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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 スっと御堂の唇が額から離れていくと…克哉は拗ねたような表情を
浮かべていた。
 その様子を、男は悪戯っぽい笑みを浮かべながら楽しげに眺めていく。
 正直言って、少し悔しかった。

「…御堂さん、絶対に…オレをからかって遊んでいますよね…」

「いや…そんな事はないぞ? 今の君がとても可愛いな…と思ったから、つい
そうしたいと思っただけだが…」

「…オレは可愛くなんて、ないですから…あんまり何度もそう連呼しないで
下さい…」

「私はお世辞や、心ない事は言わないぞ。それより…そこまでお腹が空いているなら
早くこれを食べると良い。やはり暖かい内に食べた方が旨いからな…」

 そういって御堂がサイドテーブルに置いたおかゆをもう一度近くに運んで来ると
克哉は身体を起こしていく。
 自分の太股辺りにおかゆの皿が載ったお盆を乗せられて、その美味しそうな
匂いに唾を飲み込んでいく。

(気分的には食欲がないって感じだけど…身体は最低限の栄養は求めている
感じだな…)

 色合い的に、純粋なお粥ではなく牛乳を入れてざっと煮込んだミルク粥と
いった雰囲気だった。
 中にはニンジン、ほうれん草、玉ねぎなどの野菜が細かくして入っており…
真ん中には粉末パセリが少量乗っけられていて…色彩も良い。
 味付けもスライスチーズを一枚細かく千切って混ぜ、塩、コンソメスープの素、
それと少々の砂糖と塩コショウ、粉チーズも混ぜ込まれていた。
 
「…凄く美味しそう。さっきまであまり食欲なかったですけど…これなら、充分
食べれそうです…」

「あぁ…そうでなくては困るな。一応…インターネットで検索してレシピを調べて
初めて作ってみたものだ。君の口に合うと良いんだが…」

「えっ…これ、初めて作ったんですか?」

「…今までは自宅に招き入れて、風邪の看病までしたいと思える相手は…
いなかったからな。もう良いだろう…冷めてしまうぞ」

 ぶっきらぼうに言い放つその姿は、一見すると冷たく見えるが…その照れたような
表情と一言に、ジンワリと克哉は嬉しくなっていった。

(確かに以前の御堂さんだったら…そんな事はしなさそうだもんな…)

 自分がMGNに移籍してからの、日々の御堂の変化に…克哉自身もまた
驚かされる事が多かった。
 関係を持ち始めた頃はあんなに冷たくて残酷な男はいないと思っていた。
 だが…今日の御堂は、自分が熱があると知ったら必死になったり…ミルク粥を
作ってくれたり、とても優しくて。
 膝にその重みを乗っけているだけでも…幸せな気分がジワジワと心の中に
広がっていくかのようだった。

「はい…それじゃあ、頂きますね…」

 一言、断りながら…火傷しないようにフーフーと何度か息を吹きかけてから…
慎重にスプーンで掬って…口元に運んでいく。
 今の克哉は高熱は出ているが、そんなに鼻が詰まっていたり扁桃腺まで腫れて
いる訳ではない。
 一口食べただけで…美味しい風味が鼻腔を抜けていって、心地よい塩加減の
粥がスルスル~と喉に入っていく。
 傍らに置いてあった椅子に腰掛けていきながら御堂が問いかけていった。

「…どうだ?」

「あ、はい…凄く美味しいです…。とても初めて作ったものとは思えないくらいに…」

「当然だな。…厳密にレシピを守るように心がけたのだから…。これで美味しく
仕上がらなかったら味付けの分量の方が間違っている事に他ならないな…」

「…貴方らしい言葉ですね…。けど、嬉しいです。オレを気遣って…こんなに
美味しいものを作ってくれるなんて…以前から考えたら、夢みたいです…」

「うっ…」

 その一言を発した瞬間に、今度は御堂の方が言葉に詰まっていく。
 すぐにコホン、と咳払いを一つして…顔を背けていった。
 克哉の素直な賞賛の言葉が嬉しいと同時に気恥ずかしくてくすぐったいのだろう。
 今度は御堂の方が…頬を軽く染めていった。
 その様子を見て…克哉がミルク粥を食べながら微笑ましげに見つめて…
クスクスと笑っていった。

 ゆっくり…ゆっくりと…御堂の愛情が篭った料理をしっかりと味わっていくように
時間を掛けて克哉は食べ進めていく。
 御堂もまた、チラチラと彼を眺めていきながら…その様子を見守っていく。
 訪れる、穏やかで優しい時間。
 その暖かな空気に包まれながら…ゆったりとした気分になっていく。
 克哉が半分程、自力で食べ終えた頃…御堂がこちらを向き直り…今度は
強気の表情を浮かべて言い放っていく。

「克哉…残りは、私が食べさせてあげよう。…君は病人なんだからな。一旦…
ベッドに横たわって休むと良い…」

「…えぇ?」

 突然の御堂の申し出に、克哉は素っ頓狂な声を上げていく。
 それで一度乱れたペースを取り戻したのだろう。
 克哉が動揺している隙に、グイと男は身を乗り出していって…楽しげな
笑みを浮かべながら克哉の瞳を覗き込んでいく。
 今日の彼は…熱があるせいで、すぐに慌てたり驚いたりして…いつもよりも
感情表現が豊富で。
 見ていて可愛くて仕方ないので…つい、かまいたくなって仕方なくなる。

「・・・遠慮、することはない。私達は…もう、恋人同士なんだ。それくらいは…
愛しいと思う相手にしたいと思うのは…当然の、感情だろう…」

「えっ…は、はい…。でも…」

「私が君にそうしたい…と思っているんだ。それくらいは…是非、させて
貰えないか…?」

 フッと真摯な眼差しになりながら…そう告げていくと、克哉もそれ以上…
突っぱねる事が出来なくなってしまう。
 御堂の提案は恥ずかしかったが…同時にどこかで、嬉しくもあって。
 同時にまた…胸の鼓動がバクバクと忙しなくなっていくのを感じていた。
 
(あぁ…御堂さんの部屋で、この人の匂いに包まれていたせいで…やっぱり
いつもよりも意識しちゃっているよな…)

 そんな自分に溜息を突きながら…それでも、どうにか口端に笑みを浮かべて…
コクン、と頷いていった。

「…はい、どうぞ。少し照れ臭いですけど…御堂さんの好きなようになさって…
下さい…」

 そうして、手に持っていたスプーンを…御堂の方に柄の部分が来るように
そっとお盆の上に置いていき。
 相手がそれを手に取る仕草を…ジっと見つめていった―

 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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