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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 口付けながら、眼鏡が思い浮かべていたのは…もう一人の自分の事だった。
 あいつは…俺の存在を、この男に知られる事を恐れ続けていた。
 それが…どうしようもない苛立ちと憤りを、彼に齎していたのだ。
 お前達はずっと…『俺』の事など、無い者のように振る舞いながら…幸せな日々を
送っていた。
 御堂はあいつだけを見続けて、あいつは俺を封じ続けて表に出さないようにしてて。

 ―それなら、俺の心は何故…以前のように完全に眠り切らずにあいつの心の奥底で
生き続けなければならなかったんだ…?

 もう一人の自分にとって、今…もっとも大事な存在を押し倒していく。
 やっと深い口付けを解いて顔を離していってやると…目の前の男は、信じられないものを
見ているような…そんな表情をしていた。

(あぁ…そういえば、これが俺にとって…あんたとの、ファーストキスって奴に
なるのかな…?)

 自嘲的に笑いながら、そんな事を考えていく。
 もう一人の自分とは、恋人関係になる前からも…付き合ってからも数え切れないくらいに
交わしているだろうに、自分とはこれが初めてになるというのも滑稽だった。
 もう一人の自分は、この男とのキスを好んでいた。
 それだけで幸せそうな心に満たされて…それが遠巻きに伝わってくるぐらいだったのに…
自分の方は、頭の芯で酷く冷めた気持ちになっていく。
 この二人の幸せなど、この手で壊してやりたかった。
 
 ―お前達は、ずっと…俺を無い者として…無視し続けていたのだから。

 誰にも必要とされず。
 認識もされず。
 親しい者もおらず。
 自分が成すべきことも何もなく。
 ただ…他人の幸福と充実した日々をガラス越しに、ただ見せ付けられる日々。
 克哉が眼鏡を掛けなくなってから八ヶ月。
 眼鏡が送り続けていた日常は…そんな、気が狂いそうなものだった。
 いっそ以前のように眠り続けられればまだ楽だった。
 なのにあいつの恐れの感情が、眠ろうとする俺を妙に刺激して…それすらも
叶わなかった。
 だから眼鏡は、もう一人の自分を何よりも憎んでいた。

 ―せめてお前ぐらい、俺が在る事を認めてくれれば…俺はこんな不快な感情を
胸に抱かないでいられたのに…と。そうすれば自分は眠って、必要以上の
苦痛を味あわずにいられたのだから―

「佐伯…! 何を、考えているっ…! ここは朝のオフィスだぞっ…!」

 自分が逡巡している間に、御堂は少し思考出来る程度には回復したらしい。
 唇をワナワナ震わせながら、必死の形相で訴えかけていく。
 今の眼鏡には、この男のそんな表情は妙に愉快だった。
 だから…からかうような口調で、返答していってやる。

「…御堂さん、あんまりデカイ声を出すと…こんな場面を他の誰かに
見られてしまいますよ…?」

「君こそ正気かっ…! 特に今朝は11時から重要な会議が組まれている事は
把握している筈だっ! そんな時に…!」

「…後、三時間もあるじゃないですか。それだけあれば…俺の気が済んだ後でも
書類の確認作業ぐらいは出来ますよ。あんたは有能なんですからね…?」

 張り付いたような笑顔を浮かべながら、ゾッとする冷たい声を眼鏡は出していた。
 其処に剣呑なものを感じたのだろう…。
 御堂の瞳の奥に、一瞬怯えのような光が宿っていった。

「…克哉、君は一体…何を…! うあっ!」

 いきなり足を大きく広げられたかと思うと、足の狭間に…克哉のすでに怒りで
昂ぶっていた性器を布地越しに押し当てられる。
 その行為に、薄々と感じていた恐怖が…現実に成されようとしている事を御堂は
理解していく。

「…この体制になって、まだ理解出来ませんか…? 俺はあんたを抱く気なんだよ…
御堂、孝典…」
 
 御堂の耳元で、怒りを押し殺した声で囁いていく。

「ど、うして…!」

「…それをあんたが聞くのか? 御堂…。…最初の頃にあんたが<オレ>に散々した事だろう…?
自分の立場を利用してな…?」

「…っ!」

 その一言は、御堂にとっては泣き所のようなものだった。
 今の眼鏡の言葉は、恋人関係になってからの事ではなく…最初の頃の、まだ嫌がらせの
意味で克哉を抱いて、辱めていた頃を指していた。
 御堂の中では、今では克哉の存在はどんな者よりも大きくなっている。
 そんな彼に…憎しみの篭った口調で、そんな言葉を言われたら…言い返せる訳がない。
 硬直している彼を見下ろしながら…眼鏡は、御堂のスーツズボンのポケットに…
手を忍ばせていく。
 …其処には、いつも彼が愛用している小さな潤滑剤のチューブが入っていた。

