そんな彼の背後から、愛しい人がそっと声を掛けていった。

「克哉、随分と待たせてしまったな…」

「え、ああ…大丈夫です。オレも…貴方がどんなワインを選んでくれるのか
楽しみに待っていましたから…」

 御堂の方を振り返って、小さく微笑みながら克哉がそう告げていくと
相手もまた穏やかな笑みを返してくれていった。

「…しかし、随分と長くボウっとしていたようだな…。何を思っていたんだ…?」

「えぇ、ちょっとこのクリスマスツリーを買った二年前の…オレ達が最初に
過ごしたクリスマスの事を思い出していたんです。今、振り返ると懐かしい
ですよね…」

「ああ、もうあれから二年が経つのか…。何て言うか、充実した時間というのは
過ぎ去るのもあっという間だな…」

「えぇ、確かにそうですよね…オレにとっても、貴方と恋人同士になって
からのこの二年間は瞬く間に過ぎてしまったように感じられます…」

 そうして、あの頃とは比べ物にならないぐらい優しい笑みを浮かべて
御堂は微笑んでくれる。
 お互いに気を遣いあっていて二人きりになると息が詰まるようだった
頃とは嘘のように…今の自分達は二人でいる事に馴染んでいた。
 暖かな空気が満ちていく。
 去年も、今年もこの夜は御堂の自宅で…今では克哉の家でもある
この場所でささやかに過ごしていた。
 あの夜景が綺麗なホテルのスィートルームで過ごしたのはあの一度だけの
事だったけれど…一度だけの特別な出来事だからこそ、これだけの年月が
過ぎてもキラキラと宝石のようにその思い出は輝いていた。
 御堂がそっとワインの瓶を傍らに置いて、机の前に座っている克哉の
背後からそっと覆い被さるように抱きしめてくる。
 その回された腕に己の手をそっと重ねていきながら…克哉はそっと
目を閉じてその暖かさを享受していった。

 本来、外国のキリスト教圏でのクリスマスは日本のように盛大なパーティーを
して大騒ぎをする日ではなく、教会でミサに行って聖歌を歌って祈ったり、
ごく親しい人達と自宅でささやかに祝うのが習わしらしい。
 だから次の年のクリスマスからは、あまり贅沢な事はせず御堂の自宅で
二人きりで過ごすようになった訳だが…だからこそ、克哉はその幸せを
噛みしめて、ジワリと胸が満たされていくようだった。

(この人と…大好きな孝典さんと、こうやって特別な夜を二人で
過ごす事が出来る…良く考えてみるとそれが何よりも素敵な
贈りものだよな…)

 クリスマスにプレゼントを贈り合うような真似はしていない。
 二人で普段より少しだけ豪勢な料理を食べ、ちょっと高級なワインのコルクを
開けて飲み合う程度だが…それも、あの傷つけあうような関係から始まった事から
思えば信じられないぐらいの幸せだった。
 
「孝典さん…これからも、こうやって…毎年、二人でクリスマスを過ごして
いけると良いですよね…」

「ああ、そうだな…」

 御堂の方に顔を振り向かせていきながら…克哉はそっと祈るように
呟いていく。
 そしてうっすらと瞳を潤ませながら…愛しい人を見遣っていく。

「…そんな目で私を見るな。今からそんな眼差しで見つめられてしまったら
食事やワインを楽しむ前に、君を食べたくなってしまいそうだ…」

「なっ…そ、そんな…!」

 自分がどんな目で御堂を見ているかなんて、自分自身では判りっこない。
 どうすれば良いのか判らなくて耳まで真っ赤にしながら慌てていくと
御堂は喉の奥でククっと笑いを噛み殺していった。
 そうしている間に御堂のこちらを抱き締める腕の力はもっと強くなり…
とっさに息が詰まっていく。
 ふと彼の方を振り返っていくと…真摯な眼差しをしてこちらを見つめてくる
御堂の視線とぶつかっていった。

「克哉…」

「はい…」

 多分、こういう雰囲気になったらもう余計な言葉などいらない。
 静かに目を伏せて、与えられる口づけを受け入れていく。
 ただキスをしているだけで、ジインと痺れるような感覚が全身に走り抜けて
いくようだった。

―これからも、この人の傍でこうしてずっと一緒に過ごしていきたい…

 克哉は、キスを交わしている間…心の中で強く強く、祈り続けていった。
 そして…脳裏に、一瞬だけ最初のクリスマスの夜の記憶の断片が
過ぎっていく。
 この人を愛している限り、こうして毎年聖夜を共に過ごしている限り…
その思い出はいつまでも克哉の中で輝き続けるだろう。
 愛しい人と積み重ねた記憶は、いつまでもいつまでも特別な意味を持って
光を放っていく。

―いつかのメリークリスマス…最初のクリスマスの夜の記憶を心から
愛しいと思いながら、今夜もまた思い出を重ねていく

 克哉の方からも御堂を強く抱きしめていきながら…この夜、こうして
二人で過ごせる事を心から感謝して、そしてこれからも共に歩んでいける事を
強く願っていったのだった―


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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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