「…大丈夫ですよ。これを使ってすぐに済ましてあげますよ…? お互い、職務を
放棄する訳にはいきませんからね…?」

「止めろっ…克哉っ! むぐっ…!」

 再び腕の下で暴れていく御堂の唇を深く塞いで…器用にそのベストとYシャツを肌蹴させて
直接胸の突起を弄っていってやる。
 その間に腰を何度も押し付けて…自分の興奮度合いを突きつけてやると、御堂は何度も
恐怖で身を竦ませているようだった。
 克哉と関係を結んでから八ヶ月。
 自分が抱かれる側に回る事など想像もしていなかったのだろう。
 相手の肉体が強張る度に、眼鏡は…暗い悦びを感じていった。

 グチュ…グチャ…ピチャ…ネチャ…。

 いつもこの男が、克哉にしているように…ねっとりと舌先を口腔中に張り巡らせて
深すぎるキスを施していってやる。
 強い快楽は、愛しているから与えてやるのではない。
 秋紀は自分を必要として、求めてくれていた。だからもう少し優しく扱ってやったが…
この男に対しては、自分に屈服させて支配してやるだけの為に…そうしていた。
 懸命に御堂は、いつもとあまりに態度が違い過ぎる恋人に向かって…目を覚まして
くれと! そう訴えるように唇を喘がせて、抵抗し続けていく。

「御堂…いい加減、観念したらどうだ…? お前が<オレ>にした事を思えば
これくらいの報復は当然とくらい…考えないのか…?」

「そ、れは…!」

 心からの憤りを込めて、その瞳を覗き込みながら…告げていけば、相手も良心の
呵責でも感じたのだろう。
 抵抗が弱まり、今度こそ眼鏡の方のペースになっていく。
 その隙に相手の上等そうなスーツズボンを下着ごと引きずり下ろして…たっぷりと蕾の
周辺に潤滑剤を塗りつけていってやる。
 スーツのジッパーから引きずり出した己の剛直の先端にも…同じように塗りつけて
いってやると、グイっと其処に押し当てていった。

「あんたを…犯してやるよ…」

 それで俺に、屈服すれば良い。
 眼鏡はそう考えて…腰を一気に進めようとした。
 瞬間、とんでもない衝撃が…全身に走り抜けていった。

―止めろぉぉぉぉぉ!!

 この数日間、大人しく自分の中で眠り続けていた筈のもう一人の自分の雄叫びが
脳裏に響き渡った。

―その人に、それ以上…こんな真似をしたら、許さないっ!

 それは…本気の憎しみの篭った言葉と叫びだった。

―誰にも、渡さないっ! この人は…オレにとって本当に大事な人だからっ!
 お前にも、他の誰にも…これ以上は指一本も触らせたくないっ!

 それは…あまりに強い感情と、決意だった。
 今まで克哉は誰かを憎んだり、本気で衝突したりする事を好まなかった。
 否…それを否定したからこそ、彼の意識は形成されたようなものだった。
 だが…今の彼は本気で…御堂にこのような仕打ちをした眼鏡を憎み、憤っていた。
 それが…銀縁眼鏡の力によって齎されていた…眼鏡の意識の優位を奪い…
再び肉体の所有権を取り戻していく。

『お前はっ…!』

 眼鏡の意識が…克哉の手によって、再び暗い場所へと引きずりこまれていく。
 そして…克哉は、身体の自由を取り戻して…自分の目元に掛けられた眼鏡を
勢い良く床に放り出していった。

「御堂…さ、ん…」

 その瞬間、御堂は見た。
 一瞬で…彼らの意識が切り替わり、変貌する様を。
 先程まで別人のように冷たく…憎しみを込めて自分を組み敷いていた男が
瞬く間に…自分の良く知る、穏やかで…腰の引けた『いつもの克哉』に戻っていく様を―

「…本当に、ごめんなさい…」

 瞳から、涙を零しながら…悲痛そうな表情を浮かべて…克哉は御堂に抱きついていく。
 さっきまで御堂を貫こうとしていた性器はすでに力を失い…思いっきり萎えていた。
 突然の事に、御堂の方も頭が回っていかない。
 力なく胸を上下させ…混乱のままに…相手に抱きしめられる以上の事が出来なく
なっていた。

 ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…!

 克哉は壊れた機械のように、ただ御堂に対して謝罪の言葉を紡ぐ事しか出来ない。
 御堂のスーツの肩口に、彼の涙が染み渡っていく。
 ただ…今の御堂に出来た事は、戸惑いながら…呆然としながらも、必死に自分に
懇願して謝り続ける…自分の良く知っている『克哉』を…抱きしめ返してやる事
ぐらいだった―



 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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